ここは地霊殿の庭園。
地霊殿に連れて帰ったお空さんを見てさとりさんは思いっきり顔を顰めた。
「この子は……一体何を……?」
「さ、さとり様、お空はどうなったんだい? 風邪かい?」
涙目のお燐さんに急かされ、さとりさんはサードアイをお空さんのほうに向けた。その表情が曇る。
「……確かにお空の心の声は聞こえます。ですが、何か別の声もする…………『融合』『支配』……『八坂神奈子』?」
まさかここでその名前を聞くと思っていなかった。
私は思わずお空さんに向けていた視線をさとりさんの方にやる。
「何か知っているのですか」
「……さとりさんが読んだ通りです」
「巫山戯ないで! 貴方の心は殆ど読めない、それは貴方が一番知っていることでしょう!」
絶句してしまう。心が読めない?
……考えられる理由は、「私が反射した」から……。一体、私の能力は、何処まで……?
いいや。今はそんな事より、
「私は……私は、ここに来る前に八坂神奈子様の所で巫女をやっていました」
「……巫女?」
「神奈子様は妖怪の山にある神社にいる神様の一柱です」
伝わらないのなら口で説明しないと。
「兎も角、お空さんが神奈子様の名前を思ったのなら、何処かで接点が──」
「貴様」
辺りの温度が上がったように感じた。さとりさんがお空に駆け寄り、吹き出る熱波に尻もちをつく。
「お空!? いや、これは」
「今、あの女の巫女と言うたか」
目が燃えるように赤く輝いている。おかしい、絶対的に何かがおかしい。
これは、お空さんじゃない。
さとりさんが叫んだ。
「貴方は……八咫烏……!?」
「む、心を読んだか。然り、然り。我が名は八咫烏。古きは太陽の使いとして名を馳せし神」
「しかして今や信仰を地に落とし、この小烏を依り代とする哀れな神よ」
「妖怪に神が宿るなんて、そんな事──」
「あり得るのだ、他でもない神の仕業であれば。異なものよ、神が妖を依代とし、妖精を巫女とする時代がこようとは……」
ああ愚かしや口惜しや。
呆然としていたさとりさんが、絞り出すように尋ねる。
「……何故?」
「知りたいのは理由か? この小娘は主人のために力が欲しいと願い、我は存在の維持のために器を欲した。それだけのことだ」
「では何故、何故お空の声がしないのですかッ!」
心を読まずともわかるほど、感情の込められた叫びだった。
「陰陽を知らぬか? 光と影、太陽と月、男と女……魔や妖は月にあたる。そして我は太陽の化身。
「……まさか」
さとりさんの顔が真っ青になった。一方で八咫烏はため息を吐く。
「はぁ……結論を急ぐな。炎に呑まれかけだが、まだ精神は生きておる」
「なにか……なにかお空を助ける手段はあるのかい?」
「我が太陽の力を抑制する術を用意するほかあるまい、そこな火車よ。まったく……自ら炎を抑える手法を提案するなど、手の込んだ自殺を演出するようなものだ」
吐く息一つが超高温で、庭園の草木は既に萎れかけている。これを制御する、だって?
