地霊殿に来て3日が経った。
現在私はさとりさんに頼まれておつかいをしている。
ここ地底でも需要があれば供給があるもので、あまり力の強くない妖怪なんかは商売を営んでいる。とはいえ、店側も安定して商品を仕入れているところは少なくて、地上から流れ着いた死体を漁って売れそうなものを探すこともある………らしい。これはお燐さんから聞いた。
で、今回の買い物なのだけれど。
妖怪は究極的には食事が要らない。強いて言えば恐怖や強さを誇示することが食事に当たる……ので、食事は嗜好品のようなものなんだとか。そして、嗜好品としてのお酒は妖怪にとって非常に人気……これもお燐さんから。
今日はそのお酒を買う。正直私個人はもう遠慮したいところだ、いくら復活出来るからって流石に寝ちゃうのは無防備すぎる。
そう、無防備になるのはたぶんやばい。今でさえ視線を感じるのだ。
別に妖精、地底にいないわけではない。現にお燐さんは妖精と死体探しをしたりしている。だから珍しい訳じゃないと思うんだけどな。
さて。さとりさんに説明されたのはこの店……。
大きいな。妖精になってだいぶ目線が低くなったな、とは感じていたけれど、それを差し引いてもだいぶ大きい。
「失礼しまーす……」
「………あ?」
鼻をつくアルコールの匂い。店の奥に座っているのは体格のいい白髪の男性。ただし角が生えている……間違いなく、鬼だ。
「何の用だ」
渋い重低音にちょっとビビるが、さとりさんの紹介だ。悪い鬼じゃないはずだ。
「あ……ええと、さとりさんに頼まれましてお酒を買いに。これ、お酒のリストです」
「……いや、いい」
そう言って男性は何処かへ消え、戻ってきた時には両手に何本か瓶を持っていた。
「これだ。代金は予め受け取っている……だいたい同じ周期で酒を取りに来るからな、そろそろだと思っていた。それに、この酒を飲む奴は地底でもあまりいない」
「そうなんですか……。でも嘘ついて受け取ってやろう、みたいな方いないんですか?」
すると男性は急に笑い出した。
「地底で知らない奴なんかいないと思ったんだけどな。いいかい、鬼ってのは嘘をつくのもつかれるのも嫌いなんだ。それこそ殺したくなるほど、な」
▽▽▽▽▽▽▽▽
店を出て、帰り道を行く。
酒瓶を入れた背中の籠が割と重くて、ふらふらして飛べないので帰り道は歩くことにした。
……さっきより視線を感じるような気がする………。
嫌な感じだ、早く帰ろう。安全な場所にいるに越したことは───っ!?
視界がブレる。首を掴まれた……!?
引き込まれたのは、裏路地にできたごく小さな空き地のような場所だった。
私の首を掴むのは異常に腕が長い男、更にそれを足の長い男が肩車している。
きっとその長い腕でここから私のことを引っ張ってきたんだろう。東方ではないが、私はその妖怪を見たことがあった。
「………手長、足長」
二人の小男はにたにた下卑た笑みを浮かべる。
「ああ? 俺らの名前を知ってんのか?」
「はは、ずいぶん有名になったものだなぁ俺らも!」
手長の両手が、私の首を絞める。背筋が泡立った。
窒息は反射できない。
「おお、これが例の」
「ひひ、あの嫌われ者だけが飲むって噂の酒だ……美味いんだろうなァ」
苦しい、頭が締め付けられて、意識が────
ドゴン!
「なんだぁお前──ゲッ!?」
「運が悪かったねぇ」
首を絞めていた手の力が緩み、離された。意識が朦朧としたまま地面に倒れこむ。
背中の籠に入った酒瓶がカチャカチャ音を立てた。
声をかけられて、徐々に視界がはっきりしてくる。
「立てるかい?」
差し出された手に縋り付き、どうにか体制を立て直した。見上げれば大柄な女性が私に笑いかけている。
「ありがとう、ございます………ふぅ、ふぅ。貴女は」
「私? 私は星熊勇儀さ。知らないのかい?」
「そ、その。新参者でして、すみません」
「いいさ。この際だ、地霊殿まで送るよ」
「……どうして地霊殿だと?」
勇儀さんは私の背中の籠を指さした。
「酒だよ、酒。その背中のはね、地底でほとんど飲む奴がいない……取り扱いも少ない希少なものだからさ」
「これ、本当にさとりさんしか飲まないんですね……」
「そりゃそうさ、だって私達には
勇義さんが蹴とばしたのは、顔面が腫れ上がって痙攣している小男二人。気持ち悪い。
「じゃ、行こうか」
「ありがとうございます……」
▽▽▽▽▽▽▽▽
と言うわけで。
勇儀さんと地霊殿まで辿り着いて、今はさとりさんと勇儀さんが話し始めたのを横で聞いている。
「………なるほど」
「なぁさとり、もう少し会話があってもいいと思わないか?」
「これでも会話している方です。貴女は言うことと考える事の差が大きくないので」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「……ああ、そうです。うちの扉が一つ壊れそうなので、新しく発注できますか?」
「壊れる? 地霊殿はうちの鬼が張り切って作ったもんだ、鬼の力に耐えるんだからそう簡単に壊れないと思うけど」
さとりさんも不思議そうな表情を浮かべた。
「ええ。けれど確かに大きめのヒビが入っていまして。開閉する度に音がなるので……原因はヴィー、貴女にあると思うのだけれど」
「……え? 私ですか?」
「ええ。だってあの扉、貴女が顔をぶつけた時に壊れたのよ」
……もしかして怪我跳ね返した? と言うか跳ね返さなければもっと酷かったって事?
