雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 今までは原作をちょこちょこ改造しているだけでしたが、ここから一気に改造します。


六十話 嵐君臨

『迷わずに進むといい。君の行く道に誤りはない、君なら大丈夫だ!』

 

 【風の剣聖】と呼ばれた老人は力強く言ってのけた。自分の進んできた道、これから進むべき道に対し自信を持てずにいる少年――今から己を手にかける戦士に生涯忘れることがない言葉を遺し、老人は安らかに逝った。

 

『【謎の怪盗ブラック仮面】の二つ名はお前にやるよ。俺の超かっこいい二つ名を名乗るんだから、その不愛想な表情はやめろよ。【謎の怪盗ブラック仮面】は不敵な笑みが売りなんだぜ。……皆にしっかり伝えとけよ、俺が最期まで笑っていたことをな!』

 

 反逆者(レジスタンス)の友は託した。民が苦しまなくて済む国を求めて悪王と戦い、その悲願が成就する寸前で致命傷を負った。人目も気にせず泣き叫びたかっただろうに、みっともなく足掻きたかっただろうに、友は昔言った通り、自分の死が目前に迫っても不敵に笑い続けていた。

 

『やっぱり貴方も万能じゃないんです。人間である限り、万能なんてあり得ない。だから……誰かの助けが必要だと思ったら、どうか遠慮せず周りの仲間に頼ってください。貴方なら、誰もが喜んで手を貸すでしょう』

 

 老兵は本人曰く余計な忠告を遺した。少年の部下でいられてとても幸せだったし、望みは全て叶ったと感謝していた。次の日には穏やかな表情で眠るがごとく亡くなっていた。

 

 大切な人は、皆笑って命を落とす。

 

 皆、少年を悲しませないように逝く。

 

 少年は泣かなかった。涙を見せることはできなかった。

 

 自分は数えきれない命の上に立っているのだから――。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「リド達と連絡が付かなくなった?」

 

 『異端児(ゼノス)』と【ヘスティア・ファミリア】を引き合わせて二日経った今日。

 

 『豊饒の女主人』で働くフィーネの様子を確認した後、【フレイヤ・ファミリア】本拠(ホーム)、『戦いの野(フォールクヴァング)』の自室で眠っていたレインはけたたましい鐘楼(しょうろう)の鐘の音で目が覚めた。

 

 ギルド本部が有する大鐘楼が鳴る。その意味は、都市へ緊急事態を知らせる警報である。

 

 続いてギルド本部で作動した魔石製品の大型拡声器から聞こえたのは――『18階層リヴィラが武装したモンスターにより壊滅。伴ってモンスターの大移動を確認』。滅茶苦茶心当たりがあった。

 

 ……緊急事態の内容はどうであれ、一般市民が混乱して暴動を起こす可能性も無きにしも(あら)ず。ひとまずフィーネの安全を確保するために窓から飛び出そうとしたレインだったが、その寸前にフェルズから貰った交信の魔道具(マジックアイテム)眼晶(オクルス)』――組み分けを分かりやすくするために色分けされた――黒真珠のように真っ黒な水晶が音を立てた。

 

 反射的に出てみれば、リドに持たせた水晶の反応が途絶えたらしい。

 

『もうわかっていると思うが、(リヴィラ)を襲ったモンスターは『異端児(ゼノス)』達だ。ギルド上層部に気付かれる前に収束させたかったが、こうなってしまっては不可能だ……!』

「……とにかく落ち着け。後悔なんてするだけ無駄なものだ」

『ッ、そんな事は言われずとも理解している! だがな、誰もが君のように冷静を保ち続けられるわけじゃない!』

 

 水晶から激昂した声が響く。いつものフェルズならこれで落ち着きを取り戻すのだが、『異端児(ゼノス)』が(リヴィラ)を襲撃した事実が尾を引いている。動揺で心に余裕がない。

 

「すまん。配慮が足りなかった」

『……いや、こちらも八つ当たりをしてすまなかった』

 

 レインの謝る声を聞いて、ようやくフェルズは冷静になった。

 

