黒い戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 今回はレインが下手したらオラリオ中のエルフに狙われたかもしれない理由が分かります。ネタ回です。


 レフィーヤって、残念なところがありますよね。人の話を聞かないとか。


22話 残念な妖精

 ダンジョン6階層。レインのいる正方形の広間の中央部には多種多様の『ドロップアイテム』が転がっており、その『ドロップアイテム』に囲まれるようにして白髪の少年――ベルが倒れている。全身傷だらけで、気を失っていた。

 

 

 レインはベルがダンジョンに入る前に追いついていたのだが、鬱憤を晴らさせるためにも止めなかった。怒りに身を任せて6階層に突っ込んだ時には、「こいつ、やっぱり馬鹿だ」と自暴自棄な行為をするベルの評価を下げた。

 

 

 このまま放っておけばモンスターに襲われ死ぬだろう。正直なところ、レインはベルが死のうが知ったこっちゃない。ダンジョンは常に死と隣り合わせ。非情と言う者もいるだろうが、友人でも何でもない少年が死んでもどうでもいいのだ。

 

 

 それなのに気配を辿ってまでベルを追いかけたのは、ベルの事を気にかけているエイナや、酒場でベルを追いかけたシルが悲しむだろうと思ったからだ。彼女らの存在がなければレインはここにいない。感情に振り回されて死にに行く馬鹿を助けるほどレインは聖人ではない。

 

 

 ――というわけで、アミッドに強制的に買わされた高等回復薬(ハイ・ポーション)を乱雑に振りかける。それだけで少年のすべての傷は瞬く間に治った。治療すれば目を覚ますかとベルの様子を見るが、瞼も指もピクリとも動かない。

 

 

 仕方なくベルを荷物のように担ぎ上げ、バベルの医療施設まで連れていく。職員に自分が運んだことを伝えないように頼み、とある書き置きと一緒にベルを引き渡した。

 

 

 レインの肩でぶらぶら揺れているベルを見て、職員は頬をひきつらせていた。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 ベルを医療施設に送り届けた二日後。新たな武器である《紅閻魔》に慣れるためダンジョンで丸一日、モンスターを灰に変えまくったレインは目立たぬよう路地裏を歩いていたのだが、

 

 

「結局、ヒューマンのお店の服が一番似合ってるねー」

「ごめん……他の服が似合わなくて……」

「いえいえいえっ、アイズさんは謝らなくていいんですよ! それに他の服も抜群に似合っていましたし、一番似合っているのがその服だってティオナさんは言ったんです!」

「入り口の前で喋るのはやめなさい。他の客が入れないでしょうが」

「あー、そうだね。――あれ? この人、あの狼をひっくり返した人じゃない?」 

 

 

 ちょうど通り過ぎようとした服飾店から、すんごく見覚えのある四人組が出てきた。逃げる間もなく双子のアマゾネスの妹の方に補足される。つられるようにして他の三人もレインに視線を向ける。

 

 

「あぁーーー!!! 畏れ多くもリヴェリア様のらたぶっ!?」

「周りに人がいるところで何ぶちまけようとしてんだ、お前は」

 

 

 レインを見るなり目を吊り上げたレフィーヤが、指をレインに突き付けながらとんでもないことを叫ぼうとする。何を叫ぼうとしたのか察したレインは、リヴェリアの名誉を守るために右手に握っていた薙刀をレフィーヤの頭部に振り下ろした。

 

 

 ガツンッ! という鈍い音がした。レフィーヤは頭を押さえ、涙目になる。

 

 

「あ、頭がっ、頭が割れるように痛いっ!? なんてもので殴るんですか!」

「やかましい! 考えなしに馬鹿な真似をしようとしたお前を止めてやったんだから文句言うな、むしろ感謝しろ愚か者め!」

「武器で殴る必要はないですよね! 口を押さえるとかじゃ駄目だったんですか!?」

「止めるついでに酒場での胸糞話の鬱憤を晴らしておこうかと」

「ベートさんにやってくださいっ!」

 

 

