S0-9地区。
ドルフロ原作において指揮官が最初に配属される地区。激戦区として有名でここではグリフィンと鉄血が一進一退の攻防を続けている……。
「ねぇ指揮官」
「何かな45」
「私達ってここで戦うために来たんだよね」
「そうだね」
「じゃあ私達が今してる事は?」
「……ただの掃除だね」
どうも、この度指揮官として就任したイーニャです。私サイズに特注されたグリフィンの赤い制服を着込み何をしているかと言えば……HK部隊の面々と共に基地をひたすら掃除しています。
S0-9?ふぁっ!?って思ったんだけど父さんの、君ならやれるだろの一点張りでここへ飛ばされました。どうも私があの模擬戦で仕出かした内容が民間人に広く周知されたらしく、一番戦闘が激しいここ以外に派遣する選択肢が無かったそうな。何でだろう、最初に考えてた最低限の生存からどんどん離れていってるような気がする。
そしてS0-9に着いた私達を出迎えたこの基地はそれはそれはもうひどいボロっぷりだった。何度か鉄血がこの基地にまで進撃した事があったようで、その度に設備やら何やらが壊されていったらしい。懐まで侵入を許すとか前の指揮官は何考えて運営してたの……?
大変残念ながら設備も1からの段階。そうバッテリーを消費するあれ。……作戦報告書の事とか考えたくないぞ!全部カリーナに任せるんだ。まだいないけどね。
基地にはまだ私以外の人間はいない。実は予定より早く私はここに来ている。前の指揮官はここから別の地区へ左遷させられたらしいんだけどここにいた人形達は変わらずここに勤めている。対鉄血において重要な基地であるここをたった数日とはいえ、指揮官がいない状況にするのは大変危険なので私が予定を前倒ししてここ来たのだ。今やっている掃除も彼女達が哨戒任務などに出払っている間少しでも綺麗にしておいてあげたいという私なりの心遣いなのだ。……私自身がやれる事は簡単な雑巾がけくらいなものなんだけどね。
「しきか~ん。廊下のモップがけとりあえず終わらせたよ~」
「指揮官、破損していたガラス窓の片付けが終わりました。……窓そのものはどうするんです?」
「ありがと9、416。もうそろそろここの人形達が帰ってくる頃だからG11を起こしてみんなで食堂に行こうか。ガラスについては業者さんを雇って貼り付けてもらう事になるけど、それもこの地区の安全が確保されてからになるから当分は吹きさらしだなぁ」
「無事だったのは執務室とその奥の仮眠室だけ。前任者はよくこれで基地を回せていたわね」
「その仮眠室も辛うじて寝るだけが出来る程度の部屋よ。……なんでG11はあんな部屋でも寝られるのかしら。理解に苦しむわ」
「G11のあれは筋金入りだからね……」
食堂に移動しながらざっとここにいる人形達の名簿を確認する。
IDW・スコーピオン・64式自・ステンMK-Ⅱ・AUG・FNC・9A-91・OTs-14・M1895・コルトSAA……。
あれおっかしいな。私の見間違いじゃなけりゃMGはおろかRFすら一人もいないんだけど。え、ここって装甲持ちに対して無力なんですか?
