どうしよう……幻想郷リアル鬼ごっこの鬼が増え続ける話しか書けない……
飛んで、飛んで、飛んで飛んで───
妖精人生の中で初めて思うままに飛んだ私は、脱出成功の喜びもあってかなり浮かれていた。月の光も届かぬ森の中をバレルロールなんかしたりして、これが弾幕を避ける気分なのかー、とかやっていた結果、
突然森の中に現れた壁に突っ込んだ訳です。
「ふぎっ」
わたし は めのまえが まっくらに なった!
眼が覚めると、そこはベッドの上だった。
「起きたかしら?」
と声をかけてきたのは金髪碧眼の美人さん。私の優秀な脳が検索を開始し、二件ほど候補がヒットする。
──アリスさんじゃん。
ということはここはアリスさんの家?
あ、待ってください。何故さんを付けているのか、とお思いでしょう。
一介の男子高校生、しかもオタクだった私には美人さんはあまりにもハードルが高いのです。だって本物ですよ? むりむり、呼び捨てとか畏れ多い。
とはいえ助けていただいたのは確実。恥ずかしいなんて言ってられません、とりあえずお礼を述べつつあたりを見渡します。
おや。
よく見れば奥の方に人形が動いてるのが見える……!!
感動です。東方ファンとしては決して忘れてはいけない光景でしょう。
「貴女、うちの前で何してたの?」
「へっ?」
アリスさんの問いに、トリップしていた意識が現実に引き戻されました。どうしよう。誤魔化そうか、素直に答えようか。
誤魔化すにしてもなぁ……森で迷った、は妖精として無理があるし。今の私、メイド服なうえに片足ないんですよね。ここは素直に今までをの出来事を話そうかなぁ。
「実はですね、私───」
話の内容は一話目を参照のこと。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「ふぅん、そう。まぁその足が治るまでならここにいてもいいわよ」
「え、いいんですか?」
「屋敷の話には興味があるし、たまには客観的な意見も必要なの」
聞くも涙、語るも涙な私の大逃走劇を聞いたアリスさんの反応は割と淡白でした。いやまぁ匿ってくれるだけでありがたさしかないんですが。
ていうか、私の足治るの?
「治るわよ。貴女妖精でしょう?自然現象みたいな存在が一部欠損しっぱなしになるわけないじゃない。」
知らんかった……。幻想郷ビギナーなのがバレちゃうな。
「ありがとうございます、アリスさん」
「良いわよ別に。………………私名前言ったかしら?」
やべっ。
「最初に聞きました、よ?」
アリスさんは胡乱気な視線を投げかけてきたが、やがて興味を失ったように手元の裁縫針をいじり始めた。
「そうだったかしら……。まぁいいわ。貴女にも少しは家事を手伝ってもらうから、そこの所お願いね?」
「任せてください!これでも妖精メイドのリーダー格だったんですから!」
そうして私とアリスさんの同棲?生活が始まった。
私の家事スキルが予想以上だったらしいアリスさんは、人形に任せていた分まで全部こちらに仕事をよこしてきた。本人曰く、作業効率上昇のためらしいが。
でも紅魔館よりブラックじゃないです。むしろ食事の回数が少なすぎて心配になります。
▽▽▽▽▽▽▽▽
私の足もだいぶ復活したある日のこと。
私はアリスさんにクッキーでも作るかと思い立ち、台所に立った。
「やっぱりアリスさんの研究って自律人形のことかなぁ」
生地をこねつつ想像する。前世で見た本とかにはそう書いてあった気がするけれど……。
「まぁわたしには人形操作魔法はわからないし、気にしても仕方ないよね」
戸棚から使用許可を得た紅茶の缶を取り出し、生地に軽く混ぜ込む。ショウガをすりおろしても美味しい。
型を抜いて、実にマジカルな動力不明のオーブンにぶちこみ待つこと10数分。特製クッキーの出来上がりである。紅魔館ではこれで妖精メイドを釣って仕事させていたものだ。懐かしいなぁ。
皿に盛り付け、研究室のドアをノックして呼びかける。
「アリスさん、クッキー用意しましたよ。入ってもいいですか?」
「ええ……どうぞ」
「失礼します」
やはりいつ見てもアリスさんの工房は壮観である。壁に掛けられた人形のパーツや束ねられた糸、ガラス製の目玉などがそこらに転がっている中でアリスさんは一体の人形と向き合っていた。
「ここに置いときますね。たまには休憩も必要ですよ」
「そうね……。貴女も一緒にどう?」
「いいんですか?ではお言葉に甘えて……」
