東方逃亡精   作:鼠日十二

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露伴の子

 だいたい1ヶ月ほど経ったのだろうか。外に出ないから分からないが、とにかくそのくらいの月日が流れた。

 

 幸いにもレミリア様やアリスさんに見つかることもなく、私たちは着々と開発を進めて、そして遂に。

 

 

「────出来たぞ…!」

「やりましたね……!」

 

二人の前には果てしない試行錯誤の上生まれた試作機『K-phone プロトタイプ』が二台、置いてあった。

 

 いやほんと長かった。にとりさんは割と徹夜するタイプで、付き合って夜更けまで研究を進めたこともあったけど……

 

「一台は助手の分、もう一台は私の分だ。これはこのあと量産するやつより拡張性が高い、つまりは改造すること前提で作ってある。ぜひ貰ってくれ」

「ありがとうございます!」

 

 苦労したぶん、めちゃ楽しかった。この数ヶ月間の努力が報われたのだ。

 

 

「よし、次は量産型だね。こっちは材料費を削って単価を安くするよ」

「了解ですっ!」

 

 

 ほぼ確実に需要のある商品の在庫を用意しないのは馬鹿だ。そう主張するにとりさんの指示のもと、私たちはいくつか機能を削った廉価版の生産に勤しむのだった。

 

 数週間後。

 

 

「さて、ある程度の量が出来たわけだが……どう説明して売ろうか、これ」

「広告でも出してみては? ないんですか、情報系の雑誌とか」

 

 もちろん新聞があるのを知っての発言である。にとりさんはそれなら当てがある、と頷いた。

 

「雑誌はないけど新聞は配ってるやつがいるな……。よし、そいつに頼んで新聞のスペース借りて宣伝でもするか。そうと決まれば、早速会いに行くぞ!」

「お伴します!」

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 やってきました妖怪の山(中腹)。

 にとりの話では、この辺で警備をしている知り合いがいるらしい。十中八九椛さんだね。

 

「もーみじーー!!!」

 

 やまびこが響く。

 

「どうしたのさ、にとり」

 

 声は思ったより早く返ってきた。思ったより近くにいたみたい。

 

 木々の間から現れた白狼天狗に、にとりさんは意気揚々と声をかけた。

 

「やあやあ椛、ちょっと文に伝言頼みたくてさ。めっちゃすごいもの発明したんだよねー。あ、これプレゼント。同僚に自慢しちゃって」

「なに?これ」

「簡単にいうなら離れてても会話ができる機械。横にいる助手との合作さ」

「助手って、この?」

 

 自己紹介タイムである。私は紅魔館仕込みのカーテシーでご挨拶。

 

「にとりさんの助手をしているヴィーです、よろしくお願いします」

「……犬走椛だよ、よろしく。にとりが認めてるんなら良いけどさ、あんまり変なことしないでよ」

「もちろんですよ、私も目立ちたく無いので」

「ふうん……?」

 

「じゃあ椛、伝言頼んだよ」

「はいはい、またね」

「失礼します」

 

 瞬く間に小さくなってゆく背中を見送りながら、私はいずれ来るであろう幻想郷ハッピーライフinにとりさん家を想像してニヤついた。

 

「にとりさん、売れたらまたきゅうりパーティーしましょうね」

「本当か!?いいねぇ、質のいいきゅうり買い込んどこう!」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 翌日。何か新しい機能を追加しようと、にとりさんとあーでもないこーでもないと討論していたところに、芯の通った声が飛んできた。

 

 

「こんにちわー! にとりさん、きましたよー! 射命丸でーす!」

「今行くからちょっと待っててーー!」

 

 

 現れたのは天狗の新聞記者、射命丸 文さん。艶やかな黒羽を靡かせながら、手帳を片手にどこか胡散臭い笑顔を浮かべている。

 

「どうもどうも。何かスクープがあると聞いて」

「そうなんだよ、すごいもの作ったのさ。これなんだけどね、このコンパクトな見た目の中に──」

 

 

 

 少女説明中……

 

 

 

「──というわけなのさ。そこで頼みがあるんだけど、文の新聞でこのことを広告にしてくれないかい? 報酬はたんまり払うからさ」

 

 

 にとりの頼みに、文さんはなにか考え込んでいるようだった。

 

「ええ、ちょっと待ってくださいね……」

 

 

 

 

 ──文は内心焦りまくっていた。椛に見せてもらっていたが、ここまでの機能があるなんて聞いてない。

 

 離れた場所での意思疎通?

 カメラ機能に録音機能?

