11代目の大空へ〜next generation REBORN〜 作:くぼさちや
こんなお気に入り者数ゴミすぎて放置してた小説に感想くれるとは(泣)
そして単純なやつもいたもんだ。
感想一つで普通に執筆再開する作者がいるとは。
「死ぬ気で......友のため、不当の輩を成敗してくれる!」
オレンジ色の波紋がテルの体から発すると、着ていた制服がパンツだけを残して弾け飛んだ。額には波紋と同じオレンジ色の炎が灯り、その瞳の奥には熱い闘志が揺れている。
大哉の目が見開かれた。
あまりに異常な光景だ。誰に何をされたわけでもないのに、いきなり倒れたテルが起き上がったかと思えば、半裸になって訳のわからないことを宣っている。しかし大哉が驚愕したのはその点ではない。
「その額の炎、貴様それをどこで!」
「男が拳を固めたのであれば、もはや双方に言は不要。命を賭してかかってこい」
テルは右の拳を大哉に向かって突き出して見せた。額の炎が気になるところだが、戦意を持って向かってくる相手に対し、大哉の取るべき行動は決まっている。徹底抗戦だ。
「そうか、見逃してやるつもりだったが貴様がその気ならまとめて再教育を施すまでだ。話はすべて風紀委員室で聞かせてもらう。早々に果てろ!」
大砲のような拳がテルに迫った。しかしテルは逃げるどころか前に出た。お互いの距離が一気に縮まる。
ろくに戦いもできない相手だと甘く見ていた。体格一つとっても大哉に大きく分があるし、だからこそ拳を振り上げた自分にまさかテルが向かってくるなど想像もしていなかった。
「なに!?」
「はああああああっ!」
突き出した大哉の剛腕がテルの頬を掠めた。最低限の動きで、まさに紙一重で避けられた大哉の拳が空を切る。そしてカウンターに放たれたテルの拳が、岩のように硬く隆起した大哉の腹に深々と突き刺さった。
「成敗!!」
「ぐおおっ!」
肺の空気が残らず口から吐き出された。鉄拳ともいえる重い拳から生まれた衝撃が大哉の背中から虚空へ抜けていく。
一撃で足元がぐらつく。衝撃に押し負けてそのまま背中から倒れるという不名誉をギリギリこらえるが、崩れ落ち、地面に付いた両膝がまるで言うことを聞かない。
(馬鹿なっ...! この俺が?)
大哉は地面に手をついた。
歯を食いしばって痛みに耐え、前かがみでうずくまったままどうにか顔だけを持ち上げる。するとそこには仁王立ちで見下ろす勝者の姿があった。静かな闘志をたたえたまっすぐな瞳が大哉を見つめている。
「大哉とやら、以後よくよく改心致せ。お上にも情けはある。風紀を正し、清くあろうとするその心意気に免じて、これにて一件落着!」
そう言うとテルの額から炎が消えた。
「ん? え、ちょ!!??」
正気に戻ったテルは自身の体を見て狼狽した。なにがどうなっているのかわからない。状況も読めない。ただし、今自分が由緒ある学び舎のど真ん中で半裸でいる、ということだけは即座に理解できた。
「きゃあーーーーーーーーーー!!」
男にあるまじき黄色い悲鳴が、並盛の空に響き渡った。
◯
「オイコラどこだリボーンてめえこの野郎!! ただでさえ汚物まみれの俺の黒歴史に閲覧禁止ページ作ってくれやがって!! テメーの血で清算してやろうかああん!!??」
継ぎ接ぎしてどうにか形だけは取り戻した制服を身に着け、テルは半狂乱の様子で自宅に直帰した。血走った両目が自室を隈なく見渡すとテルのゲーミングチェアに腰掛けエスプレッソの香りを楽しむターゲットの姿を捉えた。
「なんだ一日目から自主早退か? そんな根性じゃあボンゴレ11代目のボスにはなれねえぞ?」
「うるせえ!! あんな状況で学校にいられるやつは根性があるんじゃねえ、ただの露出狂の変態だ!! あのあと俺にどんなあだ名が付いたか知ってるか? 全裸御奉行だぞ!? 誰が全裸だせめて半裸って言えや!!」
怒りのままテルはリボーンの胸ぐらに手をかける。と同時に手首を捻り上げられた。
「いでででででで! ちょ、外れる! 手首が外れる!!」
半狂乱から一変、半泣きで痛みを訴えるテルの悲鳴など聞こえていないかのように、リボーンはエスプレッソに口をつけた。帽子のつばに乗ったレオンが大きなあくびをする。
