東方逃亡精   作:鼠日十二

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幻想郷の河童に転生する小説ありませんかね……
今回は逃亡要素ないです


大勢の河童にとり囲まれていた

 ───はぁ。

 

 と、私は心の中で何度目かもわからないため息をついた。

 アリスさんの家を飛び出してからずっと寝ては飛び、寝ては飛びと繰り返し続けて、そろそろ安住の地が欲しかった。

 

 妖精が寝る必要があるのかはわからないが、私の精神が人間だからか眠くなる。のども乾く。究極的には死なないのだろうが、広すぎる魔法の森に心が疲れているのもあって、一日に一度は寝るようにしていた。

 

 

 とはいえ、それももう限界だ。流石に人恋しさが抑えられなくなってきた私は、人里でも見えないかと上へと飛び上がり──

 

「なんぞあれ」

 

 

 近くにバカでかい山があるのを見つけた。

 

 

 ふむ。

 あれはもしや妖怪の山というやつでは? ヴィーは訝しんだ。

 あんなサイズの山、周りにないしね。

 

 

 妖怪の山という可能性があるのならば……行くしかあるまい!

 なぜならあそこには、風神録の原作キャラがいっぱいいるのだ!!

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 目的があると足、もとい羽も軽くなるもので。あっというまに山のふもとに着いた。

 

 うーん、ここからどうしよう。ただ見に行くだけではダメだ、会話も続かないし多分天狗に追い出される。妖怪の山の天狗は縦社会なのだ。下っ端の白狼天狗に見つかればきっと報告され、運が悪けりゃ面白おかしく脚色されて新聞に載る。つまりアリスやフラン様に追いつかれてゲームオーバーである。貴女がコンテニューできないのさ。

 

 

 

 ……うーん、ここは河童に頼ろうかなぁ。彼らはいい意味でも悪い意味でも利益重視な筈だ。ここはひとつ、私の前世の知識から良さげなアイデアを売ることで、バイトとして雇ってもらうかなんかしよう。

 

 

 よし、そうと決まれば川を目指そう。多分いる。原作でも川にいた気がするし。私は周囲に気を配りながら、こそこそ飛び立った。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 山一周した。メイド服なのによく見つからなかったな私……。

 ともあれ川を見つけたら、あとは鮭のように遡っていく。すると、川沿いの大きな岩に座る人影を見つけた。

 

 隠れる必要もない。遠目にもわかる鮮やかなクリスマスカラー。

 間違いない、あれは厄神の雛様だ!

 

 二次創作ではにとりとめちゃめちゃ仲よかったはず……仲介役を頼めないだろうか。だめかな?

 おそるおそる話しかけてみると、意外そうな表情が返ってきた。

 

「あの……すみません」

「あら。妖精がこんなところに来るなんて……珍しいこともあるものね。私に何か用かしら?」

 

 

「えっと、機械に強い知り合いなんかいませんか? ちょっとお願いしたいことがありまして……」

「にとりのことかしら……いいわ。ちょっと待っててね」

 

 

 

 快く引き受けてくれた。良いひと……じゃなくて、良い神様だ。

 指示に従い待つこと数分。

 

 

「あんたか? 私に用がある妖精ってのは」

 

 にとりさんが来た。私は姿勢を正し、正座でお願いする。

 

 

「単刀直入にいいます。私を住み込みで雇ってくれませんか」

「断る。私にメリットがないじゃないか」

「ええと、私は家事全般からお仕事のお手伝いまでかなり手広くこなせます」

 

 気難し気な表情のにとりさんの横から、雛さんがひょっこり顔を出す。

 

 

「にとりが要らないなら私が欲しいわ」

「雛は少し静かにしててくれ。他には?」

 

「技術とか仕組みのアイデアが出せます。そういう能力なんです。一家に一人、妖精メイド。如何でしょう」

 

 もちろん嘘だ。私もバカじゃない、私が『紅魔館の妖精メイドのヴィー』だとバレないように、この能力は隠したほうがいいことくらい学んでいる。

 

 にとりさんは顎に手を当て、それから頷いた。

 

 

「ふむ。そうだな……まずはお試し期間といこうじゃないか。3日あげるから、そのアイデアって奴を設計図か何かにして用意できたら雇ってもいいよ。その間はうちの工房を使ってもいい」

「ありがとうございます!」

 

 よし、よし。交渉はなんとか良い方向に持っていけた。さて、何を提出するべきかなぁ……。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 にとりさんは私に目隠しをして、リュックの中に詰め込んだ。絵面がひどいことになっているが、れっきとした理由がある。

 

