「ところで、碧さんは本当に魔女の気配がしただけでわざわざここまで来たんですか?」
「え?いや、ま、まぁ、そ、それが理由だけど……」
魔女の結界が解除された所で、私は碧さんに鞄を返しながら訪ねる。
すると彼女は急に慌てだした……そしてすぐに私たちと別れようとしたけれど、私は碧さんの手を掴んで止める。
もしかしたら、だけど。
「碧さん、良かったら一緒にるるぽーとを見て回りませんか?
私と矢満田さんも一緒にるるぽーとを見てたところなので、丁度いいと思って。」
「え、そ、そう?
まぁ、如月が、私と見て回りたいのなら、べ、べつにいいけど……」
「それじゃあ決まりですね!
あ、よかったら黒田さんも一緒にどう?」
「有栖でいい……です。
一人でここまで来たのだから、折角だし一緒に見て回るのも悪くないわね。
なら、一緒にこのるるぽーとの店という店を見て回りましょう。です。」
変な敬語だなぁ……と、思いつつも私は息を乱しながら走って来た矢満田さんと合流する。
で、有栖のことを紹介したところで、四人でるるぽーとを見て回ることにした。
……そんなところで、私は有栖が先ほど踏み潰したキュゥべえの死体が消えていることに気付いていた。
いつの間にか消えたのかわからないけれど……碧さんも有栖も気づいていないようだった。
矢満田さんは……まぁ、キュゥべえがつぶれた後で来た所だから、当然知る由もないよね。
「……で、どんなところから見て回る?
やっぱり端から回っちゃう?」
「各々の見たい所を最初に挙げて、現在位置から近い場所から見て回れば?」
「お、有栖っちイイねー、ソレ。
初対面だけど、なんか不思議に打ち解けられる気がするよー。」
矢満田さんは有栖の背中をバシバシと叩きながら、笑いつつも周囲を見渡し始めた。
どこへ行きたいか、自分の中で整理しているんだろうかなぁ。
「あ、碧さんはどこか行きたい所あります?」
「わ、私?
私は、えっと、そのー……
ら、ランジェリーショップ……」
オゥ……
元が男なだけに、出来ればその単語すら聞きたくはなかった。
私は下着を身に着けていない……と言うわけではない。
女の子である以上、風で捲れるものは捲れたりしてしまう。
故に、ちゃんと下着は着用しているけれど……って、それはどうでもいい。
野郎の下着事情なんてどうでもいいよね。
「えーと、その、碧さんが行きたいって言ってた、ラ、ランジェリー……ショップ……
は、ここからじゃ遠いみたいですね。」
「そ、そっか……じゃ、じゃあ私は最後になるかな、多分……」
有栖と矢満田さんがどこに行こうか、と見取り図を見ている所で、私は碧さんと少しだけれど……
ちゃんとした会話が出来たような気がして、少しばかり関係を持てたかな……と思った。
「如月如月、私はもう決めたよ。
私はさっきアクセサリー買ったけど、今度は本だよ本。
本屋が丁度近いから、本屋にしようと思うんだ。」
「私はもうとっくに決めているわ。」
矢満田さんが本屋を指差している所で、有栖はカフェを指差していた。
あぁ、要はお茶したい、ってことなんだね、うん……
「じゃ、本買ってからお茶でもする……?」
「そうだねー。
私はそれにさんっせー。」
「悪くないわね。
私も本は欲しい物もあったから、丁度いいところよ。」
矢満田さんと有栖は親指を立ててグッドサインを出してくれた。
ので、碧さんの方に視線をちらりと移してみる。
「私は本とかあんまり読まないけど、たまには何か読んでみようかな……」
「じゃあ、私もついでに趣味の本を探すことにしますね。」
私の趣味―
エアガンについてなどの本や、銃の仕組みや弾の仕組みなどの本……
そう言う本は私にとって大切な物。
だからこうして本を探している間と言うのは、大切な時間だ。
