雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 日間ランキングでも11位になることが出来ました。本当に嬉しかったです。


 今回はネタ回です。2つあるので楽しんでいただけると嬉しいです。


小話2

・『深層から帰る時の話』

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「綺麗どころが減ってしまった……」

「ねぇ、今どこを見て言った? レインの綺麗どころの基準ってどこなの?」

 

 

 アイズとリヴェリアを『深層』に残し、地上へ帰還途中の資金稼ぎメンバーの一人、レインがちらりとティオナの身体のとある部位……残念な胸部を見て呟く。目から光を消したティオナが詰め寄ってきたが片手で押しとどめ、似たようにティオネに詰め寄られているフィンに話しかける。

 

 

「本当にアイズを残してよかったのか? あいつ、階層主(ウダイオス)に挑むつもりだぞ。それも一人で」

「僕もアイズが『ウダイオス』に挑むつもりだろうと予想してたよ。予想した上で許可を出した」

 

 

 階層主の次産間隔(インターバル)を調べていたフィンは、赤髪の女と戦ってからアイズが考え込んでいるのを知っていた。故に何をしようとしているのかも予想できる。【ロキ・ファミリア】でアイズとの付き合いが最も長い小人族(パルゥム)王族妖精(ハイエルフ)は見知らぬところでやらかされるより、自分達が手助けできる場所で爆発させることを選んだ。特に後者は過保護(親バカ)なのでアイズに甘い。

 

 

「アイズが死にそうになればリヴェリアが助けるはずだよ。だから何の問題もない」

「ふーん。アイズの性格からして素直に助けられようとしないと思うがな……」

「それに君にできることならあの子もできるさ」

 

 

 しれっと親バカ発言をするフィン。言外に「君よりアイズの方が強い」と告げられたレインは額に青筋を浮かべた。近い内にフィンの手足を縛ってティオネと娼館にぶち込んでやろうかと半ば本気で検討する。

 

 

 ふと、フィンが周りに目を向け始めた。同時に耳も澄ませている。モンスターが接近してくる気配はないが一応覇気(エクシード)で探ってみても、自分達以外の気配はない。

 

 

「急にキョロキョロしだしてどうした?」

「ああ、実はギルドの掲示板で面白そうな依頼を見つけてね」

「団長、あの面倒な依頼をやるつもりだったんですか……」

「依頼は受けてないから問題ないよ」

 

 

 詳しく聞くと、「迷宮に響く歌と悪魔の呼び声」という依頼があったようだ。どちらも聞こえてきたのは今いる『下層域』。歌は思わず聞き惚れてしまうほど美しい声だが、悪魔の呼び声は聞くだけで吐き気と目眩が止まらなくなるとてつもなく不快な声。依頼主は声の主が気になって夜も眠れないらしい……ふむ、なるほど。

 

 

「その歌声の主は俺だ、悪魔の呼び声とやらは知らんが。下層、特に27階層は声が響くからよく歌ってる」

「理不尽かもしれないが言わせてくれ。僕の浪漫(ろまん)を返せ」

「だから言ったじゃないですか……(子供っぽい団長、可愛すぎる……!!)」

 

 

 好奇心を刺激していた依頼の答えが目の前の男と言われ、真顔になったフィン。ティオネはフィンを諫めているが緩みきった顔を隠せていない。

 

 

「ダンジョンで歌うという自殺行為に色々言いたいけれど……本当に君が歌声の主なのかい?」

「当然! 俺には戦いの才も商才も歌の才能だってある! むしろ何がないのか知りたいね」

「へぇ……じゃあちょっと歌を聞かせてほしいな」

 

 

 依頼には夜も眠れなくなるほど美しい歌声と記載されていた。是非とも聞いてみたいとフィンが頼むとレインはあっさりと承諾。不機嫌なティオナや彼女の相手をしていたレフィーヤともう一人のサポーターも聞く体勢に入る。

 

 

 レインは一度咳ばらいをし――歌いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 ~数分後~

 

 

「……うん……よく分かったよ。レインが、依頼の対象だってことが……」

「団長、顔が真っ青ですよ……うっ」

 

 

 安全階層(セーフティポイント)に顔を青くして力なく座り込むフィンとティオネ。ティオネの方は偶に口に手を当てている。まるで吐き気を堪えるように。

 

 

「れ、レフィーヤ、ウプッ、しっかりして!」

「ティオナさん……あっちに綺麗な川が見えるんです。連れて行ってくれませんか……」

「レフィーヤあぁぁあぁ!?」

 

