うにゅうにゅり。もにゅりもにゅもにゅ。
ぺっ。
触手の海から吐き出された私は、そのまま別の触手に抱き留められた。嘘でしょ、転送されたの!?
恐る恐る目を開けると、其処は空中だった。
「うわ!?」
私を抱えているのは、此方をにやにやしながら見ている諏訪子様でした。
「うわ。こりゃ驚いた。魂だけ抜き取るつもりでいたんだけど」
「………因みにそのあとどうするおつもりで」
「決まってるじゃないか、贄だよ」
「食べないでください!」
「あんた次第だねぇ」
笑い方が湿っぽくて怖い。口の端から覗く細い舌が本当に怖い。
「しかし妖精だとは思わなかった」
「……何故です?」
「神様を信仰するのは人間くらいさ。ってことは、転生かなんかしたんだろ?」
「………こんなにあっさりバレるとは」
「神様だからね。さて、で。あんたは何ができるのさ」
「ええと、閃く程度の───」
本来の能力を隠すための適当な方便を口に出そうとして、諏訪子様の表情にギョッとした。
「あ、そうだ。神様は嘘がわかるんだって知ってた?」
「ゔぇ?」
「ねー。神様の前で嘘つくなんて……勇気ある行為だと思わない? 具体的には捧げられる勇気とか」
「ごごごごごごごめんなさい本当は『七割まで反射できる程度の能力』です」
威圧感に負けて素直にゲロった。木っ葉妖精はやっぱり権力者に勝てないのだ。
「おお、まぁまぁ使えるじゃないか。よし、あっちの方に………」
私に巻き付く触手が一際太くなり、力が入ったようになる。
そしてそのまま────
「おりゃあ!」
「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
思い切りぶん投げられた。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「いい加減……堕ちよッ!!」
「堕ちるのはお前だッ!」
旋風と柱がぶつかり合う。押し切ったのは柱であり、それは天魔の腹部に突き刺さった。
「ぐっ……!」
「終わりだよ。私が風雨の神である以上、風は些か相性が悪いだろう?」
羽をもがれた天狗はしかし、その傲慢を鼻で笑う。
「………ふむ。どうやら本物の神らしいな。足元を掬われやすいところも」
「貴様──」
振り返る。トドメを刺すということは、それに全力を注ぐということで──。必然、視界は狭くなる。
「天狗社会は個の力で成り立っているのではない。組織力こそ我らが強み。集団こそが天狗。さて………あの神社に残っているのは巫女であろう? 最後の信仰というわけだ」
たとえ神に敵わぬとも、天狗は妖怪の中でも上位に位置する存在だ。それが力を合わせれば、成せぬことは無いのだろう。
「巫山戯た真似をッ」
直ぐに突風を起こし術式の破壊を試みるも、それは全て天魔の団扇がもたらす突風によって逸された。
「邪魔をするなッ!」
「ハ、底が知れるぞ八坂の」
地上ではすでに、落ちた天狗たちによる術式が完成していた。
全員の妖力合わせて天魔の一撃分に届くか届かないか。しかし、的ががら空きならばそれで十分だった。
「撃てぃ!」
「──早苗ぇッ!」
竜巻を無理やり封じ込め形にしたような槍が、真空を撒き散らしながら社に向けて放たれた。
地を抉り、空気を捻り、木を巻き込んで突き進む。
そして槍が神社まで十メートルを切ったところで────その射線上に何かが飛んできた。
叫びながらとんでもない速度で飛来する人型の影。
「にゃぁぁぁぁあああああ!!!!」
それと槍が接触した途端。
風の槍が跡形もなく霧散した。
「………は?」
術を撃った天狗のうちの一人が放った疑問は、その場にいた全員の総意であった。天狗も、天魔も、神奈子ですら、何が起こったのか分からなかった。
▽▽▽▽▽
「ちょっと! 大丈夫ですか!?」
どうも、投げ飛ばされた上に吹き飛ばされたヴィーです。割と足がちぎれかけですが、ギリギリ生きてます。フラン様の時よりは傷が軽いから軽傷でしょう。
どうやらそのまま神社の本殿に突っ込んだみたいで、早苗さんがうまく受け止めてくれました。
「あ、大丈夫ですー」
「本当ですか? いやでもあの攻撃、どう考えても無事じゃ済まないと思うんですけど……」
「どうにかかすり傷程度で済みました」
まぁ飛べるから、正直移動するのに問題は無い。手足は力が入らないが、羽はギリギリ無事だった。
「早苗!無事か!?」
と、そこへ神奈子様が凄い勢いで突っ込んできた。
「あ、神奈子様! この通り無事です!」
「……そうか、良かった。で」
安心したようにため息をついた神奈子様が、次いでじっとこっちを見つめてくる。
……何だろう? 自己紹介しろってこと?
