解放者よ、再び   作:甘党

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作者はありふれた零を読んだことがありますが設定上多くの変更点が存在しています。
感想で変更点かどうか聞いてもられると変更点かこちらのミスかわかるので疑問に思ったら感想欄に書いてもらえると助かります。


緑の大坑道

あの空の旅から八日

 

「っ!!本当にできました!!」

 

ピョンピョンと嬉しそうにダンジョン内でうさぎのように飛び跳ねるリリィに俺は苦笑してしまう。

ここは99階層のオルクスの大迷宮である。

オルクスの大迷宮に入って一週間。

正直リリィがここまでの戦力だとは思いもしてなかった。

恐らくクラスの結界師である谷口よりも優秀であるというのが俺がリリィに関するイメージだった。

しかし、魔力の流れに気づくまで1日もかからなかったことから魔法についてはあまり教えてもらっていないことが分かっている

それが幸いし簡単に魔力操作を覚えることができたのだ。

 

食費を浮かすために俺は魔物を食べている。

それができるのは実は神水の人工的な開発に成功したからであり、決して自殺とかそういうわけではない。

実はオスカー兄さんと共同制作により神結晶の神水が出るルーツについて研究していたことがあり、その法則は三年かけて見抜いた。

オスカー兄さんが前に魔力を用いて魔力を貯める程度の神結晶を制作していたのだが、実は本当におしいところまで来ていたのである

それは魔力の属性が違ったのである。

魔力を無属性の魔力をためていたため何も反応がなく、正確な属性は自然と水属性の複合である。

それを変成魔法の初級である、魔力挿入が関与している

実は俺は初級くらいの生成魔法と変成魔法は使えるのだ。

兄さんたちをずっと隣にいて、才能があると言われているのだが。

俺は数十年経った今でも生成魔法と変成魔法の二種類の初級魔法しか使えない。

これが神代魔法の難しさなんだろう。一度見た魔法はすぐに覚えられる俺でさえこれなのだから普通なら適性があっても基本的には数百年単位はかかるのだろう。

今回は神水が目的だったので魔力の変換効率は悪いけど、数年単位の作成時間で、神結晶の特性を変えられるようになることは地球で分かっているしな。

 

「はいはい。てか本当にいいのか?美味しくないし、最初はかなりつらいぞ。」

 

というのもリリィも食料に魔物を食べることを言ってきたのだ。一応数十万以上の路銀は持ってきていた。そのほとんどを食料とし、俺が適当に作った装備で満たしたおかげで結構余裕はあるからな

 

「いえ。さすがに健斗さんが魔物の肉を食べているのに私だけ贅沢して普通の肉を食べているのはちょっと。」

「……そういうもんか?俺は別に気にしないんだけど。」

「私は気にするんですよ。」

 

首をかしげるとため息を吐くリリィ。

あれから名前も略称に変わり少しだけ距離感は近くなったような気がする

 

「でも、前世と本当に変わってないんですよね?」

「……あぁ。緑の大坑道で間違いないな。65層にミレディ姉さんがオスカー兄さんの自作した神結晶で溜め込んだ魔力をぶち込んだ奈落があったからな。」

「あれ、解放者が開けたんですか!!」

「あん時はここの聖光教会の司教が兄さんの面倒みていた子供に人体実験をしていたからな。教会の戦いの後だよ。」

 

するとリリィが絶句する。

 

「司教がですか?」

「元々教会でも地方の神官は神山に向かうためになんでもやるからな。その中に人体実験とか子供を神に差し出したりとかしていたんだよ。元々は俺が教会の人間を殺してきてたんだけどな。孤児だって人間だし、いいやつだって一杯いる。神なんか信用してないやつもあの当時は多かったな。」

 

懐かしげに語ると少し興味深そうに聞くリリィに俺は話続ける。いつのまにかリリィとの距離は近くなっており、略称で話す仲になっている。

だからふと口をこぼしてしまうのは仕方がないことだろう。

やっぱ人肌が恋しいんだろうか。

元々寂しがり屋な俺にとってはリリィは何も言わず話を聞いてくれるのでかなりありがたかった。

 

