あと深層映写の若干なネタバレ入りますので気にしない方のみどうぞ
マイダディ、もうちょっと他に人選は無かったんですか。
UMP45。違法人形達だけで構成された秘密小隊404の隊長。一見、誰に対しても当たり障り無い付き合いをしているがそれは決して本性を悟らせない彼女が被った皮の一つである…。
そんな人形が運転する車に乗せられて、グリフィンの本社へ向かっている。しかしながら会話らしい会話が無い。
いや、話しかけてはくれるのだ。あっちから話しかけてくれる分にはゲームでの45姉っぽい感じなんだけどこっちから、おそらく45にとって意図しないタイミングやセリフで話しかけると言葉に詰まったりたどたどしくなったりする。
…心当たりがあるだけにやるせない。そうだよ、胡蝶事件の後だよ。あの事件から紆余曲折を経て404が結成されるんだろうけど今まさに45はその過渡期にいるんだろうな。会えた事そのものは嬉しいんだけど…。
「難しい顔をしているわね」
「そりゃ…これからの事を考えたらね」
「イーニャは望んで指揮官になるつもりじゃないの?」
「確かにそのつもりだけど実際なれるかは不安だよ」
「あら、私がいるのに?」
「いくら性能が優秀な人形がいてくれても使う人次第で有能か無能かに別れる。分かるでしょ?」
「………」
ほらまただんまりだ。
人間嫌いの人形は一定数いるけど45はその中でも群を抜いて大嫌いだろう。人間の都合に振り回された45が人間を信用することなど有り得ない。
「助けてくれって言わないの?」
「そう言って45は助けてくれるの?」
「…いや、だって人形だし」
「人形は人間に従うべきって事?ロボット三原則じゃないんだし45には45の意思あるはずでしょ」
「…は?」
あ、これ返事ミスったかな。地雷踏み抜いた感がしてならないんだけど。
「どうして人間が人形に意思を求めるのよ」
「単純に言うこと聞くだけの人形なら第一世代の人形で良いでしょ。けどそれじゃあ能力が足りないからあなた達第二世代の人形がいるわけ。大戦のおかげで人類が少なくなった今、人と同等に考えられる
「…そのAIが反旗を翻したら?」
「それは使う側に問題があったとしか言えない。ただの銃や包丁にしたってそう。手入れを怠れば暴発したり切れなくなったりする。人形も同じ。鉄血の反乱だってあれはあっちの技術者達が何らかのミスをした結果でしょうね」
…本当はもっと根深いとこまで知ってるんだけど今はこう言っておこう。下手に軍がどうのこうの呟いたら、今の45のメンタルだと一人で特攻しかねない。パンの配達に行ってきますとか言わないでくれよ。
というかこの世界の"遺跡"ってやつほんと厄ネタだよね。半世紀くらいこれが原因でドルフロ世界の人類がひどい目にあってるのに懲りずにパン屋作戦とかやってるし…。
これを最後に車内での会話は無くなった。初対面としては45のメンタルに若干食い込むような話はしたから心証は悪いかもしれない。
「着いたわ。ま、せいぜい頑張りなさいよね」
「う、うん…。これからよろしくお願いします」
「…人形に頭を下げるだなんて、変な子」
「緊張、してるんです」
「ま、あなたを助けるのが私の任務だからそんなひどい事にはならないわよ。さ、ほら」
車から降り45に連れられてG&Kのでっかいロゴマークが見える本社へ向かう。
今の45はちょっと従者っぽかった。事前に私の体質は知ってるんだろう。まるでお嬢様のように、車から降りる際にドアを開けてくれて手も繋いでエスコートしてくれた。今だってただ手を繋いでくれてるだけじゃなく歩幅を合わせてくれている。
これからの新生活に期待やら不安やらを抱えつつ45と共にG&Kへ向かう私なのであった。
────人形だって、自分のために生きることが許されてもいいはずよ。
────他人じゃなく、自分のために…ね。
