博麗神社にやってきた私と早苗さんを見て、霊夢さんは露骨に嫌そうな顔をした。
「嫌よ」
「まだ何も言ってないです」
「一つ前の異変の主犯の巫女……いや、早苗、あんたはまだいい方だわ。問題はそっちの妖精よ」
「私?」
「ヴィーさんですか?」
私は早苗さんと目を見合わせた。何か迷惑かけるようなことはしていないはずなのだけれど……
「あんたがいるところは大体次の異変の現場になるって相場が決まってるのよ。小説の中の探偵じゃあるまいし、面倒ごとは起こさないで欲しいわ」
「うっ」
確かに私の知る限り、紅魔郷、永夜抄、風神録……三つの異変に立ち会っている。
でも私悪くない。悪いのは全部あのスキマ妖怪だと思う。
「あ、でも。今回用事があるのは霊夢さんじゃないんですよ。……こちらに、萃香さんっていらっしゃいますかね……?」
すると霊夢さんは少し驚いて、
「萃香に客だなんて珍しいこともあるものね……残念だけど。萃香はいないわよ」
「えっ」
「正確にはいるのかいないのかわからない、だけど。能力で霧状になれたりするもんだから、ふわっと現れたり消えたりするのよ。神出鬼没ってやつね」
「行き先に心当たりとかは」
「ないわね」
最初からあてが外れるとは……私の原作知識では博麗神社に住んでるはずだったんだけど……
「というかあんた、萃香に頼み事するのに酒持ってこなかったの?」
「酒?」
「そう。頼み事の対価に萃香が要求するのは大体酒……なんだけど。本人がいい酒を無限に出せる瓢箪を持っているから、普通の酒じゃ断られるわね。はぁ、うちにもあの瓢箪があればなぁ……瓶に詰めて売るのに……」
欲望が透けて見える霊夢さんの呟きをスルーしながら、私は必死に脳内で萃香さんが飲んだことなさそうな酒を思い浮かべる。
「うー……私お金持ってないし……地底のお酒はもう飲んだことありそうですよね……逆に飲んだことなさそうなのといえば……」
候補は一つくらいか。
「……ワイン、とか?」
「あんた、それ───」
「今ワインって聞こえた!」
「な、なんですか!?」
突然聞こえてきた大声に、早苗さんが飛び上がった。
風が強く吹いて、渦を巻いて、やがてそこに人影が現れた。
それは私の肩をがっちりとつかんで、
「あんたか!?私にワインをくれるのは!」
と大声で問うてきた。
▽▽▽▽▽▽▽▽
霊夢さんがいうところによると、
「この前の宴会でレミリアが振る舞ったワインをいたく気に入ったみたいなのよ」
「そうさ、ありゃ初めての味だった!そのあと分けてもらおうと跡をつけたんだけど……」
「レミリアとの戦いに夢中になった挙句紅魔館の一部を破壊、出禁をくらった……それはいいのよ。勝手にやってくれれば。でもね、弁償代をうちに請求させるのは違うと思うわ……ねぇ? 萃香」
「げっ、その話はもう済んだことだろう?私が酒を送って詫びにして」
「それでレミリアに『今回はこれで済ますとしよう。貸一つだ』なんて言われた私の気持ちがわかるか!」
当時の惨状を思い出してヒートアップしてきたのか、騒ぎ出す二人を見ながら早苗さんが遠い目をした。
「私のイメージしてた鬼と違うんですね……。ここの鬼は全員こんな感じなんですか? やっぱり常識に囚われてはいけないのですか?」
「いや、私も萃香さんの他知ってる鬼は勇儀さんって方くらいで──」
すると萃香さんが耳聡く反応した。
「おお、勇儀にあったのか!元気だった?」
「暇そうでした」
そういうと萃香さんは大笑いして、
「そりゃそうだよ、地底になんて何もないんだから! 勇儀もこっちに来ればいいのに」
「笑い事じゃないですよ! お陰で暇つぶしに付き合わされることになったんですから!」
