戦姫絶唱シンフォギアーNo name monsterー 作:ハウスダストドラゴン
ルナアタックと呼ばれることになったあの出来事の次の日、私は変化した時鳥がどう言った物なのか検査する為、新設された二課の本部に来ていた。
あれから、一つだけ変わったことがあった。
それは......。
『久々の本部だな。つっても新設されたからあたしが居た頃の本部じゃないみたいだけど』
それが、この天羽 奏の幽霊のような物である。
最初は幻覚だと思ったが、私は彼女の性格や口調を殆ど知らないのでここまでの再現は出来ないだろう。
一日に数分程しか会話が出来ないようなので、殆ど会話することは無い。
『結局天羽さんはどう言った存在なんでしょうね?』
『さぁ?知らん。おっと今日はこれぐらいが限界みたいだな。じゃあまた今度』
そう言って半透明の彼女は消えていった。
赤外線による脳検査や血液検査、粘膜摂取によるDNA検査等を行う。
検査が終わり数分待機していると、室内のスピーカーから司令の声が聞こえてきた。
『刹那君。検査結果が出た。司令室に来てくれ』
「了解しました」
「失礼します」
私が司令室に入室すると、皆が重苦しい顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「刹那君。検査結果だが......君の身体に二つほど異常が見つかった」
「異常とは......?」
「まず、君の細胞と血液の一部が時鳥の因子を多数含む物に変異していた。異常なまでの回復速度も恐らくこれが理由だろう。もう一つは、君の脳の枷が外れた......いや、壊れたと言うべきだろう」
「脳の枷......ですか?」
「あぁ、人間の脳は普段10%しか使われていない。と言う話を聞いた事があるかね?」
「アインシュタインですか?」
「あぁ、だがこれは10%しか使われていなきのではなく、脳の10%ずつが交代で動いているだけではないかと言われている」
「成程」
「だが君の脳は交代などせずに常に100%使われている。五感は研ぎ澄まされ、身体能力も大幅な進歩を見せるだろう」
「良いことしかないのでは?」
「何故脳が普段全体で動かないと思う?理由は二つだ。一つは脳の疲労を軽減する為だ。そして二つ目は、過ぎた力は身を滅ぼすからだ」
「どういうことでしょう?」
「度の過ぎた筋肉痛とでも言えば分かりやすいか?」
「そういうことですか。ですが、私にはノイズを殺すという目的がある。この力を使わない訳にはいきません」
「そう言うのは分かっていた。本当だったら止めたいが、やめておくさ。君の覚悟が固いのも知っている。だが、君の目的はそれだけではない筈だろう?」
「えぇ。私はあの居心地の良い場所を守りたい」
「ならば良し!修行でもつけてやろうか?」
「やめときます。映画見たって私は強くなれません」
「む......そうか」
少し残念そうな顔をする司令。
やはりここに居る人達は皆優しいのだなと、改めて思った。
一月後。
拘束が解かれ、私はいつもと変わらずリディアンに通い出した。
「学期の途中だが、転校生を紹介する」
「雪音......クリスだ......」
いつもと違い勢いこそ無いが、その声は間違いなくクリスのものだった。
窓の外を眺めてボーっとしていた私はその声に反応して前を向く。
考えてみれば驚くような事ではない。
クリスは私と同い年、寧ろ学校に通っていない方がおかしいのだ。
「席は......黒崎の隣が空いてるな。そこにしてくれ」
その苗字に嫌気がさし、思わず担任を睨みそうになるが、必死に堪える。
「よろしく......って......刹那!?」
「はい、お馴染みの刹那さんですよ。クラスが同じなだけでなく席も隣とは、凄い確率ですね」
他のクラスメイトはなにやら小声で話している。
恐らく普段誰とも会話をしない私がクリスと親しげに話しているのに驚いているのだろう。
チャイムが鳴り授業が始まった。
以前とは違い、覚えようとすれば教科書を見ただけで暗記が可能になった。
これも脳の枷が壊れた影響なのだろうか。
そうして退屈な授業の時間は過ぎて行き、昼休みになる。
「雪音さーん!一緒にお昼食べない?」
「ごっ、ごめん!用事あるから......」
クラスメイトに誘われるも、クリスは逃げ出すように逃げていってしまう。
「気を悪くしたならすみません。クリスは本当は優しい子なんで、許してあげてください」
「以外だね。黒崎さんがそんな保護者みたいなこと言うなんて」
「そうですか?取り敢えず私はクリスを追いかけるので。それでは」
人通りの会話を終え、私はクリスを探し始める。
リディアンに転入してきて初日のクリスが各教室の場所を覚えているとは考えてにくい。
となると階段を登り降りするだけで行ける屋上か中庭ぐらいだろう。
だが、中庭は混雑しており、クリスがそこに行くとは考えられない。
「となると屋上ですかね......」
私は階段を登りきり、扉を開けると、鉄柵に寄りかかりながらあんパンを齧るクリスを見つける。
「クリス」
「ん?あぁ......刹那か」
「慣れませんか?」
「そうだな。居心地が良すぎて落ち着かないというか......」
「まぁ、わかりますよ。私も二課に所属したての頃は皆の優しさに戸惑いましたから。ゆっくり慣れて行けばいいんです」
「そうか......ありがとな」
ふとそこで、購買に寄らずにここに来た為、昼食が無いことに気がついた。
「あ......今からじゃ購買は......無理そうですね。」
「ん」
クリスが袋からあんパンを取り出し、差し出してくる。
「ありがとうございます。それにしても好きですね、あんパン」
「まぁな」
それからはいつも通り、脈絡の無い会話が続いていく。
「そういえば家はどうなったんですか?」
「刹那の部屋」
「え?マジですか?」
「マジだ」
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
そして放課後。
「おーい!刹那さーん!クリスちゃーん!」
寮へと帰ろうとする私とクリスに立花さんが走り寄って来る。
「皆でお好み焼き屋のふらわーに行こうと思ってるんですけど!一緒に行きませんか!?」
立花さんが指さす方向には小日向さんとルナアタックの時に居た三人の女の子が居た。
「どうします?クリス」
「まぁ夕飯の宛ても無いし、いいんじゃないか?」
「じゃあ決まりですね!!さぁ、行きましょう!!」
クリスと顔を見合わせ、お互いに笑う。
やはりここは、私には勿体ない程に居心地が良い。
感想待ってます。ものすごく待ってます。