雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 進むごとに文が雑になっている気がする……。だれか文才を恵んでくれ。

あと目が痛いので、一週間くらい連載が止まるかも。


十四話 異端児

「すまなかった! てっきり同胞を殺した奴だと勘違いしちまった」

 

 現在、レインは異端児(ゼノス)達から謝罪を受けていた。リド曰く、同胞の遺品を見た時、レインのことを同胞を攫う奴らの仲間だと思い、自分達のことも攫いに来たと考えたらしい。

 

 他にも地上に自分達の味方をしてくれる者がおり、そいつが自分達の『隠れ里』に来る人間がいれば連絡をくれるらしいのだが、今回は連絡がなく、そのこともレインが自分達に敵対する人間だと思った原因のようだ。

 

「リド、謝ル必要ナドナイ! ソイツガ同胞ヲ殺シテイナイトイウ証拠モ、奴等ノ仲間デハナイトイウ証拠モナイダロウ!」

 

 今も石竜(ガーゴイル)のグロスなどはレインを警戒するように睨みつけ、毒づいた言葉を投じている。彼等は今まで人間に何度も裏切られ、人間を信用できなくなっているのだ。むしろ、今もレインに友好的に接しようとしている異端児(ゼノス)の方が危機感がなさすぎるのか……

 

 他者からの負の感情に敏感なレインはグロスの心情を察し、甘んじてその誹りを受け止める――ようなことを今のレインがするわけない。今のレインは(オス)にキビシイ。

 

「黙れこの石頭が! もし俺がお前等を攫う奴らの仲間だったとしたら、見た目がいい奴を除いて皆殺しだ! お前等が誰一人として殺されていないことをよく考えてから喋れ、ハゲ!」

 

 グロスの特徴を捉えた的確な暴言を投げ返す。これはレインにとって苛立ちに任せて声にした言葉だったが、『一匹』ではなく『一人』と数えていたことは異端児(ゼノス)にとってはとても嬉しいことだった。グロスも言い返そうとしていたが、そこに気付き押し黙る。

 

「確かに石頭だ」「石頭だな」「グロスは頭が固い」「毛もないからハゲだな」「言い返す隙がない」『ボエボエ(そうだそうだ)

「貴様ラアァァァァァァ!!」

 

 照れ隠しのように自分の悪口を口にする同胞を追い回す。その光景を見て留飲を下げたレインは今も頭を下げている蜥蜴人(リザードマン)に、顔を上げさせる。

 

「お前らの事情も事情だし、殺しに来たことはもう気にしていない。ただ、俺がお前らに敵対する意思がないことを理解してもらいたい」

「分かった。――なぁ、これから『レインっち』って呼んでもいいか?」

「気が抜けるから却下だ」

 

 冗談のつもりだったのか真剣だったのか分からないが、リドの提案をバッサリ却下する。肩を落として露骨にがっかりした蜥蜴人(リザードマン)だったが、レインに向き直り獣の眼を弓なりに細める――本人は笑っているつもりだが、獲物を前に舌なめずりしているようにしか見えない。

 

「オレッちは、リド。――レイン。握手」

「これでいいのか?」

 

 自己紹介とともに、怪物の手を差し出す。それをレインは怯えも躊躇いも見せずに握り返す。リドはその雄黄の双眸を瞬かせる。

 

「……え? レイン、オレッちの手を握るの早すぎないか?」

「時間をかけてほしかったのか? それとも怯えてお前の手を振り払った方がよかったのか?」

「……い、いや、そうじゃねぇけどよ……」

 

 『怪物』は自分の手を握っている『人間』の手を見つめる。これまで自分達と対面して手を振り払った人間はたくさんいた。握ってくれた人間も僅かにいたが、終始怯えたままで自分の意志というより、恐怖に突き動かされてといった様子だった。

 

 初めてだった。自分達に嫌な目を向けず、真っ直ぐに向き合い、欠片も恐怖を見せない人間に出会ったのは。レインの手から顔へ視線を移し、まじまじと眺めていると、レインが露骨に顔をしかめた。

 

「おい、いつまで手を握っているつもりだ。俺はあっちにいる綺麗な歌人鳥(セイレーン)になら手を握ったり顔を見つめてもらってもいいが、(オス)にされるとムカつくんだが」

「えェッ!?」

「レインって(おとこ)に対して扱いがひどすぎないか!?」

「俺が公平無私と縁があると思うなよ。……とりあえず、よろしくな」

「! ――ああ、よろしくな!」

 

