白玉楼の台所にて。
「──で、妖夢さんは今日は何を作るつもりだったんです?」
「今日ですか? 里でいいお肉が手に入ったので、唐揚げをメインにいくつかおかずを用意する予定です」
「いいですねー、唐揚げ……じゃあ味変え用のソースも作りましょうか。私の腕の見せ所です」
そう言って私は袖をまくった。
「今日は唐揚げなのね。良いわねー、揚げたての唐揚げほど食欲をそそるものはないわ」
「幽々子様はいつも食欲がそそられているようなものでは?」
「妖夢って割と辛辣よね……」
しょんぼりとそう言いながら幽々子は唐揚げをぱくついた。悲しげな顔が一瞬で花開く。
「カリカリの衣と肉汁は奇跡の組み合わせよね。これだけで永遠に食べられるわ。……さて。ヴィーは何を作ったの?」
「私も一緒に唐揚げ作りましたよ。あと、そのソースも」
「ソースって……これ?」
そう言って幽々子が指差したのは、黄色と白が混じったものが入った小皿。
「それです。ぜひ唐揚げにつけてお召し上がりください」
食べた瞬間、幽々子の目が見開かれた。
「これはッ!?」
「タルタルソースです」
「タルタル……ソース……!」
大食漢には見えない容姿だが、山のようにあった唐揚げはすぐになくなった。妖夢さんが小声で尋ねてくる。
「ヴィーさん、レシピ教えていただくことってできます?」
「そ、そんな大層なものじゃないですよ? 卵とお酢があればですね……」
こうして私の白玉楼居候生活はスタートした。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「妖夢ー? よーむー! いないのー?」
「妖夢さんなら買い物に行きましたよ」
「遅かったわ、本でも借りてきてもらおうかと思ったのに……」
「私が何か話でもしましょうか?」
「あら、いいわねぇ。何を話してくれるのかしら?」
「ええと……これは友達の友達の親戚の話なんですけど、湖のほとりに真っ赤なお屋敷があるんです。その親戚の人はそこで働いてて………」
もうすっかり話しなれてしまった私の──じゃなくて、友達の友達の親戚が紅魔館から逃げ出した話をする。別に前世の物語を話してもいいんだけど、あんまりやりすぎると妖精っぽくないし。ここは経験談だけにとどめておこう。
「……という感じて、逃げ出したらしいんです」
「その親戚さんって妖精なんでしょう? すごいわねぇ、勇気あることだわ。あそこのお屋敷は私も知っているもの」
「そ、そうですかねぇ……?」
「ええ。やりたいことやるのが一番よね………」
幽々子さんは少し悩んだような顔をして言った。
「私もね、やりたいことがあるの。あの大きな木、西行妖って言うんだけど……あれを、咲かせたいのよ」
「……はい?」
「それだけ?って思うかしら。でもね、あの桜は私にとって特別な何か──のはずなのよ。私は死ぬ前のことを覚えていないから、きっとその特別なものが何なのか、私は知りたいの」
憂うような表情。望郷の念が込められたような遠い視線。あれほど妖怪として強いはずの幽々子さんが、幽霊のように揺らいで見えた。
「……それで、どうやって咲かせるんです?」
「あれも一応木だし、花が咲くっていう概念を集めればいいんじゃないかしら。つまりは春ね」
かくして、春雪異変は起こったのである。
妖夢さんが帰ってくると、幽々子さんは真っ先にその計画を説明した。
「妖夢には春の結晶を集めるのを手伝ってもらうわ」
「わかりました。幽々子様の突然の思い立ちはいつもの事ですし、私は構いませんが……その間、幽々子様の世話は誰がするんですか?」
「よ、妖夢? 私だって自分のことくらい自分でできるわよ?」
「食事はどうなさるので?」
「そっ! それは……ヴィーがどうにか……」
「……はぁ。まぁ良いでしょう。ヴィーさん、後で1日の仕事を纏めますから……どうか幽々子様の世話を任されてはくれませんか?」
「あ、構いませんよ。やりますやります」
「え……? 私、戦力外……?」
そのつぶやきに、だれも返事はできなかった。
▽▽▽▽▽▽▽▽
湖のほとり。紅の屋敷。
館主は止むことのない雪に、代わり映えしない白い景色にうんざりしていた。
「咲夜」
「何でしょう」
誰もいなかったはずの少女の後ろには、いつのまにかメイドの姿があった。
「これは異変よ。私が起こしたのと似たようなね。つまり、原因が居るわ。だから……咲夜。この異変、止めてきなさい」
「分かりました」
「それに……きっと、無くしものが見つかる。楽しみね」
「……?」
▽▽▽▽▽▽
「だいぶ花開いてきたわね。待ち遠しいわぁ」
「満開になったら綺麗でしょうね。お花見でもしますか?」
「良いわね、絶対やるわ。料理は二人にお願いするわね」
「あはは……了解です」
そんな会話をしていると、入口の方で声がした。
「それ以上踏み込んで、殺されても知らないわよ!」
「殺されるのはあんたの方じゃなくて?」
「私はそんな簡単に死ぬタマじゃないぜ!」
「それより、早くこの雪をどうにかしてくれないかしら?」
四者四様。売り言葉に買い言葉の主は、上から順に
妖夢さん。
博麗の巫女。異変解決のエキスパートたる霊夢さん。
魔法使い。弾幕はパワーを信条とする魔理沙さん。
そして……我らが──「元」が付くが──メイド長。つまり、咲夜さん。
やばっ。そう言えば自機組じゃんメイド長。プレイしてないから誰がくるか覚えてなかったんだよう!
「勝手に人の庭に入り込んで、文句ばかりなんて……どうかしてると思わない?ねえ、ヴィー」
幽々子様が私に話しかける。
話していた全員がこちらを向いた。
わずかに驚愕の表情を浮かべた咲夜さんと目が合った。
……もしかしてピンチ?
うちの幻想郷は割とSが多いです。
何故か?オリ主が目をつけられやすくなるようにです。
タイトルは西行法師の詠から。
ついでに今までのを語ると、
最初のタイトルは特に意味はないです。フランドルは地名だね。
二話目はまんまアリスの英語。オールアイスって書いてアリスって読むを知ってるのはかなり……私と波長が合うのでは?
三話目は芥川龍之介の「河童」の中の一節から。あそこがにとりの元ネタとも言われてますね。ちなみに内容は普通に面白いです。語ると長くなるので割愛しますが。
四話目は漫画家の話ではありません。幸田露伴のことです。娘も作家で名前を残すなんて控えめに言ってすごいですよねぇ……やはり環境ですかね。
五話目は書いた通りです。shibayan records 、良いですよね。
個人的には「雨はりらりら」がすこです。あんな綺麗な歌声他にねぇよ……
あれですね。語れるところがあると語りたくなってしまいますね。またあとがきが長くなるなぁ……
まぁまた、次回。