黒い戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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PCがくっそカクつく


19話 いろいろアブナイ

 【ディアンケヒト・ファミリア】からギルドへ向かうと、『エイナさん、大好きー!!』という大声が聞こえてきた。それを叫んだらしき白髪の少年がレインの横を通り過ぎ、街の雑踏へ消えていく。何だったんだ、あいつ……。

 

 

 ギルドの出入り口にはエイナが顔を真っ赤にして立っている。

 

 

「エイナ、なんだその学区に入ったばかりの奴が告白されたみたいな反応は?」

「っ、レイン君!? 気配を消して近づくのはやめてって言ってるでしょ!」

「そんなことしてないぞ。俺の接近に気付けないくらいあの白髪の子供に好きと言われたのが嬉しかったのか?」

「ち、違うよ!? 単にあんなに真っ直ぐに好きって言われたことがなくて、びっくりしただけだから! 本当だから!」

 

 

 その反応が誤解を招くのだが……それに突っ込む者は誰もいない。顔をまだ赤くしているエイナは受付に戻り、その後ろをレインがついていく。

 

 

 ちなみに二人はかなりの注目を浴びている。ギルドでの人気ナンバーワンの受付嬢であるエイナと第一級冒険者のレインが一緒にいれば、自然と視線を集めることになる。慣れているので二人は気にしない。

 

 

「で、あの白髪(しらが)はなんでお前に告白することになったんだ?」

「あれはあの子が私をからかっただけだから! だってあの子――ベル君はヴァレンシュタイン氏の事を好きになってるし……」

 

 

 一瞬、あの男、二股してるのかと思ったがどうやら違うようだ。

 

 

「アイズを好きになった? 確かにあいつは見た目はいいがそれ以外がダメだろ。絶対に料理とかできないぞ。それに中身はクソガキだしな」

「クソガキって……レイン君はヴァレンシュタイン氏のこと嫌いなの? いつも綺麗な女の人がいるお店には必ず入るくらい、女の人が好きなのに」

「あいつ、俺を見るたびに睨みつけてくるし、近づけば本気で斬りかかってくるんだぞ。そんな奴、好きになる方が難しい」

 

 

 何もした覚えがないのに何度も斬りかかられれば、さすがのレインも辟易とする。一応、謝罪の手紙のような物は受け取っているが、レインはアイズとなるべく関わらないようにしている。

 

 

「本当に何もしてないの? 君、やたらと【ロキ・ファミリア】の人達から嫌われているじゃない。特にエルフの人達から」

「それに関しては思い当たるふしがあるが、アイズはそれに関係してないぞ。そもそもアイズは俺と初めて出会った時から斬りかかってきた」

 

 

 未だにアイズがレインを嫌う(?)理由が分からない。【ロキ・ファミリア】に尋ねに行こうにも、『あの』出来事があるため門前払いになるのがオチだ。下手すればオラリオ中のエルフから命を狙われることにもなっていたからな……。

 

 

「俺が嫌われているとかはどうでもいい。それより『上層』にミノタウロスが現れてた。おそらくどっかのパーティが逃がしたんだろうが、一応報告しておく。あと、ミノタウロスは始末しておいたぞ」

「……ねえ、そのミノタウロスがいたのは5階層?」

「そうだ。何か問題でもあるのか?」

「え、え~っとね――」

 

 

 エイナはベルがミノタウロスに襲われ、殺される寸前でアイズに助けられたことを話す。それに対するレインの反応は、

 

 

「配役が逆だろ。というか血まみれにされておいてよく好きになったな」

「ア、アハハ……あの子は素直過ぎて思い込みが激しい所もあるし、好きになっちゃったから血まみれにされたことなんて気にしてないと思う」

「それにアイズは間に合ってない。俺が仕留めてなかったら、あのガキは今頃ひき肉になってるところだ」

「レイン君、そのことを絶対にベル君に教えないでね……」

 

 

 勘違いで好きになったとかベルが知ったら、恥ずかしくて死にそうになるだろう。知ったとしてもアイズを嫌いになることはないだろうが、少年の名誉のためにエイナは釘を刺しておく。

 

 

「ベル君の話はここまで! レイン君は魔石の換金をするためにギルドに来たんでしょう。一緒に換金所まで行こうよ」

「………………………ぁ…………」

「あれ? そういえばレイン君、ダンジョンに潜るときにいつも背負ってるバックパックがないけど、どうしたの?」

 

 

 ……少女(アミッド)の言葉を聞くことができなくて、それを誤魔化すように依頼(クエスト)の品以外に、魔石やドロップアイテムも入っているバックパックを押し付けたなんて言えない。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「とっくにこちらで換金させてもらいましたよ。昨日気付いたところで戻ってきていれば問題ありませんでしたが!」

「いや、あのやり取りをしておいてすぐに戻るとか、気まずいにも程があるだろ」

「そうですねっ、私のお願いに『もちろんだ』と頷くこともせず曖昧に濁して、一日経ってからやって来る方が気まずいと思いますけどね!」

「……とりあえず、換金した分をくれないか?」

「どうぞ!」

 

 

 時刻は朝の九時を回ったころ。【ディアンケヒト・ファミリア】にバックパックとその中身を返してもらおうとやってきたのだが、入った途端アミッドの人形のような表情が微かに変化した。精々眉が吊り上がったくらいだが。

 

 

 棘のある言葉と一緒にカウンターに置かれるのは複数の万能薬(エリクサー)精神力回復薬(マジック・ポーション)、及びレインのバックパック。怒っているのに回復薬(ポーション)を叩き付けないところがアミッドの治療師(ヒーラー)としての矜持が垣間見えるが、

 

 

「できれば現金をくれた方がいいんだけど……」

「ご安心を。全部換金してその半分が用意した回復薬(ポーション)です。残りの半分は貴方の望み通りにしてあります」

「俺に回復薬(ポーション)は必要ないんだけどな……」

「何か文句がありますか!?」

 

 

 アミッドがギロリという音がしそうな目でレインを見る。勝手に金の使う用途を決められたことに思うところはあるが、彼女の想いも分かるため文句は言わない。今は結構な額の金が必要なのだが、またダンジョンに潜ればいいかと考えをまとめる。

 

 

「アミッド……お前は笑っていた方が美人だと思うぞ」

「今は笑う気分ではないですね。誰のせいで笑えないと思いますか?」

「それは――」

 

 

 適当にはぐらかそうとしたが、店の外におぼえのある気配を感じて商品棚に身を隠す。入ってくるのは有名派閥の少女達。アマゾネスの双子は別にいい。嫌なのは金髪の剣士と山吹色の妖精……!!

 

 

「いらっしゃいませ、【ロキ・ファミリア】の皆様」

「アミッド、久しぶりー」

 

 

 胸囲が主神に似ているアマゾネスがアミッドに手を上げる。その行動に大体の人間の意識があつまった瞬間、レインは音もたてず外へ出る。

 

 

「ん? 今、ドア開いた?」

「気のせいではないですか?」

 

 

 勘の鋭い第一級冒険者は振り返るが、アミッドに言われてそっかー、と納得する。

 

 

 ただ一人、金髪の少女は何かを感じ取ったかのように目を細めていた。




 レインがかっこよく助けていたら、ベルクンはどうなっていたんだろう? エイナさんは無意識に知り合いがボーイズなラブにならないようにとおもったのかも?


 エルフ云々に関しては近いうちに書きます。

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