 顔をしかめた理由にリドは思わず吠え、歌人鳥(セイレーン)は頬を赤く染める。だがその後の言葉にリドは牙を剝いて、確かに破顔する。

 

 

 

 

 

 次の瞬間――わっっ!! と。

 

 

 

 

 

 まだ姿を隠していたモンスター達や、リドとレインの周りで固唾を呑んで見守っていたモンスター達が歓声を上げた。あらゆるモンスター達の喝采が止まらない。

 

 まるで人との親交を――記念すべき一歩を喜ぶように沸き立った。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「レインって強すぎだろ。フェルズには【フレイヤ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】には気をつけろって言われてたけど、そいつらもレイン並みに強ぇのか?」

「そんなわけないだろ。俺は間違いなく世界最強。オラリオの冒険者全員が攻めてきても無傷で勝てるね」

 

 広間(ルーム)では『宴』が開かれていた。振る舞われるのはダンジョン産の果実や木の実に薬草、ボロボロの酒樽だ。先程までレインは多くの異端児(ゼノス)に握手を迫られ、ようやく一息ついているところだ。そこに話しかけてきたのはリド。

 

 自分達が異端児(ゼノス)と呼ばれていることやギルドと協力していること、つまり自分達がどのような存在なのかをレインに話し、特に喋ることがなくなるとレインの強さに関しての話になった。

 

 傲岸不遜に自分を指さし、堂々と宣言する。ちょっと前なら冗談だろうと笑ったかもしれないが、あの戦いぶりを見せられれば笑えない。この集団で一番強い自分がボコボコにされたのでなおさら。

 

 レインはすぐにこの集団に馴染んでいた。まだ警戒して近づかない異端児(ゼノス)もいるが、他の異端児(ゼノス)には気に入られている。それの理由はきっと、レインが彼等に全く恐れを見せないからだろう。

 

「レインに怖いものとかあるのか? ここにいるのはレインを除けば皆『怪物(モンスター)』なのに全く怖がらないし」

「はっ、俺に怖いものなんて存在しない。精々口うるさい女や料理が下手な女が苦手なてい……ど……」

「どうしたんだ、レイン?」

 

 急に黙り込んだレインを心配するリド。それに答えずレインは急いで背嚢に手を伸ばし、中から時計を取り出す。ダンジョンに入る時十二の数字を刺していた短針は変わらず十二を刺している。

 

 秒針が動いているためこの時計は壊れていない。レインは覇気(アビリティ)異端児(ゼノス)を探しながらも、各階層を念入りに探し回っていた。おまけにここでの戦いも長引いた。

 

 つまり……時計の短針が一周、もしくは二周回るほどの時間は優に過ぎている訳で……。レインの頭に目の笑っていないハーフエルフのギルド職員が浮かび上がる。

 

「すまん、リド。俺は帰る!」

「急にどうした? フェルズに会わせようと連絡しちまったし、まだレインに言っておきたいことが――」

「また今度な!」

 

 蜥蜴人(リザードマン)の呼び止める声を振り払い、レインは姿を消した。レインの頭の中は、急いで戻らなければあのハーフエルフから長ったらしい説教を受けることになる! という思いでいっぱいだった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 上る。上る。上る。

 

 レインは全力で走る。18階層の一番大きい結晶が明るかったことを見なかったことにして走る。進行方向に現れたモンスターをすれ違いざまに魔石を切り裂き、灰に変化させながら走る。

 

 一時間と掛からず、5階層にたどり着く。ここからは下級冒険者も多いため、Lv.5程度の速さで走る。Lv.9の速さでLv.1の隣を通り過ぎれば、それだけでLv.1の冒険者は死にかねない。

 

 最短距離を走り、4階層へ続く階段が姿を現す。階段の方から金髪の剣士と山吹色の魔導士がやって来る。特に気にすることなくレインはその横を通り抜けようとする。

 

 金髪の剣士の横を通ろうとした瞬間――銀のサーベルがレインに迫ってきた。 

 




 レインはフェルズにまだ会わない。


 18階層の大きな結晶は地上と連動している。明るければ地上は朝。


 レインの苦手なのは料理のできない女、口うるさい女、人の言うことを聞かない女。つまりどっかの酒場の看板娘は苦手ということに……。


 Lv.9とかになると、音速になるんじゃないだろうか? Lv.2でも10メートルの距離を一瞬で潰せるし。


 最後の金髪の剣士……いったいヴァレン何某なんだ……!?

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