雨の日に生まれた戦士がダンジョンに行こうとするのは間違っているだろうか   作:柔らかいもち

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 息抜き(現実逃避とも言う)してたら完成してた。

 最初の頃は三千文字いってりゃいいかー、って思っていたのに五十話あたりからずっと四千文字超えてた。

 今回もあとがきに補足説明があります。

 ではどうぞ。


六十六話 『絶望(黒竜)』の力・『憎悪(レイン)』の力 中

 輝く純白の炎を全身に纏う神鳥(ガルーダ)と氷を周囲に漂わせている穢れを知らない白き天馬(ペガサス)

 

 神々が常に発散している神威に近しい波動を持つ存在……『精霊』がレインの手元に展開された魔方陣より二柱、顕現した。一目で普通の精霊と一線を画すと感じさせる精霊達は、そうすることが当然のようにレインの横へ侍った。二つの白は暗雲に覆われた都市で鮮烈な光を放っていた。

 

 総身は17階層に出現する巨人『ゴライアス』に匹敵するほど大きい。

 

「炎の大精霊フェニックス……氷の大精霊クリュスタロス……!?」

 

 異常な出力の風が乗せられた【剣姫(アイズ)】の剣すら通さない竜の鱗。生半可な攻撃が通用しなくなったレインの『耐久』を突破するために参謀(リリ)の指示で『クロッゾの魔剣』、それも最も火力が高い長剣型の真紅の『魔剣』に蓄力(チャージ)をするベルは、子供の頃に読んでいた英雄譚の一幕から抜き出した名を口にする。

 

 『フェニックス』と『クリュスタロス』。

 

 どちらも迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)()()で登場する大精霊だ。大英雄アルバートの生涯に寄り添った風の大精霊『アリア』や、始まりの英雄アルゴノゥトのためにその身を『精霊の剣』へと変化させた(いかずち)の大精霊のように人に手を貸した精霊達と違う、人類の敵対者となった『異端の精霊』。

 

 低級の精霊にも敬意を払うエルフ達ですら、この二柱には嫌悪を向ける。神々によって人類を救うために遣わされた精霊。その中で最も力を与えられた筈の大精霊の二柱は、存在理由を否定するかの如く唐突に人類を滅ぼそうとした。

 

 焼き払う。凍らせて砕く。魔法種族(マジックユーザー)であるエルフを超える『魔法』を使える精霊に、人類は碌な抵抗もできぬまま殺された。最後は互いが戦って弱っているところを狙われ、同じ大精霊によって封印されることで物語は終わるが、二柱の最後の抵抗は北の大地に溶岩と永久凍土で構成された死の大地を生み出したという。

 

 間違いなく『古代』の怪物達に匹敵する邪悪な精霊……いや、『魔獣』!。

 

「馬鹿な……ありえない。そんなこと、あってはならないだろう……!」

 

 そして、ベル以上に驚愕し、絶望しているのがフェルズ。

 

 『スキル』を抑え込める魔道具(マジックアイテム)を制作できないかと依頼された時、フェルズはレインの【ステイタス】を見ている、限界を突破した能力値(アビリティ)も『魔法』の効果も一つ残らず。無論『詠唱連結』の特性も確認していた。

 

 しかし『詠唱連結』を併用した時の効果は正確に把握していない。レイン本人に『魔法』を試しに発動してもらうのを拒否されたこともあるが、フェルズの予想では各魔法の威力増強が精々であり、リヴェリアのように魔法効果・出力・威力を変容させるまでのものではないと思ったため、その時も強く迫ることなくあっさりと引き下がった。

 

 当然である。王族妖精(ハイエルフ)という『魔法』に特化した種族でも特別な存在であるリヴェリアですら九種。ただでさえ【憎悪魂刻(カオスブランド)】によって無数の『魔法』が行使できるレイン。そんな彼の『魔法』が彼女と同様に変容するなど……誰が想像できるだろうか。そもそも超短文詠唱でありながら『詠唱連結』が含まれている時点で異常だというのに。

 

 三種の精霊使役魔法、三種の砲撃魔法、三種の対軍魔法。これらは全て精霊の『魔法』、故に従来の『魔法』に比べ威力と効果は桁違いだ。そこに回復魔法と大規模攻撃魔法を加えた計()()()がレイン本来の魔法数。

 

