死に触れた大能力者は転生者   作:アステカのキャスター

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続きました。第二話です。
作者の文才がね……畜生と言わざる得ないです。





連続虚空爆破《グラビトン》

 風紀委員一名が“爆弾”による重傷を負った。

 

 これは、それまでイタズラとされてきた謎のアルミ爆弾事件と同一犯と推定。

 風紀委員(ジャッジメント)は『連続虚空爆破(グラビトン)事件』として、犯人捜索を本格的に開始。

 

 書庫(バンク)による能力該当者は一名。

 彼女──大能力者レベル4の釧路帷子は、事件発生以前から原因不明の昏睡状態。鉄壁のアリバイがあった。

 

 こうして、風紀委員(ジャッジメント)は手がかりを失った。

 

 

 ────────────────────

 

 

「物騒な話だね……」

「そうなんですよ……しかも容疑者にはアリバイあり。事件は難航どころか手がかりすらないんですよ?」

 

 

 帰り道、初春と佐天が一連の事件について話していた。初春は風紀委員(ジャッジメント)である為、何の手掛かりも掴めなかったことに落胆する。

 

 

「(どう思いますか? 黒羽さん?)」

『……重力子(グラビトン)がアルミを爆弾に変えられる能力者1人だとすると、分からない。ただ、愉快犯って訳ではない気がするな』

 

 

 佐天の近くで欠伸をしながら会話していた俺こと黒羽式はどういう訳か佐天涙子から()()()()()()()()()()()()()()

 

 いや、正確に言うならサーヴァントのようにパスを繋いでしまった為、一度入った()()()()()()()()()()のかもしれない。多分。そこら辺は魔術の領域だ。詳しくは知らん。

 

 肉体による死が定着してしまったせいか、肉体に宿す魂が離れ離れになる幽体離脱的現象、更には仮初の肉体に乗り移り、死の魔眼であらゆる万物を殺せる存在。こんなものが居たらイギリス清教も頭を抱えるだろう。今、俺が正に存在しているけどな。

 

 佐天には『オカルト的な幽体離脱のせいで、一度乗り移って能力使ったら離れられなくなった』と言ったら、何と大喜びしていた。よくよく考えたら都市伝説好きだったこのJC。

 

 まあそれはさておき、犯人を知っているのにはぐらかした理由は、佐天に『幻想御手(レベルアッパー)』の存在を知って欲しくないからである。原作で、犯人の介旅初矢はLevel2の『量子変速(シンクロトロン)』だが、幻想御手(レベルアッパー)による、学習装置と言う名の代理演算の道具で、能力が向上した代わりに、意識を失った。

 

 原作通りなら佐天が幻想御手(レベルアッパー)に手を出して意識不明になる。今は俺が居るとしても身体の主導権は佐天にある。彼女の身体で原作改変なんてあまり無粋な事はしたくないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()な為、出来る限り明言しない方がいいのだ。

 

 憑依中の佐天の意識は、無いというか、何というか、夢の中にいる感じらしい。ただ夢と気付いた瞬間、主導権を総取りされて色々面倒、とだけ言っておく。まあ幻想御手(レベルアッパー)の事なんていつかはバレる。遠ざけておきたいし、もし手に入れちまったなら止めたいとは言え、能力を持つ俺が能力を持たない佐天に励ましの言葉を出した所で、って話だ。

 

 

『(……まあ、それ以前に素養格差(パラメータリスト)で格付けが決定されてる以上、救いなんてないんだけどな)』

 

 

 この学園都市では既に能力を得られるかの未来は決まっている。残念ながら佐天はLevel0のまま……いやちょっと待て? Level0の佐天があの鉄柱を消したアレって結構ヤバいんじゃねぇか? 滞空回線(アンダーライン)でアレイスターにバレている筈だし……。

 

 ……いや、気にしちゃ負けだ。どの道、黒羽式が学園都市で生きている以上バレる話だ。佐天の身体で使ってしまった以上、目を付けられても暗黙の了解な筈だ。上条当麻の様に放っておく事を祈るか。

 

 

『……佐天、事件を解決したいなら3つの事を覚えておけ』

「(事件について何か心当たりが!?)」

『違う。だが、事件の解決に必要なのはハウダニット、フーダニット、ホワイダニットだ』

「(はっ、はうだ……?)」

『……つまり、どうやって事件を起こしたのか? 誰が起こしたのか? どうして起こしたのか? って事だ』

「(えっと、犯人は能力でアルミを爆弾に変えたから……と、誰かは分からない。理由が愉快犯の仕業?)」

 

 

 能力は『量子変速(シンクロトロン)

 アルミを爆弾に変えれる能力者はLevel4クラスだが、アリバイがある為不可能。だから犯人は不明。

 

 なら目的は? 目的とはなんなのだろうか? 

