型月知識が多いです。
オリ主って頭いいんだね、と書いてる自分でも思っちゃいました。
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では行こう!!
「37.3度。まぁ微熱だけど、今日一日はおとなしく寝てな」
「すみません、佐天さん。……ゴホッ、ゴホッ」
「あ~いいから、いいから。じっとしてなって」
ここは初春の寮の部屋。初春は顔を赤くしてベッドに横になっている。そこに学校帰りの佐天が薬を届けがてら様子を見に来たのだ。
因みに御坂も白井もお見舞いにこの部屋にいた。白井に関しては単なる現状報告もあるのだが、白井も色々疲れており小さなテーブルに伏していた。
「昨日あんなことがあったから。疲れが一気に出ちゃったのかもね」
「…………佐天さんが私のスカートを捲ってばっかりいるから、冷えちゃったんじゃないんですか?」
「いや、そこは初春の親友として、毎日パンツを穿いてるか心配で」
「穿いてますよ! 毎日!」
「あはは、分かってるから病人は寝てなさい」
「今、冷たいタオル用意してあげるからさ」
母親のようにテキパキと家事をする佐天。
動いていると、佐天自身の身体に違和感が生じている。感知出来なかったものが感知出来るようになった気がした。正確には自身の周りに何かが動いていると言うナニカ。身体がいつもより感受性が高くなって、まるで見えない鎧みたいなものが身体を覆っているようだ。
『……AIM拡散力場の同調、もしくは変質って所か』
「(変質?)」
『詳しくは調べないと分からん。だが、佐天の『
「(じゃ、じゃあ! もしかしたら私も能力者になれるんですか!?)」
『演算出来なきゃ無理に決まってんだろ。だが、自分の発せられる拡張範囲が広まったって事は、ある程度なら感知程度は出来るかもな』
と言うか、それを逆に言うなら
じゃあこの場合は?
『(早く今の俺の現状を調べてみないと如何にもならん。だが、肉体は死んでるわけじゃない。脳が稼働している以上、元が存在する筈だ)』
今の俺は何処かの病院か、研究所か。
能力もAIM拡散力場に干渉出来る滝壺の上位互換だからかなり希少である。補強出来るって事は、妨害する事すら出来る。能力系統関係なく直接干渉出来る能力、それが俺の能力だ。
病院も研究所も、合わせて学園都市には300は超えているだろう。どう見つけ出すか……
「そういえば佐天さん。私も佐天さんに聞きたい事があったんだけど、
「あ〜、何というか。能力を借りてるって言うか」
「能力を借りてる?」
「まあ、とある事情で能力者の意識が私に乗り移っちゃって、そこから能力を引っ張り上げる……みたいな」
出来る限り、俺の事は伏せている。
佐天は普通の女の子だし、男の意識が常時ついて回るとか言ったら犯罪臭がするし。結局のところ対処法として思い浮かぶのは上条の幻想殺しくらいだ。
「そんな事が可能なんですの?」
「実は……私も
「はい。構いませんけど……」
はっ? 何で言ったこの子。
微かに視える? それってまさか……次の言葉を聞くまで全く理解出来なかった。佐天が使った言葉は……
「直死」
佐天の瞳は僅かながら青色を帯びていた。
佐天はペットボトルを軽くなぞると、ペットボトルは刃物で切れたかのように綺麗に切断された。
間違いない。今佐天は直死の魔眼を使いやがった。しかも意識の入れ替えはなく、微かに視えた程度かもしれないが、これは間違いなく
「なっ!?」
初春は驚愕する。
佐天はLevel0の無能力者だ。それは近くにいた初春が一番知っていたが、今のは間違いなく能力を使っていた。
「……佐天さんの能力って切断系統の能力? 分子レベルの粒子切断か念動力か……いやでもなぞっただけで切断出来る能力って」
「あはは……えっと、使い手が言うにはどんな物体にも死が存在していて、使い手にはそう言ったモノには綻びがあって、その綻びが線や点で見えるらしいんです。それをなぞると対象の存在している意味を殺せるって」
「存在している意味を殺す?」
白井は頭を傾げる。
存在に死を与えると言うのは、生きているものが存在している意味を無くすと言う事だ。
「簡単なので例えるなら御坂さんは磁力で鉄を操れますよね? けど、私が殺した鉄と言うのは鉄の硬さは残っても鉄だと言う性質そのものは意味が殺されてるから磁力で操れない……らしいです」
「なっ……!? 聞いた事無いんだけどそんな能力!?」
当然、学園都市の
直死の魔眼はこの学園都市以前に、この世界に来てから手に入れたものだし。いや待て、むしろバレるリスクを考慮しても、この世界の黒羽式と言う人間を調べるチャンスじゃないか?