アリスさんに紅茶クッキーを渡し、私は余った生地で焼いたプレーンクッキーを一口。うむ、我ながら完璧なバター風味。
アリスさんもなんとなくリラックスしている雰囲気だったので、気になっていることを聞いてみた。
「そういえば、アリスさんは何の研究をしてるんですか? あ、いえ、秘密とかなら全然無理に教えてもらわなくてもいいのですが」
「別に秘匿しているわけではないし、いいわよ。教えてあげる。わたしはね、この人形───上海を、自律した存在、言わば生きている人形にしたいのよ。」
「自律人形ですか……。それはあれですか、魂を人形に込めたりなんかするんですか?」
「魂ねぇ……。そもそも魂って生物に宿るものなのよ。つまり魂には成長とか代謝とかそういう生命活動の要素が入っているのだけど、それがどうも人形には相性が良くないみたいなのよね……」
こんな饒舌なアリスさんも珍しいものだ。この機会にもっと仲を深めたいと、私はもう一歩踏み込んでみた。
「じゃあ、意識だけ人形に移す感じですかね?」
「どういうことかしら?」
「私たち妖精も、自然そのものに意識という指向性のようなものを持たせた存在みたいですし、肉体は追いつかなくても精神だけなら人形にもいれられるんじゃないかなー、と……。まぁ素人目線なんですが」
「……妖精、ね。考えてみるのもありね。ありがとう、今日はもういいわ。貴女も休みなさい。」
「では、失礼します」
「ええ」
楽しかったー!やはり原作キャラとの会話は最高だね!
夜。のどの渇きを覚え、キッチンで水を一杯飲んだ帰り。私は自分の部屋がわからなくなっていた。廊下の両端には見たこともない細工の施された扉がいくつもあって、まるでへんな通路に迷い込んだ気分だ。
「こんなドア多かったっけ……?」
とりあえず目についた近くのドア、月の意匠が施されたそれを開けて──そこにいたのは、一体の精巧な人形だった。それを人形だと判断する材料が『球体関節であること』しかないほどに、それは生物じみていた。
脳内検索に一件ヒット。あれ? これ神綺じゃない?
「……何でここに神綺が?」
「貴女。ここで何をしているのかしら」
背筋が凍った。
後ろから低く暗い声が響く。
あるいはいつも通りの声音だったのかも知れないが、私にはそう聞こえた。
アリスさんが口を開く。
人形について語るあの時のように饒舌に。
「最初から違和感はあったのよ。貴女妖精の割に精神的にかなり年齢が高いし、どうも動きが人間臭い。……なるほど、意識だけ、ね。貴女の言っていることがようやくわかったわ。妖精という器に、人間としての意識だけを移し込んだ……なるほど、なるほど。いいわね。この人形の名前を言い当てたのも気になるし……何より、貴女」
「素晴らしい研究サンプルだわ」
この感じ、デジャヴである。1回目は紅魔館の地下で───ならば、次に取る行動も決まっていようもの。
逃げるんだよォーーーーー!!!
「待ちなさい、貴女に用事があるの。少し待ってくれるだけでいいのよ」
「無理です嫌です実験台エンドは勘弁してください」
すでに前からは武装した人形が迫っている。前門の虎、後門の狼である。
私は人形が振り下ろした剣にあえて突っ込んでいった。そのまま能力を発動し、後陣の人形の少し上、糸があるであろう位置に反射する。果たしてそれは命中し、いくつかの人形が崩折れた隙に、わたしはアリスの家のドアを蹴破って外に出た。切られた腕が悲鳴をあげるが必要経費のようなものだと割り切る。
そしてそのまま夜の森を振り返ることなく飛んで行った。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「……わたしの糸を切った?あれは生半可な衝撃じゃ切れないんだけど……。もう少し詳しく調べる必要がありそうね」
魔法使いとして、紅魔館の魔女とは話したことがあった。七曜に長け、膨大な知識量と蔵書を誇る図書館の魔女。そして、最近はとある妖精メイドを探していることも。
当然、情報交換のために連絡手段は用意してあった。まさかこんなにすぐに、それも交渉目的で使うことになるとは思わなかったが。
「さて、書き出しは──」
『久しぶりね、パチュリー。あなたの……正確には、あなたの大事な親友の妹の探し物のお手伝いができるかもしれないの。
──そうね、対価は。見つかったら周期的に貸してくれれば、それでいいわ。大丈夫、壊さないから』
あれ……フランちゃんの出番は……?
というかこのままだとフランちゃん主人公が捕まった後のお遊戯の回しか出せない気がする……