死に触れた大能力者は転生者   作:アステカのキャスター

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Prologue 目が覚めた世界線

 

 目が覚めると其処には『死』が存在した。

 

 見た事もない『死』が右も左も上も下も前も後ろも全てが頭に流れ込んでくる。このまま発狂死してしまいたいくらいの苦痛だ。だが、頭を抑えようにも手がない。足もない胴体もない顔も痛む頭も存在しない。

 

 いや、見えているこの視界すら側から見たら眼すら存在しないのかもしれない。

 

 ここはどこだ? 俺は誰だ? なんて最早どうでもいい疑問だった。

 

 オレには、地に足もついていなければ、浮いているという感覚さえない。何も分からない。何も無い。ただ苦痛が頭の中で暴れまわっている。

 

 意識も。時の流れも。全てが、消えゆく蝋燭のようで。

 

 靄がかった頭の中、感覚も何も無いというのに、堕ちているという事だけが、分かった。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

『…………ッ!?』

 

 

 目が覚めると其処は街だった。ただ、自分は立っていると言う感覚こそあるものの、姿は全く無い。俺はさっきまで会社にいた後に車に轢かれた記憶があり、それから思い出すだけで吐きそうな苦痛が頭の中に入り込んだと言う事だけだ。

 

 ただ、周りに見えているものが赤い線や点のように見える。それを見ただけで吐き気がする程気持ち悪い。吐く肉体は存在しないのに……いや、先ず問題は俺の体は存在していないと言う点だ。

 

 

『……この現象って……転生?』

 

 

 よくある異世界漫画には神様転生と言うのが存在するが、()()()()()とはどう言う事だ。スライムボディでもいいから欲しかったと先ず一つ。問題は其処じゃない。今()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 自分が仮に精神体だとするならば、俺は一体何だ? 

 

 それに、見えている赤い線や点は間違いなくアニメで見た事のある現象だ。それはTYPE-MOONの『空の境界』や『月姫』である主人公の特異な力。『直死の魔眼』と同じ風景が見えている。確か万物には『死』の綻びがあってそれが見える人間がなぞればどんな物であれ殺せる代物だった筈。正確には存在の意味を殺すだったか? 

 

 いや、そんな事よりもこの記憶はなんだ? 

 

 今の自分の名前は■■■■の筈なのに、全く知らない別の人間の記憶がある。まるで()()()()()()()()()()()()そんな感覚だ。

 

 

『……とりあえず俺がどうなっているかは正直どうでもいいが、この世界はいったい何なんだ?』

 

 

 TYPE-MOONの作品はどれも血生臭い物が多い。埋葬機関やら聖杯戦争やら色々と転生させられたら死ぬイメージが多い。と言うか肉体が無い以上サーヴァントや魔術師としての線は消えた。

 

 

『つまり、死んだ後の霊体なら幽霊って線で空の境界の可能性が高いけど、それやばく無いか? 式に殺された記憶があるんだけど』

 

 

 早くもバッドエンドの道筋が見えた。

 いや、違う。空の境界なら逆に俺が直死の魔眼を持つのはおかしい。神様がくれた特典(ギフト)なのかもしれないのに殺しに来たりはしないだろう。

 

 

『つまり……この世界はTYPE-MOONの世界じゃない? いや、そもそもアニメやラノベと同じ現象が起きてるだけでその世界線に居るって仮定する事が問題か?』

「う~い~は~るっ!」

 

 突如聞こえた掛け声と共に、その人影──中学生くらいの女子は花冠の同級生のスカートを勢いよく捲り上げた。

 花冠の同級生はしばらくの間現実を受け止められず、ひらひらとスカートが自由落下により元の位置に戻った頃、ぼんっと顔を真っ赤に爆発させ悲鳴を上げる。

 

 

「きゃぁぁぁああああ~~~~~~!!!!!」

 

 

 まるで痴漢に遭ったかのような鋭い悲鳴。

 流石にその事に驚愕した……いや、それ以上の事に驚愕している。

 

 

「なにするんですか()()()()いきなりなにするんですか!」

 

 

 顔をこれでもかというくらい赤面させてぶんぶん両手を振り回し不満をぶつけてくる花冠の女の子のリアクションに内心癒されながら、中学生くらいの女子は笑顔で応対する。

 

 

