ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜 作:ゆぐゆぐ
~ビョーゲンズキングダム~
地球を支配する組織の者たちが暮らす世界。今日も長の姿を拝見することが出来ないでいた。
「この短期間でプリキュアが3人になるとはね」
「プリキュアが何なのよ。あんな小娘達、とっととケチョンケチョンにしてやれば良いのよ」
プリキュア……地球をお手当てする伝説の戦士が再び誕生したそうだ。
現在、ダルイゼン、シンドイーネ、グアイワルと次々にプリキュアに敗北し地球を病気にすることに手こずっている。
「プリキュアとやらは詳しくはご存じではないのですが、貴方たちが苦戦する程の厄介な方達なのでしょう?」
それでも意地を張るように強気に振る舞う彼らに、一人の男が皮肉めいたように言い放つと、一同に睨みつけながら彼に目をやる。その中で、前回敗北した二人を見下した後に何食わぬ顔で撤退してきたグアイワルが不服そうに反論してきた。
「俺達が本気を出したみたいに言うんじゃない。少し油断しただけだ」
「へえ、油断ですか……。いけませんよ、たとえどんな敵であれ油断は禁物です」
その反論がどうにも言い訳にしか聞こえない。
男はハァ、と一つ溜め息をつくと、首領であるキングビョーゲンの方へ膝をついて挨拶を告げる。
「キングビョーゲン様の命ならば、全力で尽くさせていただきますとも……」
────ー
平光ひなたがキュアスパークルとして戦うことになったものの、僕達はやはり別の意味で不安を抱いていた。
彼女らがプリキュアだということは他には誰にも知られてはいけないというジンクスがあるのだが、それは思いついたことは何でも口にしてしまう彼女とは相性が悪い。
「プリキュアのことは秘密って言ったでしょ?」
現に、「あたし達、頑張って勝ったんだよー!」などと爆弾発言を放って廊下でちゆに説教を喰らっている。
と言っても、周りから見れば真面目な教師がやらかした生徒に叱っているという図だが、実際は説教という緊張感は特にない。
「あっ、そうだった。ごめーん、何が良くて何が悪いのか分からなくなっちゃって…………」
「そうだよね。今まで知らなかったことだもん」
勝利宣言は言ってはいけない位は理解出来るはずだが、相変わらずのどかは優しいのか甘いのかよく分からない。
「……今後のためにもおさらいしましょう。放課後、集合ね」
放課後、カフェにてジュースを軽く味わいながらこれまでの経緯について振り返ることになった。
元を辿ると大分長くなるだろうが、ちゆとのどかはそれを考慮しながら淡々と進めていく。
「つまりそのテアティーヌ様がラテのお母さんなのよね」
「そうそう、ヒーリングカーテンの偉い人‼」
「ヒーリングガーデンの女王様ラビ」
「そこ間違うか~?」
「ここまではいい?次はヒーリングガーデンについてね。地球をお手当てするヒーリングアニマルがたくさん住んでる秘密の世界」
「それが突然ビョーゲンズに襲われたラビ」
「激しい戦いの末、テアティーヌ様はビョーゲンズのボス、キングビョーゲンと相打ちになってお互いにかなりのダメージを受けたんだ」
「そしてビョーゲンズは、次に人間界を蝕みにきたと。地球を自分の物にするために……」
地球の守護神が打ち破られたってところか。
となると、もうついにはプリキュアだけが地球の希望という訳か。思ったよりも大層な責任を背負わされたってところか。
「でもこうして、プリキュアが三人に増えたんだ!あいつらの好きにはさせないぜ!」
「よーし、頑張ってビョーキンズを浄化するぞー!」
一応、ちゃんと話は聞いているだろうけど、ここまで覚え間違うものか?