『黒羽式、それで調べてもらえ』
「白井さん。
「黒羽式……ですが興味本位で
「えっと、黒羽式。Level4の能力者で能力は『
「ちょっ!? お姉様!!」
勝手にハッキングしている!?
それでいいのか
「病院の場所も不明。一体何処にいるんですの?」
「補強……確かにそれなら辻褄は合うし、居場所も不明ってのが怪しいわね」
『ちょっ!? 俺が犯人候補にされてねぇ!? 冤罪だ冤罪!! そもそも、俺は何故か佐天から離れる事が出来なくなったってのに他の能力者の補強なんて一々出来るか!!』
「あはは……まあ黒羽さんは犯人じゃないですよ。私が保証します」
「まあ昏睡状態の人が他人のレベルを上げるのは現実的ではありませんの。佐天さんのあの能力も正直理論的には理解出来ませんし、佐天さんの能力が
「多重能力者……ねぇ」
まあ今の佐天は考えてみれば多重能力者だ。
直死の魔眼にLevel0の
『とりあえず佐天、ソレはお前が使うな』
「(えっ、何でです────っっつ!?)」
佐天が頭を抑える。
頭の中で棘が刺さって動いているかのように激痛が走る。御坂や白井に気付かれないように顔を軽く顰めただけにしたのは佐天の根性と言うべきか。
『直死の魔眼は視える死に対して脳が保たない。俺は例外があるから大丈夫だが、お前の場合は脳にダメージが行きかねない。てか使っただけで頭痛がするだろ』
型月の『月姫』の遠野志貴と同じ。
直死の魔眼の視える線や点が多い程、脳に多大な負担がかかる。これは、もともとの佐天には死を見るだけのスペックを持たないためである。
「(ち、因みに黒羽さんの時平気だったのは?)」
『俺はそもそも死に触れ続けてる存在だぞ? 身体を得ても死に触れ続けたまま、だから俺は
「(凄い痛みました……)」
『お前は微かに見えたらしいけど、本来なら非生物を殺す事は出来ない。非生物の線や点が見えるほど使うと、今みたいに頭痛が走る。人間や生物に対してならまだしもな』
「(人間なら平気……っ、それって!!)」
『死に触れる俺と繋がってるからお前は俺の直死の魔眼を使えてるに過ぎない。これは本来、人を殺す事以外には対して役に立たない能力だ。だから慣れちまえば人間の価値観が一気に崩れる。自覚しとけ』
殺人衝動。
この眼を持つ限り、死の概念から生じる一種の強迫概念。いや、正確に言うなら『型月』の両儀式や七夜志貴の抑え込まれた殺意とは違う。死の概念を与える黒羽式にとって
故に死を与える事に躊躇はないが、佐天の身体である以上、一定のラインを超えないようにしていた。
だが、張った境界に佐天は踏み込み始めた。
それは自覚したら最後、価値観や倫理観が崩壊し、殺人鬼と変わらない。人を殺す事に何の躊躇もしない存在になってしまう可能性がある。
早く、黒羽式の所在を調べないとな。
……と言うかどうでもいい事かもしれないが、
俺の立ち位置妖精化した魔神そっくりだな。
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佐天は自宅でネットサーフィンを行っていた。
御坂や白井はあのカエル顔の医者との面会だそうだ。何でも
「はぁ。見つからないなぁ~。
『使用した奴等は例外なくぶっ倒れるけどな』
「……えっ? ま、マジですか?」
『マジだ』
本気で躍起になって探していたわけではない。
だが、やはり気にはなった。
やっぱり自分自身が能力者になりたかった。能力も借り物でしかないし、自分が使おうとすればデメリットになる。
そのぐらいの軽い気持ち。
黒羽式がいつかは居なくなるのかもしれない。そうなれば自分は逆戻り、無能力者というコンプレックを抱えたまま生きていくしかない。
「はぁ。なんか新曲でも入れようかな」
そう呟きながら、音楽ダウンロードのサイトを開く。
特に目当ての曲がなく、無意味にカーソルをグルグル動かしていると──。
「ん?」
不自然な箇所で、色が変わった。
「隠しリンク?」
『ちょっ、それってまさか!?』
黒羽も驚愕していた。
