雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 難産、駄文、キャラが分からんので捏造。以上。


四十八話 私は、貴方を――

 私にはたった一人の家族であるおばあちゃんにも、世界で一番大切な人にも言えない秘密がある。それを誰かに教えようと思ったことなんか一度もないし、この秘密がある事を嬉しいと思ったこともなかった。

 

 

 私の秘密。それは未来の断片が見えること。

 

 

 どうして自分にこんな『力』があるのかはよく分かってない。私が小さい時、おしゃべりが好きなお母さんはず~っと昔のご先祖様が精霊を助けて血を分けてもらったことがある、とか言っていたけれど、本当なのか疑わしい。お父さんとおばあちゃんは嘘だろうと笑ってた。

 

 

 話を戻そう。私はこの未来を見る力だけはない方が遥かにマシと思っている。未来が見える時期(タイミング)も見たい未来も自分の意志では決められないのに、未来が見えるのは必ず幸せな時なのだ。しかも見える未来は決して外れることはない。

 

 

 見える未来に希望と幸福は欠片もなく、あるのは耐え難い絶望と苦痛だけ。何より嫌だったのは、そんな見たくもない未来を変える力が私にはなかったこと。そして私に関わってしまえば、その人の不幸な未来が見えてしまい、傷つけてしまうこと。

 

 

 私に関わった人が不幸になるなんて信じたくなかった。でも、私の周りではお父さんやお母さん、私に優しくしてくれた人達は次々に傷つき、死んでいる。

 

 

 だから私にとって小さな田舎の寒村に移り住むことは好都合だった。他者を受け入れる余裕のない田舎であれば、私とおばあちゃんに関わろうとする人はいない。冬になれば食料に余裕のなくなる寒村なら尚更。

 

 

 予想通り、引っ越した村の住民たちは余所者である私達を拒絶した。割と気難しいおばあちゃんは「こんな村に助けなんて求めんよっ」って言いながら、絶対に村の人と関わろうとしなくなった。私とおばあちゃんは名前のない小さな森で、ひっそりと暮らしていくはずだった。

 

 

 でもね、想像したことさえなかったよ……私に好きな男の子ができるなんて!

 

 

 最初の頃はすっごい迷惑だった。傷つけたくないから誰とも関わらないようにしてるのに、毎日私のところにやって来る。「私の気も知らないで!」って怒ってロクに話をしようともしなかったよ。

 

 

 正直に言えば怖かったんだと思うな。前に住んでいた都市はどこもかしこも「絶望」でいっぱいだったから、皆「快楽」に逃げるために……知らない人同士でも男女の営みのようなことをしてたし。私も未遂だけど被害にあって男の人が怖くなったし、更に内気な性格になっちゃった。

 

 

 でもその子は違った。虫を殺すことも躊躇い人を傷つけることなど想像もできない、本当に優しい人だった。おばあちゃんも彼の優しさを感じ取ったのか、彼だけは受け入れたもの。

 

 

 しばらくして、私はその男の子が世界の誰よりも好きになった。いやまあ、元々好きな人にお父さん、お母さん、おばあちゃん、彼の両親と並んでいて、その上に定員が一人の最愛の人ができただけなのですけどねっ(後はその他大勢です)。

 

 

 私はしょっちゅう笑うようになり、もっと時間が経つと一日中べったりだった……流石に節度は弁えていたけどね。しかも成人していなかったのに、将来は一緒になろうなんて約束までした。私は紛れもなく本気だったし、きっと彼も本気だった。彼は嘘でこんな約束をする人じゃない。

 

 

 こんな幸せな時間が無限に続けばいいと願っていた。自分達で続かせるように努力しようと彼と約束した。

 

 

 でも……私は約束を破ってしまった。

 

 

 彼の目の前で殺され、彼の心を死なせてしまったことで、もう約束は果たされない。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 17階層の『嘆きの大壁』よりも冷たさを感じさせる大広間に業火の大嵐が吹き荒れる。まるで地獄の底から呼び出されたかの如き灼熱の炎は一〇〇M(メドル)を優に超える空間を埋め尽くすと、部屋中に転がっていた無数の檻や鎖を熱したフライパンに落ちた水滴のように()()()()()。最高純度の『超硬金属(アダマンタイト)』と『魔除け石』で造られた壁だけが辛うじて耐え抜いた。

 

 

 そんなあらゆるものを平等に無に帰す炎の渦は、突如出現した大氷塊にぶつかり威力を大きく減少させる。直後、炎の中から虹色の障壁に包まれたレインが飛び出した。レインは障壁に纏わりつく炎を振り払いながら疾走し、広間を灼熱の赤に塗りつぶした術者――フィーネの元へ辿り着く。

 

 

「お願いだフィーネっ。返事をしてくれ!」

「……」

 

 

 何度目かも分からぬレインの悲痛な声を聞いても、フィーネは口を開かず表情も変えない。これが答えだと言わんばかりに、音を置き去りにする青白い魔剣の横殴りの一撃を繰り出す。数舜遅れて持ち上げたレインの魔剣とぶつかり合い、反発し合う魔力によって盛大に火花が飛び散る。

 

 

 レインは押し込んでくる力に逆らわずフィーネの剣撃を受け流す。そのまま意識を刈り取ろうと回し蹴りを(あご)に掠めるように放つが、

 

 

「【リフレクション】」

 

 

