NINEPIECE   作:ハルアas稗田阿求

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 この作品は東方projectの二次創作作品です
 予めご了承の上、お読みください


一話

 この物語は、天狗のインタビューをもとに、稗田阿求が記している。

 

富、名声、力、この世の全てを手に入れた男・海賊王ゴール〇・ロジャー。彼の死に際に放った一言は、全世界を海へと駆り立てた。

 「俺の財宝か。欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをそこに置いてきた」

男達はロマンを追い求める。

 世はまさに、大海賊時代!! 

 

 湖を面した陸地で、麦わら帽子を被った若者が、臨戦態勢をとる。その視線の先には、不自然な暗闇が存在する。

 「ゼハハハハ。これで終わりだ。麦わら!!」

暗闇の中から叫び声がするのと同時に、その闇の中から、木の板や鉄屑など、何かの残骸が無数に放たれ、麦わら帽子の若者を襲う。若者は、残骸に一回も当たらずに避けきると、闇に向かって駆け出す。

「喰らえ~! ギア3、武装色硬化」

 若者が叫ぶと、その右腕は巨人のそれと思えるほど巨大化する。それは同時に、生物の体の部位とは思えないほどの光沢を纏っていた。

「ゴムゴ〇の象銃!!」

 若者がその巨大な右腕を突きだして闇を切り裂き、その中心にいる敵の本体へと差し迫る。そして、若者の巨大な腕と闇の本体が衝突したその刹那。

若者の腕はバラバラに砕け、闇の本体はそのまま数メートル吹き飛ばされた。その結果を受けて、

 「よしゃ──! 勝った──ー。あたい、サイキョ──!!!」

 「うわ──また負けたのだー」

 氷を纏った腕で見事闇の妖怪を倒した、麦わら帽子を被った妖精・チルノは、勝利宣言の後、自らの代名詞とも言える発言をする。それを見て、闇の本体・ルーミアは自らの敗北を自覚し、悔しがる。

 「えっと……二人とも何やっているの?」

 友人達のはしゃぐ様子を見て、わたし、大妖精が戸惑った顔で二人に質問したのは、その直後でした。

 

 「ワ〇ピースって、最近妖怪の山に引っ越してきた神社の巫女さんが持っていた本だよね? それの真似をしていて遊んでいたのね」

 友達同士の謎の決闘シーンが何故起きたのか説明されて、わたしは簡単にその内容をまとめる。

 最近、外の世界から引っ越してきた奇跡の巫女・東風谷早苗が持ち込んできた漫画と呼ばれる本。チルノちゃんとルーミアちゃんは、その中の一つ・『〇nePiece』という作品にはまって、それ風の弾幕ごっこで遊んでいたようだ。

 「それでも危険なのはダメ! ルーミアちゃんは無闇に闇の中から弾幕以外の物理的な物を投げない! チルノちゃんは直接攻撃しない! 弾幕ごっこはあくまで美しさを競うものだから危ないことはしないの、わかった?」

 板を投げたり、腕に氷を纏って直接殴ったりといった行為は危険すぎる。

 わたしはそんな二人の行いを友達として見過ごせず、完全に説教モードで言葉を並べるが、

 「……あたいの氷より、咲夜のナイフの方が危ないし」

 「他所は他所! 内は内!」

 ムスっとしているチルノちゃんと、その言葉をズッバっと切り裂くわたしの姿は、端から見たら友人のそれというより母子のそれに見えるのだ……

 「まぁ、確かにさっきの弾幕ごっこはやり過ぎだったけど、何か〇ンピースっぽいことしたいのかー」

 わたしの説教モードを終わらせるためか、ルーミアちゃんが無理矢理に話題を切り替えようとする。その意図を察したのか、もしくは話題に興味を持ったのかチルノちゃんがそれに続いて口を開く。

 「そうだよな。あたいの麦わら帽子もそうだけど、やっぱりワン〇ースっぽいことしたいよな。だったら……」

 わたしも、危険でなければワンピー○の真似事を咎めるつもりはない。それっぽいこととは何か考えつつ、私はチルノちゃんとルーミアちゃんの言葉に耳をすます。

 『海に行きたい(のだー)』

 (二人が同時に話した時の表記がゲーマーズ◯式!!)

 チルノとルーミアが同時に願望を叫ぶと、わたしは若干メタい視点で驚く。その驚きが、二人が叫んだことの意味に気付くのを遅らせる。海は無理だ。行ける訳がない。

 「やっぱりワンピ○スと言えば海だよな。分かってんじゃんルーミア!」

 「そーなのだー」

 「あのっ、チルノちゃん、ルーミアちゃん……」

 「よーし、決めたぞ大ちゃん! あたい、海賊王になる」

 「そーなのかー」

 わたしが申し訳なさそうに、海へ行くことの問題点を指摘しようとするが、テンションが上がってるチルノちゃんとルーミアちゃんにはその言葉は届かない。そうしてる間にどんどん話が先に進んでしまい、

 「海賊王っいうのは、海で一番自由なやつなんだ。サイキョーのあたいにぴったりの称号だよな」

 「そーなのかー?」

 「ルーミアちゃんはさっきから『そーなのかー』としか言ってないけどどうかしたの? ってそれどころじゃなかった、チルノちゃん海は」

 「よーし、じゃあ海に行って海賊やろう。あたいが船長で、大ちゃんが航海士、ルーミアは……えーっと黒ひげ!」

 (あっ、この二人、私の話を聞く気が無いわね。これは私に話が振られるまで黙っているしかないかな~)