 それがホワイダニットだ。犯人の動機は……

 

 

『最後のホワイダニットだけは別だ。何故起こしたのかと言うのは、必ず明確な理由がある。愉快犯って可能性も無くはないが、動機は話が別だ。犯人は何を狙っているのか? 犯人は何を目的としてそんな事をしているのか? ……さて、予想は?』

「(い、悪戯とか?)」

『残念、0点だ』

「(ええ……)」

 

 

 ガックリとする佐天。悪戯の理由を聞いているのに悪戯と答えてどうする。やはりこの世界では佐天さんは頭が少し悪いようだ。

 

 能力の差で劣等感を生むこの街は憎悪を生みやすい。この事件の答えを知っている俺も、黒羽式と言う存在もイレギュラーだ。

 

 実際には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それが俺、黒羽式だ。

 

 

 ────────────────────

 

 

 御坂と佐天と初春はセブンスミストへと歩いていた。

 働き通しの白井や初春に息抜きをと佐天と御坂が企画したが、白井は仕事が片付かず参加出来なかった。

 初春は『なら私も……』と自分も仕事をしようとしたが、白井が二人に悪いから初春だけでも参加してこいと送り出したのだ。

 

 

「そっか……白井さん、来れないんだ」

「ええ。でも、元気そうですよ。お土産を色々とリクエストされちゃいました」

「なら、こっちも目一杯楽しみましょう。そして、お土産持って支部へ陣中見舞いに行きましょうよ」

 

 

 そんな風にワイワイ騒ぎながら、セブンスミストへ入っていく一同。

 その中のある一点。初春の右腕の腕章を、介旅初矢が醜悪な笑みを浮かべながら凝視していたのを黒羽は気配で捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「初春~こんなのどう?」

「ひ、紐パン!? む、無理です! こんなの穿けるわけないじゃないですか!!」

「え~。でもこれなら、あたしにスカート捲られても恥ずかしくないんじゃない?」

「むしろ恥ずかしいですよ! ていうかそもそも捲らないでください!」

 

 御坂は佐天と初春のやりとりに苦笑しながら見守る。彼女達は女子中学生らしく全力でショッピングを楽しんでいた。佐天は凄くウキウキしながら初春をいじり倒している。それに欠伸する黒羽。ぶっちゃけ物欲や性欲とか身体が無いから特に無い。

 

 最近、初春が風紀委員(ジャッジメント)の仕事で忙しくて寂しかったのかもしれないのを見た佐天が初春を構い倒していた。

 

 

「あ、そういえば御坂さんは何か探し物はあります?」

「え、そうねぇ……パジャマ、とか?」

「それならこっちですよ!」

 

 

 佐天が御坂に尋ねると、初春が話の矛先を変えるべく、我先にとパジャマ売り場へ先行する。

 

 

「色々回ってるんだけど、あんまりいいのが置いてなく……て……」

 

 

 御坂の目がある一点で止まる。

 そこには、なんていうか、その、かわいいを極めたようなピンクに花模様の、対象年齢が幼そうなパジャマがあった。小学6年生くらいが着るような幼さ満点だが、御坂の目が輝いている。すでに心を鷲掴みにされていた。

 

 

「ね、ねぇ! これ、すごくかわ──」

「うわぁ~、見てよ初春このパジャマ。今時こんな子供っぽいの着る人いないよね~」

「小学生の頃は着てましたけど、さすがに今は……」

「そうよね! うん! 中学生にもなってこれはないよね! うん!」

 

 

 現役JCのまっすぐな意見にちょっと泣きそうになりながらも、必死に合わせる御坂JC。それを見た黒羽は若干笑いつつも、僅かばかりの焦りがあった。

 

 かつて……いや、物語の中で第二位の垣根帝督は言っていた。『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。もし、イレギュラーとして俺が物語(げんさく)を変えてしまったら、この事件は一体どうなるのか。

 

 

『佐天、ちょっといいか?』

「(はい? 何ですか黒羽さ──)」

『ホワイダニットの理由を白井に電話して聞いてくれないか?』

「(……えっ?)」

『頼む』

「(わ、分かりました)初春、悪いけどちょっとトイレ行ってくる」

「はい、これ買いに終わったら三階の洋服店に居ますね」

 