「それで? これからどうするつもりだ」

『全派閥に強制任務(ミッション)を出す。18階層に進攻した武装したモンスターへの先遣隊は【ガネーシャ・ファミリア】に任せる。代わりに都市の守備隊、検問役を【フレイヤ・ファミリア】に変更する予定だ。【ヘルメス・ファミリア】には神イケロス達の捜索に当たらせる。それ以外の派閥には待機を命じる』

「あからさまだな。間違いなくあの女神は……あとはフィンも『何か』を隠していると気付くぞ」

 

 露骨すぎる。ガネーシャの派閥も第一級冒険者を多く抱えているとはいえ、純粋な戦闘力ならフレイヤとロキの派閥の方が上だ。信頼度の違い云々(うんぬん)で片付けられる話ではなく、多少頭が回る者なら不自然だと思うだろう。

 

 フレイヤの勘と洞察力は鋭い。彼女との腹の探り合いはレインであっても避けたいと思うほどに。何かあると分かれば、『魅了』を使って引っ掻き回すかもしれない。気まぐれで行動も読めない。

 

 フィンはどうでもいい。弱いし、底も知れている。意表を突くことを得意としているが、一定の予想を超えることは全くない。つまりどうとでもなる。

 

 そのことを指摘すると、

 

『我々の手駒も手段も限られている。我々に隠し事があると勘付かれるより、この問題から最大派閥(フレイヤとロキ)を遠ざけた方が遥かに楽だ。……確かに君の()()()()なら、【勇者(ブレイバー)】の策だろうと無意味なのだろうがね』

「……」

 

 本当の力、という言葉にレインは眉を少し動かす。とある事情でフェルズは数少ないレインの真の実力を知った一人だ。

 

「よくわかってるじゃないか。で、俺はどうする? 『異端児(ゼノス)』の鎮圧に参加しようか?」

『いや……君はいざという時の保険として地上に残ってくれ。想像できる中で最悪の事態は、追い詰められた狩猟者(ハンター)達が『異端児(ゼノス)』の存在を人々に暴露することだ。奴等の住処(アジト)()()()()()()()()()、君の姿を見て自暴自棄になられでもしては不味い。止めようがない』

「……そうだな」

『最後にウラノスの神意で、ベル・クラネルを強制任務(ミッション)に組み込むことを伝えておく。君と同じようにこれで見極めるようだ。自らの意思で『異端児(ゼノス)』達の手を取ったのかどうかを』

「……そうか」

『もう時間がない。後は状況に応じて対処してくれ!』

 

 小さな音を立てて通信が途絶える。手の中にある水晶を見るレインの顔に笑みはない。

 

「――こんなことをする資格なんてないけど……ごめんね」

 

 その謝罪は誰に向けてなのか。『人造迷宮(クノッソス)』の存在を伝えなかったフェルズ達にだろうか。それとも――。

 

「さて、と。外で張り込んでいる【ロキ・ファミリア】はどうするか……。まあ、無駄なリスクを背負う必要はないし、気配を消してやり過ごすか」

 

 改めて部屋を見渡す。一年近く使っていながら私物がほとんど増えていない部屋を。

 

 自虐的に笑う。かつてこの手で殺した恩人も、この様な気持ちだったのだろうか。

 

「……ようやく掴んだこのチャンス、絶対に逃がさん」

 

 ――部屋を出たレインが戻ってくることは二度となかった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 世界で一番嬉しくない壁ドンだなぁこれ。

 

 それなりの広さを持ちそれなりに外観を飾りそれなりに存在感を放つ石造りの館。【ヘルメス・ファミリア】本拠(ホーム)、『旅人の宿』、その主神の広間。様々な地図や小物で溢れかえる自室で、ヘルメスは優男の笑みを浮かべながら冷や汗をだらだらと流していた。

 

 嬉しくない理由の一つが相手の性別。ヘルメスに壁ドンをしているのは男である。それも自室の木製の扉を途方もない威力の蹴りでぶち破って入室した野郎である。飛び散った大小の木っ端はいくつかの地図を破って使い物にならなくした。