ま、本を買えるほどのお金を持ち歩いてるわけじゃないから……一冊も買わなかったけどね。
碧さんも財布とにらめっこした結果、断念してたし……有栖は財布の中身を見たら、膝から崩れ落ちてた。
結果的に、本を買えたのは矢満田さんだけで……今私たちはカフェにいる。
「……なんか、私だけ悪いね。本買えちゃって……」
「いやいや、あんまりお金を財布に入れなかったのが原因だったから……」
「そうよ、私も一昨日小説を買ったことを忘れていたのが原因だったのだから……です。」
矢満田さんはなんだか申し訳なさそうにしているけれど、気にしない気にしない。
確かに本を買えなかったのは残念っちゃ残念だけど、今この時間が楽しい。
トランスジェンダーで、女の子になった今でも、こうして友達がいる。
出会ったばかりの有栖や碧さんでも、ずっといるかのような安心感がある。
「……なんだか、不思議だなぁ。」
「何が?」
「いやぁ、矢満田さんとだって、出会って一年経ってないし……
碧さんや有栖と出会ったのだって、最近……有栖に至ってはほんのさっきだし。
それでも、ここにいる四人が、最初から知り合いだったように感じるんだ。
何でか知らないけれど、今よりももっと長い時間、一緒にいたみたいでさ。」
「随分と変なことを言うのね。
私の中で今、如月……さんが普通の女の子、から変なことを言う女の子、になったわ。」
「酷いなぁ、私だって自分でも不思議だと思ってるよ。」
「まーまー、魔法少女がいる時点で不思議だらけの世の中なんだからさ。
こういう言葉の一つや二つくらい、普通の言葉でしょ。ね?碧さん。」
「え、あ、そ、そうだね。うん。
魔法があるのなら、こう言う感覚の一つや二つくらい……ね。」
……この時間が続けばいいな。
帰るべき家があったとしても、この時間が続いて欲しい。
魔法少女は魔女と命懸けで戦う使命があると言っていた。
でも、それを無視して貰ってでも……今はここに居続けたい。
―ええ、そうね。
「え?」
私は、後ろから声がしたので振り返る。
けれども、誰もいない。
有栖も矢満田さんも私の正面の席に座っているし、碧さんだって隣にいる。
でも、今の感覚は明らかに後ろからした声だった。
「如月如月、どうしたのさ。いきなり後ろ向いて。」
「い、いや、なんでもないよ。」
いきなり後ろから声がしたなんて言っても、変だよね。
なら、黙っていたって……大丈夫だよね。
でも……あの声の正体はなんだったんだろう。
明らかに、私の心を読んだかのように、誰かが呟いたことのように感じた。
と、心へ一抹の不安を残しながらも―
私たちは、るるぽーとでの買い物(ほぼほぼ冷やかし)を楽しみました。
新しい友達……年齢こそは違えど、和気あいあいと話せる友達が、二人も出来た。
それはとても、嬉しい出来事でした。
翌日。
「やー、にしても屋上入れるっていいよねー、このガッコ。」
「そうだねー。
他の中学は屋上なんて入れたりはしないよね、基本。」
「私はここの屋上の常連だから、もうなんとも思わないわね……です。」
「そうなんだ、私屋上は初めてだよ。」
矢満田さん、碧さん、有栖、私の四人は屋上でお昼ご飯を食べていた。
手作りのお弁当を皆で食べるのなんて、どれくらい久しいかな。
男子だったころは、結構皆で食べるってノリだったけど……
女子になってからは、ほぼ一人だったし……二人以上で食べるのは久しぶりな感覚だ。
「にしても……有栖は大丈夫なの?」
「ん、何が大丈夫と?」
箸でプチトマトを起用に掴んで食べている所の有栖に、碧さんは問いかけ始めた。
……魔法少女特有の何かでもあるんだろうか。
「いやほら、昨日私にグリーフシード譲ってくれたけど……
有栖の分は、ってこと。
それに、鬼ヶ山には私以外の魔法少女もいるから、ここあんまり美味しい狩場じゃないよ?
