東方逃亡精   作:鼠日十二

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さぁ!妖々夢もクライマックスとやらですよー!


時々芽出る 月の子供は また光を萃める

 咲夜さんと目があった。

 

 瞬間、視界が切り替わる。

 気づけば、私は咲夜さんの腕の中だった。

 

「こんなところにいたのね」

「お、お久しぶりです……」

 

 

 ものすごく強い腕の力に戦々恐々とする私。

 

 

「咲夜? こいつ知り合いなのか?」

「この子は紅魔館のメイド「元です!」………うちから逃げ出したメイドよ」

「紅魔館からか!? はは、度胸あるじゃないか!」

 

 魔理沙さんが愉快そうに笑っているが、こっちは気が気でない。

 

 

「妹様が貴女を待っているの。一緒に帰ってもらうわよ」

「ええ! 死ぬじゃないですかそれ! せっかく外に出れたのに!」

 

 

 じたばたと暴れるも、腕の力は弱まりそうにない。というか原作キャラに捕まってる状況にめまいがしてきた。距離が近すぎて緊張で吐きそう。あんまり揺らさないで……

 

 

 

「お戯れのところ悪いんだけど。その子、うちで預かってる子なのよ。勝手に連れて行かれると困るわぁ」

「……貴女は?」

 

 訝し気な咲夜さんの表情。彼我の力量差を計れないほど馬鹿な人ではないはずだ。

 

 

「私は西行寺 幽々子。この白玉楼の主人、冥界の管理をしている……ただの亡霊よ」

「この異変を起こしたのは貴女?」

「春が来ないってやつなら、そうね。でも、あと少しなのよ? 私はただ、あの桜が咲くのを見たいだけ。もう少し待ってくれればいいの」

 

「それは無理な相談ね」

 

 霊夢さんが話に入ってくる。

 

 

「いい加減春を戻したいの。寒いのはもう飽きた、そろそろ花見でもしたいくらいよ」

「うちですればいいじゃない。そろそろ満開よ」

「あの桜は駄目ね。禍々しすぎる。あんた、本当にあれが何かわかってるの?」

「わからないから封印を解こうとしてるのよ」

「それをやめなさいって言ってるの!」

 

 

 

 

 

 

 緊張は極限に達し、弾幕勝負が始まる──かに思えた。

 しかし、しかし。きっと一歩遅かったのだ。

 

 

 

 風が吹いた。()()()()()()()()()

 

 

 西行妖を見やれば、その蕾はすでに開いていた。

 

「幽々子様──」

 

 私が妖夢さんの方を見たときには、すでに幽々子さんはその姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

「その花弁から離れなさいッ!」

 

 霊夢さんの声に意識が引き戻される。西行妖がゆらりと蠢いたように見えた。そして咲き始めた桜の花は、死を迎えた命のようにゆっくりと散ってゆく。

 

「霊夢、どうしたのぜ?」

「あの桜、生気を吸ってる。花びらに触れれば死ぬわよ」

「はぁ!? そんなふざけた話があるかよ!」

 

 魔理沙さんが叫ぶ間にも、霊夢さんは桜との間合いを計っている。しかし不規則に揺蕩う花びらの軌道を読むことは、たとえ天衣無縫の巫女でも難しいものがあった。

 

 

「……駄目ね、花びらが多すぎる。桜の下に辿り着くまでにどうしても当たるわ」

「でもこのまま見ているわけにも行かないでしょう?」

 

 そう言って咲夜さんがナイフを投げる。が、ナイフは花びらに触れると黒ずんで崩れた。

 

「な!?」

「……どうやらあの花びら、死という概念そのものに近いみたいね」

「物の寿命まで吸うってのか!?」

 

 

 生憎と、ここにいるのは人間ばかり。死んだらそれまでの、はかない命ばかり。

 

 ……ただし、私を除いて。

 

 

「咲夜さん、咲夜さん」

「何かしら?悪いけど今そんなに余裕無いの」

 

 

 咲夜さんの頬を冷や汗が伝う。よく見れば、メイド服の端っこが黒ずんでいた。きっと時を止めて試したのだろう。

 

 そんな本気のメイド長にかける言葉を間違える妖精メイドではない。私は意を決して口を開く。

 

 

「あの花びらを一瞬だけどうにかできるかも、って言ったら信じます?」

「……冗談でも言っているつもり?」

「いいえ、本気です」

 

「その話、本当かしら?」

 

 横から霊夢さんが問うてくる。私はあいまいに頷いた。

 

「確証はないですけど、たぶん」

「なら、やってみなさい。やるだけ無駄じゃ無いわ」

 

 

 咲夜さんの方を見る。咲夜さんはため息をつき、私を地面に下ろした。

 

 

