いくら東京と京都が53分で行けるしその気になればもっと早くすることもできるとはいえ、それが日本全土で通用するわけではない。博麗神社は大学が終わった後日帰りで行くにはいささか田舎でありかつ遠かった。
だから時間のある週末に行くことにして、今日の活動はメリーの見た夢についてである。
といっても、情報は限られている。
「メリー」
「何かしら」
「私もその夢の中に行ってみたい」
「どうやって?」
「わからないけれど」
蓮子はお願いするような口調で言った。
「とりあえず今晩メリーの家泊まっていい?」
▽
舞台はメリーの寝室に移る。
「あまり期待しないでほしいのだけど。昨日の夢だって次がいつかわからないのに」
「その『次』を逃したくないんだよ」
「もしかして夢が見られるまでこうするつもり?」
「いや……何か手掛かりが見つかるまで、かな。メリーのそれが仮に『夢の中でどこへでも行ける能力』なら、もっといろんな世界が見えるはず。博麗神社に関係するところしか見えないなら次も同じか近い場所からスタートするはず。ほかにもいろいろ思いつくけど、今日はそれに私もついていけるか試したい」
「私が夢見る前提なのね……蓮子が来れなかったら?」
「うーん……メリーが寝てる間ずっと私の目に触れててくれれば」
「無理ね」
もしまた少女にあったとき何を聞くかなんかを話しつつ、蓮子とメリーは眠気が来るのを待った。
果たしてメリーは夢を見た。
「また夜ね……今度はどこかしら?」
メリーが立っているのは小川の辺……ここまで岩だらけだと沢という表現の方が近いかもしれない。そもそも沢なんて人工のものしか知らないが。
川の上流に目を向ける。この前はあっちの方に出たことになるだろうか。月の光を受けてキラキラ輝く水面を見ていると、不意に光の一部が浮き上がった。
浮かび上がった光はあたりをふよふよと飛び回った。近づいてみることでメリーはようやくその光が昨日見た少女であることを知った。
「ねえ」
「うひゃあ!違うんです早苗さんこれは寄り道とかではなく……あれ?
「隠し事をするならまず目線を合わせることから覚えたほうがいいわよ」
「うー、うー……あのですね。もし貴女と顔が似てて胡散臭い笑い方で八雲紫と名乗る女性と会っても絶対に私のことを話さないでいただけるとありがたいのですが」
「急ね。納得はしていないけど……まあ。いいわよ。その代わり質問に答えてくれるかしら?」
「す、少しだけなら」
「それでもいいわ」
メリーは指を折って質問を数えるようにしながら話を始めた。どこぞの誰かがよくやっていたので癖になっていた。
「一つ目に、あなたの名前は?」
「ヴィーといいます。自称ですけど」
「自称?」
「大体の妖精は名前なんて持ってないですよ」
妖精。随分とオカルト的な存在が出できたものだ。今の言い方からしてヴィーも妖精なのだろう。
「では二つ目。ここは博麗神社で合っている?」
「博麗神社?ここからだとだいぶ離れていると思いますよ」
「ではここは?」
「どちらかといえば守矢神社ですね」
蓮子が場所を間違えた?いや、今までそんなことはなかったが……。
聞かなければならないことはまだある。
「この世界は何なの?」
「え……?知らないできたんですか?」
「ここは夢ではないの?貴女が私の名前を知っているのはそれが理由だと思っているのだけれど」
するとヴィーは口を開いた。
「ここは幻想郷と言います。良ければ少しだけ案内しましょうか?」
▽
「……それで遊びまわったの?羨ましい、一体なぜ私は行けないんだ……!」
「知らないわよ。ほら、見せてあげるから機嫌を直して」
そのまま蓮子はメリーが見た視界を共有してもらった。
機嫌は直った。メリーはちょろいと思った。
「妖精か。今までいくつものデマ写真が出回ってたけど……本物はすごいね。もう現代には存在しないんだっけ?」
「そもそも日本で存在が確認できるのは高名な神くらいでしょう?」
「とすると、その世界は力がなくなった神秘の在処だってことかな。やはり博麗神社に行ってみないことにはどうにもならないか」
蓮子は燃えていた。幻想郷はこの世界で私たちだけが知る神秘なのだ。絶対私たちの手で見つけて見せる。
▽
……幻想郷は一つである。しかし『幻想郷への入り口』はいくつかの平行世界に存在する。例えば吸血鬼の伝承が廃れた世界、高名なはずの神が信仰を失った世界。そして、幻想郷がある世界よりも科学がはるかに発展した世界。その入り口こそが各世界の博麗神社である。
博麗神社においてフィルターの役目を担うのが博麗大結界であり、今や忘れられたものを受け入れやすくする幻と実態の境界とほぼ一体化している。
そこまで思い出したうえで八雲紫は式神の目を通してみた光景を分析した。
まずヴィーと話していたあの少女は『平行世界の八雲紫』である。根源を同じにし、私が辿るかもしれなかった可能性。
おそらく彼女も境界に関する能力がある。そしてその能力が私に近づくとともに存在自体も私と近づいたのだろう。結果、彼女は幻想郷に引き寄せられた。
故に、私と彼女は出会ってはならない。出会えば互いの存在が習合する可能性がある。
そして、幻想郷に引き寄せられた彼女の意識は生霊に該当する。肉体という依り代を持たないため非常に不安定なはずの存在を証明し固定したのがヴィーだ。どういうわけかあの妖精は彼女を知っている。それもかなり詳しく。これは本人に問いただしたほうが早いだろう。あとあの軽すぎる口についても言いたいことがある。
「……たった一人にここまで振り回されることなんて久しぶりね」
と紫は呟き次に結界が弱まった理由について考え始めた。
同時にあの妖精は少しばかりきつく問い詰めることに決めた。厄介ごとの種とはいえ問い詰めたときなんかの情けない顔は妖怪としてなかなかに美味しい、というのが理由の一つである。
どうも。みずねです。
例のごとく最終章的なところでは裏設定的なことを語ります。
まず幻想郷の設定について。これは完全に独自解釈です。吸血鬼やらつるべ落としやら土蜘蛛やら天狗やらが悉く忘れられた世界ってあり得るの?神社があるのに?という私の疑問を解決した形になります。結界成立以前からもともといたにしてもそんな簡単に忘れられるような気がしなくて……。そのあたり説明してる公式設定があったら教えてね。
次。流入する技術は幻想郷がある世界のもののみです。あらゆる種の神秘を受け入れ、人間の技術の発展を抑え神秘を保存する……そうです。これは紫さんによる疑似的なノアの箱舟のようなものなのです!(独自解釈かつヤバい妄想)
……さすがに言いすぎ感は否めませんが、幻想郷ってそういう側面もあるとは思っています。というより紫さんはそういうタイプの愛情のようなものを個人個人ではなく幻想郷そのものに対して持っててくれないかなーって。個人的にはそういう紫さんが好みです。
メリーが幻想郷に行けるのもこの設定のおかげです、いちおう。これは原作でも語られていることなのであまりふかく考察しません。そういうもの、と捉えております。
また宇佐見董子は幻想郷がある世界の住人と暫定でしています。でも出す予定はないのであまり意味はありません。
さてさて、次回もヤバ気な妄想は続きますが、どうかお付き合いいただけるとありがたいです。
あとまだ書いてないことも一応あるので矛盾見つけたら私にメッセージくださいね。最後の話まで待ってくれれば大体解決できると思うのですが、それでも解決してないことあったら死です。作者は焦って死にます。
では、また。明日の私はこれから書く話で矛盾を起こさないように頑張ってね。