東方逃亡精   作:鼠日十二

31 / 67
地底に息づく魔物に怯え

 

 

 制御棒の製作のために彼方此方を動き回って、それとなく萃香さんの機嫌をとり、さてそろそろ準備が終わるかな、なんて頃。

 

 私にできることは少ない。結局作るのはにとりさんだし、お空さんの炎を散らすのは萃香さんの役目だ。

 

 そのため、私は裏方に徹することにしていた。今日も守矢神社の台所に立って食器やらなんやらの準備をしていると、足元に懐かしい浮遊感を覚えた。スキマだ。早苗さんがいなくなったタイミングだから、何処かから見られているのかも。

 

 

 

 最近思ったけれど、私別に妖精だから浮けばいいんだよね。これで逃げ……

 

 

 ……られない! 足首に真っ白な腕が二本……三本……ま、まだ増えるの!?

 

 

「ひゃぁぁぁぁぁぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴィーさん……あれ?………もう居間ですかね?」

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……浮遊感には慣れたけど、この空間のこっちを見てくる目にはいつまでも慣れない。なんか……責められてる様な感じがする。

 

 

 現実逃避はここまでにしよう。

 私は私の前でスキマに腰掛ける紫さんと目を合わせた。

 

 

「さとりから話はきいたわ」

「と、仰いますと」

「貴女の能力、読心も跳ね返せるらしいわね? どうして……いいや、そんなことよりも。確かに地底に送り出したのは私だわ、それを含めても……貴女、異変の元凶に関わることが多すぎる」

「たまたまですよ、私もこんなことになると思って動いてないですし」

 

 

 紫さんは扇子で口元を隠しながら言った。

 

 

「単刀直入に聞くけれど……貴女、月には何があると思う?」

「月ですか? あの空の?」

「そうよ」

 

 

 月……レミリア様は月の魔力で力が増すらしいし、永夜異変のときはそれで様子がおかしくなった妖怪もいたらしい、けど……ああ、そうだった。輝夜さんとかは月の都から来たんだ、ええと……月の裏側みたいなところだった……かな?

 

 

 うん、だから答えは、

 

 

 

「都があるんでしたよね、確か輝夜さんとかが()()()()()っていう」

「………そうね。そう、大正解よ」

「………え?それだけですか?」

「いえ、それと。貴女がこれからどうにかしようとしている異変だけれど……いいかしら? 巫女は神に仕えるものだけれど、神を鎮めるのも巫女の役目よ」

 

 

「……? はい、わかりました……」

「頑張ることね」

 

 

 

 そう言って私はスキマから放り出され、無事に守矢神社の居間の食卓に顔面着地を決めた。

 

 

 いくつかの食事が作り直しになった。泣いた。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖精を放り出して八雲紫はため息をついた……が、それはいつもよりも深いもので、その妖精がもし読心能力を持っていたら失神しそうなことを考えていた。

 

 

 即ち、

 

 

(八意永琳が……()()八意永琳が主人の害になるようなことをするはずがない。永遠亭は部外者を立ち入らせないことに特化した土地、閉じ込める為の檻でもあり身を守る殻でもある)

 

 

 

(そこまで気を使うならば、一介の妖精に『月の都から逃げてきた』などと漏らすはずはない……であれば。あの妖精は元から知っていたと考える方が自然)

 

 

 

(そのような存在などここ幻想郷には存在しない……つまり。あの妖精は──外側は兎も角、中身は──月の都の民である可能性が非常に高い。であれば、あの妖精の本質が月であることの説明にもなる。月がそこまでの技術を持っているとは思えないけれど……これは永琳に伝えるべきかしら)

 

 

 

 同時にこんなことも考える。並列思考は彼女の得意とするところである。

 

 

 

 

(では、何の為か? 月の民が蓬莱山輝夜を連れ戻す為なら、永夜異変は失敗した筈。であれば……思い当たるのは月面戦争関連。あの妖精が斥候だとするならば……?)