 突如出現した精霊に正体を知る者も知らない者も攻めあぐねるが――させるものか、と身体に流れる血の囁きとダンジョンでの経験から行動させる前に殺すべきだと判断したアイズが、黒い嵐を纏って斬りかかった。

 

「ッッッ!!」

 

 音無き咆哮を上げながら跳躍し、驀進の勢いと黒風を全て剣に乗せた回転切り。防御も知覚も不可能と思える音を引き千切って置き去りにする斬撃は直撃するも、やはり竜鱗の上を滑り、剣はその身を削られる。

 

(足りない。力が、足りない)

 

 憎いのに、相手(黒竜)がどうしようもなく憎いのに、相手(レイン)の眼に復讐姫(アイズ)は映っていない。今も攻撃が当たっているのは『脅威』と判断される力がないから防がれていないだけ。それがどうしようもなく悔しくて、腹立たしくて、憎い。

 

(力を……もっと力を!)

 

 過剰な風によって身体から上がる悲鳴を糧にしていた【復讐姫(アヴェンジャー)】が所有者(アイズ)渇望(オーダー)に歓喜し、その意志と心を呑み込んで、どこまでもどこまでも、黒く染め上げていく。

 

 『人形(いま)』の仮面が砕け散って『憎悪(かこ)』の仮面がはめられる。『戦姫』と呼ばれるに至った少女が憎悪を否定されないために、金の瞳に黒い火の粉を散らしながら絶殺の意志を纏って竜の懐へ潜り込んだ。

 

「―――――――――――――――――ッ!!!」

 

 袈裟斬り、大薙ぎ、刺突、斬り上げ、振り下ろし。

 

 剣で繰り出せる攻撃という攻撃を放つ少女。裂帛の雄叫びを喉から引きずり出す彼女は時間と共に失われていく余裕に、技の冴えに、壊れていく己の半身に目を向けない。命の限界を訴える思考も燃料にして剣を振るう。

 

 大好きな母と同じで嬉しかった金の髪が風に煽られはためいて、視界を覆って鬱陶しい。関節や眼球を狙っていた父の斬撃も、今や狂ったように鱗を殴るだけの滅多斬りに成り果てた。無意識がこのままじゃ駄目だと誰か(なかま)を探そうとしても、何故か瞳は黒い鱗以外を映してくれない。

 

 荒々しい暴風の勢いは止まらず、黒い炎は猛り続ける。『魔法(かぜ)』と【復讐姫(ほのお)】が互いを貪り、全てを焼き焦がす黒き炎嵐になっていく。炎嵐に包まれた命が大切な何か(おもいで)と一緒に燃える音がした。

 

 そして――。

 

「……耳元でぶんぶん聞こえる黒い羽虫の音が五月蠅いな」

 

 ――命を賭けた少女の猛攻撃は――。

 

「邪道な方法で大精霊の力を引き出されるのは不愉快だ」

 

 ――無造作に、本当に虫を追い払うような仕草で振り払われた手で剣を弾かれ、止められた。

 

 剣を握っていた右手が千切れそうなほど後方へ引っ張られる衝撃。肩の肉と骨が潰れかけた。剣を離さなかったことが奇跡だ。

 

「身の程を思い知れよ、小娘」

 

 致命的に硬直する少女に、『竜』は冷気を纏う左手を向け、

 

「――【凍え震えろ(フリーム)】」

 

 唱えた。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「「【ヴェール・ブレス】!」」

 

 仲間の危機を感じたエルフの師弟がフィンの指示を待たず防護魔法を使う。精神疲弊(マインドダウン)寸前まで精神力(マインド)を削って召喚された翡翠の光鎧はアイズを含めた【ロキ・ファミリア】、四名の【フレイヤ・ファミリア】、主神(ヘスティア)を除いた【ヘスティア・ファミリア】、『異端児(ゼノス)』達全員を二重に包み込む。

 

 咄嗟に風を前面に噴出しながら両手を交差させた防御態勢を敷いたアイズ。地を蹴って距離を取ったところで、彼女は自分に起きた変化に気付いた。

 

 風が止まっている。『魔法』だけではなく『スキル』も……後者は『魔法』が解除された影響で停止したのだろうが……身体の中で暴れまわっていた力の奔流が嘘のように消えていた。あるのはリヴェリアとレフィーヤが与えてくれた緑光の加護(ヴェール・ブレス)のみ。後方にある建物や人に影響はない。

 

対象(わたし)の『魔法』を解除するだけ?)