 出会って十秒もしないうちに始まるヒューマンとエルフの醜い言い争い。それに終止符を打ったのは、

 

 

「店の前で喧嘩すんなぁ!!」

 

 

 腹が減って少しイラついていた双子のアマゾネスの姉だった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 落ち着いて話そうよー、というティオナの提案の下、レイン達五人はカフェの丸テーブルに座る。レインの隣にはティオナとティオネが座り、その隣にアイズとレフィーヤが座る。

 

 

 いつもレインを睨みつけてくるアイズは無表情で机を見続け、レフィーヤは隠そうともせずレインに怒りの視線を向ける。基本的に笑っている後輩エルフの怒りに、双子のアマゾネスは困惑していた。

 

 

「レフィーヤ、結構前からエルフの団員と一部の男性団員がレインを敵視してるけど、どうしてなの?」

「あたしも気になって聞いてみたけど、だーれも教えてくれなかったんだよねー」

 

 

 ティオネとティオナの疑問に、レフィーヤはどす黒いオーラを纏いながら俯く。第一級冒険者をビビらせる圧力のせいで周りから客はいなくなった、

 

 

「……たんです……」

「え~っと? 小さくて聞こえないんだけど……」

「リヴェリア様の裸体を見やがったんです」

「……本当に見たの?」

「確かに見たが、わざとではないからな。リヴェリア本人には許してもらっているのに、それをこいつらが勝手に騒いでいるだけだ」

 

 

 ティオナの確認にレインが肯定すると、レフィーヤは机を叩き、

 

 

「じゃあその後抱きしめたのもわざとじゃないって言うんですか!?」

「あれはお前らが我を失ってリヴェリアごと巻き込む魔法をぶっ放したせいだろ……」

「聞く耳持ちません! たとえ命と引き換えにしてでも、今ここで貴方に天誅を下します!」

 

 

 護身用に持ってきていた杖を構え、詠唱を始めた。足元に魔法円(マジックサークル)が展開される。このエルフ、本気(ガチ)だ。

 

 

「レフィーヤ落ち着いてぇ!? お店の中で魔法は使っちゃだめだから!」

「後生ですティオナさん! この変態真っ黒ヒューマンに天誅を下すのを止めないでください!」

「レフィーヤ……お前らのやってることはリヴェリアの恥をバラまいているようなものだからな?」

「ウガァアアァアアァアアアアア!!」

 

 

 本当に魔導士なのかと思うほどの力でレフィーヤが暴れる。気を抜けば振りほどかれそうになる力に、ティオナは割と必死でレフィーヤを抑え込む。

 

 

「あ、リヴェリアの抱き心地はよかったぞ」

「キシャアアァアアァアアアアアッッッ!!!」

「挑発してんじゃないわよ! レフィーヤがモンスターみたいな顔になったでしょうが!」

 

 

 笑いながらのレインの言葉にレフィーヤの力がより強まっていく。もうエルフどころか女の子がしてはいけない形相を見て、ティオネがキレ気味になった。

 

 

「じゃ、俺は帰るぞ。店に迷惑料は払っておくから、頑張ってそいつを宥めるんだな」

「おいコラ逃げんなてめぇ!」

 

 

 一人店の出口に向かうレインにティオネの罵声が投げつけられるが、ヴァリス金貨の入った袋を店員に渡したレインは足を止めることなく出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、レフィーヤを止めたのはアイズの抱擁だった。止めるのに一時間近くかかり、彼女たちはこのカフェを出入り禁止になった。




 ティオナはレインの名前をしっかり覚えていませんでした。


 アイズがレインに突っかからなかったのは、ベルに逃げられて落ち込んでいたから。


 リヴェリアの裸を見ることになったのは、18階層天井付近のクリスタルを回収する依頼を受け、クリスタルを回収して飛び降りたら、水浴びをしていたリヴェリアのいる水場に着地。


 ティオナやティオネがこのことを知らなかったのは、エルフの団員が他の団員に話そうとしなかったから。

 一部の男性団員が知っている理由? なんでだろうね?


 

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