唐突だが私は転生者である。名前はイーニャ。我輩は猫である、みたいな出だしだが混乱してる上に現実逃避したい願望に駆られた末の狂行なので我に帰ってみるととても辛い。
どうして自分が転生者と気付けたかって? それは今見てるテレビから流れるニュースのおかげ。見た瞬間今の私では本来知り得ないような知識が頭の中にどっと湧いたのだ。
「……繰り返します。45年より続いていた大戦ですが今日6月29日を以て各国の停戦が合意されました。これにより……」
……人生四年目を迎えた今日、ここがドルフロ世界だと知りました。
混乱してる私だが傍目にはただボーっとしてるだけである。……ベビーカーに乗って。
どうやら私は大戦中に早産で生まれてしまったようでそれのせいなのか全身の筋肉が一般的な子供の成長速度より著しく遅いという障害を抱えている。一般的な赤ちゃんの成長速度として大体一歳を迎える頃には一人で歩けるようになるらしいが、私は三歳になる頃にようやくはいはいができるようになった。四歳になった今、つかまり立ちくらいなら何とかいけるのだがそこからの一歩が踏み出せない。ゆっくりと成長するのを待ちましょうねとは私が世話になっている"先生"の言葉である。
私の誕生日だが親はいない。捨てられたのではなく単純に仕事でいないのだ。母が政府の役人のようで、政治におけるあれやこれやを処理するために奔走している。こんなご時世にシングルマザーな家庭なのでその身にかかる負担はいわんやと。そんな母が仕事に出向いている間、私の世話をしてくれるのがアオザキ先生だ。小さな医院で主に小児内科を担当する医者のようだが母はそんなアオザキ先生と並々ならぬ親交があるようでほぼ付きっきりでアオザキ先生に見てもらっている。
「…………」
「……せんせぇ」
「なに?」
「せんそう、おわった?」
「ええ。ひとまずは、と言ったところかしら」
「……まま、かえってくる?」
「それは……わからないな」
「……そっか」
余談だがこの女医、眼鏡をかけている時とそうでない時で人格が変わるとかいう一昔前の漫画キャラみたいな特徴を持っている。眼鏡をかけている間は誰に対しても柔和に接する大人のお姉さんという感じなのだが、眼鏡を外すと冷徹な口調になり纏う雰囲気も鋭利になる。眼鏡を外している時が本性なのでは? と思ったけど本人曰く状況に応じて性格をスイッチしているんだとか。どっちが本当とかは大した話じゃなく強いて言うならどちらも私、というのがアオザキ先生の弁である。
ドルフロ世界に転生したからには指揮官になって戦術人形達と仲良くしたい……というのが大方の望みになるのだろうが、私を取り巻く世界は絶望的に厳しく無理のある話である。誰かの庇護を前提にしなければ生きていけない私がG&Kの指揮官を目指すだなんて笑い話もいいところだ。
淡い望みに早々と蓋をした私は母が無事に帰ってくるのを常に祈り続ける日々を送ることとなった。
時は過ぎ去り、早61年。
やはり遅いながらも順当に成長した私は一人で歩けるようになり、簡単な物に限定されているがアオザキ先生の手伝いをする日々を送っていた。
前世知識が芽生えた十年前だったがそれらが活用される事は一度も無かった。強いて言えば基本的な読み書きや算数などの物覚えが普通の子供よりずっと早かったぐらい。
その前世知識が言うにはドルフロ本編と直接的に関わる事件である胡蝶事件が今年なのだが、私は全く興味を持てなかった。関わりようが無いからだ。57年を越えて以降ちらほらと民生用人形を町で見かけるようになったが私やアオザキ先生が持つ事は無く。
1ヶ月の内に長くても二~三日の間しか帰ってきてくれない母の方が大事な私にとってはもう彼岸の火事でしかない。
アオザキ先生から話を聞かされるまではそう思っていた。
母が死んだ、と。
鉄血工造の人形達の反乱に巻き込まれたのだと。
自分が否応なしにこの世界の一員なのだと自覚した瞬間だった。
正直言って聞いた当初は実感が無かった。何しろ母はいつもいないのが常である。父にしたって話すら聞いた事が無い。
だけれども母の遺体を見た瞬間、自然と涙が出た。寄り添う時間が普通の親子と比べて少なかったとはいえ確かに家族だったのだ。アオザキ先生は知り合いの子供を預かっているというスタンスを決して崩さなかったし先生からは得られない、親の愛情というものを私は確かに受け取っていた。
葬式は無かった。母はどうやら秘匿性の高い政府の重要な仕事に就いていたようで、母の死そのものがあまり公に出来る事ではないと政府からやって来た役人は語った。
……もう何もかもどうでも良かった。復讐なんて考えたくもない。したくても出来ない。そんな実力も立場も無い。
私は出来うる限り母の死を忘れる事に努めた。悲しみから逃れるにはこれが一番手っ取り早かったのだ。アオザキ先生はそんな私に何か言いたげな目をしていたけど結局は何か言われる事は無かった。
時間だ。時の流れだけがこういうのを解決してくれる。結局生き物なんて皆いつかは死ぬのだ。母はちょっとだけそれが早くて不幸だっただけ。私だってこんな体でこんなご時世なんだから、きっと長生きは出来ないだろう。
似た者親子、最高じゃないか。
……後々振り返ってみればこの時の私は大分生き急いでいたんだろう。私にその気が無くたって周りからはそう見えたはずだ。だからこそ、ある意味正常な判断が下せなかったんだと思う。
母が死んでから僅か三日。
……私の目の前には何故か
主人公の設定(ドルフロ本編開始時)
名前:イーニャ・グーバレフ
年齢:15歳
身長:136cm 体重:36㎏
容姿:根元は若干黒いがほぼ真っ白な髪にロシア人らしい肌の白さ。碧眼。fateのイリヤやISのラウラとかイメージはその辺りに近い
概要
ドルフロの知識のみを持った転生者。生まれ持った虚弱体質のせいでドルフロ世界に転生しながらもそれらと関わる気になれずモブのまま生きていこうとしていた。しかしながら唯一の親類と言っていい母が死にそのことを切っ掛けとして本編に大きく関わることとなる
性格は大人しい…と思われているが実際には行動で示すだけの体力が無いから大人しくしているのであって口だけはやたら達者であったりする。本人にとっては全く自慢ではないが煽るための語彙力は豊富
虚弱体質はある程度成長した15歳でも響いていて、全力で他人の肌をつねっても相手は全く痛くない程の非力、曇天時の気象病(天気が悪くなると膝などが痛くなるあれ)では激痛で歩けないほどなので車椅子を必要とする、風邪をひいた際にはベッドから起き上がる事はおろか声をあげることすら困難であったりするなど枚挙に暇が無い。
基本的に自分が他者の助けを借りないと生きられない事を自覚しておりそのことを気に病んでいる。こうした面からスラムなどに住む貧民層の住人に対してサバイバーズギルトに近い精神性も持ち合わせているが、ある種傲慢なその考えをアオザキは気付いていながらも指摘していない
アオザキ先生ですが言っちゃいけない色があるあの人です。そう「傷んだ赤」とだけは…(ここから先は血で汚れている)