東方逃亡精   作:鼠日十二

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ぁぁー。オリ主視点です。


運命は信仰と境遇と偶然

 

 満月煌く夜の中。

 時々後ろを確認しながら、私は今までのことを話していた。

 

 

「……あいつかー。私に『k-phone』の販売停止とかを求めてきたやつ」

「八雲 紫さんて言うんですけどね。とにかくあの人に連れられて冥界まで」

「冥界……?随分とおっかなそうなところへ行くもんだね」

「そこで一回死にまして」

「……もう何言われても驚かない自信があるよ……っと、そろそろだ。もうすぐ妖怪の山だよ」

 

 

 前方にうっすらと黒くて大きなシルエット。ああ懐かしの妖怪の山!

 

「うー、懐かしいなぁ……」

「なんだかんだ言って心配したんだぜ?態々文の新聞に捜索願を出すくらいには」

「に、にとりさん………!」

 

 

「何たって金のなる木だからな。手ばなすには惜しい」

「に、にとりさん………!」

 

 

 しばらく飛んでから着地、さらに木々の間を歩いてにとりさんの家兼工房へと向かう。こうすれば上空からは見えないからね。

 

 滝を抜け、久しぶりの工房へと帰ってきた。

 

 

「ただいま」

「お邪魔します……」

 

 

 にとりさんが壁の辺りを触っている。

「えぇと、スイッチは……これだ」

 

 

 パッと光がつくと、そこには──

 

 

一面に散らかった工具や部品、作業着に設計図やらなんやらがあった。

 

「にとりさん?」

「ゔっ」

「態々棚まで用意して部品分けたはずですよね?どうしてこうなるんですか?」

「仕方ないんだ。これは不可抗力なんだ」

「何処がですか……。はぁ、仕方ないです。ご飯もう食べました?」

「いや、まだ。というか今日まだ何も食べてない」

 

 

 思わずにとりさんを見た。

 にとりさんはばつが悪そうに目を逸らし、

 

「いや、助手のこと探しててさ」

「ゔっ」

 

 

 ……それを言われると弱いのだ。

 

 少し熱くなったような顔を振って私は宣言した。

 

「とにかく!部屋は明日どうにかしましょう。まずはご飯です!」

「あっ」

「なんですか」

「冷蔵庫の中きゅうりしかないかも……」

「……………………」

 

 

 やるさ。やってやりますよ。

 きゅうりだけで一食分用意しますよ。

 

 

 

「お待たせしました」

「……すごいな。きゅうりだけでよくぞここまで」

「まぁ前にも似たようなことしましたし」

「前?…………あぁ、プレゼンの時の」

「そうです。さ、食べましょ」

 

 手を合わせて、いただきます。

 

 

 

 きゅうりの漬物もどきを口に詰めながらにとりさんが言った。

 

「そう言えば、文に捜索願を出しっぱなしなんだ。明日の朝に文んとこいくよ」

「あの天狗の?」

「そうそう。元気な顔見せてやろう」

「りょーかいです」

「あ、あと。あれだ、新商品の要望だけ届いたのがいくつかあってな。家にいない間に掃除する機械だとか、話した言葉を保存する機械だとか。なぁ助手、なんかいいアイデアない?」

 

 

 にとりさんに言われ、うっかり気軽に返事しそうになる。ギリギリで紫さんの顔を思い出し、私は口をつぐんだ。

 

「ん〜〜〜〜〜。紫さんに釘刺されませんでした? 余りこう……ヤバめの物作るなって」

「刺されたさ。当然作ろうとしてる物の選別はしてる、相手の妖力を吸って転送する装置とかな。そういうのはお断りだ」

「……ならいいんですかね?」

「いいんだよ、私がいいって言ったんだ。助手には働いてもらうぞ」

「これからもよろしくお願いします」

「あいよ」

 

 

 そう言ってにとりさんは食事を終えた。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 次の日。

 