 

 同じく顔を青くしているティオナが、虚ろな笑みを浮かべて横たわるレフィーヤに割と必死に呼びかける。耳がいいエルフだからこそ、このパーティでは最もダメージを受けた。リヴェリアがここにいれば大惨事になっていたことだろう。

 

 

 レインの歌はまるで超音波だった。歌人鳥(セイレーン)の怪音波の方がマシだと思えるほどひどい歌声だった。男女の恋愛模様について歌っていたようだが、まっっったく内容が頭に入ってこなかった。

 

 

 この後、レイン以外のメンバーは絶不調で地上に戻ることになる。『リヴェラの街』に一泊する際、フィンとティオネを一緒の部屋にしてみたが、「アーッ!?」などが起きる雰囲気は欠片もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

・『シルのお料理。その後』

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 毎度おなじみ【フレイヤ・ファミリア】の円卓の間。試食会が終わって五日たった今でもここにいる【フレイヤ・ファミリア】幹部達の顔色は悪い。ヘディンはしきりに腹部をさすっている。ヘルンの顔色は土気色だ。

 

 

「……オッタル。今回の料理はいい方なのか? それとも悪い方か? お前の顔を見たら悪いとしか思えないんだが」

 

 

 顔からにじみ出てくる変な汗をタオルで拭きながらレインが尋ねる。オッタルは巌のような表情だが、試食会の後からずっと白目のままだ。治療師(ヒーラー)には神経がおかしくなっており、あと数日はこのままだと判断された。

 

 

「……どうだろうな。前回の青紫のスープは我等が食べる直前に食材が丸ごと投入され、目の前で音を立てて溶けていった。しかし今回は食材は溶けていない。丸ごとでもなかった」

「もう調理方法云々(うんぬん)よりあの女の頭の中がどうなっているのかが気になるな」

 

 

 食材が溶けていくのを見たはずなのに、それを食べさせるとか狂ってるのか? 逆らいもせず食すこいつらもどうかと思うが……よく生きていたな。

 

 

「というか、入っている具材もおかしいだろう! なんでジャガイモが赤かったり青かったり、ドクロの模様が浮かんでいたりするんだ! 最初からそうだとしても狂気を感じるが、鍋にぶち込んだあとあの状態になったとしたらより恐ろしいぞ!」

「どうなんでしょうね……。知りたくもありますが、知りたくもありませ……ん……ね……」

「おい勝手に逝くな。てめぇには生きていてもらわねぇと困る」

 

 

 息がだんだん細くなっていき、ゆっくりと目と人生の幕を閉じようとしたヘルンの口に、アレンが万能薬(エリクサー)をねじ込む。ヘルンは可哀想だが誰も毒味役になりたくないので、彼女には生きていてもらわないと本気(ガチ)で困る。

 

 

「そもそもシル様はレシピなどを見ているのか?」

「それだ! オリジナルの料理の前に、普通の料理を習得させれば――」

「……最初の頃、レシピを見て作ってもらいましたが……九割が炭、残りは有害なナニカでした。そのせいでシル様はレシピを信用しなくなり、色々逸した料理を作り始めたのです……」

「何様だあの女」

 

 

 ヘディンの意見は名案に思えたが、ヘルンに告げられた絶望的な情報によって無意味になった。自分の料理の腕に問題があるとは露ほども思わないシルに、レインが真顔で吐き捨てる。 

 

 

「とにかくっ。あの女に自分の料理の腕が壊滅的だと自覚させるか、せめて腹痛がする程度まで料理の腕を向上させるぞ! この調子だと『好きな人のハートを溶かします♡』とか言って、毒味の俺達の心臓(ハート)が溶かされかねない、冗談抜きで!」

 

 

 レインの叫びに誰も異議を申し立てなかった。レインの言ったことは【フレイヤ・ファミリア】の幹部がずっと考えていたことである。

 

 

 間違いなくシルは好きな人ができたとしたら、自分達に味見をさせる。自分では決して味見をしない。




 外伝3巻の内容を書こうかと思いましたが、レインがいると赤髪の女を瞬殺してしまい、ベートやレフィーヤが成長しそうにないのでレインは24階層に行きません。行かない理由としてはそうですね……優男の神の【ファミリア】が嫌いだからとかですかね?


 でもどうにかして59階層には行かせようと思います。

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