雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 ついにあのスキル【???】の正体が……!?


十二話 冒険者登録

フレイヤがいるのは珍しいことに『バベル』の最上階ではなく、本拠地(ホーム)の神室だった。彼女の手にある羊皮紙に書かれているのは、新たな彼女の眷属の【ステイタス】。

 

 

 

 レイン

 

 Lv.9

 

 力:G254

 耐久:I32

 器用:E461

 敏捷:E441

 魔力:F389

 

 狩人:A

 対異常:A

 魔導:B

 治力:C

 精癒:C

 覇気:D

 剣士:D

 逆境:I

 

 《魔法》

 【デストラクション・フロム・ヘブン】

 ・攻撃魔法。・詠唱連結。

 ・第一階位(ナパーム・バースト)。

 ・第二階位(アイスエッジ・ストライク)。

 ・第三階位(デストラクション・フロム・ヘブン)。

 

 【ヒール・ブレッシング】

 ・回復魔法。

 ・使用後一定時間、回復効果持続。

 ・使用時、発展アビリティ『幸運』の一時発現。

 

 【インフィニティ・ブラック】

 ・範囲攻撃魔法。

 ・範囲内の対象の耐久無視。

 ・範囲はLv.に比例

 

 《スキル》

 【???】

 ・成長速度の超高補正。

 ・ステイタス自動更新。スキルのみ主神による更新が必要。

 ・???????

 

 【竜之覇者(ドラゴンスレイヤー)

 ・魔法効果増大、及び詠唱不要。

 ・ステイタスの超高補正。

 ・魔法攻撃被弾時、魔法吸収の結界発現。一定量で消滅。

 ・精神力(マインド)回復速度の超効率化。

 

 【竜戦士化(ドラゴンモード)

 ・任意発動(アクティブトリガー)

 ・竜人化。発動時、全アビリティ超域強化。

 

 

 

 初めてフレイヤがレインのステイタスを見た時、耐久以外の能力値(アビリティ)はそれぞれ100~200は低かった。それがたった数日で恐ろしいほど高くなっている。異常すぎる成長速度。

 

 だが、フレイヤの目を引き付けるのは能力値(アビリティ)やLv.ではなく、一つのスキル。それはレインの『魂』を輝かせたいフレイヤにとって、最も重要な項目だった。

 

 

 

 【憎己魂刻(カオスブランド)

 ・成長速度の超高補正。

 ・ステイタス自動更新。スキルのみ主神による更新が必要。

 ・効果及び詠唱を完全把握した魔法の模倣(コピー)。魔法効果は自身の魔力に比例。

 ・自身への憎悪が続く限り効果持続。

 

 

 

 同じ魔法を持つ者が二人以上いることはまずあり得ない。魔法は本人の在り方を表しているようなもの。だからこそロキの所にいる【千の妖精(サウザンド・エルフ)】は反則(チート)と言ってもいい存在なのだ。同胞(エルフ)限定とはいえ、他者の魔法を行使できるのだから。

 

 それ以上の効果を持つスキル。どれほどの憎しみを持てばこれだけのスキルが発現するのか、フレイヤには分からなかった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 時刻は昼。冒険者はダンジョンに潜っているか、ご飯を食べているかで、ギルドにはほとんど人がいなかった。そんな中、ギルド職員の興味は、一つの窓口に引き付けられていた。その窓口には新たに冒険者になろうとする人物がおり、冒険者になるための書類に羽ペンを走らせている。

 

「――書けた。冒険者登録を頼む」

「はい。かしこまりま……した?」

 

 ギルドの窓口で受付をしていたハーフエルフ、エイナはマニュアル通りの対応をしようとして動きを止めた。原因は自身の手元にある登録申請書。そこに書かれている情報がオカシイ。

 

 名前はレイン。種族はヒューマン。年齢は彼女と同じ十八歳。字はミミズがのたうち回っているのかと思うくらい汚かったが、そこまでは別に問題ではなかった。問題は次からだ。

 

 所属ファミリアは【フレイヤ・ファミリア】。もし、都市外でLv.を上げていた人だった場合書いてもらうことになっている欄に書かれているLv.は――――――()。ファミリアの名前も重要だったが、その後の数字の方が重要過ぎた。

 

 顔を上げて目の前の人物を見る。ところどころが跳ねている漆黒の髪。いたずらっぽい光がちらついている黒い瞳。その顔には緊張とは無縁だと言わんばかりの不敵な笑みが浮かんでいる。背は椅子に座っているエイナが見上げなければならないほど高い。

 

 もう一度書類を見る。もしかしたら2を5と見間違えたのかもしれないし。いや、きっとそうだ。そんなことを考えながらLv.を見ると――やっぱりLv.5.

