ダーウィンズゲーム ~無名の王~   作:口十

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操られ人形

 シブヤ駅に到着すると、既に気付いているのか、それとも偶然転送先がここだったのか、一人の女性が立っていた。

 気配を消して、女性の元へ近づく。

「あれはユカリ。気を付けて、強い」

 了解、と言葉を返して、カインはユーリを隠し、女性の前へ出る。

「誰がひそひそやってんのかと思ったら・・・あんたか。仮面の男」

「やだなぁ。僕にはカインって名前があるんだよ。君は何がお目当てでDゲームをやってるのかな?」

「は? 聞くまでもないでしょ。金目当てよ。金目当て。それ以外に何があるっていうのよ」

 その言葉を聞いて、はぁ、とため息を吐くカイン。

「返答次第では逃がしたのに・・・いや、僕は嘘を見抜けるから意味ないか。じゃぁ、無抵抗になるまでやろうか」

「アタシの異能(シギル)知ってる上で言ってるんだったら、相当馬鹿だね。アンタ」

 どちらからともなく、戦闘へと入る。その合図は無し。跳躍で距離を詰めるユカリに対し、カインは後ろへと跳ぶ。そのまま仲間の異能(シギル)を使って半径2m内に先端の尖った木の棒を出現させる。それを豪速で飛ばし、腕へ突き刺し、そのまま壁に張り付ける。

「うわぁ、痛そう」

 他人事のように呟くユカリを見て、改めて彼女の強さを再確認する。

 蛇蝎なる絡繰(トゥライトマリオネット)。自分を意のままに操るというものだ。そこに、痛覚なるものはない。自身を三人称視点で操る。まさしく操り人形だ。それを行動不能にする、というのがどれほど難しいか改めて再確認する。

 ユカリは血が噴き出るのも無視し、木の棒を抜き取り、投げ捨て、そのままこちらへ走り出す。やはり痛みで抑え付けるのは無理だったか。ならば、物理的に止めるしかない。

 カインは異能(シギル)を切り替え、虚空の王(ベルゼブブ)へと切り替える。

「ごめんけど、足、切り落とさせてもらうよ」

 すぐさまユカリの後方に瞬間移動し、両足を太ももから切り落とす。

「あれ?」

 痛覚がないためか、それに気づかず一歩先へ踏み出したユカリがこてんと倒れる。断面からは白い骨がよく見える。

「うわぁ、でも無駄ぁ」

 にやぁと不気味に笑ったユカリは切断された両足へと断面から白い糸を伸ばし、何事もなかったかのように繋げる。

「人形は直せばいいんだよ」

「それ知らなかったなぁ。いやぁ恐ろしい」

 彼女の異能(シギル)は前々から知っていた。だが、カインの無名の巨匠(アラン・スミシ―)は知っている異能(シギル)を知っている用途で使うことができる。なので、知らないことはたとえその異能(シギル)自体を取得していたとしても使うことができないのだ。

 だが、切断もだめなら、物理的に縛ってしまえばいい。

 今度は異能(シギル)摩利支天(ハレーションゴースト)に変更し、二体の分身を出現させ、ユカリへと向かわせる。

 それをするりと体をくねらせてするりと回避する。明らかに異常な体のくねりを見せたが、関節を外しているのだろう。骨折していても攻撃を止めないところは、バーサーカーかのようだ。

「痛そうだなぁ。君のは知ってても使いたくないよ」

「そりゃ、アタシだから出来るからね。こんな芸当」

 伸ばした右腕を、カインは右側へ避ける。だがしかし、突き出した拳が追尾してきた。何事か、と一瞬困惑したが、すぐに理解した。

 肘が逆に折れ曲がっているのだ。ボキリと鈍い音が鳴るのも無視し、彼女はカインを仕留めるためだけに凶行に及んだのだ。

 回避しきれず、腹部に強烈な打撃をもらう。

「もらった」

 胃の中のものを吐き出しそうになるのを抑え、ニヤリと笑う。

 ユカリの右腕を腹部から突き出た二本の腕ががっちりと拳を掴んでいた。

 摩利支天(ハレーションゴースト)の応用技だ。分身を腕のみにさせ、皮膚から出現させる。

「今痛覚を戻したらどうなると思う?」

「そ、それは・・・」

 彼女の異能(シギル)の痛覚に関しては実験済みだ。異能(シギル)を解除した瞬間に全ての痛みが襲ってくる。時間経過によって弱まりはするものの、完全に消えるには、切断された場合三時間。棒によって貫かれた場合は一時間程。

 そして、カインの知る中には異能(シギル)を無効化する異能(シギル)も存在するのだ。果たして彼は今元気にやっているだろうか・・・否、それは関係なかったか。

「抵抗しないなら治してあげる。どうする?」

「わ、分かった。分かったからそれだけは止めて」

 先ほどまでの威勢ある表情はどこへやら。恐怖に怯えるユカリは左手を上げる。

 薬師恩寵(ヒーリンググレイス)で雑につなぎとめていた足、腕にぽっかり空いた穴を治す。

「あ、あんがと」

「いいよ~。僕たちは中立だからね。ユーリ。もう出てきてもいいよ。もし敵意を一瞬でも向けたら殺す準備は出来てるから」

「分かった」

 陰に隠れて終わりを待っていたユーリが顔を出す。

「カイン。怖い顔しないで」

「ごめんねぇ。ついつい頑張っちゃって」

 仮面で見えないはずの表情を指摘するあたり、どれだけ付き添ってきたかがわかる。

「さて、君はここに転送されたの?」

「そ、そうだよ。リングが目的なら、ほら」

「いや、リングはいい」

「は? これが優勝方法じゃないの?」

「それがね。そうだと楽だったんだけど、どうもそうじゃないみたいだ」

「どういうことだよ・・・」

「ま、君に話すなんて無駄なことはしないよ。じゃぁ、もう二度と会わないことを祈っているよ」

「アタシもだよ。アンタと戦うなんて二度と御免だね」

 びっと中指を立てたユカリはそのまま唾を線路上に吐きつけ、シブヤ駅を去る。

「さて、と。次の来客は・・・あぁ、厄介だな」

「あれは面倒。援護呼ぶ?」

「いいよ。リカとカオルはまだ休憩中だし、サツキはまだ関西に出てるでしょ?」

「・・・分かった。でも、怪我はしないで」

「あいよー」




 この二か月で日本は、世界は大きく変わりましたね。忙しない時期ではありますが、個々人がしっかりと守るものを守れば、防げます。
 私の日常は、色々と中止になったりと、憂鬱な日々を送っております。
 こんなご時世ですので、私のものだけではなく、沢山の小説を読んでみてください。
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