 

 嬉しくない理由二つ目。自分の顔の左にあるのは手ではなく剣。それも神々にとって特別な意味を持つ魔剣だ。それが耳をかすめる形で壁に突き刺さっている。しかも羽虫が飛び交うような音がとてもうるさい……決して口にはできないが。

 

 そして最後に……目の前の男がちょー怖い。人に向けていい顔をしていない。唯一部屋の中にいるアスフィがぶるぶる震えている。飛び散った木片が髪の毛に突き刺さっているのに、取ろうとする気配がない。

 

「あ~……とりあえずその顔をやめてくれないかな、レイン君」

 

 勇気を出してお願いしてみる――眷属から初めてかもしれない敬意を向けられる――ヘルメス。それに対して男、レインは浮かべていた表情を笑みに変え、

 

「お前、【ロキ・ファミリア】に俺が『鍵』を持っているんじゃないかと話しただろう?」

 

 もう一振りの魔剣を引き抜き、ヘルメスの右耳ギリギリに突き立てる。ひぇー、という情けない声が男神の喉から引きずり出される。

 

「な、何のことかなぁ~?」

 

 冷や汗を流し過ぎて服が湿り始めたヘルメスは、まだすっとぼけようとするが、

 

「あいつらは基本的に出されている材料を組み立てて推測をするが、余裕があればそこに感情を混ぜる。ベートが怒りに任せて【殺帝(アラクニア)】を焼き殺したのを『仕方ない』と飲み込んだように、あの時の俺が『鍵』の事を配慮していたとは思わん。リヴェリアも俺がキレてたと知ってるしな」

「……」

 

 目に見えて汗の量が増える。アマゾネス大量殺戮事件の裏にそんな事情があるなんて、ヘルメスも知らなかった。どんな諜報力だ。

 

「なのに『王国(ラキア)』が攻めてきたあたりから、【ロキ・ファミリア】がやけに視界にちらつく。『豊饒の女主人』に行ってみれば周辺にいるし、尾行も何度もされた。全部()いてやったが」

「……」

「誰が【ロキ・ファミリア】に入れ知恵したのか候補を絞れば……お前しかいない」

「……いやー、参った参った。全部正解だよ」

 

 剣に当たらないよう両手を上げて降参の恰好(ポーズ)をしながら、ヘルメスは苦笑いを零す。経歴を調べて頭が回るということは十分理解していたつもりだったが、ここまでとは。

 

「用件は何なんだい? 俺みたいな中立派閥じゃないとできない事かな?」

「別に。他の派閥でも構わない。強いて言えば便利屋であるという部分だ。その便利屋という肩書も怪しいが」

「ははは、厳しいね。じゃ、便利屋の肩書が嘘じゃないってことを証明しよう」

 

 ヘルメスが真面目な顔になってレインはようやく剣を引き抜き、鞘に納める。そして、

 

「依頼は二つ。市壁から人を取り除くこと。この『鍵』をリュー・リオンに渡すこと。質問は聞かない」

 

 『D』の記号が刻まれた球形の精製金属(インゴット)を机に置いた。

 

「「………………………………………………は!?」」

 

 神とその眷属が思いっきり目を見開く。二人が滅多に見せない正真正銘の驚愕だ。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! レイン君、君はいったいいつからこれを」

「質問は聞かない、そう言ったはずだが?」

 

 するとヘルメスは黙り込み、机の上の精製金属(インゴット)を取って眷属に渡した。恐らく偽物かどうかを調べさせているのだろう。

 

 時間にして三分、『鍵』を丹念に調べたアスフィは主神を見て一つ頷く。

 

 ヘルメスは室内にも関わらずかぶっていた帽子をとり、橙黄色の髪を掻き毟りながら深いため息を吐いた。

 

「……一つだけでもいいから聞いても」

「お前、ベルが『異端児(ゼノス)』と関わるのを嫌がっているだろう」

「!」

「そりゃそうだ。大神(ゼウス)義孫(まご)が怪物と……『世界の癌』と手を取り合っているとバレたら、間違いなく破滅するだろう。お前の望む道程から大きく外れるよな」

「き、みは……」

 