 私とにとりさんは山の中を歩いていた。

 

「思ったよりこの山って広いんですねぇ」

「大体こんなもんだろ? 湖があって、川があって、木が山肌を埋め尽くすなんて普通のことだ」

「いやー、余り世間のこと知らなかったもので」

「案外そういう常識が無い方がそれに囚われなくて済むのかもな。っと、そろそろ」

 

 

 山の上の方から白髪のイヌミミさんが降りてきた。数週間しか経っていないのに、感動が蘇ってくる。

 

 

「………ん、にとり。それと、隣のは……」

「お久しぶりです、助手です。この度復活しました」

「あぁ、なるほどね。新聞で見たよ。という事は」

「うん、文に用事があってね」

「今の時間なら居ると思うよ。呼んでこようか?」

「よろしく頼むよ」

 

 

 椛さんを見送って数分後。やってきた文さんは、大仰に額に手を当てた。

 

 

「あややや。…………来てしまったんですね」

 

 思わず私とにとりさんは顔を見合わせた。

 

「なんかあったっけ?」

 

 問われ、文さんが辺りを見回す。

 

 

「椛」

「……周辺には誰もいないようです」

「では、説明しますと。うちの上司、つまり大天狗。あれがですね、『k-phone』にいたく興味を持ちまして、何個か購入したはいいんですが……」

 

 

 なんとなく察しがついた。

 

「あ、もしかして」

「ええ、いつのまにか回収されてました。犯人は」

「紫さんですよね、知ってます」

「……あの方、結構秘密主義だと思うんですが。もうこの際ヴィーさんの経歴については触れないようにします。藪を突いて蛇どころじゃ無い予感がします」

「おめでとうございます、文さん。大正解です」

 

 

 ほんとご迷惑おかけします。

 

「はぁ。まぁそういう訳で、開発者を探しているんです。……私たち天狗の頭領は八雲紫とあまり仲が良く無い訳でして、今回のが気に入らなかったんでしょうね」

 

 

 それに素っ頓狂な声を上げたのはにとりさんだ。

 

「まてまて、私は聞いてないぞ」

「頭領には、制作は河童だが原案を出したのは別の存在ですー、と説明しましたから」

「それで納得したのか……」

「さぁ? もしかしたら八雲紫に何か言われたのかも知れませんが、その辺は私の知るところでは無いです」

 

 文さんは腰に手を当て、私をびしりと指差した。

 

「とにかく! ヴィーさん、貴方が原案を出した張本人だとわかれば、大天狗たちは放っておかないでしょう。ですから───」

 

「……そろそろ見回りがやってきます。この辺りで」

「──兎に角、あまり目立たないように。それでは。椛、行きますよ」

「はい。ではまた」

「おう、ありがとう。またなー」

 

 

 文さんと椛さんを見送りながらにとりさんが言った。

 

 

「ちなみに、今わかってるだけで何人くらいが助手を追っかけてるの?」

「少なくとも4人はいますね」

「……………まぁ、うちをそんなに離れたりしなきゃ大丈夫でしょ。うん。多分」

「そう信じたいところです………」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 湖の辺りには大きく真っ赤な屋敷がある。

 

 真っ赤な屋敷の地下には、誰も近づかない秘密の部屋がある。

 

 

「あぁぁ!もう!いつになったらあの子を連れてくるのよ!」

「フ、フラン?一回落ち着きましょう?」

 

 

 綿がはみ出たぬいぐるみを何度も地面に叩きつけている彼女の名は、フランドール・スカーレット。この屋敷の主人であるレミリア・スカーレットの妹だ。

 

 彼女はいま、どうしても手に入れたいものがあった。

 

 それは前から屋敷にあったもので、見つけたと思ったら遠くに行ってしまって、それきり帰ってこない。

 

 地獄に垂らされた蜘蛛の糸のように、フランはその希望に縋った。

 レミリアはその意を汲んで、希望を探しに行った。

 

