東方逃亡精   作:鼠日十二

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つなぎです。


つづき
宴会=賢者の極地


 

 

 

 

 ……ここから出たら負けな気がする。

 というか、幻想郷においてここより安全な場所があるのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 私は後ろをちらっと見た。

 飛ぶ私の足をフラン様が掴む直前だった。

 

「うひゃあ!」

 

 あわてて横にずれた先にはレミリア様が待ち構えている。

 

「ちょっ、むりっ、鬼二人は鬼ごっことは呼べないのではっ」

「知らんな。フラン!挟み撃ちの形をとるぞ!」

「わかった! いくよー!」

 

「仲が良さそうで何よりですぅぅぅ!!」

「ああ、おかげさまで。そのお礼もしないとなァ?」

 

 空中を踊るように避ける。……正確には踊らされている。

 

 

「あぶなっ! 痛いのは嫌です!」

 

 レミリア様の爪が長く鋭くなっているおかげで手の長さより遥かに余裕を持って避けなければならず、距離感にばかり気を遣ってしまう。

 

 

「……まあ、あまり時間をかけても仕方あるまい。そろそろ終わらせるか」

 

 レミリア様の体の輪郭がぼやけ、ゆったりと宙に舞い始めた。

 

 

「霧になるなんて卑怯じゃないですかぁ!」

「ははは、注意力も散漫、というわけだ」

 

 

 徐々に霧が近づいてくる。私は必死に隙間を探す。

 だから、気づかなかった。

 月を背負って、七色の弾丸のように突っ込んでくるもう一人の吸血鬼に。

 

 

 

「つぅぅぅかぁぁぁまぁぁぁえぇぇぇたぁぁぁぁ!!」

「ぐっふ」

 

 

 フラン様の頭が私の腹に突き刺さり、二人ごと地面に墜落した。

 

「いったぁ………」

 

 

 フラン様が神社の鳥居をバックに私に馬乗りになっているのがわかる。

 ああ、全身が痛い。私はサンドバッグじゃないんだぞう。

 

 

「お姉様、妖精も吸血鬼になれるのかしら?」

 

横に降りてきたレミリア様が応える。

 

「やってみたらどうだ?」

「そうね!」

「軽率!!」

 

 

 フラン様の目が爛々と紅く輝く。

 口を開き、鋭い牙を見せ、ゆっくりと私の首元に顔を近づけて───

 

 

 

ブゥゥゥ――――ン!!

 

 

 

 寝転ぶ私の上すれすれを極光が迸った。

 私の上に乗っていたフラン様が引き剥がされ、後ろへ吹っ飛……ぶ寸前でレミリア様がそれを受け止めた。

 

 呆然としていると、鳥居へ続く階段のほうから声が聞こえてくる。

 

 

「………ありゃ?フランにレミリアじゃないか。こんなところで何してるんだ?」

「それはこっちの台詞だ。何しに来た、魔理沙」

「ん? 私は異変を解決しにきたのさ。その途中で人を襲う妖怪を退治しようとしただけだぜ」

「…………よく見ろ、妖精だ」

「ん? …………んー?」

 

 

 魔理沙さんは私の方を見て首を傾げた。

 

「んーーー……会ったことあるか?」

「あ、お久しぶりです魔理沙さん」

「………あ、マスタースパークの楯にされてたやつ!」

「ヴィーです」

「悪い悪い。知ってると思うけど、霧雨魔理沙だぜ。で、お前はこんな所で何してるんだ?」

 

 

 私たちは顔を見合わせた。

 

「鬼ごっこだな」

「鬼ごっこね」

「鬼ごっこではないです」

 

 

 魔理沙さんの視線が一気にかわいそうなものを見る目になった。

 

「……助け、いるか?」

 

 私は全力で首を上下に振った。

 超える……ッ! 今までの限界をッ! 今私はまさに……赤べこレベル300を超えているッ!!

