東方逃亡精   作:鼠日十二

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後書きのテンションが高いのは許してください。


Let be with me together

 ここで向日葵の相手をし始めて二日ほど過ぎた。相手といっても私のやることは幽香さんと一緒に向日葵畑を散歩するくらいで、時折水をやってみたりすることはあれど大した仕事ではなかった。

 

 変わらない景色に飽きてきたという点を除けば。

 

 

 

 

 

 それ以外では幽香さんは大体本を読んだり紅茶を嗜んだりしている。

 

 

「ああいう嗜好品の類は人里で買ってくるんですか?」

「まさか。妖怪は入れないことになっているもの」

 

 

 試しに訊いてみると、幽香さんは私も知っている名前を出した。

 

 

「アリス──七色の魔法使い。彼女の伝手で入手しているわ」

「都会派ですもんね」

「あら、知り合い?」

 

 

 一応和解はしたし、友好的な仲のはずである。人形化バッドエンドルートは回避したはずだ。

 

 

「友達みたいな感じですかね」

「アリスに貴女みたいな友人がいたことに驚いているわ。てっきりもう少し大人しい人付き合いをする性格だと思ってた」

「……どういう意味ですか?」

 

 

 幽香さんは「さあ?」とはぐらかして本を閉じ、そばに立ててあった日傘を手に取った。

 

 

「お客様ね。丁重に送り返す必要があるわ」

「送り返すんです?」

「ええ。向日葵は冷たいのが苦手なのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりやめようよ」

「大丈夫だって、今日こそは勝つから」

「でもチルノちゃん、昨日もそうやって返り討ちにされてたじゃん……」

 

 

 そう言うとチルノちゃんはむむ……としばらく唸ってからこう提案した。

 

「合体技だ」

「えっ」

 

「『仲間と力を合わせて困難を乗り越える生き物がいるんだ』ってけーねが言ってた。ならあたいたちもきっとできる!」

 

 

 チルノちゃんの手を取った。ほのかな冷たさと柔らかな勇気が伝わってきて、一回だけ、やってみてもいいかななんて思って、私とチルノちゃんは向日葵畑の上空で『最強』を待った。

 

 

 

 やがて。いつも通りの余裕そうな表情でやってきたあの妖怪*1

 

 ん?二人いる?

 

 

「「「あーー!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだなー!」

「な、何故ここに!」

「それはこちらの台詞です!まさかまたチルノちゃんを誑かしに?これは……チルノちゃんの相手と、私の相手。それなら……ここで倒すしか……!

 

 

 

 幽香さんの後をついて行って出会ったのは何時かの妖精コンビ、大妖精とチルノちゃんだった。いや本当に何故ここに?その質問に幽香さんはこう答えた。

 

 

「弾幕勝負で負かしたらしつこく食い下がってくるようになったのよね……。私も負けるわけにはいかないし、堂々巡りだわ。ここに長く居られても困るし、早めに方をつけましょう」

「あ、じゃあ私は退避を……ぐえ」

 

 

 距離を置こうとしたのだが、幽香さんに首根っこをつかまれて未遂に終わった。

 

「見てみなさい、向こうは貴女と戦う気があるらしいわ」

「私には無いんですが」

「私も似たようなものよ」

 

 そうこう問答している間にどうやら向こうは覚悟を決めてしまったらしい。二人は手をつないだままスペル名を宣言した。

 

 

 

「よくわからないけど、とにかく今日こそお前に勝つからな!」

「チルノちゃんは……私が守る!」

 

 

「氷妃『ヘル』」

 

 

 

 

 先ほどまで晴れていた空が、急に曇りだした。あたりの空気が冷えていき、やがて灰色の雲から何かがゆっくりと降ってきた。

 

「……花?」

 

 

 それは氷でできた花だった。落ちてくる間で花びらを振りまき、触れたものを凍らせている。私とか幽香さんは霜が降りる程度だが、向日葵は……ダメかもしれない。

 

 

「へえ。いい度胸じゃない」

 

 隣から私でもわかるレベルで恐ろしい量の妖力が漏れている。怖すぎてそっち側を向けない。

 

「ねぇ、ヴィー」

「ハイ!何でしょうか!?」

「私は今からアレを潰してくるわ。貴女は向日葵が凍らないように守ってなさい」

「えっ」

 

 肩に手を置かれて、思わず体が跳ねた。

 

「できるかどうかなんて聞いてないわ。やりなさい

 

 

 お、横暴だ。というかこの氷花の雨から広大な向日葵畑を全範囲守り切れるわけが──あ?

