黒い戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 ネタ回です。シルさん(の料理)が酷く書かれていたり、キャラ崩壊があったりします(これは今更か……)。別に見なくても本編に影響はありません。


 レインが酒場でシルさんの料理を毒と言っていた理由が明らかに。


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小話 孤児を守る冒険者達

【フレイヤ・ファミリア】所属の世界最強のLv.9、レイン(公式Lv.は6)。彼はLv.9になってから自分が万全の状態であればかすり傷すら滅多に負うことはなかった。

 

 

 これは、そんなレインが死にかけた話である。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

【フレイヤ・ファミリア】の幹部のみが入室を許された円卓の間。そこに団長オッタルをはじめとした幹部たちと新幹部であるレインが巨大な円卓に集まっていた。

 

 

「オッタル、話ってのはなんだ」

 

 

 アレンが鋭い眼差しをオッタルに向ける。いつもなら他の幹部たちによるオッタルへの意見……という名の悪口が始まるのだが、今回は様子が違った。

 

 

「招集をかけたのは他でもない……シル様の試食会のことだ」

 

 

 面々を見渡したオッタルが、重々しく口を開く。彼は端的に今日の主題を説明した。シルが、何度目かも知れない『お食事会』を開くことを。

 

 

『……本当か、それは?』

 

 

 アレンを含めた団員達は静まり返り、割と本気(ガチ)深刻(シリアス)な表情を帯びた。昔、フレイヤが『発作』を迎えた時に並ぶほどの深刻さだ。彼等は額に例外なく汗を滲ませている。

 

 

「前回気持ちだけで結構ですと伝えたのに……」

「なぜ今になって……ヘルンの奴が毒味――味見をしているだろう」

「つべこべ言っても仕方がない。今回も逃げることは不可能……ならばどうやって耐えきるか」

万能薬(エリクサー)はどうやって持ち込む? そろそろミックスジュースに混ぜるのも限界だぞ。破壊力も上がってきている」

「「「それな」」」

 

 

 とても料理を食べる話とは思えない内容を繰り広げるガリバー兄弟。なんだ毒味って。なんだ破壊力って。そもそも万能薬(エリクサー)は料理のお供に飲む物ではない。

 

 

「オッタル。そのシルとやらの料理はそんなにヤバいのか?」

「…………見れば、分かる」

 

 

 巌のような表情のまま頭部の両耳がへたり込んでいるオッタルを見て、レインからいつも浮かべている笑みが消え去った。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 後日。再び円卓の間に集まった彼等の前には、顔を青くしているヒューマンの女性団員によって運び込まれた銀色の鍋があった。信じがたいことにその鍋は加工超硬金属(ディル・アダマンタイト)で出来ていた

 

 

 団員と一緒に来た薄鈍色の髪が結わえられた少女――シルが笑顔で鍋の蓋を開ける。すると鍋からなぜか光が溢れた。この中で最も本を読むヘディンは、よりにもよってシルの料理で美味な料理特有の表現を見ることになるなんて……と目を覆う。

 

 

 レインが鍋を覗き込む。鍋の中身は薄く輝く虹色の液体だった。小瓶に入っていれば万能薬(エリクサー)と間違えてしまうほど無駄に綺麗な虹色だ。

 

 

「……確かにすごいな。まさか料理に五〇万ヴァリスもする薬品を使うとか想像もできん」

「ふふふ。すごいでしょう? なんとこのシチュー、万能薬(エリクサー)なんて一滴も使ってないのにこんなに綺麗な虹色なんですよ!」

 

 

 むしろ使っていろよ、というかこれシチューなのか? とレインは心の中で絶叫する。口にしないのは事前にオッタルから「改善点があっても口にするな。口にすれば予想の斜め上に改造……改良された物を食すことになる」と止められているからだ。

 

 

 その言葉を聞いたヘグニが「気のせいか……死神の鎌が振りかぶられる気配がしたぞ……ク、クク……」「それが遺言になってもいいのか、ヘグニ」と隣のヘディンとシャレにならないことを話している。しかし、二人を咎める者は誰もいなかった。

 

 

「どうぞ、召し上がれ。皆さんに対する感謝を込めて作ったのでたくさんありますよ」

 

 

 幹部達に加えて、毒味役のヘルンの前に虹色のシチュー? が入った食器が置かれる。当然食器も加工超硬金属(ディル・アダマンタイト)だ。アレンは心の中で、「込めているのは感謝ではなく殺意ですか……」と敬意を払わなければならない少女に毒を吐いた。

 

 

 それぞれ無表情でスプーンを手に取り、具を掬い取る。……ドクロのような模様の浮いたジャガイモや、どう見ても魚の類ではない眼球が掬い取れた。レインは何事もなかったようにシチューの中に沈める。

 

 

(おい毒味役……シルって女が料理しているところは見たのか?)

(見ていません……シル様は「レシピは知られたくないの!」と言って食材すら教えてくれませんから)

(なんだその無駄なプライドは。本当に普通の食材使ってい……ねえだろ、なんだこの目玉!?)

(……巨黒魚(ドドバス)の目ではないでしょうか?)

(違うだろ。百歩譲ってそうだとしても、オッタルの方を見てみろ。なんで虹色の液体の中から紫色のキノコが出てくるんだ!)

(……そんな奇怪な現象を料理で引き起こすのがシル様です。もはやこれは神の御業ですね……)

 

 

 隣同士のレインとヘルンの小声の会話は続く。

 

 

(なんであの女に味見をさせないんだ!)

(愚問ですね。我々ですら死にかける劇物(りょうり)が一般人であるシル様に耐えきれると思いますか?)

(思えんな! そうだ、別に残せばいいだろ。既に満腹と言えば――)

(残せばシル様は孤児院に残りを持っていきます。誰だって悲劇なんて見たくないでしょう)

(シルがいなくなったら庭にでも捨てるのはどうだ?)

(シル様は感想をもらうまで帰ろうとしません)

 

 

 この時ほど極東のことわざ、「ありがためいわく」を体現している状況はない。誰も逃げようとしないのは、シルの料理で子供の命を危険にさらさせないためなのだろう。見知らぬ子供を守るくらいの優しさは、彼等にもあるのだ。

 

 

 背中に刻まれている耐異常:Aを信じることにしたレインも覚悟を決め、青いジャガイモを掬い取る。謎の目玉より遥かにマシだと、口の中に放り込み咀嚼(そしゃく)した。

 

 

 

 

 

 

 

 …………耐異常はアルコールなどには作動してくれない。誰が見ても料理ではないと思っても、料理にカテゴライズされていれば耐異常は意味がないのだ。

 

 

 レインは亡くなった恋人がにこやかに手を振る走馬灯を見た。それでもオラリオで孤児が料理によって大惨事になる事件が起きなかったのは、とある第一級冒険者達のおかげだろう。

 

 

 これは迷宮都市に兎のような少年が来る前、結果的に少年のお腹を守ることになる冒険者達のお話。




 シルの料理……万能薬(エリクサー)とLv.4並の頑丈さがなければ耐えられないレベル。


 加工超硬金属(ディル・アダマンタイト)で鍋や食器が作られているのは、市販品だと溶けてしまうからです。それを見てもシルさんは自分の料理の腕前が壊滅的とは考えない。

 ベル君がモンスターに丸呑みにされた時耐えられたのはLv.4の頑丈さがあったからと書かれていたのを見て、この話を書こうと思いました。

 味見役のヘルンさん……気の毒に。


PCと目の調子が悪いので、少し更新が止まるかもしれません。

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