戦姫絶唱シンフォギアーNo name monsterー   作:ハウスダストドラゴン

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居場所

今朝、妙に早く目が覚めた私は、同じく目覚めていたクリスと話していた。

 

「なぁ......もう一度フィーネのところに行ってみないか?」

 

クリスがポツリと問い掛けて来る。

 

「理由を聞いても?」

 

「あぁ、フィーネは刹那を一度殺した。このままだと関係ない奴らも大勢巻き込まれ続ける。だから、早くケリをつけないといけないんだ」

 

「成程。本来なら危険だと止めるべきなのでしょうが......私もフィーネとは早く決着をつけたいですし、分かりました。行きましょう」

 

私達は直ぐに立ち上がり、拠点にしていた廃アパートを後にする。

 

 

 

道中は何事もなくフィーネの屋敷に辿り着いたが、そこは地獄と呼ぶに相応しい有様だった。

米国人と思われる死体が幾つも転がっており、壁や天井のあちこちに血が飛び散っている。

 

「なんだよ......これ......」

 

クリスが呆然としていると、大きな音と共に扉が破壊され、司令が入ってくる。

 

「違う!あたし達じゃない!やったのは......」

 

司令の後ろから黒服の捜査員がぞろぞろと出てくるが、クリスを通り抜け、現場の捜査に入る。

 

「誰もお前がやったなんてこと、疑ってはいない。全ては君や俺たちの傍に居た彼女の仕業だ」

 

司令は怯えるクリスの頭に大きな掌を乗せ、そう言う。

 

「えっ!?」

 

私もクリスと同じく、司令がフィーネの正体に気付いていることに驚愕を表す。

 

「風鳴司令!」

 

「ん?」

 

捜査員が何かを見つけたようで、そちらを見ると、『I LOVE YOU SAYONRA』と書かれた紙が死体の上に置いてあり、捜査員がそれを手に取ると同時に空中で何かが切れる音が聞こえ、大爆発が起こる。

私は咄嗟にギア擬きを展開し自身を守り、クリスの安否を確認する為に立ち上がる。

辺りを見回すと、怪我人は出ているものの死者は居ない様だった。

そしてクリスは大きな瓦礫を掌に乗せた司令に抱えられていた。

 

「どうなってんだよ、コイツは......」

 

「衝撃波は発勁でかき消した」

 

「そうじゃねえよ!」

 

クリスは司令の腕を振り払い、大きく後ろに下がる。

 

「何でギアを纏えない奴があたしを守ってんだよ!?」

 

「俺がお前を守るのは、ギアのあるなしじゃなくて、お前よか少しばかり大人だからだ」

 

「大人......!あたしは大人が嫌いだ! 死んだパパとママも大嫌いだ!

とんだ夢想家で臆病者! あたしはあいつらと違う! お戦地で難民救済? 歌で世界を救う?いい大人が夢なんて見てるんじゃねえよ!」

 

「大人が夢を、ね......」

 

「どうやったら戦争を無くせるかなんて分からない!でも死んだらその方法を探すことすら出来ないじゃねぇか!」

 

クリスが心の叫びを声にする。

その様子は酷く痛々しかった。

 

「いい大人は夢を見ないと言ったな。そうじゃない。大人だからこそ夢を見るんだ。

大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだってちっとは増える。

子供の頃はただ見るだけだった夢も大人になったら叶えるチャンスが大きくなる。夢を見る意味が大きくなる。

お前の親は、ただ夢を見に戦場に行ったのか? 違うな。歌で世界を平和にするっていう夢を叶える為、自ら望んでこの世の地獄に踏み込んだんじゃないのか?」

 

「なんで、そんなこと......」

 

「お前に見せたかったんだろう。夢は叶えられるという揺るがない現実をな。お前は嫌いと吐き捨てたが、お前の両親はきっとお前のことを大切に思っていたんだろうな」

 

その言葉と同時にクリスの瞳には涙が浮かぶ。

司令はクリスを黙って抱きしめ、クリスが泣き止むまでそうしていた。

 

 

捜査員達が撤収作業をしている中、私とクリス、そして司令は向き合っている。

 

「やっぱり、あたしは......」

 

「一緒には来られない、か?」

 

「......」

 

「お前は、お前が思ってるほどひとりぼっちじゃない。刹那君も着いているだろう?お前が一人道を行くとしても、その道は遠からず俺たちの道と交わる」

 

「今まで戦ってきた者同士が一緒になれると言うのか? 世慣れた大人がそんな綺麗事を言えるのかよ」

 

「ホント、ひねてるな。お前。ほれっ」

 

司令は私とクリスに通信機を投げ渡す。

 

「あっ......通信機?」

 