 

 

(何れにしてもあの妖精から目を離してはならない。異変に関わる理由も知らなくてはならないし、それに、月面戦争についても準備をしておかなくては……場合によっては第二次月面戦争が起こる。その際先手を取られるわけにはいかないわね……)

 

 

 

(それにしても……何故妖精なのかしら?地上の穢れに肉体を触れさせない為?態々妖精を用意してそこに精神を降ろしてまで…………………)

 

 

 

 

 そこまで考えて、紫は再度ため息をつき、

 

「有り得ない可能性に思いを巡らせるより、今やれることから手をつけるべきね」

 

 と言ってまたスキマを開き何処かへ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 最短最速で準備を終え、いよいよ当日。

 にとりさんは紫さんに釘を刺され、今回は陰陽玉型端末での参加らしい。どうやったのか魔理沙さんと手を組んでいた。

 

 恐らく原作と違うのは萃香さんが直接参加するところだ。こればっかりは紫さんも許してくれたらしい。にとりさんは『直接会わなくてよかった……』と思いっきり安心していた。

 

 

 地底につながる大穴の淵で、萃香さんは下をのぞき込んだ。

 

 

「……底が見えないな」

「引き返すなら今のうちだよ、人間」

「まさか! 次こそは私が異変を解決してみせるぜ!」

 

 

 萃香さんが煽ったせいか、魔理沙さんは箒で穴へと突っ込んでいった。

 制御棒はにとりさんの陰陽玉に付属している。仮に戦闘になっても邪魔にならないように、らしい。

 

 

 

「おお、行っちゃった。じゃあ、私も」

 

 萃香さんは周辺の空気を散らしたのか、ものすごい速度で落ちて行った。数秒もするとしたから震えるような音が響く。着地したの? すごいな鬼の体……

 

 

 そして霊夢さんと私も向かうことにした。

 私も二人みたいに勢いよく行きた……かった。

 

 

 空中でじたばたしている私を見て、霊夢さんが呆れたように聞いてくる。

 

 

「何してるのあんた」

「いや、多分蜘蛛の巣に引っかかって……」

「……………………」

 

 

 

 霊夢さんの目が痛い。






どうも。みずねです。


初めにお知らせしておきます。感想の返信でもチラッと言ったんですけど新学期で忙しさがアレなので更新ペースが死にます。こんなことならもっと小説とか書くときにパソコン使って慣れとくべきだった……………。




さて。ここから先は雑談に近いです、あしからず。


タイトルはfloating darknessという曲から。平安のエイリアンアレンジですね。私あの曲大好き……


次。紫さんがうっかり思いついたのは精神の『神』から神下ろしが得意な奴がいたな、と思ったからです。ただこれは彼女の「神の依代になる程度の能力」の範囲外だと思われるのでその可能性はないでしょう。言葉遊びが好きなタイプの紫さんの並列思考だったんですね。



次。若干続きになりますが、儚月抄はまだ先の話です。そもこれが三十話以上続いて一番驚いてるのは作者なんてレベルの見切り発車具合ですのでそこまで辿り着けるかわかりませんが……。
でもどう考えても月の妖精ってことで月に行った場合は優遇されますねおそらく。書くの私ですがそんな気がします。




次ッ。萃香とか勇義が大爆笑しそうな話ですが、地霊殿が終わればしばらく閑話を挟みたいなぁ、と考えています。個人的にはもう一回永遠亭にも行かせたいし、アリスとも絡ませたいし、幽々子様とも合わせたいので。


これは制作秘話と呼べるレベルでもないしょうもない話ですが、この小説書き始めた頃はここまで設定盛って無かったんですよ……ほんとは短編にするつもりだったので。その場その場で思いついた設定が後になって生きてくるパターンがアホみたいに多いです。月の精ってのもあとでレミリアと相性が良いことに気がつくポンコツさですし。


次。ロストワードやった方はわかると思うんですが、紫強すぎません?ラスボスの卒業試験のやつです。何で今までせいぜい体力五百やら千やらの相手して急に体力が九千になるのか、それがわからない。アホほど死にました、仲間四人じゃ無理がありましたね……。結局お祈り回しまくって鈴仙引いてどうにか倒せましたが……




このくらいですかね。ではでは。また会いませう、きっと。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。