「終わったら、無理やりにでも捕まえるから」

「勘弁してください…」

 

 

 

 

 とりあえず地面に立って、軽く準備運動。そして私は西行妖へと歩き出した。

 

 

「お、おい!花びらが……」

 

 肩にひとひら花が散った。私の肩が腐り落ちた……が。

 目線を桜に向ける。跳ね返した死は別の花弁に当たり、それを7割ほど黒ずませた。

 

 失敗だ。

 

 歩き続ける。誰かが何か言っているのがわかるが、いまさら止まれない。

 

 足にあたる。足が崩れる。届かない。

 腹に当たる。腹が溶ける。届かない。

 背に当たる。羽が落ちる……その瞬間。

 

 西行妖の幹が黒に染まった。私が跳ね返した死が西行妖の本体に届いたのだ。一瞬、満開だった花びらがすべて灰となって風に消えた。

 

 

 残っているのかもわからない口で叫ぶ。

 

「霊夢さん!」

「任せなさい」

 

 霊夢さんが西行妖まで高速で飛び、手に持ったお札を叩きつけた。

 それは何枚にも増えて、桜全体を覆い隠すように貼りついた。

 

 

「夢想……封印ッッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと! 貴女しっかりしなさい!」

「あー……咲夜さん?」

 

 視界がぼやけて誰だかわからない。声でどうにか咲夜さんだと認識できる。

 

 

「霊夢! これ治らないの!?」

「そこまでの欠損は無理ね。大人しく一回休みになりなさい」

「せ、せっかく妹様のお願いが叶えられると思ったのに……」

 

 珍しく咲夜さんが落ち込んでいる。

 

 

 ……私の体は、すでに半分以上が黒ずんで、半分死んでいるようなものだった。

 長くは持たないだろう。

 

 

「だそうですよ、咲夜さん。どうせまた会えますって」

「……次こそは連れて帰るわ。覚悟なさい」

「甘いですね、縛ってでも連れて行くくらいの気概じゃ無いと私は捕まえられませんよ………」

 

 

 

 体が崩れ落ち、光の粒となった。

 

 そうして私はこの世から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 その日は、満月だった。

 

 

 いつになく輝きを増した月の光が、あたりに光の粒を撒き散らした。

 それは収束し、結合し、固まって……

 

 一人の幼い少女の姿を象った。

 

 その少女は月の光の中で丸くなるように浮いていた。

 光を浴びて、その姿はゆっくりと成長して行った。

 

 

 そうして、およそ人間で言うところの8歳くらいだろうか。そのあたりになったところで……唐突に、月の光は彼女を照らさなくなった。

 

 

 

 光のゆりかごが消え、彼女は落ちて行く。

 

 

 落ちて、落ちて、落ちて────誰かがそれを受け止めた。

 

 

「……妖精?にしては、あまりにも幼い……。もしや、私の術が邪魔をしたのかしら?」

 

 抱きとめた女性はそのまま思考を続ける。

 

「月の光で生まれるのなら、偽物の月じゃあ成長はしない……。まだ、途中だったのね。……仕方ないわ。月が本物になるまでは、うちに置いておこうかしら。幸い、月なら相性は悪くなさそうだし、妖精の発生と成長過程には興味があったのよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう呟いて、女性───八意永琳は、竹林の中を少女を抱いて歩いて行った。

 







ええ。ここから永夜抄で御座います。

タイトルは発熱巫女〜ずの「東方萃夢想」から。
作品は違いますが、まぁぴったりだよねってことで。



さて。私、発熱巫女〜ずの大ファンであります。
こんな字面しといて、実はその半分が英語の曲という、東方音楽サークルでも少数派な感じではありますが……

日本語の歌もたまらなく良い。
RAiNY StarsやR.I.P.、I wishにsilent storyなど。兎に角良曲が多い。
たまらんですね。

個人的にはクハシヤの廃園がオススメです。
あの曲ほどネクロファンタジアという言葉にぴったりな曲はないでしょう。原曲は死体旅行ですが。


英語の曲も完成度が高い。DANCE with WOLVES やvagrant のテンポの良さも堪らないですね。ダンスミュージックを標榜しているだけはあります。


5時間は語れますが、語ったところで意味はないので今回はこれまでです。



これ追記です。
ヴィーの能力についてですが。死をはね返せるの?と思った方いらっしゃるでしょう。
彼女の能力は彼女の根源、つまり月の模倣そのものです。つまり、太陽の光を反射してあたりを照らす月の有り様。それが能力として顕現したものになります。

つまり。はね返せるのは光のような現象限定です。もう少し言うならば、形の無いものを跳ね返すことに特化した能力です。

ギリギリ死は範囲内です。




では。ご覧になっていただき、ありがとう御座いました。
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