東方逃亡精   作:鼠日十二

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Timelineの東

秘封倶楽部に関する一連の話をし終えて、早苗さんの腕力がヤバくなってきたあたりで席を外していたナズーリンさんからようやく助け船が出された。いや、聖輦船の方じゃなくてね。

 

 

 

「そろそろ魔界に着くよ」

 

 

気づけば空は赤黒く、地面は闇に覆われて見えない。そして、妖精は魔界にもいた。

 

人里のあたりにいるのと違うのは服装が黒かったり、髪色が淡い赤青だったりで……どことなく小悪魔さん的雰囲気を醸し出している。

 

 

 

「で、この……飛倉? これとこの船に何の関係があるのか聞かせてもらおうかしら」

「ああ、それは私の方から説明しますね」

 

 

現れたのは星さんだった。そのまま異変解決組とナズーリンさんと合わせて五人で話し始めたので、私はこっそりとそこから離れた。とはいえ流石に帰り方が分からないのでここで逃げるのは無し。とりあえず辺りをうろうろしてみようと思い、甲板にある船長室的な建物の裏手、船の後部まで来た。

 

 

「……うん?」

 

 

よく目を凝らすと、遠くの方に何やらふよふよ浮かんでいるものが見えた。妖精かもしれない。そう思うと確かに羽のようなものが見えた。

 

なんとなく目が合った気がするので、控えめに手を振ってみる。すると向こうも物珍しそうにこちらに近づいてきた。

 

 

「誰?知らない顔だなぁ」

「あ、ヴィーって言います」

 

「ふーん。因みにだけど、私ってどう見える?」

「どうって……普通に妖精ですよ」

 

妖精は興味深そうにこちらを眺め続けている。

 

 

 

「なるほどね。あんたもあいつらと同じ目的なわけ?」

「あいつら、と言うと」

「この船のやつらよ」

 

 

のこのこついてきた私が言うのもなんだけど、できれば安心安全な方がいい。異変は見たいけど痛い目は見たくない。つまり今の心情としては、

 

 

「どちらかと言えば巻き添えに近いというか何というか……。そろそろ帰りたいけど帰れない、みたいな」

「……へえ。もしここから安全に逃がしてあげるって言ったらどうする?」

「いいんですか?」

「帰り道わかるからね。条件付きだけど」

 

 

そういって妖精は更にこちらへ近づいた。さっきまでは距離があったはずなのに、気づけばもう目の前にいる。

 

 

「簡単な話だよ。ちょっとあいつらの気を引くだけでいい。そうだな、具体的には──」

 

妖精は一旦言葉を切って、悪そうな笑みを浮かべた。

 

 

「弾幕勝負、とかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってみると、話し合いは言い争いに進化していた。

 

 

「妖怪を扶ける尼僧の復活……だなんて、見過ごせるわけないでしょう」

「そうですか、残念です。もう少し話の分かる方だと思っていました」

 

 

その中心、霊夢さんと星さんはもはや一触即発と言っても過言でもない様相を呈していて、私はあわててその間に滑り込んだ。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ここは一つ弾幕勝負でですね──」

「最初からそのつもりよ」

「そ、そうですよね。すみません」

 

 

と、ここでナズーリンさんが何か思いついたかのように手を合わせた。

 

 

 

「そうだ。どうせなら三本勝負にしないか?」

「えっ」

 

「ほら、向こうは三人、こちらはヴィーを合わせて三人。ちょうどいいだろう?」

「いやいや、何言って──」

 

「私は構わないわよ」

「霊夢さん!?」

 

 

何故霊夢さんが乗り気なのか。そして何故星さんは頷いているのか。

 

 

 

「さな──お姉ちゃんはっ」

「ふふ。やりましょうか」

「何故!?」

 

「何故って……話してる間に勝手にいなくなったヴィーちゃんにはお仕置きが必要でしょう?」

「本当にすみませんでした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫に九つの命あり……とは、猫のしぶとさを表す慣用句である。また小型ながらも肉食獣であるが故の攻撃性や隠密性など、気まぐれなのを除けば猫は使役するに有用なのである。

 

朝方マヨヒガに訪れた藍は自らの式神──橙にした頼みごとの結果を聞いて、やや落胆したような表情を浮かべた。

 

 

「ごめんなさい……その」

「いや、いい。見つからなかった、というのはそれで大事なことだ」

 

 

幻想郷の猫ネットワークによる情報収集能力は高いのだが、それをもってしても探し人の行方は分からずじまいだった。ただ、これはある程度藍の想定内である。

 

 

「猫に行けない場所にいる可能性もあるからな。一応、まだ探索は続けてくれ」

「……わかりました」

 

 

 

去っていく藍をマヨヒガから橙は見送る。紫さまが居なくなってから藍さまは忙しそうで、あまり構ってもらえないから少し寂しかった。

 

 

「……あ、授業、行かなくちゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

橙は社会勉強のために、と寺子屋に通っていた。そこの先生は人里では知られていないが妖怪であり、生徒に関してある程度の融通を利かしてくれる。その人柄のためか寺子屋には橙のほかにも人外がちらほらいた。例えば、

 

 

「チルノちゃん、その……今日は宿題出さなきゃいけないって、知ってる?」

「なにそれ?」

「……………急いで、これ、写して」

 

 

むう。宿題はやらなきゃいけないんだ、当たり前のことだよ。褒められるようなことじゃ……。

 

やっぱり、私が褒めてもらうには藍さまのお役に立つしかないのだ。そのためには、

 

 

 

「まず、ヴィーって妖精を探さなきゃ」

「おお!橙もヴィーを知ってるのか?」

 

「えっ?」

 

 

猫は人語を解さない。対話による情報収集は自分でやらなきゃいけない、そんなことに気付かなかったなんて!

 

 

橙はその胸に小さな決意の火を灯し、第一歩として話しかけてきた妖精──チルノと大妖精の話を注意して聞き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも。みずねですー。



遅れたのには訳がありまして、作者、この夏はずっとクーラーの効いた環境で過ごしていたのですが、いろいろあって炎天下のなか農作業を三日ほどすることになり、無事熱中症になりました。立ち眩みが治らなくなったときは焦った……。


農作業と言えば秋姉妹。できる限り自分の生活に東方要素を含ませたい作者としてはそれなりにテンションが上がりましたし、花も触ったのでゆうかりんと僅かに仲良くなったといってもいいのでは……?(錯乱)


まあ機械系ならそれはそれでにとりと関連した分野なので喜ぶんですけど。作者ちょろいな。




あとは……作者、今現在この小説含めて三つほど同時進行しているせいでアホほど時間が取れないのもあります。あと次の回はおそらく弾幕勝負する羽目になるんで、お分かりの通り、

弾幕の内容を決めるためにまた時間が吹っ飛ぶので遅れると思います。すまない……!




ではまた











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