 

 これが大精霊の力――詠唱内容から判断するに氷の大精霊(クリュスタロス)の方――であるならば……正直、弱すぎる。『呪詛(カース)』と異なり代償(ペナルティ)なしで使用できて、更に複数相手に使えると考えるならば凄いと思えるがそれ止まりだ。裏を返せば『呪詛(カース)』で代用できる程度の力でしかない。『人造迷宮(クノッソス)』全域に届く風を呼び出すアイズの『魔法』と比べ物にならない。

 

「……【暴れ吼えろ(ニゼル)】」

 

 もう一度『魔法(エアリエル)』と【復讐姫(アヴェンジャー)】を接続する呪文を唱える。もしかしたら『魔法封じ』や『スキル封じ』も含まれているのかもしれない。右肩が一番熱と鈍痛を発しているが、他の箇所だって似たようなものだ。愛剣も、もはや鈍器か拷問用具と言われた方が納得できるくらいガタガタになっていた。

 

 だが、そんなことは関係ない。『スキル』がなくても、『魔法』が使えなくても、武器が壊れても戦う。疲労で沈んだ足に力を入れ、そのまま前に進もうとして、

 

「――ゴフッッ!?」

 

 喉からせりあがって来た()()()()()()()()()()

 

 反射的に口元に当てた結果、血で汚れた手を目にして、防護魔法に含まれる微量の回復効果で得られた余力と体力が一瞬で奪われた。混乱しそうな頭で原因を探ろうとした瞬間。

 

「――ぁああああああああああっ!?」

 

 全身がバラバラになりそうな痛みが襲い掛かった。まるで神経という神経、肉という肉を抉って鋭利な刃物を突き立てられたような激痛。更には顔と四肢の血管が音を立てて木の根のように浮かび上がる。

 

 身体を抱きすくめながら倒れたアイズの耳朶をレインの声が揺らす。

 

「大精霊は『大神』に類する特別な精霊だ。極めれば……精霊の本質を理解すれば『神の力(アルカナム)』と似たような権能を使える。法則や概念を無視した特殊な『奇跡』をな」

 

 『奇跡』だと? ふざけるな、こんなものが『奇跡』であってたまるか。そう叫ぼうとしたアイズの喉からは血の塊しか出てこない。口だけでなく鼻からも出血が始まった。

 

氷の大精霊(クリュスタロス)本質(ちから)は『凍結』。動く物体のエネルギー、発動された『魔法』に発動するための魔力回路、音や風のように見えない現象、あらゆる存在を凍らせることができる。凍ったものは止まる……こんな風に」

 

 左手を横にかざす。Lv.3を筆頭にした上級冒険者のエルフ六名の手で射られ、風を切って飛来していた矢はレインの左手に当たる直前でピタリと止まった。一瞬の滞空を経た後、矢は重力に従って落下し、空しい音を立てて転がった。矢を放ったエルフ達は不可解な現象に放心し――自分達の額や心臓に突き刺さる寸前で防護魔法に弾かれた矢に顔を青くした。

 

 レインの足元に転がっていた複数の矢。それらは彼が指を鳴らした途端、まるで命が宿ったかのように飛び跳ね、エルフ達の急所を貫こうとした。気を抜いてしまった彼等は、本来避けれる程度の速度だった矢も避けれず命を落とすことになるはずだったが、防護魔法が命を繋いだ。

 

 ――ここで死んでいた方が彼等にとって幸せだったかもしれないが。

 

「凍ったものは消える訳じゃない。落ちていた矢は俺が『凍結(まほう)』を解除したから、また飛び始めた。お前は精神力(マインド)を通すための魔力回路が凍っているのに『魔法』を使おうとしたせいで自壊しかけた。今のお前は身体中に精製金属(ミスリル)を埋め込まれた状態同然。『魔法』を使おうものなら破裂して、汚い肉塊になるぞ」

 

 言葉を続けるレインにアイズは何の返事もしないまま、ひたすら睨み続ける。レインによって『魔法』と『スキル』の発動を阻害されたことで開けた視野が捉えたのだ。仲間達が全方位に広がり、一斉攻撃の陣形を整えるのを。

 

 レインも仕掛けようとする気配を感じているだろう。それを気にする素振りも見せずペラペラと話されるのは癪に障る。だが、その傲慢が仲間に時間を与えるなら耐えてやる。もう一人ではないことを思い出した少女は、その時が来るまで注意を引き付け時間を稼ぐ。