「そういえば次100層ですね。オルクスの大迷宮もこれで。」

「いや。まだ続くはずだぞ。」

「へ?」

「ここまでは前座だ。正直俺もレベルが15に上がって魔力量が二百万オーバーになっているけどここからは微妙なんだよな。」

 

自分よりも強い相手に対する結界の貼り方についてはリリィには教えてある。受け流しというように実践を踏まえ俺がレクチャーをしていたのだ。

 

結界魔法。地味に見えるが俺が一番重宝していた魔法である。

この一つで攻撃の誘導ができ、攻撃するルートを狭めることができるのだ。

対人戦でもこれは有効に使え、盗賊の捕縛や色々なことに使える。

さらに結界術の応用で防音部屋を作ることができ密会も可能であり、さらに消費魔力も少ない。

なので便利魔法として俺が好んで使っていた魔法なのだ。

 

「微妙ってどういうことですか?」

「いや。難易度が桁違いに上がるんだよ。ここが終わったら地上に戻ることができなくなるし。」

「へ?」

「恐らくライセン大峡谷に通じているんだよ。この迷宮。」

「ら、ライセン大峡谷ですか?」

「あぁ。迷宮の魔法陣あるだろ?あれ基本的には俺が作った魔法陣だからな。これ俺が聞いた通りに作ってある可能性が高いな」

「へ?」

 

魔法陣を作った。その一言でリリィが固まる。

 

「転移の魔法陣。あれは空間魔法のゲートという魔法で空気中の魔力を使っているんだよ。自然界にも魔力が存在していてその魔力を使って魔法陣を作成。それを具現化させる。」

「あの、簡単に言っているけどそれかなり凄いことなんですけど。」

「最後の一年は神々との争いもそうだけど未来につなぐことを考えていたからな。……正直未来が見えていた俺にとってこれは必要なことだったんだよ。」

 

未来視についてはリリィには話してある。先の未来が見える。これは俺にとってどれだけ残酷なものなのか。

……悔しいけど、あの時神に勝てる可能性はゼロに近かった。

解放者は焦りすぎたのだ。あれだけのメンバーが集まって、多くの時を費やしてそれでも数年で神に挑戦した。

 

そして結果は敗北だった。

 

俺は死んで。未来につなぐことしかなくなった。

未来は変えられる。

だが未来を変えるには大きな努力が必要になる

そのことを怠った俺の責任でもあるのだ。

 

「……でも凄いと思います。私たちは普通にしていても気づくことはありませんでしたから。」

「気づくも何も普通は気づかないもんだよ。俺は教育も何も受けてこなかったからな。自分が見たものが現実。それを理解していたからこそ教会に対抗できたんだよ。」

 

リリィの答えに少し苦笑してしまう。

俺はあの時他の兄さんと姉さんを逃がすことくらいしかできなかった。

あの時もっと力があれば。

そう思わずにいられない。

 

……こんなことを考える俺は未だに子供なんだろうな。

 

人に大人っぽいってよく言われるけど本当は凄く子供っぽい正確だと自覚している。

正直答えるなら雫にはちゃんと伝えていくべきだったと思っている。

でも。雫は一緒についていくと言い出すだろうから。

でも、俺は雫を死なせたくなかったから。

今ついてきたら雫は確実に死ぬだろうから。

こんな形で別れることになった。

お互いに気づいているんだろう。

俺が隠しごとをしていることも。雫が誰が気になっていのかも。

 

当たり前だ。あの世界での特別は雫なんだから。

雫にとっての特別は俺と香織なんだから。

 

「……」

 

世界を変える。それがどれだけかかるか分からない。

でももし世界を変えられたとしたら。

 

ちょっと自分の気持ちに素直になってもいいのかな。

もう少しわがままになってもいいのかな。

 

「さてと。それじゃあ休憩終わり。次の階層に行こうか。」

「はい!!」

 

