戦姫絶唱シンフォギアーNo name monsterー 作:ハウスダストドラゴン
あれから数日間、雪音さんと会話をし続けるだけの意外と有意義な生活が続いている。
その中で雪音さんは自身の過去についても話してくれた。
私と境遇が似ていたことから、共感できることも多いのかもしれない。
今日もそんな時間が続くのかと思いきや、雪音さんはいつも来る時間になっても来ず、何かあったのかと疑問に思ったが、ここに居る限り行動出来ないのが現実だ。
仕方がないので構えを取り、鍛錬を始めた。
今日は来ないのかと思いきや、部屋の時計が正午過ぎを示したとき、雪音さんが昼食を抱えて入室してきた。
「今日は来ないのかと思いましたよ。何かあったんですか?」
「ただの任務だ」
ぶっきらぼうにそう答えた雪音さんは、いつもより機嫌が悪そうに答える。
「そうですか」
少しの間静寂が訪れる。
「デュランダルの奪取に向かってたんだ」
ポツリと雪音さんが呟く。
「それって私に言ってもいいんですか?」
「フィーネは気にしないだろ。お前は何も出来ないと思っているからな」
「少し癪ですが事実ですね。それで、成功したんですか?」
「いや、失敗した。アイツがデュランダルを起動してブッパなしやがったんだ。そのせいで現場である工場は全壊、奪取に失敗した。完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。あたしがソロモンの杖に半年もかかずらったことをアイツはあっという間に成し遂げた」
アイツ......と言うのは恐らく立花さんだろう。
翼さんは雪音さんとの戦いで絶唱を唄っていた。
一命を取り留めたとしてもまだ動ける状態ではない筈だ。
「彼女は聖遺物と融合していますからね......適合係数やフォニックゲインの値も大きいのかもしれません」
「そんなことはどうだっていいんだ。このあたしに身柄の確保をさせるくらいフィーネがアイツにご執心なのが気に食わねぇだけだ」
愚痴を言ったことで少し楽になったのか、雪音さんは最近習慣にすらなりつつある雑談を始める。
「そういやさ......お前はなんで戦うんだ?やっぱノイズへの復讐か?」
雪音さんがふとそんなことを言う。
「そうですね。それだけの筈だったんですけどね......最近はなんでも無い日常を守りたいという理由が出来ました」
「へぇ......意外だな」
「自分でも思いますよ。でも、立花さんや翼さんのいる日常は居心地が良すぎるんです。あと、できることならここから出た後も雪音さんと話したいとも思ってますよ」
「なっ!?お前本当のバカだな!!第一ここから出られる保証なんてないだろ......」
ここ数日になって、雪音さんの表情の起伏が激しくなってきた気がする。
少しだが私に心を開いてくれているのかもしれない。
もしそうだとしたら嬉しいと......そう思った。
数日後、いつも通りの時間に来た雪音さんだったが、午後に任務があるらしく、正午過ぎには出ていってしまった。
夜更けになった頃、了子さんが部屋へと入ってきた。
「お前のガングニール変異体のことは全て把握出来た。バリアコーティングや身体能力増強などの機能はあるものの、出力はまるで足りていないとんだ欠陥品だ。融合体と違い身体と完全に溶け合っているのは興味深いが、役には立たないだろう」
「そうですか。ご丁寧にどうも」
私は皮肉げに言い返すが、了子さんは興味が無いように話を続ける。
「そろそろ私も動く時だ。役に立たないクリスは捨てるとして......お前はどうしてやろうか」
その口から発せられた言葉に、私は立ち上がり、怒号を放つ。
「雪音さんを捨てるだと!?巫山戯るな!!彼女には貴女しかいないんですよ!?間違った方向に導いていたとしても、彼女の心の支えはもう貴女しかいないんだ!!」
「五月蝿い奴だ......。そうだ、お前は処分することにしよう。生きて帰すにはお前は知りすぎた。まだ私の正体を悟られる訳にはいかんのでな」
了子さんの身体が強い光に包まれる。
光が収まるとそこには、金のネフシュタンを纏う了子さんの姿があった。
「なっ!?ネフシュタンは雪音さんに預けているはず......」
「あぁ、先程の言葉には語弊があったな。『捨てる』のではなく、『もう捨てた』のだ。その時に回収してきた」
「了子さん......いや、フィーネ!!貴女はどこまで腐っているのですか!!」
急に胸の辺りが熱を発した気がした。
触れてみると、ネチャリという嫌な音がする。
見ると、ネフシュタンの鞭が胸に突き刺さっており、血が溢れている。
「カッ......ハッ......」
心臓を一突きされている、もう助からないだろう。
意識が徐々に薄れてゆく。
(まだ......あの人達と一緒にいたかったんですがね......)
私は......黒崎 刹那はこの日、間違いなく死んだ。
おお刹那よ、死んでしまうとはなさけない