 

 天狗の上層部が聞いたら飛びつくのは間違いない。なぜなら天狗は縦社会、情報共有は何よりも重視されるのだ。

 

 

「……にとりさん、これ、大天狗様たちにも報告していいですか?」

「ん?いいよ別に。どうせ知れ渡るのは時間の問題だからね」

「ありがとうございます。しかし、よく思いつきましたね……どうやったらこんなので声が届くんでしょうか」

「あぁ、それなんだけど……アイデアはうちの助手のものなんだよね。なんでもそういう能力なんだとか」

「助手??」

 

 妖精が丁寧にお辞儀した。

 

 

「あ、ご紹介に預かりました、助手のヴィーと申します」

 

 

 む。妖精の割には礼儀がなっている。誰に教え込まれたんだろう?

 

「これはこれはご丁寧にどうも。文々。新聞を発行しております、記者の射命丸文と申します。この道具の発想はヴィーさんが?」

「そうなんですよ。住み込みで働かせてもらう条件として頑張って思いついたんです」

「すごいですねぇ……あ、写真いいですか? 開発者紹介みたいな感じでデカデカと載せたいんですが」

「あー……恥ずかしいので、できれば勘弁していただけると……」

「あら、そうですか。残念です……ではまた今度の機会にぜひぜひ」

「あはは……」

 

 ……。人間臭い妖精ですね。普通の妖精なら食いついて来そうなものですが。

 

 要チェックかも知れませんねぇ。

 

 

「では、この辺で失礼しますね。もしかしたら大量に必要になるかもしれないので、その時はまたご商談に参りますー。では」

「またなー」

 

 

 と、飛び立つ一瞬の間に文はシャッターを切った。新聞のネタにはならなくても、情報はあったほうがいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。写真を現像しながら文は首を捻っていた。

 

「あれぇ……こんな逆光強かったっけ?」

 

 そこに写っていたのは、ギラギラとした日差しに七割ほど白くなってしまっているヴィーの姿だった。

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

『文々。新聞でーす』

 

「おお、届いたみたいだ……どれどれ」

「良さげですね、これは今日にでもお客さん来ますよ」

「やっぱそう思う?よし!今日は忙しくなるぞ!」

「外に受付作ってきますね!」

 

 外に出てあらかじめ告知しておいた販売所に行くと、そこにはすでに長蛇の列が。八割ほど天狗だが、そうでないのもちらほら見える。

 

「多っ」

 

 アップルショップの行列を思い出しながら、ひたすら受付をし人をさばき続ける。にとりさんは工房でさらに追加で組み立てをしている。

 

「いらむしゃいませ!『K-phone』ですね! カラーリングはこちらから! お代はこちらに!

 

 ……え? 物々交換!? ちょっと待ってくださいね……」

 

 

「え?3つ欲しい?すみません、個数が限られているので一人一個なんですよ……いや無理ですって! ないんですってば! ちょっ!? 攻撃するのはダメですって! うわあっ!…………反射しちゃった」

 

 

「売り切れでーす!今日の分はもう売り切れでーす!また明日お願いしまーす!」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「ねえ」

「あ、すみませーん、今日は終わりなんですよー。また明日おねがいしますねー」

 

 あいにくと私は今金額計算で忙しいのだ。これ今日中に終わるかな……

 

「ねぇ、そこの貴女」

 

「ですから終わりなんですって!また明日なんで……す……」

 

 

 ああ、声の時点で気づくべきだったのだ。そうして振り向かずに逃げ出して、さっさとにとりさんの工房まで戻ればよかったのだ。

 

 

「迎えにきたわよ。さ、帰りましょ」

「アリスさん……なんでここが……?」

 

 

 アリスさんはにこりと笑った。ただ……目が、目だけが全く笑っていない。

 

「文の新聞読んだのよ。貴女人っぽいところあるし、発想が画期的なのは知ってたし……こんな目立つことして見つからないと思うほうが不思議よ」

 

 

 やばっ。

 

 

「用事があるのでーーーー!!!!」

「逃さないわ」

 

 

 アリスさんが指を振るうと、草むらや木の影から何体もの人形が姿を表した。

 

 うわ……周りに人形展開済みじゃん……虫取り網持ってる。ちょっとかわいいな……。

 じゃなくて。どうしよ……特攻仕掛けるしかないかな……

 

 

 

 よし、覚悟決めた。ひとまず手持ちのナイフで包囲網を崩そう! いつでも自傷できる準備をしつつ、一気呵成に突貫を!

 

「いくぞぉ「ブゥン」ぉぉぉぉぉ………」

 

 突然の浮遊感。あれ? なんで私、真下に落ちてるの?

 

 

 一瞬で景色が切り替わる。そこは多数の目がこっちを見てくる、非常にSAN値が削れそうな空間だった。

 

 

 

 これスキマじゃん。

 

 すぐ後ろから、声がした。或いは下から、もしくは上から。空間に満ちる目玉が全て私を見ている。

 

「初めまして、妖精さん。私の名前は知ってるかしら?」

 

 

 私の幻想郷ハッピーライフ、終了間近のお知らせ。

 




R18欲望ダダ漏れバッドエンド書こうかな……



そういえば大学受験が近しいのでしばらく更新できねっす
申し訳ない……
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