「大丈夫だよ。ゆっくり覚えていこう、ひなたちゃん」
「うぅ、ありがと~。のどかっち優しい……」
「でも最低限のことは気を付けましょう」
「うぐっ、は、はい……」
ちゆの一言で、ひなたは少々怯えるような仕草を見せていた。
まあ、真面目な人と陽気な人とでは意見が釣り合うこともあるから仕方がないと言えばそうなる。僕自身もひなたとは相性が合わないと思っている。
しかし……僕も事態に巻きこまれた以上、何か役に立つようなことはしたい。
だが、共に戦うとまでは行かない……。弱き人間が肩を並べたところで足手まといになるだけなのだから。
「……飛鳥くん?」
不意にのどかに声を掛けられる。気が付かないうちに脳に意識を集中させていたらしい。
「ん、もう帰るか?」
「いや、そうじゃなくて。今日の飛鳥くん、何だか元気がないように見えて……」
流石だ、人を見る目が一味違う。
実を言うと、今日はそんなことを考えているばかりに授業もまともに聞くことが出来なかった。
これ以上、無駄な心配を掛けさせないよう気を紛らわせることにしよう。
──ー
「ここの空気を吸うのは久しぶりだ。さて、手荒に行くとしましょう」
「進化しなさい、ナノビョーゲン」
「……くちゅん!」
「「「っ!」」」
ラテがくしゃみをし始めたということは、またメガビョーゲンが出現したらしい。
同時に、地面が揺れる程の咆哮……ここからかなり近い場所に現れたのだろう。近づいてからよりもこの場で変身した方が良さそうだが。
「皆、行くわよ!」
「うん!」
「……はい!」
ちゆもこれについては同意見だったようで、のどかやひなた達に告げるようにヒーリングステッキを構えた。
のどかはすぐさまステッキを構えたのに対し、ひなたは怯えているような、畏まるような態度を取っていたのが気がかりではあった。
「重なる二つの花!キュアグレース!!」
「交わる二つの流れ!キュアフォンテーヌ!!」
「溶け合う二つの光!キュアスパークル!!」
三人はそれぞれに変身を終えたものの、周りを病気に変えようと暴れているメガビョーゲンと距離が離れて行っている。このままだと町にまで進展してしまう。三人は急いでメガビョーゲンの元へと……。
「……伏せろ!!」
「「「えっ……!?」」」
突然、青空に流れる黄金の光に嫌な予感を感じた僕は皆に危険を伝えた。
その予感は的中していたようで、その光は段々こちらに接近してきた。更に、僕らが一斉に伏せた直後、光は後頭部付近を通過し地面へ突き刺さると、風船が割れたような爆音と共に周りを荒らしていた。
「矢……!?」
その光の正体は、凄まじい威力で放たれた矢だった。
地面に穴が出来たことはもはやメガビョーゲンのせいで慣れてしまっている。しかし、弓道の弓ではこんな遠い距離からは狙えないはずだ。
「おや、外れましたか」
辺りを見渡すと、屋根の上から一人の男がこちらを見下していた。
ビョーゲンズの幹部にしては常人の顔色をしているが、片手に弓を持ち、そして背部には尻尾のようなものを生やしているという獣人に似た姿をしていた。とはいえ、僕らを狙ったのはこいつで間違いないだろう。
「どうしてこんなこと……!」
「どうしても何も、敵の要である貴方達を狙っただけですが。標的は手早く仕留めるのが道理でしょう?」
何故に敵に向かって当たり前のことを言わせるのか。そう言わんばかりに、のどかの問いに嘲笑うかのように答える男。
「じゃあこの人もビョーゲンズの一人……!?」
「でもあんな奴見たことないラビ……!」
「私……キロンは新入りの身ですので。これが初陣という訳なんです」
何か、こうも丁寧に教えてくれると本当にビョーゲンズなのか疑ってしまう。とはいえ、奴が弓で狙ってきたの言うのは事実。相手はあれでもプリキュアを敵視しているはずだ。
「無駄話はここまでにしますか。彼女らはこのまま私がやりますので、好きなように暴れていなさい、メガビョーゲン」
「メガビョーゲン!!!」
キロンの指示通りに、メガビョーゲンは回れ右をして引き続き自分の仕事に真っ当しようとする。
「させない……!」
「あ、ちょっとスパークル!?」
それを意地でもやらせまいと、スパークルは猪突猛進の如くメガビョーゲンに突っ込んでいく。
弓を置いて一呼吸を入れるキロンの仕草に嫌な予感がしたフォンテーヌの呼び止める声が届くこともなく、そのまま高く跳び上がった。
その瞬間……
「がぁっ!?!?」
ドゴンッ!!という鈍い音と共に、スパークルは激しく吹っ飛ばされていった。
キロンが気付かない間に地上に降りていたことから、相手を力強い攻撃が直撃したんだろう。