 『異端児(ゼノス)』『大神(ゼウス)』『大神(ゼウス)の義孫』。次々と出てくるトンデモ単語(ワード)にアスフィは処理落ち(フリーズ)した。しばらくの間、彼女の記憶は空白になるだろう。

 

 ヘルメスは約二か月前、ダンジョンの中で目の前の戦士に告げた言葉を思い出していた。

 

 「君こそ真なる英雄に相応しい」? 冗談じゃない、『最強(ゼウス)最恐(ヘラ)の系譜』ということを入れても、目の前の子供は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の言う通りにすれば、ベルをお前(ヘルメス)が望む『英雄』にしてやろう。代わりに、神々(おまえら)が求める『真の英雄』は――『約束の(とき)』を果たす者は俺がなってやる」

 

 ――『英雄』という人類に与えられる枠組みと次元を超えた、『レイン』という生命体だ。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 ヘルメスと取引を済ませたレインが向かったのは、都市南東第三区画『ダイダロス通り』。そこには必ずいると睨んでいた派閥がそこかしこにいた。

 

 自身の身の丈の倍近くある槍を携える小人族(パルゥム)、重厚な装備で身を包む鉱人(ドワーフ)、風で美しい翡翠(ひすい)色の長髪をあおられる王族妖精(ハイエルフ)、よく似た容姿をしている二人の女戦士(アマゾネス)、顔半分に刺青(いれずみ)が彫られた狼人(ウェアウルフ)、そして金髪の女剣士。

 

 彼等彼女等は【ロキ・ファミリア】。ギルドから待機命令を出されているはずの【ファミリア】だ。

 

(本当に予想を超えないな、あいつ(フィン)。まあ、俺にとってその方が都合がいいけど)

 

 聡明な小人族(パルゥム)の団長は『ダイダロス通り』に『何か』があると断定し、ギルドに気取られぬよう、慎重に、素早く、秘密裏に、大勢の団員を広大な迷宮街に配置した。

 

 が、レインは正確にフィンの思考を見抜いていた。フェルズに進言したように、彼等がここに来るとわかっていた。悪魔のように一分の狂いもなく。

 

 高台に陣取る【ロキ・ファミリア】の幹部を視界に入れながら、レインは技能(エクシード)を『ダイダロス通り』全体に広げる。

 

(……うん、東西南北に存在する『扉』にちゃっかり人が割かれているな。ヘルメスの派閥よりも便利だよ、フィン)

 

 知りたいことを調べ終えたレインは、見知った孤児達に囲まれる山吹色の髪のエルフの横を通り過ぎる。孤児や貧民街(スラム)の住人達に対応する団員は、気配を消しきっているレインに欠片も勘付かない。

 

「……ん?」

「なんじゃ、フィン」

「いや……少し親指が疼いた気がしたんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『マリア孤児院』。迷宮街の真北にある寂れた教会に――正確には教会の裏庭から行ける廃墟の海にレインの目的地はあった。念のため周囲を見渡してみても人はいない。大方【ロキ・ファミリア】が来たから見に行ったのだろう。

 

 無人の教会を通り抜けて廃墟の海に足を踏み入れる。少し廃墟の海を上ると瓦礫と木材に囲まれた『石板』の扉が見えた。持ち上げれば下へ続く階段が現れた。迷いなく侵入する。

 

 ベルから存在を教えられていた地下通路を、壁に埋め込まれた魔石灯を作動させずに進んでいく。 

 

 階段を下り終えると、石造りの殺風景の広間が見えた。同時に灰粉に埋まる『バーバリアンの体毛』と大きなバックパック、その傍に立つ人影も。

 

「やっぱりお前も来てたか。この時期(タイミング)で動かなけりゃいつ動くんだって話だけどな」

『――』

「あ? お前はこれでいいのかって? 良くないに決まってるだろっ。誰が好き好んでこんな計画立てるんだ」

『――』

「その時はそうだな……『後からは何とでも言えるんだよばーか!』とでも言うさ」

『――』

「――」

 