 しかし、いつまで経っても結果は出ない。

 

 

「もういいわ。お姉様じゃ役に立たないもの。次は私が探しにいく」

「フラン、それは!」

「煩い! 結局捕まえられなかった癖に! もう我慢の限界、私はあの子が欲しくてたまらないの!」

 

 

 これ以上は不味い、とレミリアは察した。空気を溜め込みすぎた風船は、適切な方法で空気を抜かねば破裂する。

 

「……わかった。その代わり私も同伴する」

「ふん」

 

 

 フランはそっぽを向いた。取りつく島もないが、少しだけ機嫌は治ったようだ。

 

「……すまなかった。出るタイミングはまた後で伝える。おやすみ、フラン」

 

 そう言ってレミリアはドアを閉め、階段を上がって行った。

 

「咲夜」

「……何でしょう」

 

「いつでも出れるようにはしておけ。いつ機会が来るかわからん。私の能力では大まかなストーリーしか選べない」

「分かりました」

 

 

 

 

 

 こつ、こつと階段を登っていく音が聞こえる。遠ざかる足音が聞こえる。

 

 

 そして、フランはひとりぼっちに戻った。

 

「ごめんなさい、お姉様。お姉様が私のために頑張っていることくらい知っているのに」

 

 右手を握る。ある程度の周期で自分には制御しきれない破壊衝動がやって来る。

 

 それがフランには怖かった。自分が自分でなくなる感覚もそうだったが、何よりも───それで姉が傷つくのが怖かった。

 

 だから。

 

 

「あの子が私のそれ(破壊衝動)を受け止めてくれたら、私は───」

 

 

 きっと、しあわせになれるんだ。










前回の話を勢いだけで書き上げて気づきました。またやってしまった……
つまり、話を急ぎすぎたんです。キングクリムゾン現象です。

永夜抄三話程度で終わるって逆に凄くない?すごくないな………


という訳で。この度私はもっと日常描写を増やすことを決意しました。
日常があればこそ、闘争という非日常が輝くのです。多分。
後もしかしたら、いったん風神録で話を区切るかも。その後も続けるとは思いますが、このままだと異変のたびにワンパターン化しそうだったんで。


まぁ、その分風神録のとこは時間かけて描写したい。今回はその試みの一環です。





さて、ここからはいつものどうでもいいやつ。


まずタイトル。これも芥川龍之介の河童の中の一節。
中々にいい台詞じゃないですか?岸田教団の歌で聞いたことある人もいる………かな?
これも前に言いましたが、小説そのものも相当捻くれた世界観で面白いですよ。河童の世界には自殺の反対である自活って言うのがあって、世界が気に入らなかったら自殺して、向こう側が気に入らなくなったら自活してこの世に戻って来るとか。芥川龍之介は何考えてんですかね?



次。
私は東方のボーカルに関してはわりと偏食家でして、あまり有名どころを知らんのです。幽閉サテライトとかは5、6曲しかしらんのです。
そも私の好みがシリアス系なのでフランやこいしの曲を好きになりがちなんです。Who killed U.N.owen とか良くない?

で。
ハルトマンの妖怪少女アレンジの『はじまりのうた』っていう曲知ってますか?夕焼けコンテナ。の。


あ、しってるよーっていうそこの貴方。
さらに言えば東方手書き動画の中で聞いたことあるよーっていう方。


…………最終回いつやるんですかね、あれ。いやほんとめちゃめちゃいいところでぶつ切りになってますよね……。頼むからあそこで終わらせないでほしい。紫がどうなるのかとかこいしが何を選択するのかとか気になるじゃないですか。あの絶望感……どうにか収束させてほしいっ。



え?何の話か分からない?
分からない人は「こいドキ」で検索。心臓の弱い方、本当に怖い幻想郷が見たくない方は検索しないでね。シリアスどころの騒ぎじゃないからね。




では。どんどん後書き長くなってきてる気がする……
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