 

 

 できるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたー!」

「おや、お帰り……いいことでもあったかい?」

 

 恵比須顔の早苗を見て神奈子はなんとなく察したが、そのうえで尋ねた。返答はそれこそ想定通り、

 

「ヴィーちゃんが生きてたんですよ!」

 

 だった。連れてこなかったのは、まあ、逃げられたのかもしれないが……にしてはやけに満足そうな顔だ。きっと折り合いがついたのだろうと神奈子は納得して、早苗を迎え入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜。

 

 柔らかな春の夜の空気の中、早苗はひたひたと廊下を歩き、やがて一つの部屋に入り込んだ。

 

「諏訪子様」

「ん?……あー、持って帰って来れたんだね」

「はい」

 

 部屋の中には諏訪子がいた。早苗は懐から小さな紙包を取り出す。蝋燭の火の元で開かれたその中には、一本の髪の毛が入っていた。

 

 

「やっぱり消滅はしなかったね」

「消えちゃう可能性もあったんですか?」

「そりゃ妖精だからね。あの子はまぁ……別なのさ」

 

 

 これはとある妖精の髪の毛。早苗がその妖精の髪の毛を指で梳いて、隠し持ったもの。

 

 

「じゃあ明日、取りに来てよ。時間かかるから今日は寝な」

「……わかりました」

 

 諏訪子は早苗を帰すと、部屋をきっちり閉じた。本当は時間などかからない、早苗に見せるのは教育上よろしくないと思っただけだ。

 

「さて。妖精はちょっと勝手が違うけど、人を祟るのはよくある話。まぁ、そこまで悪用はしないからさ」

 

 

 そう言って諏訪子はその髪を摘んだ。

 

 

「神が宿るから髪、ってね」

 

 

 

 

*1
人間における「あの人」と同じニュアンス




どーも。みずねです。


 軽率に手を出した別作品が相当煮詰まっておりまして、反動でこちらの筆が結構進むのであります。

 タイトルはいつも通り歌詞から頂いております。そろそろ過去の回と被っていないか心配になってきました。

 幽香さんって漢字からもう素敵ですよね……。私はにとりと同じくらい幽香さんも好きなのですよ。物理系と生物系キャラですね。



 次。今回のスペカ、「氷妃『ヘル』」は完全なオリジナルです。地獄ではなく、北欧神話の女神のほう。ニブルヘイムあるいはヘルヘイムに住み、生と死を司るとか。


 ……私の中で、大妖精は大自然の妖精です。故に「命を育むもの」としての側面を持つとする。

 一方チルノは氷精、能力からも想像しやすいですが結構死に近い存在です。花映塚あたりで映姫にかそんな類のことを言われてた気がする。

 つまりは、二人の力が合わされば必然とそうなる、ということ。ちなみにヘルはその半分が人間のような肌、もう半分は青い肌らしいですよ。


 因みになんですが、普通に考えればスペカは二次元ではない(はず)なのですごく描写考えるのに苦労しました。具体的には避け方。上下に避けられるわけですから原作とは勝手が違うのですよ……。




 次ぃ!例大祭ですね!私も午後から参加します。地雷の多いオタクなので怖すぎてカタログ見れてませんが(1ページ目で断念した)、あまり情報のない状態でいくのもまた楽しみ方の一つかもしれない。

 で、東方に限らず漫画でもなんでもそうなんですが、


「キャラの意匠やマークだけのグッズが欲しい」


 個人的にはこれに尽きます。例えばキャラのイラストが描かれたグッズ。それよりかは魔理沙であれば八卦炉、咲夜であればナイフか懐中時計をデザインしたやつが欲しいな、と思うわけです。カードスリーブは意見分かれそうですが。

 あまり……こう、まさにオタクグッズ!というよりは、普段使いできてかつわかる人にはわかる、みたいなのが好きですね。当日は100分ほどあるので探す時間は十分あるはず。頑張ろう。



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