瞬間的に閃くのは氷精や雪女の存在だが、相手は正真正銘の神だ。それも、廃れたとはいえ太陽神の御使いとなれば、内包する熱量は計り知れない。
八咫烏は左右を見回した。心を読んだらしいさとりさんが庭先の大穴を指さす。
「…………元々地霊殿は地獄の管理のために建てられた館。そちらの穴は灼熱地獄へと繋がっています」
「急ぐなら急げよ、三日も持たぬだろう。我は疲れた、諦めた。もう、どちらでも良い……」
そう言って八咫烏は穴に消えた。
▽▽▽▽▽▽▽
庭の穴へ消えていった
「さ、さとり様?」
「……精神構造が違うだけでこれほど疲れるとは。生きるための悪あがきはけっこうですが、うちのペットを巻き込まないでほしいものです」
確かに、言動の端々から超越的な諦観が漏れ出ていた。
推測でしかないが、八咫烏は詰んでしまったのだ。
昔の栄光と現状を比べて、神としての格の低さに絶望して。薄れゆく存在を維持するため行った依り代への神下ろしも、相性が悪かったなんて理由でご破算になろうとしている。
万が一にも神の炎を制御する方法が見つかったとして、それは己の力を弱めるのと同義……なるほど、八方ふさがりの袋小路というわけだ。
そこまでして惨めに生き永らえるより、いっそ消えてしまったほうが楽だという気持ちもわからなくはない。
問題は……その諦めに、お空さんを巻き込んでいることなのだ。
「ヴィー、貴女は貴女の神のところへ行って解決策を探ってくれませんか、大穴はお燐が護衛しますから」
「わかりました。あ、その前にやることが」
さとりさんにアイコンタクトを送る。
さとりさんはでっかいため息を吐いた。
「貴女の考えていることは相変わらず虫食いです、言葉で説明してください」
「すみません……。連絡、取る方法ならあるんです」
私は懐から金属板を取り出した。ここからはおそらくリスクが高い。けれど、お空さんを救う方法が他に思いつかなかったのも事実……。もう少し頭が良ければ、別の手立ても浮かぶのだろうなぁ。
さとりさん達と少し離れてから、『k-phone』でにとりさんを呼び出した。個人的にあまり通話を他人に聞かれたくない。
「助手?どうした?」
冷静さを心がけながら、私はにとりさんに提案した。
「にとりさん。究極のエネルギーに興味はありませんか?」
「………詳しく」
「核融合はご存知ですか?」
「あー、あれだろ?高温すぎて扱えないやつ。あんなの机上の空論だよ」
「それが制御できるとしたら?」
「なんだって?」
私はこれまでのことをかいつまんで話し、解決策……『制御棒』の作成計画を説明した。
「とはいうものの、高温すぎて話にならないね。それに耐え得るだけの素材がない」
「ええ、ですから。科学的に見るのではなく、神の火として見るのであれば、神奈子様が封じ込めることも出来るはず」
「うぇ……わたしが交渉するのは嫌だよ」
「お任せください、地上に出る許可も貰ったので」
「でも結局本人が高温を放っているんだろう? それはどうするのさ、近づかないと装着もできないよ?」
「……考えは、あります」
大丈夫。多分、多分死なないはず。
▽▽▽▽▽▽▽
「…………あたいはここまでだ、ここから先は許されてない」
大穴地上付近。お燐さんが足を止めた。
「任せてください、どうにかしますから」
「あたいもほかの方法を考えてみるよ。お空じゃない依り代が見つかるかもしれないからね」
その目には決意が宿っている。
「最悪あたいが代わりになってやる。それで一緒に燃え尽きたって、お空が生きるなら、それで」
「……私は。そうならないように全力を尽くします」
「……ああ、頼むよ」
そう言ってお燐さんは戻っていった。
さあ、先ずは守矢神社だ。神奈子様に打診しなければ。
その次は……あぁ、行きたくはないけれど。
博麗神社にならいるはずだ。
どうも。モンハンのやりすぎで小説の書き方を忘れています。この話はリハビリレベルだよ……
さらに能力の考察を深くやったのでだいぶ疲れました、我ながらすごいジャンルに手をつけたなぁ。
さて。話の中で出てきた陰陽の件はわたしの知識から引っ張り出してきただけなので正確かどうかわかりません。
ちなみにヴィーがどっちもあるとかなんとか言われたのは心が人のものであるという点もそうですがこの小説ではほぼ登場しないTS要素です。忘れてた人多いと思う。作者もTS要素積極的に出そうと思ってなかったし…………。
あ、原始女性は太陽だったとか言わないでください。わからなくなるんで。
次。お燐の種族である火車についてですが、死体を集めてどうするのかっていう表現がないんですよね。個人的には食べるってのが昔の妖怪感あるかなと思うんですが、お燐に当てはめるとなんか……人肉食べる……タイプには……?というかその役はルーミアがいますし。どうするんだろうなぁ……剥製かな?腐ったら捨てるのか?でも死体なんてすぐ腐りますよね、どういうことなんでしょう。知ってる方いたら教えてください……。
次。タイトルはshibayan recordsの『・ー・・ーーー・・・ー・」から。パチュリーの曲の筈なんですが、東方のアレンジって原曲を前面に押し出すサークルとオリジナル感がすごいサークルがありますよね。
恥ずかしながら少女密室とかの要素をはっきりとこの曲に見出せず筈なんて曖昧な表現をしている訳です。
個人的には幽閉サテライトは原曲のメロディを生かすタイプのサークルだと思っています。詳しくないですが。
この辺で終わります。疲れた。全然書けないし展開が思いつくまで時間はかかるし神様の口調安定しないし……
では、また。