 

 アイズがそう考えた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そういえば。お前の風、()()()()()()()()使()()()()()()

「――――――――――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬の出来事だった。

 

 ――階層主の咆哮(ハウル)以上の怒声を炸裂させ、少女は足から血が噴き出る力で大地を踏みしめ渾身の大斬閃を繰り出し――『竜』を斜めに両断した。

 

 ――けれど、それは『竜』の残像で。『竜』にとってただの移動でしかなくて。『竜』は死神のように背後に立っていて。

 

 ――少女の腹から『竜』の手が飛び出した。その爪は暖かい血で真っ赤になっていた。

 

 『竜』の黒手が引き抜かれ、少女の身体がゆっくりと前に傾いていく。唇と腹部に空いた穴から血が溢れ、少女の戦闘衣(バトル・クロス)を赤く染めた。カキッ、と手から滑り落ちた細剣が道の溝に墓標のように突き立ち、すぐ傍に少女は倒れた。ピクリとも動かない。少女の腹部からはじわじわと血が溢れていく。

 

「【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】――【ヘル・フィネガス】」

 

 一部始終を見せつけられた『狂戦士(バーサーカー)』が命令を下す。

 

「――ぶち殺せぇええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!」

 

 具体性なんて欠片もない無茶苦茶な指示(オーダー)。しかし疑問を抱く者はいない。作戦は既に伝えられている。

 

 フィンの怒号が打ち上がった直後、レイン直下の地面が勢いよく割れ、光り輝く金属質の巨人が現れる。

 

 『人形兵(ゴーレム)』。『賢者』を名乗ったフェルズにしか作成できない総額十億ヴァリスを超える意思なき戦士。動きは鈍重そのものだが、力と硬さだけは深層域のモンスターより遥かに強かった。

 

 人形兵(ゴーレム)はまるでアイズとレインを隔てるように――事実、フェルズがそう操作した――間に入り、そのまま覆い被さるようにレインを拘束した。

 

 フェルズの隠し玉が敵を拘束したのを確認した瞬間、【ロキ・ファミリア】の魔導士達は炎、氷、雷、多種多様な魔法の雨を降り注ぐ。ほぼ同時に、武器を持っていた者が武器を()()()()()

 

 近づけば手を出せる人数が限られる上、魔導士達の邪魔になる。そしてフェルズの情報提供で遠距離の『魔法』が通用しないことも判明している。そのため、魔導士達の『魔法』を目眩ましとして活用し、武器の投擲を遠距離攻撃とする作戦が立てられた。

 

 無論、これだけで倒せるとは微塵も思っていない。フィンやティオナによる第一級武装の投擲すらも目眩ましにして遂行する本命は、ベルが限界まで蓄力(チャージ)した『クロッゾの魔剣』による砲撃。更にその攻撃を隠れ蓑にしつつ、既にアイズの『黒い風』と黄色の『クロッゾの魔剣』の魔力を《フロスヴィルト》に宿したベートが少しでも吸収し、ぶつけること。

 

 遠距離魔法を己が精神力(マインド)として吸収して無効化する『反魔法障壁(アンチ・マジックフィールド)』。フィンとフェルズはアイズの黒風にちっとも反応しない『反魔法障壁』に対し、『スキル』の混ざった『魔法』ならば通り抜けるのではないかと推測し、見事に当てていた。

 

 ()()()()()()()となる危険という言葉が生温い特攻に、ベートは躊躇いなく了承した。彼の覚悟を示すが如く、銀色のメタルブーツは許容量を超えた『魔法』を宿しながら耐えている。

 

 ベルが撃つタイミングは囮の『魔法』が着弾した直後。魔方陣が刻まれた障壁を見たベートが駆けだした瞬間、ベルは白く輝く『クロッゾの魔剣』を振り抜いた。

 

 音なく走り抜けるのは炎ではなく直径五M(メドル)を超える『純白の極光』。素の状態で都市最強魔導士(リヴェリア)に匹敵する炎を打つことができた『魔剣』の火力は、全てを滅する破壊の光に至っていた。

 

 その光に僅かとはいえどベートは右脚を触れさせる。肉と血が蒸発する音はない。生涯で一番地獄だと断言できる灼熱の痛みに、ベートは瞳を柘榴(ザクロ)のように充血させながら、

 

「がるぁああああああああああああああああ!!」

 