「暇つぶしって……何するんですか?」
「思いっきり攻撃を受け止めるんですって。これあとで聞いた話なんですけど、私の能力って衝撃が跳ね返るので、自分の攻撃に自分自身どこまで耐えられるのか試したくなったらしいです」
これはさとりさんから聞いた話だ。心の中を読んだらしい。
「ほお! どうだい、私とも一発──やめろ霊夢! 角を掴むな!」
「ここであんたが本気出したら神社が壊れるでしょうが。で、あんたたち、萃香に頼みがあるんじゃなかったの?」
「そ、そうでした。実は……」
少女説明中……
「……本当に厄介事じゃない。あんたのいう通りなら灼熱地獄が容量を超えるのは時間の問題だわ」
「流れは分かったけど、それで私は何をすればいいのさ?」
「八咫烏の熱源……核融合というんですが、それは萃香さんの能力で抑えることができるはずなんです」
早苗さんがああ、と腕を組んで頷いた。
「あ、私わかりました。なるほど、確かに密度を下げれば反応率が下がるのも期待できますね」
「そう、そうなんですよ!さすが早苗さん」
「これでも理系だったので!」
「何を言ってるのかわからないけど……取り敢えず散らせばいいんだね? ようし、久しぶりに勇儀の顔も見たいし……ええっと名前聞いてなかった」
「ヴィーです」
「ゔぃー? 言いにくいなぁ……。とにかく、報酬はワイン! それならいいよ。私も鬼じゃないから……いや、鬼だな。まぁ瓶一本でいいからさ」
ワイン……紅魔館……。素直に言ってレミリア様がくれるだろうか?
こっそり?
ううん……にとりさんに帽子貸して貰えばいけるかな……?
「あ、後払いで良ければ」
「ほお、勇気あるね。少し気に入ったよ。私はいつでもいいからさ、準備ができたら呼んでね」
え、勇気……? 何が?
訳も分からず立ちすくむ私の肩を霊夢さんがぽんと叩いて、
「報酬払えなかったら約束が嘘だったってことになるのよ」
「あっ」
紅魔館スニーキングミッションが確定した瞬間だった。
皆さんも鬼と約束するときは必ず報酬を提示して契約内容を遂行できるものにしましょうね。叶えられるかわからない口約束なんてしてはいけません。
どうも。ねずみです。
集中できたので書き切れました。前回より早いペースの更新です、やったぜ。
紅魔館スニーキング編は地霊殿がおわったらになりそうですね。そのタイミングでしばらく閑話的なものでも入れようかな……
さて。タイトルは今回は全く持って適当です。
酒嗜好と雨四光って語感が似てるよね→そういえば花札に月見で一杯って役がなかったっけ?くらいの雑さ。もしかしたら花見で一杯だったかも。わからん。
私一話を2000文字超えるのを目標にして書いてるので体感進みが遅くなったり早くなったりします。ストーリー進み早いかなって心配してたんだけど何も言われてないから多分ダイジョブダイジョブダイジョブだよねぇ……?
前の話になりますが。ミジャグジ様の件は……私の記憶では、ゲームのキャラかなんかですっごくアレに似た形をしてる「ミジャグジ」ってのがいた気がしたんですよ。それを思い出して唐突にぶち込みました。それだけです。
というか私こんだけ自信満々に書いといてラストの展開まだ全然決めてないんですよね。やっばいね。また思いつくまで更新遅れるだろうなぁ……
でも紅魔館の件は絶対書きたいので地霊殿は必ず終わらせます。そうでありたい。何が問題かってそろそろ学校がががが。
次回でも会えるといいですねぇ。この後書きを読んで蜘蛛の糸って単語が出てきたそこの貴方は素晴らしい、よくお分かりで。同士ですね。
ではまた。