 

 本当なら答えを知っているが、佐天に憑依した時に起きる原作のズレ。佐天に憑依出来る以上、ある程度は自分で何とかしたい欲求はあるが、危険は早めに排除しときたかった。

 

 

 

 一方で……

 

 御坂はまだこのパジャマから目を離せなかった。

 

 

(……いいんだもん。パジャマなんだし、誰に見せるわけでもないんだから)

 

 

 誰も聞いてないのに心の中で必死に弁明しながら、横目で佐天達の様子を確認し、素早く手に取り姿見で合わせる。

 そこには、自分以外にツンツン頭の少年が映っていた。

 

 

「何してんだ、ビリビリ?」

「ぬわっ! な、なんでアンタがここにいんのよ!?」

 

 

 思わぬ所で2人はエンカウントしていた。黒羽的には見たかったのは有るが、それ以上にこの後について色々考えていた。

 

 

 ────────────────────

 

 

 本来なら必要はない。

 だが、自分が関係してしまって、もしヒーローと言う存在がその場に居なかったら? と考えてしまう。上条当麻に接触はしていない以上、原作は崩壊する事はないと思う。だが、万が一が怖い為、俺は答えを促すしかないのだ。

 

 

「(それで……事件についてですよね)」

 

『佐天、前の答えは変わったか?』

 

「(……復讐……とかですか?)」

 

『その心は?』

 

「(分かりません……けど、必ずしも誰か怪我してるから……ってもしかして、特定の人を狙ってたりします?)」

 

『80点やろう。答えは白井に聞いてみろ』

 

 

 佐天は白井のいる177支部に電話をかける。

 何故か嫌な予感がする。見逃したら一生後悔するような気がしてならない。若干の焦りが有りつつも177支部の番号を入力した。

 

 

『もしもし、風紀委員(ジャッジメント)ですの』

 

「白井さん! もしもし、佐天です」

 

『佐天さんですの? ああ約束の件は申し訳ありま──』

 

「例の連続虚空爆破(グラビトン)事件! 何か共通点とか有りますか?」

 

『はあ? 何を言ってますの? 共通点?』

 

「ホワイダニット! 犯人が事件を引き起こす理由ですよ! 例えば、狙われた人が全員同じ学校の生徒とか! 同じ学区とか、怪我した人達全員に共通するものです!!」

 

 

 どのようやったのか(ハウダニット)誰かやったのか(フーダニット)書籍(バンク)を調べれば、分からないものではない。能力さえ分かれば、誰がやったのかは芋づる式で出てくるからだ。

 

 だが、もしそれが判らなかった場合は別方向から調べるのだ。何処でやったのか(ウェアダニット)何時やったのか(ウェンダニット)、から動機。何故やったのか(ホワイダニット)を見つけるのが定石、それが事件を解く鍵だとロードエルメロイII世が言っていた。

 

 先生マジかっこいいです。一生大ファンです。

 

 

『共通するもの……? そんなの有る訳……あっ!? それですわ!! 事故の中心地にいる人には必ず風紀委員(ジャッジメント)が怪我を『白井さん! これ! 衛星が重力子の爆発的加速を観測したって!!』──っっ!?』

 

「……えっ?」

 

『佐天さん、時間がありません!! 今から言う事を良く聞いてください!! ついさっき衛星が次の爆発の予兆を感知しましたわ! 場所は──』

 

 

 そして、その予感は現実となる。

 狙いは風紀委員(ジャッジメント)。そしてその標的(ターゲット)となった存在は、

 

 

『今貴方が居る第7学区──セブンスミストですの!!』

 

 

 友達(ういはる)が危ない。

 気が付けば佐天は既に走り出していた。

 

 

 ────────────────────

 

 

「白井さん! 避難警告は出したんですか!?」

『もうやってますの!! 初春が狙いなら必ず犯人は何かしらの爆発物を渡してくる筈です!! 佐天さんも避難警告に従ってください!』

「そんな事言ったって初春が……!!」

 

 

 佐天も今回ばかりは焦っていた。

 いや、この事件の狙いが風紀委員(ジャッジメント)と分かった以上、この場所で狙われる標的は初春の可能性が高い。

 

 黒羽は佐天に爆弾が何なのかを伝えた。原作知識には確か……

 

 