 フィーネの魔法は触れることも許さない。

 

 

 蹴り足をひねることで回し蹴りを踵落としに変化させ、床に振り下ろした。フィーネの眼前に展開された白い障壁にはぶつからなかったものの、無理な攻撃の変化はレインに刹那の隙を生じさせる。次の瞬間、フィーネは力任せにレインを蹴り飛ばした。そこに加減は一切なく、蹴り飛ばされたレインは突風に巻き上げられた木の葉のように吹き飛び、壁に激突した。

 

 

 何とか受け身を取ったレインだが、既にその身体はボロボロだった。

 

 

 フィーネの総合的な【ステイタス】は、レインよりずっと下だろう。しかし、『力』と『魔力』だけは【ステイタス】を大幅に制限しているレインを上回っている。防御力では世界の一、二を誇ると言われる、ガレス・ランドロックより遥かに高い『耐久』を持つレインだが、フィーネの攻撃を受けた個所の骨には罅が入っている。

 

 

 状況もレインにとって遥かに不利だった。レインはフィーネを殺せない。身動きを封じるために手足の腱を狙って剣を振ろうとしても、どうしても身体が重くなる。本来の精彩な動きを発揮できないレインは隙だらけで、そこへ容赦のないフィーネの攻撃が何度も叩き込まれた。

 

 

 拘束・氷結・麻痺といった類の『魔法』も跳ね返され、回復の『魔法』を使うことに意識を向ければ『反魔法障壁(アンチ・マジックフィールド)』を突き破る破壊力を持つ大量の『魔法』が殺到する。

 

 

 時間が経過すればするほど状況は悪化していく。上層へ移動することで【ロキ・ファミリア】の力を借りることは出来ない。彼等はフィーネと戦うには力不足であり、万が一にでもフィーネを傷つけられたら、レインにそいつを許す自信はなかった。

 

 

 レインは最愛の人に剣を振るわねばならない。本当に彼女を守りたいならば、大切に思っているなら、やらなければならない。――例え、死んだ心から血の涙が零れ落ちようと。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 私は一度死んで怪人(クリーチャー)と呼ばれる存在に生まれ変わった。自分が人ならざるものに変貌したと理解した時、私はこれを天罰だと解釈し、大して取り乱さず受け入れた。

 

 

 ()()()()()()()、私は。私がレインと恋人になれば、私はレインに深い傷を残すことになるって。それこそ、優しいレインが人を殺す戦士になるくらいの爪痕を。

 

 

 でも……好きだったの。最悪な未来がわかっていても、ずっと一緒にいたいと願ってしまうほどに。彼がいなくなること、彼に嫌われることを想像するだけで死にたくなるくらい好きだった。

 

 

 レインと再び出会うまで、私は、そんな甘っちょろい事を考えていた私を殴り飛ばすような未来をいくつも見ていた。

 

 

 沢山の傭兵崩れから村を守ったのに拒絶され、必死に涙をこらえるレインを見た。

 愛を知らずに育てられたせいで心に闇を抱える暗殺者達を殺し、人の善性を盲目的に信じる馬鹿共に責められるレインを見た。

 敵が子供だからという理由でとどめを刺さなかったせいで死んだ人々を前に、人の黒い意志を浴びせられるレインを見た。

 

 

 それでもレインは折れなかった。途方もない数の命で手を血で汚しても、決して戦うことから逃げようとしなかった。

 

 

 私のせいでレインが傷つく事がとても悲しくて、戦うことは私を忘れてない事だと分かってとても嬉しくて。

 

 

 意識を現実に引き戻す。壁から抜け出して向かってくるレインは、傷がない所を見つけるのが難しいくらいボロボロだ。対照的に私は一度も傷を負ってない。その事実に隠している感情が悲鳴を上げる。

 

 

 世界で誰よりも優しく、誰よりも愛しい貴方だからこそ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――レイン。私は貴方を愛しています」

 

 

 ――私は貴方に死んで(殺して)ほしい。

 

 

 青白い魔剣が、黒影の胸を貫いた。




【リフレクションフィールド】
・反射魔法
 レインの心を傷つけた事を後悔して生まれた魔法。反射なのは触れた者を傷つけ、自分に近づこうと思わせないため。


【グリム・エグソダス】


 出ていないけどフィーネのもう一つの魔法。自分が恋人を傷つけた罪人という意識から生まれた魔法。
 イメージとしては童話に出てくる女の魔法が使える感じ。

 『鏡』の魔法であれば想像した人物の技や戦闘技術だけをその身に宿す。レインと戦えたのはこれが大きい。

 他にも一定の時間だけ『敏捷』と『器用』を上げる『靴』の魔法。その身に着けている間は様々な加護をもたらすが、壊されれば塵になる『剣』の魔法がある

 鏡、靴、剣は【グリム・エグソダス】で一括り。【グリム・エグソダス】を発動するための詠唱をした後、それぞれ別の詠唱がある。




 フィーネのLv.は普通のLv.10を軽々超えていますね。次で【ステイタス】を書きたい。ここで書いたらネタバレになるし。なんで炎の魔法を使っていたのかも次で。


 フィーネがおばあちゃんから離れなかったのは、おばあちゃんを一人にしたら死んじゃうからです。


 疑問があれば遠慮なくどうぞ。


 追記:最近モチベが下がってきた。誰か、高評価(げんきのでるもの)をくだせぇ。

 

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