……一応装甲持ちに対して手が無いわけじゃない。うちのHK部隊はG11の圧倒的な手数と416の榴弾で二~三体程度のニーマム相手なら火力のゴリ押しが効くのだ。とはいえそんな無理矢理な戦法がいつまでも続けられるはずが無いのでRFとMGの追加は急務である。
食堂に着くとここの人形達が既に勢揃いしていた。だが……。
「えー皆さん初めまして。既に話は聞いているかと思いますが、新たにここへ着任したイーニャ・グーバレフです。……あの、いきなりこれ聞くのは野暮かもしれないんだけどなんでみんなボロボロなの……?」
「それはね、ここでは修復を受けられるだけの資材が無いからよ、小さな指揮官さん」
「えぇ……」
「前の指揮官は戦果にずっと夢中になってたニャ。後方支援に行く時間が勿体ないとか言ってずっと出撃ばかりさせられてたニャ。正直ブラックだったニャ」
「おぅまぃがぁ……」
答えてくれたのはOTs-14ことグローザとネコ少女なIDW。うん、間違い無く前任者は無能だったね。というかこれで戦線保ってた事に驚きしかないんだけど……。
「それで?顔合わせは済んだでしょう?どこに出撃するか指示をくれないのかしら」
「いや、出撃させないから。そんなボロッボロの君達を酷使とかできませんから。資材も私のポケットマネーで何とかするから全員まず休みなさい。これ命令ね」
「え……コーラ飲んでも良いの……?」
「指揮官様!お菓子ありますか!?もうずっとお腹がペコペコなんです!」
「分かった分かった。コーラもお菓子も用意してあげるからマジで休んで。頼むから」
「「やったー!!!」」
やべぇ、よく見たら一部人形達の目のハイライト消えてるわこれ。スコーピオンなんか元気の子ってイメージだったのに今は縋るような目で私を見てる。唯一ボロボロじゃないのはAUGだけだな。ただこっちも若干影のある表情してるから前の指揮官となんかあったのかも知れない。
研修という名目でも反社会的勢力や鉄血の雑魚とかを叩き潰してた我らHK部隊の懐はそこそこ暖かったりする。ここでそのお金を使う事に何ら未練は無い。これから先私の人生の大部分をここで過ごす事になるのかもしれないのだからこれくらいの初期投資はまだ安いもんだ。
「よし。今、食糧や資材の注文したからそれが来たらみんなで着任記念のパーティーしよっか。みんなここでずっと頑張ってたんだし久しぶりに良いご飯食べたいでしょ?」
わっと上がる歓声に少々不憫さを感じつつこの子達を出来うる限り幸せにしようと心に決め込む私なのであった。
「くそっ……。なんで俺が左遷なんだ。あいつらが弱いのがいけないのに……。本部も本部だ。あんな弱っちい人形ばかり寄越しやがって。俺の才能にあんな雑魚共がついて来られるわきゃねぇだろ」
「才能ねぇ……。本当に実力のある指揮官は弱い人形でも使えるように上手く運用するものだと思うけど」
「だ、誰だ!?」
「私が誰かなんてあなたは知る必要は無いわ。それよりちょっとあなたに聞きたい事があるんだけど」
「なんだ、人形か……?は、人形風情に教える物なんざ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
「余計な事は言わなくていいの。S0-9から資材の一部を横流ししてお金貰ってたでしょう?どこどう取引したか言えばいいのよ。言わないなら、もう片方の腕も折れる事になるけど」
「おまえら、グリフィンの人形じゃないのか……?人形がなんで人間を攻撃できる……?」
「45姉、まだ変な事言ってるよ。さっさと次折っちゃおうか?」
「待て言う、言うからやめ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!???」
「……以上よ。典型的な地位に胡座を掻いただけのこそ泥だったみたいね」
『……まさか頼んでから1日も経たない内に終わらせてくれるとは』
「こういうの得意だから」
『つくづく敵に回したくないな、君達は』
「なら、せいぜいそうならないように振る舞いなさい。彼女の敵は、私達の敵だから」
『肝に命じておこう』
「45姉、終わった?」
「ええ。早くさっさと基地に帰りましょ。416がG11のお守りでストレス溜まってそうだし」
「ほっとけばいいのに、なんだかんだ416って面倒見がいいよね」
「そういうところが416の美徳なのよ。指揮官も彼女に甘えてるところあるしね」
「まさか修復ポッドが三つしか使えないとは……」
基地のみんなと着任パーティーを楽しんだ翌朝。
私はこの基地を運営する上で重要な課題の一つに頭を悩ませていた。
「まず最初は今後の主力になりうる9A-91、グローザ、IDWに入って貰ってるけど余裕で7時間以上かかってるわ……」
これでは全員を綺麗にするまであと何日かかることやら。そう肩を落とす私へ一通のメールが届く。
差出人は、別れてもう久しくなるアオザキ先生からだった。
ここまでかなり早いペースで投稿してますけど特に計画性なくやってます。情熱が続く限り燃やしていきたい