「そうだ。限度額以内なら公共交通機関が利用出来るし、自販機で買い物も出来る代物だ。便利だぞ」

 

「ありがとうございます」

 

司令はやる事は終えたと言わんばかりに車に乗り込む。

 

「カ・ディンギル!」

 

クリスが司令に向かってそう叫ぶ。

 

「ん?」

 

「フィーネが言ってたんだ。カ・ディンギルって。そいつが何なのかわかんないけど......もう完成している、みたいなことを......」

 

「カ・ディンギル...... 後手に回るのは終いだな。こちらから打って出てやる」

 

司令はそう言うとアクセルを踏み、どこかへと走り出した。

 

「さて、これからどうしますか?」

 

「まずはフィーネとケリをつける。話はそれからだろ?」

 

「えぇ......そうですね」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「いえ、司令には適わないなと思いまして。私一人ではクリスを救えなかったですし」

 

「そんなこと気にすんなよ。一緒に居てくれるだけでも、結構楽になるもんなんだぞ?だからさ、ありがとうな」

 

少し前までのクリスの口からは決して出てこなかったであろう言葉を聞いて私は驚愕する。

 

「どうした?鳩が豆鉄砲食らったような顔して」

 

「クリスからそんな言葉が聞けるとは思っていなかったので驚いただけですよ」

 

「なんだよそれ」

 

私達は特に目的地も決めずに歩き出す。

その足乗りはいつもと違い、とても軽かった。

 

 

 

ピリリリリリ!!

通信機から着信音が鳴り響く。

 

「刹那です」

 

『ノイズが出現した!至急現場に急行してくれ!』

 

「了解しました」

 

「あぁ、わかった」

 

幸い歩いていた方向と同じ方向のため、ギア擬きを纏えば直ぐに辿り着けそうだ。

 

Killter Ichaival tron......

 

私はギア擬きを、クリスはイチイバルを纏い、現場へと走り出す。

 

 

 

私はノイズの群れを発見すると、拳を前に突き刺し纏めて炭にする。

ノイズがいなくなり、見晴らしが良くなった街路樹で、立花さんと翼さんが空中から攻撃を受けそうになっている。

 

「クリス!私では間に合いません!二人をお願いします!」

 

「しゃあねぇな!」

 

クリスはガトリングを連発し、空中のノイズを炭にする。

 

「あっ!」

 

立花さんが私達に気付いて声を上げる。

 

「ちっ! こいつがピーチクパーチクやかましいからちょっと出張ってみただけ。それに勘違いするなよ。お前たちの助っ人になったつもりはねえ!」

 

クリスは手に持った通信機を持ち上げそう言う。

 

『助っ人だ。到着が遅くなったかもしれないがな』

 

通信機から出る司令の言葉にクリスは赤面する。

 

「あはは!」

 

「助っ人......?」

 

立花さんは嬉しそうに笑い、翼さんは疑うような顔をしている。

 

『そうだ。第2号聖遺物イチイバルを纏うシンフォギア奏者......雪音 クリスと、君達もよく知る刹那君だ!』

 

「クリスちゃーん! ありがとう! 絶対に分かり合えるって信じてた!」

 

立花さんがクリスへと抱きつく。

 

「このバカ! あたしの話を聞いてねえのかよ!」

 

「とにかく今は連携してノイズを!」

 

「翼さんの言う通りです!この量のノイズを私一人では捌ききれません!」

 

三人が会話している間、その周りを守っていた私はそうボヤく。

 

「勝手にやらせてもらう! 邪魔だけはすんなよな!」

 

クリスは二人にそう告げ、空中のノイズを殲滅し始める。

 

『傷ごとエグれば 忘れられるってコトだろ?』

 

いつも通りの攻撃的な歌が流れる。

 

「空中のノイズはあの子に任せて、私たちは地上のノイズを!」

 

「は、はい!」

 

「では私はクリスが撃ち漏らしたノイズの撃墜を!」

 

『いい子ちゃんな正義なんて 剥がしてやろうか?HAHA!!さぁ It’s show time 火山のよう 殺伐 Rain さぁお前らの全部全部全部全部全部

......否定してやる そう......否定してやる』

 

歌い終わると同時に私とクリスは後ろのビルに飛び乗る。

すると、同時にバックステップした翼さんとクリスがぶつかってしまう。

 

「何しやがる!すっこんでな!」

 

「あなたこそいいかげんにして! 一人で戦ってるつもり?」

 

「あたしの仲間は刹那だけだ!こちとらお前らと馴れ合う気はこれっぽっちも無ぇよ!」

 

「っ!」

 

「確かにあたしたちが争う理由なんて無いのかもな。だからって、争わない理由もあるものかよ! こないだまでやりあってたんだぞ!そんなに簡単に人と人が......」

 