『おい佐天!! 女の子の持つぬいぐるみ!! 多分アレが爆弾だ! あんな人形、あの子は持ってなかった!!』

「白井さん! 爆弾っぽい物を見つけました!!」

『なっ……!? 佐天さんそこから離れ』

『そのまま走れ!! 俺が処理する!!』

 

 

 佐天は電話を切って女の子に向かって走っていった。

 黒羽の魔眼なら可能な筈だ。重力子の加速もアルミの存在の意味を殺せば、爆破は起きない。

 

 

「出来るんですか!?」

『可能だ! だから身体を貸せ!!』

「はい!」

 

 

 佐天の中に何か不思議な感覚が駆け巡る。

 瞳は黒目から蒼くなり、見える景色の至る所に線や点がありふれて見える。佐天自身の意識は一瞬無くなり、主導権が黒羽に変わる。

 

 

「『っ! 後で返すから借りるぞ!!』」

 

 

 百均のカッターナイフを取り、ぬいぐるみの少女を探す。

 さっきの女の子は初春を探しにエレベーターで下に向かった。避難警告から避難誘導は大体終わった。本来なら上条(ヒーロー)の出番かもしれないが、ここまで事件に首を突っ込んだ以上、後戻りは出来ない。

 

 二階を走り回っていると、初春の声が聞こえた。そして、その近くにいる女の子のぬいぐるみが変化し始めた。初春がその子の人形を持って後ろに投げた。

 

 

「逃げてください! あれが爆弾です!」

 

 

 今の佐天の位置は初春達の反対側、初春は佐天に気付けずに爆弾も此方に投げ、今の佐天には上条の背中の防衛ラインに入る事が出来ない。普通に避けようとした所で爆破に巻き込まれる。ならやる事は決まっていた。此方に投げてきたのなら好都合。

 

 ––––爆破される前にアレを殺す。

 

 

「『直死』」

 

 

 万物には綻びがある。

 それは生きている物、存在している現象、法則、理論にさえこの眼には通用しない。物理現象による爆破、重力子の加速によるアルミ材の爆破。なら、重力子もアルミ材も存在する意味を殺せば……!! 

 

 

「佐天さん!?」

 

 

 視える死の線は少し青く、そしてやや黒みを帯びている。

 それを黒羽はカッターナイフで強くなぞった。その瞬間、青くなった死の線がぬいぐるみから消失した。

 

 

「『悪いな。–––––夢の終わりだ』」

 

 

 ぬいぐるみは安物のカッターナイフで切れたとは思わないくらい綺麗に解体されバラバラになった。中に入っていたアルミ製スプーンの重力子の加速は殺され、爆弾としての機能は消え去っていた。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 介旅初矢は路地裏で呻いていた。

 

「なぜだっ! なぜ爆発しなかった!!」

 

 これまで、数回を重ねその度に威力を調べていた。

 元々は異能力者(レベル2)だった介旅だが、胡散臭さがありながらも試した()()()()を使い始めて以来劇的な成長を見せ、今や大能力者(レベル4)の中でも上位の出力を誇るまでになっていた。

 

 前兆がわかりやすいこともあってこれまでは重傷が関の山だったが、今回こそは死人の出るほどの威力を発揮できる。前は入院させるレベルまでの力を発揮した。だから今回はそう確信していたのだ。

 

 だというのに、ここにきての不発。こちらに手落ちがなかった以上、何者かの邪魔が入ったとしか考えられなかった。待てど待てど爆発は起こらず、ついに標的の花飾りの風紀委員(ジャッジメント)は爆弾を持たせた少女と共に無傷で建物から姿を現した。

 

 

「ありえない! ありえない! 次だ! 次はもっと威力の高い奴を! この力で無能な風紀委員(ジャッジメント)も! あの不良共も!! みんな、みんなまとめて──」

 

 

 ドガッ! っと吹き飛ばされた。正確には蹴り飛ばされた。

 無様に地面に全身を打ち付けた介旅は、状況を理解できず蠢く。顔を上げると──そこに居たのは、

 

 

「『要件は、言わなくても分かるよな? 爆弾魔』」

 

 

 片手に切断されたスプーンを持ち、佐天の身体でニヒルに笑う黒羽だった。アレは介旅がぬいぐるみに入れたスプーンだ。それを見た介旅は怒りに震えた。

 

 

「お前か! お前が、お前が僕の邪魔を……!!」

「『おいおい、爆弾なんだぜ? 使われたら他の人達巻き込むだろう。だから解体するに決まってんじゃん』」

「ふざけるな!! そんな理由で僕の邪魔を──!」

 