────ずっと騙してて、ごめんね。
────さよなら、45。あんたがあたいを覚えていてくれたら……それだけで、あたいは幸せだよ……。
あの事件以降、一応グリフィンの麾下に着いた私は任務に従事することもなく燻っていた。
…どこにも所属が無い違法人形。それが今の私だ。正直スクラップにされないだけまだマシな立場なんだろう。
ちょっとグリフィン内のネットワークを漁ってみたら対鉄血のためにてんやわんやな状態だという事が分かった。誰も私の処置に割く余裕が無いのだ。押し寄せる鉄血の軍勢に対抗するために人間人形問わず、ひっきりなしの異動や再編成が行われていた。
ただその中で一つ気になるログを見つけた。
社長のベレゾヴィッチ・クルーガーが忙しいこの時期に、たった数時間ほどだが行方を眩ましているのだ。あの事件より僅か三日後の事である。
一分どころか一秒ですら惜しいスケジュールで動いているだろうに社長自らが本社を離れて何をしていたのだろうか。
興味が無いわけじゃないが今調べる事ではないだろう。そう思っていたらそのクルーガー本人がわざわざ私の元へやってきて事情を説明してきた。まさか子供のお守りとは。
イラっとはしたが良い仕事だと思った。宙ぶらりんな立場の私にとって明確に仕事が得られる機会は少ない。グリフィンだっていつまでも働けない人形を置いてくれるわけないだろう。働かざる者食うべからずとは良く言ったものだ。
当日、わざと書面が届くより時間をずらして件の娘がいるという小さな病院を観察していた。特に何の変哲も無い、普通の病院という感じだ。
事前に忍ばせておいた盗聴器から彼女と保護者であろう医者の楽しげな談話が聞こえてくる。娘の方はともかく医者の方は過去にクルーガーとの一定の親交があったということで警戒していたがこの分なら平気そうだ。
彼女────イーニャ・グーバレフをグリフィンの社用車に乗せて、また改めて観察する。
不自由な体である事以外は極々一般的な、それでいて目を見張る美少女だと思う。可愛い女の子を形容する言葉に人形のようなという言い方があるみたいだが、白のイメージが全身にサファイアのような目が輝くその姿は狙って作ったところで到底至れないだろう。イメージカラーであるつもりなのか着ている服すら花の刺繍が少し入っただけの真っ白なワンピースである。
本当にこんな小さな子が指揮官を目指すのか。それも私の直属の上司となって。…これが良いことなのかは分からない。少なくとも40と出会う前の私なら喜んでいたと思う。社長肝いりの指揮官を任された、と。
だけど、人形を顎で使う社長の娘の癖して人形の意思を肯定しているのは分からない。そんな体なんだから余計に人形の助けが必要な癖に、ふざけているのかしら。使う側に問題があるって発言はまぁ納得できる。それを、私に言うって事は私を問題無く使えるのだと言っているつもり?どちらにせよ腹立たしい事この上無いのは確かだ。
箱入りのお嬢様がどこまでやれるのか。それを楽しみにこの腹立たしさを解消してやろう…。
光陰矢の如し。
ここはグリフィンが持つ数少ない社員寮の一室。
45と出会ってからすでに半年を過ぎた私は今────。
「45姉!お肉焼けたよ!」
「はいはい、盛り付けするから待っててね」
「G11…そこはあなたが寝るベッドじゃないの。ほらさっさと起きなさい。じゃないとあなたの顔に鉛弾をプレゼントすることになるわよ」
「…しきか~ん…眠いのに416がいじめてくるよ~」
「えっと…、とりあえずG11は起きよっか。ほらもうすぐ朝ごはんだよ。お腹減らして寝たくはないでしょ?」
なぜか404小隊の指揮官をやっている。
声を大にして言わせてくれ。
ど う し て こ う な っ た。
ドルフロ世界の年表見ながら書いてたりしてましたが404がいつ結成されたのか分からなかったのでうちの独自路線で書きます