「いやぁ~相変わらず可愛いパンツだね♪ だけど()()、君の笑顔はもっと可愛いぜ♪」

「自分で捲っておいて何言ってるんですかぁ~~!!!」

 

 

 嘘だろ、と言いたいくらい現実は非常だ。

 ここはTYPE-MOONの世界ではない。電撃文庫作品でアニメ化が3期まであった超有名作。

『とある科学の超電磁砲』で登場する初春、佐天と言う名前、余りにも特徴が似過ぎていて間違いようがない。

 

 この世界は『とある魔術の禁書目録』だ。

 

 

 

「あっ、危ない!!」

 

 

 突如街を歩く人が上を見上げ叫んだ。それは工事中に支えていた鉄柱が風でバランスが崩れかかっている事だ。そしてその落ちる地点に居るのは……

 

 

『っっ!? クソッ!!』

 

 

 気付けば俺は走り出していた。

 いや待て、走った所で何になる? 肉体が無ければ誰も俺と言う存在を認識していない。そんな俺があの2人を助けられるのか? だが走っている足を止める事はしなかった。大地を踏み締めている感覚があるなら、物理的に考えれば俺は確かに存在している筈だ。突き飛ばすくらいなら出来る筈だ。

 

 

『間に合えっっ!!』

 

 

 突き飛ばそうとする手は2人には触れられない。

 それどころか、透過で擦り抜ける事も無く()()()()()()()()()()()()()がある。気が付けば俺の腕の感覚どころか足の感覚まで消えている。

 

 次の瞬間、視界が変わった。

 いや、正確には縮んで小さくなった? 

 さっきまで軽かった身体が重くなり、何か重石をつけたようだ。思わず俺は自分の姿を見る。

 

 そして見えた姿は()()()()()()と見知らぬ肉体が今の俺の姿と信じるまでに一瞬硬直した。

 

 

「両手が……」

()()()()!!」

 

 

 いや、今はそんな事どうでもいい。肉体がある以上死の線がなぞれる事と同義だ。死の線が見えているのは人間だけじゃない。空も、空気も、空間も存在するのであるならば……

 

 

「『直死』」

 

 

 死は線と点で見えるもので、強度を持たない。

「死の線」は存在の死に易いラインを表し、線をなぞり断てば対象がどんなに強靭であろうと切断される。 だがアレが降る前になぞるのは厳しい。なら、空間を切断したら一体どうなる? 

 

 何にもないものを切断する意味は本来ならないし、予想がつかない。だが、失敗して死ぬより失敗する前にやる価値くらいはある筈だ。

 

 俺はそのか細い腕で空間の死の線をなぞった。

 

 そして次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉄柱が消えた。

 

 

「『……はっ?』」

 

 

 一体どう言う事だ。何故空間を殺したら鉄柱が消えるのか理解が出来ない。普通に斬撃が飛んでいくかと思ったら鉄柱が一瞬で消えるってどう言う事? 

 

 

「『いや、助かったならいいか……』」

「佐天さん!!」

「『ぐはっ……!』」

 

 

 花冠の女の子、初春が飛びついてきた。

 すると俺も身体を制御していた感覚が消えている。目の前に佐天が初春に抱き付かれている。その衝撃で俺も佐天の肉体から抜けたらしい。

 

 今のは間違いなく憑依だ。今、佐天の身体に乗り移って『直死の魔眼』を使った。つまり、今の俺は精神体であり、念話能力で演算を補強するのと同じく、()()()()()()()()と言う事になる。

 

 いや、そんな事があり得るのか? 

 

 

「無事で良かったです……!!」

「ちょっ! 泣かない……ってあれ? 何が起きたんだっけ?」

 

 

 佐天は覚えていない。

 憑依された佐天には記憶が無いようだ。

 

 

『つまり、今の自分は精神体であって幽体離脱状態。しかも別人の記憶がある事から成り代わりに近いと推測できるな』

 

 

 記憶で分かる事はとりあえず四つ。

 一つ目が名前、俺の名前は黒羽式(くろはしき)と言うらしい。俺も全く理解出来ないが、俺は黒羽式の魂に乗り移り、成り変わった。ふっ、この時点で訳がわからん。

 