クリックする。すると、ページが変わり、真っ黒な背景に白の角ばったフォントで、こうあった。
TITLE:LeveL UppeR
ARTIST:UNKNOWN
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佐天は気分が良かった。
希望が漸く手に出来たのだ。それに黒羽は何も言わなかった。それは佐天が無能力者のコンプレックを抱えていた事を知っていたから。手放せなんて口に出来なかった。
丁度初春と街を歩いていると、白井と御坂ともう1人がファミレスで話している所を目撃し、その話に混ざる事になった。
「へぇ~。脳の学者さんなんですかぁ~…………はっ! まさか、白井さんの脳に何か問題が!?」
「
初春と佐天は白井達と同じテーブルに合流した。
席順は、奥から白井、御坂。対面に佐天、木山、初春といった感じだ。佐天は
「
「黒子が言うにはどうやって
「……え?」
ジーパンのポケットから音楽プレーヤーを出そうとした佐天の手がピタリと止まる。所有者の保護、それはどう言う事なのか。
「え? どうしてですか?」
「
「それに、使用者が容易に犯罪に走る傾向もみられるし、常盤台の眉毛事件に、
佐天は、先程までの笑顔を固まらせ、ゆっくりと音楽プレーヤーをポケットに戻す。出したくても出せなかった。少しだけ、少しだけでも見つけた希望なのだから……
『…………』
「ん? どうかしたの佐天さん?」
「い、いえ、なんでもないです!」
御坂に話を振られ、焦った佐天は自身が注文したコーラを、木山の太腿に零してしまう。黒羽は珍しく黙ったままだ。
「ん?」
「ご、ごめんなさい!!」
「ああ。気にしなくていい」
そういって木山は迷わずストッキングを脱ぎだす。
「ちょっ!?」
『そういや脱ぎ女か。この人』
一切の躊躇無く、と言うか恥ずかしがる素振りすらない。いっそ清々しいが、こんな場所で脱がれたら露出狂に見える。白井は全力で止める。
「だから! 人前で脱いではいけませんって言ったでしょうが! どうしてあなたは──」
ガミガミと、白井による木山への説教はしばらく続いた。
佐天はただ、少しの罪悪感に蝕まれたまま、白井が木山先生に対する説教の声も聞こえていなかった。
「え~、本日は色々教えていただきありがとうございました」
「いや、こちらこそ教鞭をふるっていた頃を思い出して、楽しかったよ」
「教師をなさっていたんですの?」
「……昔ね」
その時、木山は眩しいものを眺めるような、だけど少しもの悲しい表情をしていた。黒羽は事情を知ってはいるが、特に何もしないし、何も出来ない。佐天涙子はこの物語では被害者であり、道を踏み外した人間だ。今の黒羽には『
結局、木山は皆に微笑みかけると、颯爽と去っていった。
その時、初春がふと気づく。
「あれ? 佐天さんは?」
────────────────────
その時、佐天は皆と離れ、裏道を走っていた。
音楽プレーヤーをぎゅっと、胸に抱いて。逃げるように裏道を駆けた。
「(やっぱり手放したくない……まだ使った訳じゃないし、みんなに言わなければ……いいよね)」
そう自分に言い聞かせて、好きな人や親友達に明かさないことを正当化する。ただの言い訳に過ぎないという自覚はあるけれど、それでも手放したくない。それが今の自分の最後の希望なのだから……
「(黒羽さん……
『……AIM拡散力場、要は能力者から発生している微弱な力を合わせる事で、脳にある種のネットワークを構築する事で自分の『
「(副作用……って倒れた人が居るって)」
『最初は大丈夫かもしれない。だが慣れてしまえば、脳が特定の動きしかしない廃人になり、意識を失う。それが
やはり使うのに躊躇してしまう。
黒羽の言っている事は本当だ。理論も分からない佐天でも、黒羽が嘘を言った事は無い。信用できる人間だからこそ、コレを使えば黒羽の言った通りの結果になってしまう。
唇を噛み締めた。どうすればいいのか。
「佐天さん!」
