雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか 作:柔らかいもち
これからもよろしくお願いします。
『
年に一度、闘技場で【ガネーシャ・ファミリア】が行う催し。迷宮から連れてきた凶暴なモンスターを【ガネーシャ・ファミリア】の
ギルドが企画するこの催しは問題視する者も多いが、これを見るために都市外から足を運ぶ者がいるほど人気でもある。
今年のオラリオ名物の祭りはどうなっているのかというと――
『ウオオオオオオオオオオオ!?』
大盛況だった。基本的に大観衆の拍手や喝采が万雷のように鳴り響くのだが、今回は都市東端に築き上げられた
闘技場内のアリーナには漆黒の衣装を身に纏い、顔を仮面で隠している男がいた。その男の傍にはすっかり大人しくなった全長十
「あれどう見ても
「いや、あの竜はダンジョンの産まれね。
「ガネーシャのとこに、あんな凄い人いたんだねー」
Lv.4相当の竜種のモンスターを手懐けた男の手並みに、ティオナとティオネが素直に舌を巻く。
「ただでさえ成功率は低いのに、こんな大舞台で成功させちゃうあの人は誰なんでしょう……?」
レフィーヤは「ブラック仮面様ー!」「俺のファミリアに来てくれー!」「最後に素顔を見せてほしい!」という声援を浴びて退場していく男を見つめる。どこかで見た覚えがあるその後ろ姿に、彼女は【ガネーシャ・ファミリア】のメンバーの顔を思い出そうとしていたが、
「さっきから【ガネーシャ・ファミリア】の連中が慌ただしいわね。何かあったのかしら?」
「あ、やっぱりそう思う?」
第一級冒険者達が何かしらの非常事態が起きていることを感じ取り、観客席から立ち上がる。それについて行こうとするレフィーヤは、もう
♦♦♦
「捕獲していたモンスターが逃げ出した?」
「ああ、何者かによってモンスターが外に出された。逃げ出したのは九匹。中には『深層』のモンスターもいる。急いで鎮圧して欲しい」
木竜を手懐けた謎の凄腕
レインが
「お前等の所の団員が見張っているはずなのに、なんでモンスターが逃げ出すことになるんだよ?」
自分が正体をバレないようにしているとはいえ、衆人環視の中で『スキル』の力を使ってまで目的を達成しようとしているのだ。それを邪魔する行為をあっさり許した団員に対する苛立ち交じりにシャクティを見ると、
「団員達は何らかの手段で再起不能に
レインの脳裏に『欲しい子ができちゃった♪』と可愛く微笑んでいた
「既に【剣姫】が殲滅に移っているから、お前には彼女のいる場所とは反対側を捜索してもらいたい」
「わかった。とは言っても、アイズがいればもう全滅して――」
そこまで口にしたところで地面が揺れ、何かが爆発したかのような轟音が響いた。
♦♦♦
「アイズ、魔法を解きなさい! 追いかけまわされるわよ!」
「でも……」
「一人一匹くらい何とかするって!」
ただならぬ様子を察して闘技場の外に出たティオナ、ティオネ、レフィーヤは居合わせたロキから詳しく事情を聞き、先にモンスターを殲滅しにかかっていたアイズが討ち漏らした時のために備えていた。
討ち漏らすどころか的確にモンスターを屠る金髪の少女に、三人が手持ち無沙汰になりかけている時、
現れたのは顔の無い蛇、と形容するのが最もふさわしい黄緑色の長大な怪物。そのモンスターの危険性を肌で感じたティオナとティオネは急いで始末しようと渾身の一撃を叩き込むが、あっさりと阻まれる。
並のモンスターならば素手だろうと肉体を破砕する第一級冒険者の攻撃を、凄まじい硬度を誇る滑らかな体皮は僅かばかり陥没するのみで耐えきり、逆にティオナ達の手足にダメージを与えてきた。
魔法で狙い撃とうとしていたレフィーヤは腹部から血を流し、倒れ伏している。今は食人花の姿になっているモンスターの『魔力』に反応する性質によって、狙い撃たれ腹部を触手で貫かれたせいだ。
間一髪のところで急行したアイズがレフィーヤに襲い掛かろうとしていた食人花の首を断ち切り、エルフの少女の命を救ったが、アイズを取り囲むように三匹の食人花が現れ、追い打ちをかけるかのように少女の手の中でレイピアが砕け散った。
防戦を強いられることになったティオナ達は、一人一匹ずつ相手を出来るようにアイズに魔法を解除するように呼びかけ、止むをえず魔法を解除しようとした。
その時だった。アイズの視界に逃げ遅れた獣人の子供が映りこむ。巻き込むまいと一瞬で判断し、無茶な回避を行い――
醜悪な牙が無数に生えている大口に捕まった。
♦♦♦
(いつまで倒れているつもりなの、私は!)
痛みに悶えながらレフィーヤは立ち上がろうとする。通りの奥では弱い自分をいつも守ってくれるあの心優しく、遥かに強い冒険者達の前に死が迫っている。
(わかってるよ! 自分が弱いことなんて! あの人達に相応しくないことなんて!)
自分を介抱してくれていたギルド職員に避難するように制される。ここから目を背けて全てを他の強者に委ねてしまえ、と体の痛みも囁きかけてくる。
レフィーヤは知っている。自分が死力を尽くして助けようとしても、優しく遠ざけられる。自分が弱いから、側にいることを許されない。
それでも助けたい。追いつきたい。力になりたい。
ずっと、一緒にいたい。
(動いて、動いてよ!)
現実は無情だ。どれほど身体を動かそうとしても、痛みが、失ってしまった血がエルフの少女の願いを拒絶する。
モンスターの牙が風の結界を突破し、金髪の少女の肌に傷をつけた。
(動け――!!)
次の瞬間、黒い風がレフィーヤの横を通り過ぎた。風は青い光と共に食人花の間を通り過ぎ、瞬く間に灰へと変化させ、レフィーヤの前に戻ってきた。
風は人だった。いつもふてぶてしい笑みを浮かべ、レフィーヤが大嫌いな、彼女達の隣に立つことを許された男だった。
「悔しいか? 自分の大切な人を守れないことが」
まるで心の中を読んだかのような問いに、レフィーヤは目を見開く。
「アイズ達の力になりたいなら、強くなりたいならその悔しさを二度と忘れるな」
それだけを言い残し、レインはどこかへ行ってしまった。馬鹿にするようなことを一切言われず、レフィーヤはただ困惑する。
この日からレフィーヤは、あまりレインを嫌いではなくなった。
ベルは普通にシルバーバックを倒しています。レインの書き置きは別の所で。
ふと思ったけど、アイズの風が強いからって、巨大なモンスターののしかかりに耐えれるんですかね?
あとレフィーヤ。腹を貫かれてよく立てたな……。ここでは立てませんでしたが。