「ははは、そりゃ凄い!一体どうやったんだい?」
興味ありげな勇儀さんに反射的に答えかけて……そこから何も言えなくなった。
脳裏に先ほどの酒屋さんの言葉が蘇る。
『鬼ってのは嘘をつくのもつかれるのも嫌いなんだ。それこそ殺したくなるほど』
まずいまずいまずいまずい。反射のことはさとりさんにバレているとしても、そのほかの妖怪に積極的にバラすつもりはなかった。
きっとその方が楽だから。
この能力は、レミリア様の時のように火種になりかねないものだ。
……けれど。恐らくここで能力を偽るのは悪手中の悪手なのは私でもわかる。
意を決して、私は言った。
「ダメージを反射する能力です」
嘘は言ってない。このくらいでどう? 駄目? 内心で祈りながら二人の反応を見る。
勇儀さんは笑っていた。
「随分と面白そうな能力じゃないか。どうだい?このあと私と一戦」
「勇儀さん」
「わかってるさ。でも、何処かに戦える奴はいないのかね……。体がなまってしょうがない」
「お空が見つかるまでですから、そのあとでしたら」
「え」
さとりさん何勝手に約束してるんですか!?
「お空が見つかればいいのかい? わかった、うちの奴らに探させることにするよ」
そう言って上機嫌で勇儀さんは帰って行った。
「……さとりさん」
「なんでしょう」
「私戦いたくないですし戦ったら死ぬ気がするのですが」
「大丈夫ですよ、弾幕勝負なので。貴女の能力、汎用性高いですし」
「でも勇儀さんの攻撃受け止めるんですよね? うわ、なんか調子上げてわけわからない火力の弾幕撃ってくるのが幻視できる……。あれ? これサンドバッグと同じでは?」
いやだから、私はサンドバッグじゃないんだってば。
というかもうサンドバッグ作って勇儀さんに渡したほうがいいんじゃないか?
何となく3日も開くと前の話を覚えていなくて書くのがつらくなりますね。
いかがお過ごしでしょうか。そろそろ部屋の壁を見飽きました。必死にBe of good cheer!と言い聞かせております。
で、タイトルは発熱巫女の”blooming night”から。この曲もすこなんだ。
最近ループして聞いてるのはFall in the Darkと言う有名な曲です。多分有名。
聞くたびにどうしようもなく切なさを感じるのですが、やはりあれですよね。妖怪と人間の寿命の差ってこう……心にきますよね。
さらに話は飛びますが。
本当は怖い幻想郷みたいなジャンルあるじゃないですか。ガッチガチのシビアなやつ。個人的なイメージとして「墓標」って曲がぴったりだと思っています。予測変換で出ないので四苦八苦するサークル名の所の曲です。こっちの方が有名だろうか。
ああ言うシビアなやつとどうしようもなくスローなの交互に読みたいんですよねー。
で。話は変わりますが。
私はこいドキと異形郷を最新話まで履修済みなのですが、個人的にはこいドキはストーリー性、メッセージ性の強いホラーなのに対して異形郷はゾンビパニックみたいなポストアポカリプスものですよね。どっちも見てる人いるかわからないけども……。
というか異形郷普通に怖くない?よくあんなの考えつくなぁ。
私の推し未だに出てないか生存してるんですよね。ゆうかりんは強者枠だし、お燐はこっそり生き延びる枠、にとりは……にとり異形本体が出てこないんだよね。戦闘機的な機械は出たけど……あれのことなのかな?
幽香編が個人的には好きですね。あの絶望感と「花-a last flower」が流れるタイミングといったらもう……。
ではこの辺で。
次回更新は未定です。ありがとうございました