「……やはり地球の戦士でも所詮はか弱い女の子か」
今までの地球の支配が本望のビョーゲンズの幹部とは違い、彼はそれよりかもプリキュアを確実に仕留める……殺すかのような狩人のような戦闘スタイルなのだろう。
そして、プリキュアを期待していただけに、勢い良く吹っ飛ばされたスパークルの姿に呆れているようだった。
取り敢えず、かなりのダメージを受けたであろうスパークルの容態を確かめに僕は駆け寄った。
「スパークル……!」
「大、丈夫、げほ、げほ……グレースとフォンテーヌはメガビョーゲンをお願い。あたしはあいつを……!」
「あんまり無理すんなって!一度休んだ方が良いニャ!」
「ちょっとドジっただけだし……それに、あたし達を馬鹿にしたあいつに今すっごくムカついてるの。ニャトラン、本気のあたし達を見せつけてやろうよ!」
「……分かった。行くぞ、スパークル!」
あの一撃で弱さを晒してしまった自分に、周りを病気に変えようと暴れ回るメガビョーゲン、そして自分達を弱いと決めつけたキロンに、痛みを堪えながらも怒りを露わにする彼女の目にニャトランはすぐに答える。
「フォンテーヌ、ここはスパークルに任せて、メガビョーゲンを浄化しに行こ?」
「……ええ、そうね」
グレースの言葉に、だがやはり気になりながらもフォンテーヌはメガビョーゲンの浄化へと足を運んで行った。
そんな二人を逃さぬと弓を構えて狙うキロン、邪魔はさせまいと相手に蹴りを入れるスパークル。
しかしスパークルの動きは読んでいたようで、蹴り足を腕で振り払って掴みかかる。
「くっ……!やあぁぁぁっ!!!」
それを負けじと避け、隙を見せた相手の脇腹、腹部、胸部へと三発蹴りを浴びせた。
相手は後ずさりするように怯むもすぐに体勢を立て直していた。
「……甘く見すぎていたようだ、前言撤回しよう」
「それはどうも!てりゃぁっ!!!」
まだこれだけでは怒りが収まらない。更に追い打ちを掛けようと、空高く跳び上がってかかと落としを肩部に浴びせる。
これもまともに喰らったはず、だが今度はびくともしなかった……
「ええ……少しか弱い女の子に、ですが」
それどころか、口角を少し上げてぼそりと呟けるほどの余裕を見せていた。
「えっ……っっっ!?!?!?」
やばい……!そう悟った瞬間は時すでに遅し。キロンはそのまま拳に力を込めて、スパークルを殴り飛ばした。
その威力は、多少離れた距離で見ていた僕とラテでも体感した殴り飛ばした直後の衝撃と、スパークルの声にならない程悶絶している姿で、とにかく凄まじいものだと感じた。
「ぐぅっっ!!」
一方、グレース達も今回のメガビョーゲンの強さに圧倒されていた。
幾度も攻撃を浴びせても耐え続け、やがて気弾を放つ前に隙を突かれ、尻尾で叩きつけられ反撃されてしまう。
「グレース、しっかりするラビ……!」
「どうしよう、このままだとやられちゃうペエ……!」
無惨にも倒れたまま立ち上がらない三人。
このままトドメを刺すのだろうか、キロンはメガビョーゲンの肩の上に立つと、何も口を開かぬまま限界まで弓を引いていく。
また、失うぞ……!
「待て……!」
覚悟を決めた僕は、三人の前へ仁王立ちする。
もう、相手に哀れな目で見下されようが関係ない。今出来ること、今やるべきことを全力でやるだけだ。
「飛鳥、くん……?」
「……今日の所は見逃してくれ」
「は?」
「こいつらが……友達が苦しむ姿は、もう見たくない。だから、頼む」
そう言って敵の幹部を前に、精一杯の土下座をする。
何をしてんだこいつはと呆れている敵の行動は当然正しい。ただ無力な人間が強者に情けを晒しているだけなのだから。
だが、無力だからこそ、それなりに出来ることをしたい……その結果がこれだ。
何度も壁を作ろうとも、諦めずに接しようとしてくれた。言葉を強くぶつけても、優しく受け止めてくれた。だから、こいつらを見捨てる事なんて、もうしたくないんだよ。
「……くだらないな」
僕の必死の行動は結局届くことはなかった。
引いていた弓が離れ、光の矢がこちらへと向かってくる。
……だったら、皆と一緒に死んでやろう。苦しむよりかはマシだ……
「ッシャアアァァァァ!!!」
「蛇……!?」
目を瞑ったその時、ガリッガリッと光の矢が突如粉砕した。
あまりの事態に目を開けると、以前にも現れた大蛇が目の前で矢を噛み砕いていた。
敵も想定していなかったことに驚きを隠せなかったようで、しかしキロンは困惑しながらも再度大蛇目掛けて弓を引く。
「(速い……!?)」