 

 

 

 

 

 

 レミリア様が急に後ろを振り向いた。

 

 

 

 鳥居のほうから一人、いや一柱が歩いてくる。

 

「おや……錚々たる面子だ」

 

 レミリア様がむ、と唸る。

 

「お前か、この神社の主は」

「そうさ、吸血鬼とやら。私が守矢神社が一柱、八坂神奈子だ」

 

 そこに魔理沙さんが訪ねた。どこか興奮している様子だ。

 

「異変を起こしたのはあんたか?」

「異変? ……どれの事だ?」

「…………さぁ?」

 

 首を傾げる魔理沙さん見て、フラン様が「変なの」と呟いた。

 

 

「魔理沙、異変が何か分からないのにきたの?」

「いやな、霊夢がこの山に向かって行ったからきっと何が起こったんだろう、と思って来たんだ。今回は私が先に解決できると思ったんだがなぁ」

 

 当てが外れたかな。そう腕を組んで残念がる魔理沙さんに、さらに新たに声がかけられた。

 

 

「私が来たのは私の神社より信仰を集めてる神社があるって聞いたからよ」

「お、噂をすれば」

 

 

 魔理沙さんが来た道の向こうから、

 

 

「で、何この集まり。そもそもなんでレミリアとフランがいるのよ」

「やっぱり霊夢もそれが気になるよな」

 

 

 霊夢さんが現れた。

 

 

「……とにかく。面倒だから一回全員ぶっ飛ばしてから話を聞くわ」

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、その後は私の知る原作とほとんど同じ展開になった。

 そう、ほとんど。

 

 違う点といえば、タッグ戦だったこと。

 霊夢さんと魔理沙さん。

 レミリア様とフラン様。

 神奈子様と………私。

 

 

 

 どうして私はいつも弾幕をする際に抱えられるのだろう。

 

 神奈子様ほんとにやめて。レミリア様とフラン様がすっごい目で見てるから。

 

 

 視線わかっちゃうから。「私達のものだ」って主張が凄いから。ただでさえ巫女服着てて気まずいのに。

 諏訪子様で良いじゃないですか。

 

 

 え? 諏訪子様はまだ本調子じゃないから? それは………まぁ……。

 

 

 

 

 結果? 聞くんですか? そりゃ負けましたよ。

 私、半分弾幕持ってないようなものだからね。

 なんてったってスペルカード使い捨てしかなかったから。

 

 

 で。神奈子様とレミリア様の言い分をある程度聴いたのち、霊夢さんはこう言った。

 

「ふぅん。まぁいいわ、その代わり。私の神社の分社をそっちに置かせなさい。あと……そうね。宴会を開くから、来なさい」

「私達もか?」

 

 とレミリア様が尋ねた。

 

 

「そりゃそうよ。態々宴会を開くのは何があったか、誰がやったかを周囲に知らせて異変の終結を納得して貰うため。そうでもしないと煩いのよ、異変は解決したのかってね。だからあんた達も来なさい」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 で、強制参加で私は今博麗神社にいるわけだ。

 

 でも正直参加して良かった。こんなに安心できる場所があったとは……

 

 確かに神奈子様のとこもにとりさんのとこも好きなんだけど、夜の妖怪の山って怖いんだよね。あの山妖怪だらけだし、天狗に見つかりたくないし。

 

 

 ……ここ出たくないなぁ。

 

 

 

 

 

 向こうで神奈子様とレミリア様が飲み比べをしているのが見える。

 平和だなぁ……いいなぁ……。

 勝負もああいうのでやってくれたらありがたいのだけど。

 

 

 私? 私は今配膳やらお酌やら何やらしている。

 今回はわりと山全体に迷惑をかけたので、そのお詫びも兼ねているのだ。もちろんにとりさんもいるし、文さんも椛さんもいる。

 

 

 

 