 というのも、工房の場所を知られたくないらしい。秘密主義すぎないかとも思うが、まぁまだ仮社員みたいなものだしね。発明家は自分のアイデアと技術に誇りを持つものだし、仕方ない。無心で機械の間に挟まれながら揺られること数十分。

 

 

 

「ついたよ。ここが私のラボだ!」

 

 ……ちょっと予想外だ、いろいろな意味で。工房の中はかなり汚いが、それでいて近代的な雰囲気を醸し出している。

 

 これ前世でもみないレベルだぞ? どうなってんだ河童の技術力。なんかこう、SFっぽさと町工場のガレージが合わさったような……とにかく理解も及ばない機械ばかりが転がるその工房を通り過ぎ、奥の廊下へと案内される。

 

 

「こっちに空き部屋があるから、そこをあんた「ヴィーと申します」……ヴィーに支給するよ。食事はその箱──私が作った冷蔵庫って言うんだけど──その中に入ってるから、一日3食分、なんか作っといて。じゃあ3日後ね」

 

 

 

 にとりさんは手をひらひら振って、工房のほうに消えていった。

 

 よし、ここからが勝負だ。にとりさんの日常生活のサポートをしつつ、上手いこと案を出すのだ。

 第一印象は大事だ…………いっそ、スマホとか作るか?

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 しかし設計図など作ったこともなく。工房を片付けながら落ちていた没案なんかを参考にさせてもらい、一日目が過ぎた。どうやらにとりさんはほとんど料理をしないらしく、基本きゅうりをそのまま齧って食事としているみたいだ。だからか、部屋の汚さに反してキッチンはきれいだった。

 

 それに冷蔵庫のおかげで、料理の作り置きができるのも大きい。きゅうりの漬物は冷えていたほうがおいしいし。肉使ってもすぐに傷まないし。

 

 というわけでとりあえず、大量のキュウリ料理を作ったのである。

 

 

「にとりさん、ご飯できましたよ」

「もうそんな時間?いまいくー」

 

 食卓に並ぶ品数ににとりさんは目を白黒させていた。

 

 

「わ、わ、すごいじゃないか。これ全部きゅうり料理?」

「そうです。いっぱい箱に入ってたので、今日はきゅうり尽くしですよ」

「おお……どれどれ、味は……うまい。きゅうりのみずみずしさはそのままに、しっかりとした味付け……これは素のきゅうりにも劣らないぞ……!」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 もちろん整理整頓は得意とするところである。うちの妖精メイドは飽き性だったので、ベッドメイキング中に枕投げし始めることも多かった。もちろんそういった尻ぬぐいは全部私に回ってくるわけで……。

 

 いやでも几帳面になるのだ。例えばこの、分類されていないネジとか気になる。サイズの合わないレンチ、適当に放置されたトンカチや木材。気になる。というわけで二日目の主な業務は工房の整理整頓だった。

 

 用事から帰ってきたにとりさんは、

 

 

「部屋が、整頓されている……!しかもネジやら何やらが分類されて引き出しになってる……めっちゃ見つけやすい……」

「あ、こっちは工具で別れてます。ラベルもつけときました」

「有能」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

そして、3日目。

 

「さぁさぁ、みせてくれ。正直アイデア力なくても雇いたい気持ちはあるが、約束だからね」

 

 にとりさんの言葉に頷き、私は机の上に図を広げた。

 

「わかってます。今回ご紹介するのは……こちら! その名も『K-phone』!」

 

 板状の小型な機械。それは俗に言うスマートフォン、というやつ。

 

「タッチパネル式の画面は妖力のようなものを画面に薄く流し続け、触ったところの流れが阻害されることで反応するようになっています。基本仕様として、端末同士の通話、録音、メモ機能、フラッシュ付きカメラなど………」

 

 にとりさんの発明品を見る限り、妖力は電力と同じように扱うこともできるようだった。そうなると話は早い。

 

 タッチパネルという概念ににとりさんは思うところがあるようだった。いくつか質疑応答を挟みつつ、プレゼンテーションはいよいよ佳境に入る。

 

「……この代替用品を使えばなんと!材料費30%オフ!30%オフです!是非是非、このチャンスに作成してみては如何でしょうか!!

 

 

………以上です」

 

 

 果たしてにとりさんの反応は、

 

「……素晴らしい。あり得ない。ブレイクスルーもいいところだ、こんな代物は! これは売れるどころの騒ぎじゃないよ、うまくいけば幻想郷の連絡手段のシェアが独占できる! 完璧だ! 今日から君は助手として働いてくれ!」

 

「感謝の極み!」

 

 

 

 このあとめちゃくちゃきゅうり料理でお祝いした。




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