 海やら〇ンピースやらの話で盛り上がり過ぎて、わたしが二人の話に水を差す余裕はない。あまり気が進まないが、あの事を伝えるのは、わたしに話が振られてからにしよう。

 わたしはそう決意して、二人のハイテンションな会話を微笑ましく見つめ、その時を待つ。それから数分後、ついにチルノちゃんとルーミアちゃんがわたしに決定的な問いを投げかける。

 『大ちゃん(大妖精)、海ってどこにあるんだ?(のかー?)』

 それは、先ほどからわたしが言おうとしていたことを答えとする質問。だから満面の笑みと共に、きっぱりと、そして、この上なく残酷に答える。

 

 「チルノちゃん、ルーミアちゃん、幻想郷に海はないよ。ここ、外の世界の内陸部にあるから」

 

 「えっ……」

 「そ……なの……かー?」

 場の空気が暗くなり、寒気が三人の体を包む。ルーミアちゃんが闇を放出し、チルノちゃんが冷気を放出しているので比喩としての意味というよりは物理的に。二人の顔を見てみると、ワ〇ピースで例えるならネガティブの幽霊にでも体を通り抜けられたような表情になっていた。

 (うん、わかってたよ。散々お出掛けの話で盛り上がってる所に『行けない』って言われたら、そういう反応になりますよね~)

 前に一度、ここにいるメンバーとリグル、みすちーと遠足に行こうとして、雨で中止になった際に二人は同じような顔をしてたのを思い出す。

 納得はしてもらえないだろうが一応補足説明をする。

 「海に行くとしたら、紫さんに頼んで外の世界に行くか、もしくはもっと難しいけど、宇宙にある月の裏側にあるっていう月の都に行くしかないね」

 もちろん、『海に遊びたい』なんて個人的な理由で妖怪の賢者が結界を操作してくれる訳がないし、月の都なんてそれ以上に遠い場所だ。幻想郷の外にすら出ることの出来ないわたしたちが、日本どころか地球の外にある月に行くなんて絶対に無理な話だ。

 「残念だけど、海に行くのは諦めた方がいいよ。ほら幻想郷にも似たような広い水場はあるよ、この霧の湖とか、玄武の沢とか」

 少しでもチルノちゃんとルーミアちゃんの機嫌を良くするために遊ぶ場所の代案を並べるが、一度悪くなった機嫌を取り戻すのは難しい。

 「あ~、誰か月に行く計画立ててくれないかな~。そしたら、こっそりと紛れ込んで一緒に月に行けるんだけどな。大ちゃん」

 何回か説得を繰り返し、やっとチルノちゃんは明るくわたしに笑いかけてきた。ルーミアちゃんの方はぶつぶつと何かを言いながら海へ向かう方法を考えている。思考に集中しているせいか、ルーミアちゃんの闇はより一層に濃くなるが、二人の表情はいつも皆で遊んでいる時のそれに戻っていた。

 「まぁ取り敢えず、海のことは忘れてこの湖で遊ぼうよ!」

 さらに言葉を重ねて、チルノちゃんの頭から海に関する思考を追い出す。チルノちゃんの頭の容量では、三分も話していれば別のことで頭がいっぱいになるだろう。

 こうして、チルノちゃんの頭から海に関する事項は取り敢えず消えた。

しかし、ここで完全にチルノちゃんから海への興味をなくせなかったことで、わたしたちはとんでもない事件に巻き込まれることになるのだが、この時のわたしは、知る由もないのである。

 

 

 同時刻、霧の湖の対岸・紅魔館では、元気にはしゃぐチルノたちを紅魔館の主・レミリア・スカーレットと、そのメイドの十六夜咲夜が見つめていた。

 「元気ねー。妖精達は。あんなに外で遊んで、日焼けとかしないのかしら?」

 「チルノにとって、日焼けは致命傷になるのでは」

 お互いに水を駆け合う妖精二人に妖怪一人。その様子を見て、レミリアがそっとため息を吐き、咲夜がそれに答える。大妖精はともかく、闇の妖精であるルーミアと氷の妖精であるチルノには日焼けは重大な問題だろう。ルーミアは闇に囲まれているからそうはならないだろうが、チルノにはそれがない。

 「多分、チルノは日焼けする前に溶けるわよね。チルノの日焼けなんて、背中から扉が現れるなんて奇跡ほどあり得ないことよ」

 レミリアがそう呟くと、後ろから誰かの声が聴こえてくる。

 「レミィ、あれが完成したわよ」

 ヴワル大図書館の司書であるパチュリー・ノーレッジだ。どうやら、レミリアが彼女に頼んでいた物が完成したらしい。

 「月へ向かうためのロケット、ついに完成したのね。咲夜、すぐに霊夢へ連絡して」

 とレミリアが言った時には、隣にいたはずの咲夜は霊夢への報告のため姿を消していた。レミリアは、咲夜の仕事の早さに改めて驚きつつ、後ろにいる友人の方を向く。

 「くくっ、ここから始まるのね。私たちの月侵略が」

 数日後、吸血鬼が月侵略にのり出したという情報が、幻想郷中に広まった。

 

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