「まずはその貧弱さから叩き直してやる。今日はこのままみっちり鍛えて」
その言葉は不意になったインターホンによって遮られた。
「ん?」
テルは訝しげな様子で部屋の出入口を見やる。
来客の心当たりはない、というかそもそも気軽に自宅を訪ねてくるような友だち自体いない。ということは宅配か?とも思ったがそれも違う。執拗なインターホンの連打ははっきり言ってクレームものだ。ともすれば近所の悪ガキのいたずらかもしれない。
「収まったな」
ガンガンガンガン
やはりいたずらだったのかと思っていると、今度はテルの部屋の窓から音がした。どうやら外から誰かが雨戸を叩いているようだ。テルは窓を開け、日中寝るために長く締め切ったままだった雨戸に手をかけると、
「おりゃ!!」
外から蹴破られ、窓のサッシから外れた雨戸の下敷きになった。
「ようテル! 俺も学校サボってきたぜ!! ってなんだ? いねえのか?」
「いんだろここに」
雨戸の下から這い出てきたテルは怒気を含んだ声音でうめいた。
「そんなとこで何してんだ? あ、かくれんぼか! にしても暗いしジメッとした部屋だなぁ〜。きのこが生えてきそうだぜ」
「他人の家ぶっ壊した挙げ句に小学生みたいな結論だすな! お前のせいで潰されたんだろうが」
「わりーわりー、ほれ」
翔一の差し出した手を握ってテルは立ち上がる。なにかスポーツでもやっているのだろうか。細身に見えるが、引きこもりだったテルと違って、思った以上にがっしりとした手だった。
「あのあと長嶋と横山から聞いてな、なんでもあの風紀委員長をお前がぶっ飛ばしてくれたらしいじゃねえか。」
「長嶋と横山? ああ、お前の取り巻きの凸凹コンビか」
どうやらあの二人が駆けつけたところでテルと大哉の戦闘が始まったらしい。一部始終を見ていた二人から話を聞いて翔一は気を失ってからの状況を把握したようだ。
「お陰で命拾ったぜ。ありがとさん。なんで今まで休んでたのか知んねーけど、またがっこー来いよ。お前とは仲良くやってけそうだぜ」
その言葉で翔一の意図をテルは汲み取った。要するに早退した自分を気遣って顔を出してくれたのだ。テルが転校生ではなく、一年もの間学校に来ていなかったこともおそらくわかったうえで、風紀委員相手に共闘したとはいえ今日一日の短い付き合いでしかない自分のことをだ。
風紀委員長のような肩書もなく、翔一の周りに人が集まっていく理由はこれなんだろうな、とテルは思った。並盛中学校を影から牛耳る裏のボス。そう聞いたときは物騒にも思ったが、なんてことはない。彼自身の人望とカリスマの成せる業だ。
「じゃあ、俺とつるまないか?」
「ん?」
もともと味方に引き入れられれば都合がいいと考えていたが、今はそれだけじゃない。
喧嘩の強さは目の当たりにした。大哉相手には遅れを取ったとはいえ、かなりの人数の風紀委員を相手に互角の大立ち回りを演じてみせた。
なにより翔一の、風のように自由で奔放な生き方にほんの少しだけ憧れを持った。
様々なしがらみにがんじがらめになっている自分とは正反対の生き方。そのしがらみの中で見つけ、選び取ったボンゴレ11代目という生き方を選んだことに後悔はない。それでもテルにとって得難いものを翔一は持っている。
自分にはないものを持っている。
だからこそ自分ではどうにもできないようなことでも翔一ならやってのけてくれるかもしれない。そんな期待をテルは翔一持っていた。
「俺はこの並中で天下を取るつもりだ。いや、並中だけじゃない。その先の目標のために戦ってくれる仲間が必要なんだ。お前とだったら今日みたいにデカいことやれる気がする」
今度はテルが翔一に右手を伸ばした。
「この手を取って、一緒に戦ってくれねえか? 退屈だけは絶対にしないぜ」
その手を翔一は握る。
「ああ、よろしく頼むぜテル。これからお前は、俺の部下だ!」
「は?」
僅かな沈黙。清々しい笑みを浮かべる翔一の犬歯がきらりと光ったところでテルはその言葉の意味をようやく嚥下した。
(はぁあぁあぁあぁあぁ!?)
