解放者よ、再び 作:甘党
月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。
それは俺も同じことでいつの間にか17歳になった、石川健斗も同じことだった。
俺は二度目の人生を謳歌している。
この世界線では平和で、さらに治安がいいのが特徴だ。
魔法がないが科学と呼ばれる知識さえあれば、ほとんど何でもできる。
生活も車や電車などトータスでは思いも寄らない高速移動の道具や、ゲームや漫画などの娯楽の発達。トータスでは思いもしらないことばかりでかなり興味深いことがあった。
なによりも自分の意思で生活ができておりこの世界では何不自由もなく暮らしている。
「……いい天気だな。」
と教室でのんびりとお茶を飲む。
最近のお気に入りのメーカーのお茶とお菓子を飲む姿がどこかお祖父ちゃんくさいものがある
しかし精神年齢は30歳になっているのだ。どこかオヤジくさいことがあるのは当然だろう。
「まったく。そのお爺ちゃんみたいなのやめなさい。」
「ん?雫か?」
「えぇ。一体何しているのよ。」
「いや〜温かいお茶を飲みながらの和菓子って美味しくね?」
「…いや。そういうところがお爺ちゃんぽいのよ。」
「……雫はいらないの?」
「……いる。」
とまったりとお茶を淹れ始める
冬の初めが近づき体の底からあったかいお茶を取り出す。
「ふぅ。」
「……。」
とまったりしている俺と雫。
雫と呼んでいる少女は幼馴染の八重樫雫。ポニーテールの少女で表向きは剣道の流派を持つ全国制覇を何回もしたことがある少女で俺のオカンみたいな人だ。猫好き同士趣味も合うし
「…美味しいわね。」
「だろ?」
「……雫ちゃん。健くん何しているの?二人ともお弁当は?」
今は昼休憩中でありながらお茶とお菓子で時間を過ごしている白崎香織という俺の親友に当たる少女は苦笑している。
「ん?俺は三限終わりに早弁した。」
「……何しているのよ。」
「いや。だって腹減ったし。」
少し呆れた風にしている雫と苦笑している香織
「あんたって運動はしてないのによく食べるわよね?」
「運動してないってマラソン大会とか参加していて毎朝走っているからな。」
「……陸上部に入らないの?」
「趣味程度だからいいんだよ。あんまりタイムを気にするってよりも楽しんでやるのが俺の流儀だしな。散歩みたいなものだよ。」
「散歩でフルマラソン走りきるバカがどこにいるのよ。それも2時間50分くらいで走るのに。」
雫は一度苦笑したように見ている。まぁ普通ではありえないことだが
この世界でも俺はなぜか魔法を使える。
身体強化の魔法でマラソンを走ることすら生ぬるいのだ。
「てか香織。南雲起きているぞ。」
「えっ?」
そういうと10秒チャージの栄養補給食を取っている南雲はじめの姿がいる。
最初見たときは驚いたがそれでも南雲のイメージとは違うものだった。
こっそり未来視を発動する。
あのときは白崎香織もいたはずだ。
香織が向こうに行った瞬間未来が見える。しかしあまり明確ではなく、未来が変わることがあるってことだ。
あの時の記憶は鮮明ではない。
どこか靄がかかっているのは確かであるぶん記憶処理の魔法がかかっていたのだろう
「……健斗?」
「ん?」
「どうしたの?体調悪い?」
「お前は俺のおかんか。」
俺が軽く突っ込みを入れるとクラスのほとんどが口を押さえる。
それは南雲や香織も同じようにしていることから全員が思ったことがあるだろう。
「ぶつわよ。」
「当てられるものならな。」
「……はぁ。もういいわ。それでどうなのよ。」
「いや、なんか嫌な予感っていうか、トラブルに巻き込まれるような気がして。」
「……やめてよ。健斗の勘は当たりやすいんだから。」
すると雫が頰を引きつり健斗を見る。実際は未来視で見た未来のことだけに絶対に当たる未来なのだ。
そしてお茶を飲む。
「……てか最近天之河の奴こっち構わないようになったな。その代わり南雲が被害受けているけど。」
「まぁ香織が南雲くんに構っているからでしょ?」
まぁそうだけど。
天之河は小学校のころから俺とは相性が悪く互いに啀み合っている中だ。
ほとんど完璧と言われる天之河と神童と呼ばれる俺は比べられることが多い。主に恋愛対象として。
なお、全く興味がないんだけど香織が俺に報告してくるので分かるんだけど。やっぱり天之河の方がモテるらしい。
地味に傷ついているのがまだ子供なんだなと思ってしまうけどモテたいと少し思ってしまうのはダメだろうか。
と俺は明らかにあることに気づく
「……お前最近あいつに辛辣だな。」
「別にいいでしょ?あなたがいうならば『自分の自由な意志の下に』でしょ?」
「……お前俺に毒されすぎすぎじゃね?」
「いいでしょ。……もういっぱいお茶もらえないかしら。」
本当に毒されてきているな。
俺は苦笑しながらもお茶を淹れようとすると
そのときはやってきた。
天之河光輝の足元に純白に光り輝く見覚えのある円環と幾何学模様の魔法陣らしきものを注視する。
その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。
んじゃ久しぶりの故郷に帰るか。
俺は一人だけ落ち着いて意識を魔法陣へと向けたのであった。