 ……ま、お仕事はこの辺で良いかな。私もご飯食べたい。

 と、その前に、食べ終わった食器やら何やら台所に置きに行っちゃおう。

 こういう時にメイド経験が生きるよね。

 

 

 カチャ。カチャリ。

 

 

 

「……よし。じゃあ私も」

「あら、もう少しここにいても良いのよ?」

 

 

 後ろから私の肩に腕がするりと回された。全身が死にかけの魚みたいに痙攣する。

 

 

「ふふ、相変わらず良い反応するわね」

「誰だって急に来たらびっくりします……それで、ええと、紫さん。私に何か用ですか?」

「ええ。貴女、神隠しって知ってるかしら?」

「何となく……ですけど。あれですよね、なんか急に居なくなって戻ってきたら何年も経ってたみたいな」

「そう。お気に入りの人間とかを自分の近くに置いておきたくなったりした妖怪や神の悪戯ね」

「……ええと。それが、どうかしたんですか……?」

 

 なんだかとんでもなく嫌な予感がする。

 

 

「久しぶりに私もやりたくなったのよね」

「は?」

「という訳で……えい」

 

 紫さんは私を抱えたままスキマの中へ移動した。

 そして私を放り投げ、

 

「じゃあね」

 

 と一人で戻っていった。

 

 

 

「嘘でしょ………?」

 

 

 

 もはやスキマは一つしか残されていない。

 

 そこから見える景色は……土のような壁ばかり。

 ただ、明るい。夜ではないのだろうか?

 

 

 神隠し。時間の流れが変わることもあるらしい。

 紫さんがそんなことができるのか分からないけれど……。

 

 

 周囲を見渡してみても、他に道はないみたい。というかこの空間、目玉が常に私のことを見ていて居心地が悪いなんてもんじゃない。

 

 行きたくないなぁ……行くしかないんだろうなぁ……。

 

 私は意を決して、スキマに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







こうやってヴィーちゃんを地下にぶち込む訳です。





さて。タイトルですが、初めは「賢者の極北」でした。曲名ですね。
この曲で言うところのの賢者は紫のことではない(はずな)のですが、賢者つながりで無理やり採用し、さらに北かどうか分からないので地に変えた、という訳です。


次。地下だ地下だと言ってますが筋書きはありません。
取り敢えず地下行けば何かしら話書けるかなぁと思ってやりました。
後悔はしません。全て未来の私に期待。


次ぃ。
感想でも何度か頂いたさとりんの読心をヴィーが跳ね返す時どういう風になるのか如何。
表現自体はノイズっぽくしようかな。電波不良のラジオ的な。
で、この場合反射っていうのがちょっとあやふやで、跳ね返した時にヴィー本人が読心できるのかどうか決めかねておりましたが。
出来ないことにしました。

反射は「されたことを跳ね返す」のであって「されたことを本人ができる」訳ではない……という判定です。

程度の能力の「程度」というのは応用なんかが効いて一言で表せないから、みたいな話を聞いた気がします。
なので、そこまできっちり設定をつけなくても良いかな、とは思いますが、一応告知させていただきます。




そのくらいですかね。
やっぱり紫さん神出鬼没なところがすっごい書いてて楽しいですね。

なんか……こう、翻弄するタイプじゃないですか。百合好きな私にとっては本当に乱用したくなるキャラです。

後今回書いてて思ったのは吸血行為って結構……こう……




………えっちですよね。
外人は何考えてあんな素晴らしい伝説を作り出したんですかね。
うーん……そも、ドラキュラってヴラド・ツェペシュをモデルにした小説じゃないですか。あれが吸血鬼の起源でしたっけ?そしたら最初の吸血鬼は男がモデルになるんですかね?

するとラブロマンスあたりに設定が流用されたんですかね。
で、吸血行為にそういうイメージがついたのかな。



まぁいいです。大事なのはレミフラが尊いこと、すわかなは信仰すべきものだということです。
誰か姉妹で吸血し合ったりする百合小説書いてくれませんかね……?


では。

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