 

 元凶を前にした介旅は一瞬で激昂した。

 解体するなんて簡単じゃない事だ。重力子の加速を止めるなんて同型等の能力か、それ以上の力で対処し無ければ不可能だ。己の能力に軽々と対処できることになるのだが、怒り狂った介旅は思い至らない。

 

 

「するなぁ!!!」

 

 

 カバンからアルミのスプーンを取り出し、大きく振りかぶる。そのまま目の前の邪魔者を抹殺せんと力強く投げ放つが、黒羽はそれを意にも介さないでため息をついた。

 

 向かってくる爆発寸前の投げられたスプーンの死の線をカッターナイフでなぞる。それだけでスプーンは容易く切断され、重力子の加速も消え去っていた。

 

 

「…………はっ?」

「『お前の能力、アルミを爆弾に変えれるけど、複数を爆弾には出来ないんだろ? 仮にもチートを使ったLevel4クラスだ。視えた色は少し汚いが、有象無象のヤツよりマシだ』」

「……何を、何をしたんだお前は!?」

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけだ。いや、殺しただけってのはおかしな話か』」

 

 

 苦笑いしながらも黒羽は続けた。

 重なったイメージを元に、介旅に死が視える眼で見据えていた。

 

 

「『万物には全て綻びがある。人間は言うに及ばず、大気にも意思にも、時間にだってだ。俺の眼はね、そう言ったモノの死が視えるんだ。だからおまえが使った重力子の加速もアルミであったスプーンの性質も斬り殺せる。スプーンの強度もナイフの切れ味すら関係なくな』」

 

 

 それは殺意。

 黒羽式が持つ魔眼がヤツを殺したいと言う思いで埋め尽くしている。にも関わらず、その殺意は冷淡で冷酷な程、次の自分を()()()()()()と言う芸術的なナニカを感じてしまっている。

 

 それは余りにも美しく、冷酷な殺意だ。

 それを見せる黒羽は介旅を見ていない。介旅より上の()()()()()()に真正面から啖呵を切った。

 

 

「『だから、俺が存在している限り、

 

 ──生きているのなら、神様だって殺してみせる』」

 

 

 カッターナイフを構えて真正面から宣言した。

 その眼はもはや介旅を見ていない。眼中にすらない。脅威とも思われなければ、有象無象の1人と決めつけて見下されている。

 

 

「いつもこうだ……何をしても……何もしていなくても……こうして僕は、いつも地面にねじ伏せられるっ」

 

 

 介旅はゆっくりと起き上がり、黒羽を渾身の力で睨みつける。

 黒羽は動じない。気にも留めない。コイツにはそんな価値すらないと言わんばかりに。

 

 

「殺してやるっ……お前らはいつもこうだ! お前らはいっつもそうだ!! ジャッジメントも同じだ! 力のあるやつは……みんなそうだろうが!!!」

「『お前の能力の劣等感なんて関係ない。お前が狙ったのは()()()()()()だ。これ以上、コイツの友達に手を出してみろ。次は四肢を殺して標本にしてやる』」

 

 

 その殺意が介旅に向けられる。

 それだけで呼吸が止まる。殺意を向けていたナニカ以外、黒羽は眼中に無かった。だが、その殺意が本格的に向けられると自分の死を明確に悟り、冷や汗が止まらない。身体は情けなく震えて恐怖で身体も動かせなければ声も出せない。

 

 

「『まあ、この後は風紀委員(ジャッジメント)の仕事だしな。俺が手を汚すまでも無い。だが……』」

 

 

 黒羽は拳を握り締めた。

 殺しはしない。佐天の身体でそんな事をする様な殺人鬼ではない。魔眼から流れる殺人衝動を抑え込みながらも、苛立ちを隠さずに拳を振るった。

 

 

「『これはコイツの友達を狙った八つ当たりだ。お前がやってきた事を存分に痛感しやがれ、この大馬鹿野郎』」

 

 

 黒羽の拳が介旅の頬に鋭い痛みを残し、背を向けてセブンスミストに戻っていった。介旅はただ呆然としていた。あの殺気に当てられて、まるで世界が変わったかの様だ。

 

 あの殺気を向けていたのは誰だったのか。

 

 介旅は知る由もない。

 




無能力者だった少女に乗り移った1人の青年。
物語の歯車は徐々に別の方向へと狂い始めるかは、今は誰も知る術は無い。


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