東方逃亡精   作:鼠日十二

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A prayer

 なぜにとりさんが?

 

 私は襖の微妙な隙間から仲を伺いつつ、聞き耳を立てた。

 

 

 

「……あれはうちのですよ」

 

 にとりさんが敬語喋ってる……似合わないなぁ。

 

 

「掛け持ちというのはどうだ? そちらの仕事と、うちの仕事」

「まさか。あいつはウチの工房にとって大事な役割を担ってるんですよ……まあ。どうしてもというのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……神に恩を売ろうって? 全く商魂逞しいね」

「商売を生業とするものは皆こうですよ」

「そうかい、そうかい。まぁ……本人に聞いてみるのが一番だと思うけどね」

 

 

 

 ぽん。

 

 私の肩に手が置かれた。

 思わず体が跳ねた。

 

 

 

「盗み聞きは良く無いよねぇ」

「ひゃあ」

 

 諏訪子様の手が首元をさする。背筋に怖気が走った。

 

 情けない声が口から漏れると同時に、襖がすぱんと開く。

 

「………なんだ、聞いてたのか。なら話は早い、助手からも言ってやってくれ」

「おや、起きたのかい。なあヴィー、うちの巫女にならないか?」

 

 状況の読めない私は、2人の顔を交互に見ることしかできなかった。

 とりあえず入り口の近くに諏訪子様と座り、ビクビクしながら話を聞く。

 

 

 ……はぁ。私がここの巫女? いやいや、私妖精ですよ?

 それでも構わない? 魂的に問題ない? そうですか……。

 で、にとりさんは……あ、割と乗り気なんですね? じゃあ何が………あぁ、週に二日が限界だと。

 

 で、神奈子様は……終身雇用!?

 いやいや……流石にそれは難しいですって……

 

 すると神奈子様とにとりさんはまた二人で話し始めた。

 

 

 うーん。この疎外感。

 でもこういう交渉は門外漢だからなぁ……。

 そんなことを考えていると。

 

 

「ねぇねぇ」

 

 と諏訪子様が話しかけてきた。

 

「この山って妖怪が治めてたらしいじゃん。てことはさ、人間は排除対象だよね?」

「あー、そうかもしれないですね。上の方まで登るのは無理かと思います………あ。そういえば天魔は」

「その話はあとで」

 

 

 そう言って諏訪子様は私に近寄ってきて、耳元で囁いた。

 私の髪を一房、さらりと撫でながら。

 

「───元人間ってバレたらどうなるんだろうね?」

 

 

 思わず諏訪子様を見る。

 諏訪子様はにこにこと、子供のようでいてどこか暗い笑みを浮かべていた。

 

「バレないといいねぇ……ふふっ」

「いやほんと勘弁してくださいやっと見つけた安住の地なんですよ」

「じゃあ、やることはわかるね?」

 

 

 目をやれば、二人は「週二日!」「週五日でどうだ」などと話していた。

 目線を諏訪子様に戻す。にこにこ。にこにこ。

 

 目だけが笑っていない。

 

 

 

 

 ……うう。逃げられる気がしない……。内心泣きながら、私は立ち上がり2人に頭を下げた。

 

 

「巫女業は週に四日で勘弁してください」

 

 

 それは半分背後へと向けた言葉だった。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 で。週4で巫女服に身を包むことになってしまったわけです。

 

 あの後、少しだけ不機嫌になったにとりさんをきゅうりで誤魔化しました。………ちょろいな。私の料理の才能がおそろしくなるぜ。

 

 

 

 

 

 

「へくちっ! うう、誰か私の噂か? いや、それなら名前が売れたと喜ぶべきか……?」

 

 

 

 

「ヴィーさん?聞いてますか?」

「あ、えーと……何でしたっけ」

 

 やば、聞いてなかった。

 

「しっかりしてください、立派な巫女になってもらうんですから」

「が、頑張ります」

「その意気です、ではまず───」

 

 

 

「………早苗、随分と張り切っているね」

「そりゃあれだ、えーと……後輩ができた気分なんだよ、きっと」

「ああ、早苗の代は早苗しか私たちが見えなかったからね……。苦労をかけたものだ」

「何弱気になってんのさ。今度は私達が苦労する番だよ」

「はは、そうだな。まずはその為に………布教から、だ」

 

 

 神奈子は新天地の空を見上げて思う。

 

 

(……きっと、あの子は私達の為に犠牲になることを厭わないだろう。すでに大きな選択も経験させてしまった。だからこそ──あの子だけは幸せにしてみせる)

 

 

(たった一人の願いも叶えられずに、何が神か)

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

「そう……そろそろなんだ」

「おそらく。私の能力では正確な未来は選べないが、大まかなタイミングの選択で良い方向に持っていくことができる。………フラン」

「気は変わらないわ、私も行きたいの。それに……まだ、あの子とほとんど話してもいないのよ」

「それは──」

 

 

 

 それはきっと私たちにも足りなかったものだ、とレミリアは思った。

 

 どこですれ違ったか、と言われれば……最初からすれ違っていたのだろう。

 

 生まれた時から近くにいるから。

 姉妹だから。

 血を分けた、最後の家族だから──。

 

 

 何も言わなくてもわかってくれる。

 

 

 けれど、けれど。そうやって会話を疎かにして、フランを閉じ込めたのは私。すれ違いをすれ違いのままにしたのは私。

 

 

「お姉様。きっとあの子が運命よ」

「……ああ。そうかもな」

 

 

 どうしようもない気分になって、逃げるように部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 フランの部屋の扉に寄りかかるよう座り込む。

 

 思考はうろうろ、ふわふわと空回る。

 

 

(そも、)

 

 ゆるり、記憶を呼び起こす。

 

(初めはフランの狂気が消えることを願った。だから私は閉じ込めた。けれど……孤独は狂気を消すには至らなかった)

 

 

 

(きっとフランには……その狂気を受け止める相手が必要だった。そうだ、だから私はあの妖精を求めている)

 

 

 

(……ああ、この感情は……)

 

 

 

 自虐的な笑みを浮かべた。

 

 

 

(()()か。醜いものだ。私が目を背けたものが……ただのタフなだけの能力で解決するかもしれない、なんて想像もしなかった。そんな都合のいいことがあるはずがない、と無意識のうちにその可能性を除外した)

 

 

 

(……できる限りのことをやると決めたのに。私はフランの姉であるというのに………)

 

 

 

(何処かまだ、私だけでフランを治すことが出来るのでは、と期待する私がいる)

 

 

 

「アレが……いや、あの妖精。

 

 

 

───運命は本当に彼女なのか?」

 

 










prayer=祈る者

今回の話は祈りが多く表されましたね……
ちょいと作者が苦手なシリアスが出てきました。
でも。私はハッピーエンドが好きなのでそうします。絶対
さらに言えば私はレミフラ過激派なので。そういうことです。





ええ。でもタイトルは曲名からもらってます(割愛)



で、アホほど話はそれますが。

誰かさ、鬼滅の刃の二次創作で「『御柱』八坂神奈子」
みたいなの書いてくれませんかね?


……え?私?
私は鬼滅読んでないのでストーリーがわかりません。
二次創作をここで読むくらい。
つまり私の前作みたいな感じになること請け合い。
こういうのは原作に愛があって読み込んでてなおかついろんな解釈が許せる人が書くべきなんですよ。


他にもしょうもないアイデアはあるんですが、この小説で私のキャパシティが限界なのでやりません。



というわけで。あ、コロナのせいで時間が余りにも余っているので割と更新が早くなるかも。ならないかも。


では。

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