「えーと、どうも。ヴィーです。妖精やってます。こちらには主に諏訪子様のせいで来ました」
「私のことは知っている?」
「はい。神奈子様ですね」
「……そうか、あんただったか。まずは礼を……感謝する。早苗を守ってくれてありがとう」
「あー……いや、それは半分成り行きみたいなものなので気にしなくていいです。そんなことより」
するり、と神奈子様の影から諏訪子様が現れた。
「あの天狗の攻撃はその妖精に任せればいいよ」
「諏訪子様、私もノーダメージではないんですけど」
「私が全力で死ぬまで祟るのと協力するのどっちがいい?」
答えなど決まっている。
選択肢がないともいう。
私は動かない手を無理やり上げて敬礼して応えた。
「不肖ヴィー、喜んで神奈子様の肉壁にならせていただきます」
早苗さんが目を白黒させている。
「……神奈子様?どういう状況ですか?」
「諏訪子が意地悪をしているだけ……だ、と、思いたい。正直あいつの冗談と本気のラインが未だにわからん」
諏訪子様に肩を叩かれ、慌てて私は声をかけた。
「よし神奈子! 盾は得た、さっさと倒しにいくぞ!」
「行きますよ神奈子様! 私が睨まれないうちに!」
▽▽▽▽▽▽▽
外に出ると、明らかに強そうな天狗がこちらを見て眉を顰めた。
「反射能力………! お主、『発明家』か!?」
「人違いですね」
「あの忌々しい年増から話は聞いておる。お前が技術革新を起こしかけた要注意対象だと」
「全然話聞いてくれないですね!?」
天魔の言葉を聞いた神奈子様の目が、キラキラと輝いている気がする。
耳元で囁かれた。
「あとで話がある」
くそぅ、あのスキマ妖怪絶対楽しんでるだろ……。
私は小声で返した。
「神奈子様。もう面倒臭いので次あいつが大技放つタイミングで私をぶん投げてください。どうにかします」
「ヤケになったな随分と」
「嫌な人の顔を思い出したので」
「………聞かないでおくよ。おや、早速出番みたいだ」
さぁ、気合い入れて技を食らっていこう!
天魔が思い切り団扇を振るう。神奈子様はタイミングを見つつ、御柱で死角を作った。
「空牙」
「行くよ」
天魔から見えない角度、見えても処理しきれない速度で突貫する。暴風が視界と聴覚を包み込み、何もかもわからなくなるが……
おそらく反射できたはずだ。
しかし、三割の威力でも私の意識が吹っ飛ぶには十分だった。
「素晴らしい。好い隙ができた──諏訪子」
「お任せ。足止めくらいなら余裕ってね」
そうして、一度傾きかけた均衡はひっくり返り。
妖怪の山に、神が鎮座することになったのである。
▽▽▽▽▽▽▽
「…………ん」
ここは……?
視界に映るのは知らない天井……しかも和風の。
どうやら一回休みになったわけじゃないみたいだ。完全に死んだら、妖精は自然の中で生まれるらしいから。
布団から抜け出て、襖を開く。全く知らない間取りをふらふら彷徨う。
「こっちかな……?声がする」
廊下をうろうろ。
ついに話し声の聞こえる部屋を探し当てた。
そうっと、そうっと襖を開き隙間から中を覗くと…………
にとりさんがいた。
なんで……………?
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「…………そうか」
レミリアは手のカップを置き、溜息をついた。
「あの神気か……また嫌なところに現れるものだ。咲夜」
「こちらに」
「数日中に出る。フランには………私から伝える」
「さぁ……。これで最後だ。今度こそ終わらせてみせる」
うちの子が出張する可能性があるんだって。
こんな頭のおかしい時間に投稿してる理由?
ぶいちゅっばの配信を見ながら書いてたからです。
さてー。ついに題名すらまともに思いつかなくなってきた。
でこのざまよ。
やっぱノリで書いてるからね。仕方ないね……
書ける時期と書けない時期があるんですよねぇ
神奈子様……技術革新好きなんだって。
いやそこまで考えてなかった。でもこれは……やってんねぇ!
諏訪子様は知らん。主人公に執着するかも。しないかも。
ではまた。