 

 次の可能性として高いもの。目の前の男が読み書きが得意ではなく、間違って5と書いた可能性。だが、男は書類を渡す際、「読み書きはできるか」と尋ねると「問題ない」と答えた。実際、名前などはちゃんと書けている。

 

 エイナの中で残ったのは二つの答え。一つは目の前の男が本当にLv.5で正直に書いたこと。もう一つは男が自分をからかうつもりで書いたこと。少しの思考時間を挟んで選んだのは後者。

 

 エイナの常識、というか世間の常識では都市外でLv.5まで上げるのは不可能。Lv.5やLv.6を生み出すことができるのはオラリオだけだから、強くなろうとする者はオラリオにやってくるのだ。それに目の前の男からは誠実さが感じられない。

 

 そんなわけでエイナは新たな書類を取り出し、目の前の青年――レインに差し出す。いくらかの圧を含んだ声も添えて。

 

「レイン氏。もう一度書き直してくれませんか?」

「なんでだ? どこか間違っていたところでもあったのか?」

「ありました。それはもう凄い書き損じが」

 

 そう言って細い指先が示すのはLv.の欄。それを見たレインは一つ頷き、一から記入し直していく。再び渡された登録用紙を受け取ったエイナは――その額に青筋を浮かべた。Lv.の欄には無駄に綺麗に記入された『5』があった。どうやらこの男、意地でもこの嘘を続けるつもりらしい。

 

 エイナは後で書き換えておこうと心に決め、笑顔で腰を曲げた。

 

「今日から貴方は迷宮都市の冒険者です。これからの活躍に期待しています」

「ああ、期待していろ。この天才が打ち立てる偉業に腰を抜かさないようにする準備もな」

 

 この日、ギルドの職員の間でレインのあだ名は『早死に野郎』になった。エイナは呼びこそしなかったものの、それを止めることをしなかった。彼女もレインが早死にすると思っていたから。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 翌日。エイナは昨日冒険者を舐め切った発言をした男と一緒に面談用ボックスの中にいた。理由はダンジョンの知識を教えるためである。

 

 腹立たしい男ではあるが、関わった人が死んでほしいとエイナは思わない。この男を死なせないためにも――ついでに鬱憤を晴らすためにも――多くの冒険者に鬼畜(スパルタ)と恐れられるエイナの座学を受けさせるのだ。レインの意志は関係なかった。というかレインはダンジョンに行こうとしたら、「座学を最低限受けなければ、ダンジョンに入れさせない」と無理やり連れて来られた。

 

 レインの恰好は冒険者登録をした時と変わらなかった。ただの黒一色の服に腰に差してある長剣一本。防具は全くない。そこそこの大きさの背嚢を背負っているが、エイナからすればダンジョンをどれだけ馬鹿にしてるのかと言いたくなる恰好だった。

 

 とりあえずレインに持ってきておいた分厚い教本の内の一冊を渡す。Lv.5を自称するなら『深層』の項目まで覚えてもらう。そして冒険者がどれだけ大変なのか身をもって知ってもらうのだ。

 

「本日から貴方のアドバイザーを務めさせていただくことになりました。エイナ・チュールです。今日からよろしくお願いします」

 

 分厚い教本を無表情で読み始めた男に、エイナは笑みを浮かべた。

 

 

  

 

 

 

 

 およそ数時間で『上層』から『深層』の地形や出現するモンスターの特徴まで覚えられることを、エイナはまだ知らない。

 




 レインの態度って知らない人から見れば、冒険者を舐めているようにしか見えないよね。もしくはやられ役とか。主人公に絡んで、あっさり負けたりするタイプの。


 エイナの年齢は一つ下げました。今の時系列は原作開始の数か月前なので、まだ十九歳になっていないだろうと作者は思いました。


 レインがLv.5と記入しているのは、Lv.9とか記入すれば面倒なことになると思ったから。Lv.5なのは『深層』まで潜っても問題ないから。

 ここからはレインは「青年」扱いになります。理由としては心機一転。軽い態度が大人に見せるという皮肉。今までは静かすぎて大人びた子供に見られがちだった。

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