 しばらくの間、レインと謎の人影の会話は続いていたが、レインのポケットから『眼晶(オクルス)』の通信が入ったことで途切れる。

 

『ウィーネが暴走して地上に飛び出してしまった! ベル・クラネルが追っているが、間に合うか怪しい、どうにかしてくれ!』

 

 フェルズの切羽詰まった声が響いたかと思えば、それだけで通信は終わってしまった。……なんて抽象的(アバウト)な無茶ぶりだろうか。

 

 ジト目を手元の水晶に落とした直後だった。

 

『―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!』

『やった、やったああああっ!』

『冒険者様ぁ!!』

 

 地下通路にも響く大歓声が聞こえた。

 

『「!」』

 

 人影とレインが顔を合わせたのは一瞬。二人には意思疎通をするのにそれだけで十分だった。

 

 人影はバックパックを掴んで広間の最奥に消える。レインは一秒足らずで階段を駆け上がり、地上に飛び出し、歓声が聞こえる方角へ驀進する。

 

「これでもう後に引けない」

 

 その途中。レインは自分に言い聞かせるよう呟く。

 

「とびっきりの『悪』になろう。誰からも恨まれる『絶対悪』に」

 

 そして。

 

「【シンダー・エラ】」

 

 彼の姿は変わる。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

(どうする、どうするっ、どうするっ!?)

 

 黄金の槍で地面に縫い付けられている狂暴化したウィーネを背に、ベルの頭は焦燥と混乱で埋め尽くされそうになっていた。

 

 身体がよろめきそうなほど大きな叫喚と変わらない住民達の歓声。耳から飛び出るのではないかと思えてしまう心臓の音。血の気を失っている仲間達の顔。

 

 都市そのものが熱狂し、人々の熱気がとどまらない最中。

 

 たった一人、憧憬の少女がベルを見つめている。背後から、守りたい竜の少女の悲鳴が聞こえてくる。

 

 ベルの思考が混濁する。ベルの胸の中がかき回される。ベルの心が絶叫を上げる。

 

 永遠に凝縮される一瞬。

 

 ベルは。

 ベルは。

 ベルは。

 

 思い焦がれた『英雄』の道を放り出し、『愚者』となる道を選ぼうと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五月蠅い――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――する、その刹那。

 

 余りにも冷え切ったその声は、熱狂の渦をかき消し、容易く静寂へ転じさせる。

 

「やはり今も昔も、オラリオはオラリオのままか。どこもかしこも騒々しく、忌むべき雑音が絶えん」

 

 堂々とその女性は歩いてきた。まるで周囲が見えていない、いや、周囲が己の意に従うことが当然と言うように。誰も声を発せない。誰も歩みを制止できない。

 

()()()()()、成長したかと期待したが――蛆が成長しても(ハエ)。より騒々しい雑音をまき散らすだけか」

 

 灰色の長髪。瞳を閉じても損なわれぬ美貌。漆黒のドレスと手袋。見ているだけで震えそうになる存在感。

 

「どこまでも煩わしい。喧しすぎて永き眠りすら覚める」

 

 女性の歩みはベルの前で止まった。少年を守るためか? それとも――

 

「もう一度、『蹂躙』してやろう。私のまどろみのために」

 

 ――顔を青白くした【ロキ・ファミリア】の前に立つため?

 

「馬鹿な!? 貴様は確かに死んだはずだ!」

 

 リヴェリアが声の限りに叫ぶ。彼女の声を引き継ぐように、ガレスが女性の名を口にした。

  

「何故生きている――【静寂】のアルフィア!!」 




 レイン原作を知らない人へ。

 レインは魔法で他人に化けるのがとても上手です。

 どのくらい上手いのかというと、『ミッケ!』と『ウォーリーを〇せ!』で鍛えた作者の目も欺きます。

 ……逆にしょぼく見えるな。

 あと察していると思いますが、初期のプロットは仕事していません。作者を置いて家を飛び出していってしまいました。
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