テルは握り返した翔一の手をすぐさまはたき落とした。
「ちょっと待てなんで俺がお前の下に付く流れになってんだ!!」
「ん? だってお前、風見一派に入りたいんだろ?」
「んなこと一言も言ってねーっつの! 逆だ逆! お前が俺の下に付いてくれって言ったんだ!!」
「えー、だってお前ちょー弱っちいじゃん。それに誰かの下に付くのはガラじゃねえ。俺は風だ! 誰にも縛れねえし誰にも止められねえ!!」
「こ、こいつ〜〜!!」
テルは翔一の実力は高く評価していた。しかし同時に侮ってもいた。なにせこの奔放さである。そう簡単に制御できるはずもなかったのだ。
どっちが上だの下だので言い合う二人。そんな様子を見ながらも、マグカップを傾けるリボーンの表情は変わらない。しかし、口の端が僅かだが、笑ったようにつり上がった。
(いい友達ができたな、テル。最後にインターホンを鳴らしてから二階のここまでよじ登ってくるのに10秒ってとこか。学校での動きを見ても、悪くねえ身体能力だな。いい部下になりそうだが、それはお前次第だぞ)
◯
ノートの上をシャーペンが走る音。それを除いて部屋は静寂に包まれていた。
「うっ」
不意な脇腹の痛みに大哉は顔をしかめて宿題の手を止める。昼間テルから受けたダメージがまったく抜けていなかった。
(この様子だとアバラが二、三本は折れているな。平和な日本で多少なりとも腑抜けていたとはいえ、大したやつだ)
浅く呼吸をする。徐々に痛みが収まっていくのを確認して、再びシャーペンを走らせようとすると、不意にポケットの中でスマートフォンが鳴った。彼の性格からは似つかわしくない、背面に貼られた髑髏のステッカーが卓上ライトに照らされて銀色に光る。画面を見るとそこには“獄寺隼人”の文字があった。
「親父か、久しぶりだな。今はどこの国にいるんだ?」
『今朝の便でイタリアに帰ってきた。それより並盛中の制圧は順調か?』
「ああ、今日も賭場の取り締まりを行なったよ。首謀者も制裁した。しばらくは大手を振っては動けないだろう。今後もきたるべき日に向け、主をお守りできるよう風紀委員の勢力を広げるさ」
ぽっと出の年下を相手に一撃で地に伏したとはとてもじゃないが言えなかった。なにより額のあの炎、それは今の時代、裏社会に生きる人間であれば誰もが知悉しているものだ。
(やはり、親父には話すべきか? いや、はっきりとしたことがなにもわからない今話しても余計な混乱を招くだけか)
『それでいい。照吉お坊っちゃんはとても繊細なお方だ。いつ学校に戻られてもいいように徹底して風紀を正しておくんだ』
「ああ、ただ本当にこちらから動かなくていいのか? 入学から一年、まだそのご尊顔すら拝見していない。無理に学校に連れて行くようなことはないまでも、せめてそばでお仕えするくらいのことは」
『余計なことはすんじゃねえ。お坊ちゃんは繊細な方だっつってんだろうが。それに照吉お坊ちゃんの不登校についてはもう心配いらねえ』
「というと?」
『先日、リボーンさんがイタリアを発ったらしい。行き先は日本だ』
「!? 十代目をボンゴレのボスに育てたというあの?」
『ああ、十代目がお坊ちゃんを教育するために派遣なされた。そうなりゃ並中に戻られる日もそう遠くねえ。お前はその右腕としていつでもお役に立てるよう、間違っても次期ボンゴレファミリーボスに盾突くような奴がいりゃあ......』
「消してやる。そこに抜かりはないよ。あんたがスラムで俺を拾ったこと後悔はさせないさ」
『おう』
最後にそう一言を残して、獄寺は電話を切った。大哉はスマートフォンをポケットにしまう。
「いよいよこの時が来たか。しかしその前にあの額の炎、見極めなければならない。ボンゴレに与するものか、それとも仇なすものか」
大哉は首から鎖に通したリングを祈るように握りしめる。それはボンゴレファミリーの次期守護者の証、十代目守護者の持つボンゴレギアから複製された雷のボンゴレリングだった。
「主の堅固な盾となり、矛となるために」