俺は頭の中を切り替えるために一度顔を叩きリリィに話かける。

そして100層時のフロアに着くとそこは俺が知っているフロアではなく何もない、ただの大きな立方体のワンフロアだけだった。

中央に警戒して進むと急に小さな幾何学模様の魔法陣が現れる。これは中ボスって感じだろうか。

そして見ると小さな小型のワームが大量に現れ周辺を覆い尽くしている

 

「あぁ。こいつか。スーサイドワームだな。」

「スーサイドワームですか?」

「あぁ。こいつは自爆してくるワームだよ。最後の忠誠を体内に忍ばせているんだ。」

「……それってまずくないですか?」

 

冷や汗を垂らすリリィ。でも実際こいつの対処は簡単だ。

 

「いや。そうでもない。こうすればいいからな。リリィは全力で結界張っておけよ。」

「へ?」

 

そうやって俺は手を向け魔力を集め、

 

「着火。」

 

たった一体に遠くで最初に爆発させる。それと同時にに周辺のスーサイドワームに点火し全てのワームが連鎖的に爆発していく。

こいつの対処は結構簡単だこいつの弱点は遠くで爆発させればあとは結界をきちんと貼れば問題はない。

リリィには無駄な詠唱がなくなったおかげでかなり強力な結界が張られている。

俺の理論上無詠唱だと魔力の量が多くなるとか言われているが実は魔力が余分に掛かるのは寧ろ詠唱をした時だ。

無駄な魔力をそのまま放出しているので余計に負担がかかるのだ。

 

俺はここでリリィが引き返すべきか確かめようとしていた。この先は恐らくより強力な魔物が現れるはず。これくらいの結界がなければ生き残ることはできないだろう。

 

「……」

 

一言も話さず真剣に結界を保つリリィに俺は一つ苦笑してしまう。

 

……大丈夫だな。

 

結界は途切れるどころかより強力な結界を張り、そして強固なものになっていく。恐らく回復魔法の応用も教えてすぐに吸収したのだろう。

実は回復魔法の応用に相手の魔力や生命力を奪う魔法がある。

これは俺が開発した魔法でリリィに少しその理論を話したことがあったのだが。まさか習得しているとはな。

個人の評価であるならば。リリィもおおよそ天才という域に達している。

スーサイドワームの暴発した魔力の一部を吸い取り、それを結界を張るための魔力にしているのはまさに圧巻というしかなかった。

そして爆発が収まり、そしてリリィが座り込む。

 

「……お疲れ様。」

 

俺は笑顔でリリィの頭を軽く叩く。それにジト目で見るリリィ。

 

「あの健斗さん。」

「ごめん。これ以上リリィを連れていっていいか試したんだよ。この程度防げないとさすがにこの先は厳しいだろうからな。一応結界の準備はしてたし。」

「……はぁ。納得はできませんが。それでどうでしょうか?」

「普通に合格だ。さすがに魔力を奪う魔法を自力で習得したのに認めないとなると非合理だしな。」

 

苦笑いしてしまう俺にリリィはホッとしたように少し頰を赤くしながら嬉しそうに笑う。

実はこの層までリリィは健斗におんぶに抱っこでこの層まで来ていたのだ。……その圧倒的な魔法の腕を持つ彼に認められ安心し、どこか嬉しく、そして褒められたことに少し恥ずかしさを覚えていた。

 

「…健斗さんのおかげです。私に魔法を教えてくれたのは健斗さんですから。」

「ん〜そんな大したこと教えてないんだけど。ただ理論を伝えただけだし。」

「健斗さんにとってはそうかもしれないですけど。私にとっては全部大切なものなんですよ。」

 

そうやって少しむくれるリリィに少し心臓が跳ねる。

少し顔に熱を感じ少し恥ずかしくなる。

とそんなリリィに返事をしようとした時魔法陣が現れる。それは転移の魔法陣。次のエリアに繋がる魔法陣だ。

 

「……それじゃあ行こうか。」

「はい。」

 

といい。俺とリリィは一歩踏み出す。

まばゆい光に巻き込まれ転移が始まる。そしてその転移先で聞こえてきたものは

 

「うわぁああーー!!」

 

という叫び声だった。

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