 跳んだ。生涯最後で最強の一撃を『竜』に叩き込むために。

 

 ――【ロキ・ファミリア】の選択と作戦は全て正解だった。仮に接近戦を挑んでいれば、炎の大精霊(フェニックス)氷の大精霊(クリュスタロス)が意図的に抑えていた熱気と冷気を解放させ、壊死、凍死、焼死していただろう。

 

 攻撃も素晴らしい。この時の一撃は『黒竜』に挑む直前のレインを超えていた。

 

 ()()

 

 今のレインには……それでも通用しないのだ。

 

 【英雄願望】の代償で体力と精神力(マインド)をごっそり持っていかれ倦怠感に耐えていたベルは、何も聞こえないことを不穏に思い、力を振り絞って顔を上げて……見てしまった。

 

 【ロキ・ファミリア】が()()していた。ほとんどの者に息()ある。数えてわかる五体満足なのはアイズとリヴェリア、レフィーヤのみ。それ以外はフィンも、ティオナも、ティオネも、ガレスも、ベートも、全員が四肢か目鼻耳を失くしている。内臓が飛び出している者も。

 

 彼等の身体には武器が刺さっていた。投擲した武器だ。レインが全ての武器を投げた人物に投げ返したのだと、ぼんやりと理解した。

 

『……』

 

 予備選力として待機していた『異端児(ゼノス)』は、初めてレインに出会った時の言葉を思い出していた。

 

『俺は間違いなく世界最強。オラリオの冒険者全員が攻めてきても無傷で勝てるね』

 

 宴の肴、笑い話になっていたセリフ。煙を黒い翼で吹き飛ばし、傷一つなく君臨する『竜』は嘘を吐いていなかった。活力を奪われた蜥蜴人(リザードマン)と骨の愚者の手から曲刀(シミター)短杖(ワンド)が零れ落ちる。

 

「【埋葬せよ、雷霆の剣】」

 

 そしてベルは。

 

 酩酊したように、笑っていた。

 

 彼の瞳には、レインの手で収束する雷が救いの光に映った。

 

 彼の心はもう、絶望で黒く染まっていた。




 この時のベル君はまだ心が強くないです。強くなったベル君でも『深層』の暗さだけで心折れそうになるのに、こんだけ力の差を見せつけられたら絶望するよね。

 あとベル君はスキルのせいで少しの間耳が聞こえません。だから悲鳴とか苦痛の声とか破壊音とか聞こえなかった。

 武器投げてきた奴等はそのままクーリングオフ(物理)、お代は部位欠損です。魔導士にはゴーレムを千切った欠片を投げつける。壁を貫いて飛んでくる超硬金属(アダマンタイト)。もちろん音速。

 精神力(マインド)を全身から集める描写があるし、魔力回路あるよね?

 クロッゾの魔剣は本当ならないですが、ウィーネを届ける時レインがいたのであります。

 ベートの装備がこんなことできるかは知らない。

・フェニックス。どこかの馬鹿がフェニックスを殺せば永遠の命が手に入ると吹聴し、何度も殺しに来る人類にキレた精霊。片っ端から人類を殺そうとする。どうしてレインの『魔法スロット』に発現したかは不明。欲のないレインに懐いている。

・クリュスタロス。原作レインのクリス的存在。こちらは悪い人間だけを狙って殺していたため(普通の精霊ならほっとく悪人)、フェニックスを止めようとしていた。結構不運。こちらもどうしてレインの『魔法スロット』に発現したのか不明。迷わず進むレインに懐いている。

・【凍え震えろ】。本当に何でも凍らせる。生物に使えば生命活動を停止させられる。魔法の無効化でもしなけりゃ防げない。これで凍らされた矢とか『魔法』は消滅する訳ではないので、レインが解除すればまた発動。代わりに消費精神力(マインド)が高い。『黒竜』に勝つ前のレインが気軽に使えないくらいに。

 アルゴノゥトの話で『大精霊』は大神に類するとあったし、アイズの風も外伝十二巻で特殊なことになってたし、こんな力があるんじゃないかなーと思いました。フェニックスの権能は多分次。無理だったら別の所で。

 次回はようやく【フレイヤ・ファミリア】が動く。決して漁夫の利を狙っていた訳じゃない。それとベル君の真ヒロインも出るか……? ベル君はどうなるのか。

 もしこんな存在がいたら作者は心が折れます。

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