だが、二度も同じ攻撃はさせまいと大蛇はメガビョーゲンに頭突きを喰らわせる。メガビョーゲンはバランスを崩して尻餅をついていた。
何故、こいつは僕達を守ってくれているのか。今度こそ聞いてみることにした。
「お前は、いった……」
「
言い切る前に、大蛇は僕を優しく巻き付いてそう告げてきた。
まるで優しく抱いてくれる母のような……そんな温もりが何処か感じた。
”今の不出来を恐れる必要はない。ただ真っ直ぐに、切り拓かれた道を歩んでいけ”
すると、辺り一面に光が放たれていく。
この光は……のどか達が変身する際に放たれた光によく似ている。こいつは、僕にプリキュアとしての力を与えているのだろうか……
面白い、受けて立ってやるさ。
「絡み合う二つの毒、キュアラピウス」
「キュア、ラピウス……?」
今の僕は、目深に被った黒のフードに手が隠れるほどの長い袖の黒のコート、古来の医師が装備していそうな嘴状のマスクに武器は蛇が絡みついた杖といった戦士らしくない禍々しい格好をしているが、身体の奥底に力が漲っているようだった。
「更に増えたか。まあいい、まとめて倒すだけ……っ!?」
キロンが弓を引こうとした時には、僕が操る蛇に動きを封じられていた。
成る程、キュアラピウスの戦い方は遠距離で支援するだけであって接近戦には向いてないと……何とも僕らしい。
「さてと、まずはあのデカいのからだ。お前達、協力してくれ」
「……うん、分かった(ラビ)!」
あえて無茶させるように命令したんだがな……まあ、すぐに立ち直ってくれたならそれで良いけど。
「「キュアスキャン!!」」
「あそこに実りのエレメントさんがいるラビ」
取り敢えず、事を手早く終わらせるために、この漲っている力をフルに活用させてもらおうか。
「痛みはあるだろうが我慢してくれよ?」
『
杖から放たれる赤黒い光線でメガビョーゲンを一瞬にして浄化し、実りのエレメントさんを体内から”強引”に引き剥がした。
三人の場合は優しく包み込むように引き剥がしていたはずなんだが……痛みはあると宣言したものの、かなり横暴な技なんだな、僕のは。
「さて、次はお前だが、どうする?」
「……いえ、今回はここまでとしましょう。では、またの機会に」
悔しさよりも、楽しませてもらったという表情でキロンはこの場を撤退していった。
今までよりも格段に強い敵だったが、どうにか無事に撃退だったので一安心……いや、今回はあいつに感謝しなきゃいけないな。もうどっかに消えてしまったけれども。
「……あれ!?めっちゃ痛かったのもう治ってる!?」
確かに先程まで悶え苦しんでいたのに、今では普通に立っていられている。
これもラピウスの技の能力なのだろうか。攻撃しながら味方を回復する的な。
「凄い……!凄いよ、飛鳥くん!」
「え、あ、あぁ…………」
「えぇ!?あっくんがヘニャヘニャになっちゃった!?」
のどかの突然のべた褒めに何が?と聞こうとした途端、思うように立ち上がれなくなり、のどかにもたれかかるように倒れていく。
恐らく、僕が調子に乗って力をフル活用したせいだろう。体力とかまで使っていたなんて思わなんだ。
どうにか安静にさせようと三人は慌てて僕を運んでカフェテリアの椅子に座らせた。
「……ん?そういえばさ」
ふと、ひなたが何かを思い出したのか喋り始める。
すると、急に満面の笑みで僕の両手をがっしりと掴んできた。
「さっきあたし達のこと、友達って言ってくれたよね!?」
「あ?…………あっ」
つい助けたいのに一心で完全に変なことを口走ったな。
いやまあ、本音かと聞かれるとあながち間違いじゃないのだが、改めて思い出すと羞恥心で体が熱くなってくる。
「……勘違いするなよ。友達ってだけだからな、好きとかそういう愛情は決して」
「あたしもあっくんの事好き──!!!」
「人の話を聞け!あと抱きつくな馬鹿!!」
何はともあれ、これで僕もプリキュアとして戦えるようになった。
地球の戦士として責任を果たさねばならなくなってしまったが、大事なものを守るからには全力で尽くさせてもらうことにしよう。
「飛鳥、意外と嬉しそう?」
「嬉しい訳ないだろうが……!」
「これからよろしくね、飛鳥くん!」
「そんなことよりこいつ引き剥がせよ!!!」
・ビョーゲンズにオリキャラが追加された訳ですが、モデルを言っちゃうとFGO二部五章のネタバレになってしまいますので敢えて言いません。ヒントを言うとあれのあの人です。
・アスクレピオスのプリキュアverが想像出来ないというご感想を頂きましたが、基本的には飛鳥がデミ鯖化したと思っていただいて構いません。現在は第一と同じ容姿です。
解説って言ってもこんなもんかな