 二つ目が能力、俺の能力はLevel4の『AIM補強(リフォース)』と言うらしい。この能力は中々強いが、俺自身には意味があまりない。出来る事はAIM拡散力場を観測し、自身のAIM拡散力場から他者のAIM拡散力場に影響を与え、能力を向上させる能力だ。最大で無能力者のLevel0からLevel3まで上げたとか。やべーな黒羽さん。

 

 三つ目が俺自身は、■■■■は死んだ。そしてその後『とある魔術の禁書目録』に何故が存在している。

 

 四つ目が最後の記憶があやふやで唯一思い出せるのは金髪の女の子を助けた後、黒羽式は死んでいるのか生きているのかさえ分からないと言う事だ。黒羽式の記憶にある肉体が無いのは黒羽式も死んだかもしれないと言う事だ。

 

 

『しかし、黒羽式もヒーローになりたかったのか? この世界は一体どうなって……』

「だ、誰ですか? この声?」

『うん?』

 

 

 あれ? 聞こえてる? 

 いや、聞こえてるのは佐天さんだけだ。初春は全く分かってないようだし。試しに話してみるか? 

 

 

『……聞こえてるのか?』

「は、はい」

 

 

 おいおい、まさか。

 今の俺は霊体化したサーヴァントみたいなものなのか? 

 

 

『なるほど、一度憑依した人間にはパスが繋がるのか。いや魔力体って訳でも無いし、能力の副産物?』

「ど、どちら様ですか?」

『まあ……幽霊かな』

 

 

 神妙な顔をする佐天さんが居た。

 とりあえず、分かった事は今の俺は『とある科学の超電磁砲』のキャラに憑依擬きが出来る『とある魔術の禁書目録』の世界線にいる事だ。

 

 

 ────────────────────

 

 

異分子(イレギュラー)が見つかった、だと?」

「ああ、それも中々強大なものだ」

 

 

 学園都市の中枢────第7学区、窓の無いビル。

 

 内部に一切の照明が存在せず、しかし常人には理解の及ばないような複雑な演算を繰り返し、制御する大量の計器類が発する光が暗闇を薄ぼんやりと照らすようなそんな空間に、忌々しげな男の声が響き渡った。声の主は、場違いな印象を見る者に与えるだろうアロハシャツに身を包んだ金髪の男、土御門元春。彼は空間の中央────黄色く照らされた液体が入った巨大な生命維持装置ビーカーの中に逆さまになって浮かんでいる男に向かってそんな言葉を投げかけた。

 

 そしてビーカーの中に浮かぶのは、男にも女にも、大人にも子供にも、聖人にも囚人にも見える男、学園都市の統括理事長。アレイスター=クロウリー。

 

 対峙する2人の男は、宙空に展開されたモニターを見つめていた。

 

 この窓のないビルと同じ学区のどこかで繰り広げられている光景。

 

 

「しかし同時に愉快なものでもあるだろう。この程度ならプラン短縮のいい機会になる」

 

異分子(イレギュラー)に対して随分悠長な事を言うとはなアレイスター。一体何が異分子なのか俺には分からないが、それは放っておいて大丈夫なのか?」

 

「構わないさ。たかが1人の登場で世界が変わるならまだしも、1人では何も出来ない小さな存在さ」

 

 

 佐天涙子は無能力者だ。

 素養格差(パラメーターリスト)でも成長の見込みは無いはずなのに、彼女は鉄柱に対して『0次元の極点』をやって見せた。

 

 この世界においてn次元の物体を切断すると、断面はn-1次元になる。 3次元ならば2次元、2次元なら1次元。 ならば1次元を切断すると0次元になるはず、という理論を基礎とする。

 

 現在の所、0次元は誰にも観測できていないが、

 上記の理論に従うのならば、『1次元の点』を切断できれば引きずり出せる筈である。 しかし、現状では具体的な手段が存在せず、机上論となっている。あまりにも空想的な理論を実際にやってのけた。

 

 アレは3次元、2次元、1次元を全て殺した故に発生したバグ。本人には消えた理論さえわからないだろう。

 

 使ったのは佐天だが、恐らくその背中には()()()が存在する。アレイスターの中ですでに結論は出ている。

 

 

「『万物の死を読み取り、対象に死を与える力』か。ふふ、中々愉快な異分子(イレギュラー)が転がり込んだものだ」

 

 

 アレイスターは密かに笑った。

 





続くかは評価とコメント次第にします。
息抜き作品なので続くかは微妙ですがよろしくお願いします
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