呼び掛けられた佐天が振り返ると、そこには御坂がいた。
とっさに音楽プレーヤーをポケットに突っ込む。やっぱり、まだ見つかって欲しくなかった。
「御坂さん……どうして?」
「だって急にいなくなるんだもん。……どうかしたの?」
「なんでもないです! なんでも!」
佐天は御坂と目を合わせられない。
でも、声だけでも明るくしようと努める。空元気でも、自分は大丈夫って伝えて誤魔化そうとする。まるで道化だ。
「だって、アタシだけ事件とか、関係ないじゃないですか。…………
皆の力になれるような能力もないし、居る意味さえ無い。と、心中で呟いて、ポケットから手を出し、両手を広げて気楽さをアピールする。その笑顔はどこか痛々しい。
あの時の力も結局は借り物でしかない。
すると、ポケットからお守りが落ちた。
「あ」
御坂が拾って手渡す。
「それ、いつも鞄に付けてるやつよね?」
「…………はい。学園都市このまちに来る前、母に持たされました。……お守りなんて、科学的根拠ゼロなのに」
それは、明るい希望に満ちていた、現実を突き付けられる前の、無知な頃の記憶。佐天が学園都市に入る前の記憶が鮮明に蘇る。
『姉ちゃん、超能力者になるのっ!? すっげぇ!!』
『お母さんは今でも反対なのよ……頭の中を弄るなんて……』
『はっは。母さんは心配症だなぁ』
母親の優しい顔と、優しい言葉が蘇る。
あの時はまだ何も知らなかった。ただ、この場所で現実を知って、それでも足掻いて、どうしても諦めきれなくて……
『なにかあったらすぐに帰ってきていいからね。──あなたの体が一番大事なんだから』
御坂は、そんな話を聞いて、微笑みながら言った。
「…………優しいお母さんじゃない」
佐天はそれに苦笑で応えて。
自分が抱えていた思いを包み隠す事なく。
「──でも、その期待が重い時もあるんですよ。…………いつまでも、
佐天の言葉に、御坂は言う。
それが辛かった。期待されていたのに、努力しているつもりだったのに、ハードルは一歩目にして飛び越えるどころか、前にさえ進む力すらない。期待されていたのに、自分は期待に応える事すら出来やしない。
「レベルなんて、どうでもいいことじゃない」
だが、今の佐天に、
自分には手に出来なかった能力を持っているのに、自分は頑張っていない訳じゃないのに、今までの努力もしてきた意味さえも崩れてしまった。
無価値で無意味で、レベルが上がる事すら期待されない無能。反則してでも手に入れたかった力を手に出来なくてもいい、と。それでも……それでも諦めきれなかったのに。
笑っていう御坂に、佐天は笑い返せなかった。
踵を返して御坂に背中を向ける。
『レベルなんてどうでもいいこと』なんて、努力して、必死で努力してレベル5になった人の言葉とは思えないほど皮肉めいていた。
たったそれだけの言葉かもしれない。それでも足掻いて、諦めきれなかった普通の少女の心を折るには充分過ぎた。
佐天涙子の精神はその一言で崩れ去っていた。
パァン!!
その時、目の前に居た御坂の頬を自分は引っ叩いていた。
「……えっ?」
御坂もいきなり叩かれた理由が分からなかった。
ただ、佐天自身も分からなかった。自分と言う殻に閉じ籠もりたいと思ったその時、佐天の心の悲鳴に反応して、表に現れた存在が居た。
「『……レベルなんて、どうでもいい、か。随分と無神経な事を言うじゃねえか。
泣きたかった。
泣いてしまえたらどれほど楽なのだろう。
けど、それでも。
それでも自分を肯定してくれる人が欲しかった。
自分は頑張って能力を手に入れたいと分かってもらえる人間が居てくれたら、どれほど幸せだったのだろう。
その想いを踏みにじりかけた人間に対し、佐天の『理解者』が立ち上がった。
「『お前は人の心が分からないみたいだな。
────────
それがきっと、歯車が狂い始めた時だったのだ。
惨めな自分が嫌で、けど頑張っている自分を支えてほしかったと嘆く少女に、立ち上がる1人の存在が居た。
ただ、それが歯車を壊す事になろうとも知らずに。