クリスが言い終える前に、私と立花さんの手がクリスの手に重なる。

 

「出来るよ。誰とだって仲良くなれる」

 

その言葉を聞き、ここは立花さんに任せようとクリスから手を放し、近寄って来るノイズの殲滅に当たる。

 

立花さんはもう片方よ手を翼さんへと伸ばし、その手を掴む。

 

「どうして私にはアームドギアが無いんだろうってずっと思ってた。いつまでも半人前はイヤだなーって。でも、今は思わない。何も手に握ってないから...... 二人とこうして手を握り合える!仲良くなれるからね」

 

「立花......」

 

翼さんも剣を地面に突き刺し、クリスへと手を伸ばす。

 

「あ......」

 

クリスは戸惑い、震えながらもその手を伸ばす。

その手を翼さんが力強く握った。

 

「んなっ!?」

 

驚いたクリスは手を放してしまう。

 

「このバカに当てられたのか!?」

 

「そうだと思う。そして、あなたもきっと」

 

「冗談だろ!」

 

クリスは赤面しながら目を逸らす。

 

「話は纏まりましたか?これ以上は流石に厳しいですよ」

 

「あぁっ!ごめんなさい!刹那さん!」

 

「いえ、気にしないでください。でも、親玉をやらないとキリがないですよ」

 

「だったらあたしに考えがある。あたしじゃなきゃ出来ないことだ。イチイバルの特性は長射程広域攻撃。派手にぶっ放してやる」

 

「「まさか、絶唱を?」」

 

立花さんと翼さんが声を揃えて問う。

 

「バーカ! あたしの命は安物じゃねえ!」

 

「ならば安心しました。ですが絶唱を使わないのならどうやって?」

 

「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで貯め込み、一気に解き放ってやる!」

 

「だがチャージ中は丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では危険すぎる」

 

「そうですね。だけど、私たちがクリスちゃんを守ればいいだけのこと」

 

「えぇ、私も賛成です」

 

「っ......!」

 

立花さんと翼さんはそれぞれノイズの殲滅へと向かう。

 

「嬉しそうですね?クリス」

 

「あぁ......そうだな。こんなにあったかい気持ちは初めてだ」

 

『なんでなんだろ? 心がグシャグシャだったのに......指し伸ばされた温もりは嫌じゃなかった』

 

クリスが歌い出した歌は、いつもの攻撃的な歌ではなく、とても優しく、暖かい歌だった。

以前、奏者達の歌は精神状態に大きく変化すると聞いた事があった。

ならばクリスは今、とても穏やかな気持ちなのだろう。

 

『こんなに......こんなに......溢れ満ちてゆく

光が......力が魂を......ぶっ放せ!』

 

クリスの纏う光がより一層強くなる。

 

「「託したっ!!」」

 

『激昂、制裁、鼓動! 全部...... 空を見ろ 零さない みつけたんだから......』

 

イチイバルの背中のパーツが変形し、ミサイル発射形態へと以降する。

 

『嗚呼ッ!二度と......二度と 迷わない! 叶えるべき夢を』

 

腰から展開されたミサイルポッドと、背中から展開された大型ミサイルが同時に発射される。

 

『轟け 全霊の想い 断罪のレクイエム』

 

ミサイルポッドから小型のミサイルが射出され、連射したガトリングの銃弾と共に小型ノイズを広域殲滅する。

 

『歪んだ Fakeを千切る My song 未来の歌』

 

大型ミサイルは次々と大型ノイズに直撃し、空中のノイズは殲滅された!

 

『やっと 見えたと 気づけたんだ きっと 届くさ......きっと』

 

「やった......のか?」

 

「ったりめーだ!」

 

「あはっ!」

 

(よかった......クリス。貴女は居場所を見つけられたんですね)

 

「やったやったー! あははー!」

 

立花さんが笑いながらクリスに抱きつく。

 

「やめろバカ!何しやがるんだ!」

 

戦いが終わり、全員がギアを解除する。

 

「勝てたのはクリスちゃんのおかげだよー! えへへ」

 

「だからやめろと言ってるだろうが!あたしはフィーネと決着を着けて、やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだ!」

 

「夢? クリスちゃんの? どんな夢?聞かせてよー!」

 

またもや立花さんがクリスに抱きつく。

 

「やめろバカ!お前本当のバカ!」

 

私はそんな微笑ましく、眩しい光景を眺めていた。

 

ピリリリリリ!!

 

立花さんの通信機が鳴り響く。

 

「はい」

 

『響!? 学校が......リディアンがノイズに襲われて......ガチャッ。ツー......ツー......ツー......』

 

「え......?」

 

立花さんが困惑した声を漏らした。

 




書くことが無ぇ!

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