強引に戦おうとすれば、テリトリーの問題もあるし。」
「それについてなら平気よ。
グリーフシードってのは、結局の所トドメを刺した魔法少女の物って思ってるし。
だから、誰が見つけようが追い詰めようが、私がトドメを刺せば私の物。
それに……テリトリーだのなんだのって、”雑魚”魔法少女たちの話でしょ?」
うわぁ……有栖の発言が凄い真っ黒な発言だ。
倒した魔法少女の物、って言い方なら、漁夫の利だって出来ちゃうじゃん。
しかも、今の言い方は雑魚、って部分だけ凄い協調してる言い方だった。
「有栖……雑魚って、そんな言い方ないでしょ。
それに、そのやり方じゃ漁夫の利ってことじゃん。」
「戦の功なんてそんなものよ。
戦利品が欲しければ、横からかすめ取るような真似をしてでも戦うのが戦士よ。
現に、戦争で武勲を立てた人なんて大体そんなもんなのよ。
最後に美味しい所を取れれば、私はそれでいいのよ。
碧さんが私の思いを代弁するかのように、有栖に面と向かって注意を始めた。
けれど有栖は聞く耳持たずで、むしろ開き直ってる。
「ちょっとちょっと二人とも、いくらそんな睨み合わなくたって。
人それぞれのやり方がある以上、互いにそれを咎め合うわけにはいかないじゃないですか。」
睨み合っている二人を見て、矢満田さんが間に入る。
でも、有栖と碧さんの二人は……なんだか険悪な雰囲気だった。
「……残念だけど、これ以上は言い合っていても埒があかないわね。」
「え?ちょ、ちょっと碧さん!?」
碧さんは右手の人差し指にはめている指輪を光らせたと思うと―
魔法少女の姿に変身して、刃が厚くなっているナイフを取り出していた。
「魔女の使い魔が、この学校に近づいてる!
それも、下手したら外にいる人は被害に遭うわ!」
そう言うと碧さんは屋上のフェンスを一回のジャンプで越えて―
そのまま壁を走ったと思うと、グラウンドへと降り立ってから、走り出した。
「……あれ、有栖は?」
矢満田さんがそう言うと、有栖はため息をついたと思うとお弁当を食べていた。
会話が終わったから、さぁ続きを食べよう、と言わんばかりに。
「え、ちょっと、有栖?
碧さん一人で行かせていいの?」
「別にどうでもいいでしょ、魔女の使い魔なんて。
最強の私が、わざわざ雑魚に構うなんて面倒極まりないわよ。
第一、使い魔はグリーフシードを落とさないんだから、戦い損なのよ。」
「で、でもそれって人の命がかかってるんじゃ……」
「なら、自分で身を守ればいいじゃない。
女子だったら、キュゥべぇにでも頼めば生きてられるでしょ?」
……確かに正論かもしれない。
でも、それは自分が得をしたいだけ……
余りにも、この世に置いての不条理だ。
「それに……碧さんが使い魔如きに殺されるような雑魚なら……
この学校はとっくに死体の山が積み上げられてるでしょ。」
有栖は野菜を差していた爪楊枝を私たちに向けながら、そう言い放つと―
屋上のフェンスを越えて、碧さんが戻ってきていた。
「ふぅ……意外と硬い使い魔だったわ。
でも、全部倒したからもう安心よ。」
「そう、お疲れ様。碧さん。」
有栖は食後のお茶を飲みながら、碧さんに労いの言葉をかけるけれど……
碧さんはなんだか、有栖に対しての目つきが少し変だ。
「貴方もそうなのね」、と少し裏切られたような……そんな目。
この二人は、これからちゃんと上手くやってけるのかなぁ。
と、私の心の中にまた一つ不安が残り、私はその不安を抱えながら、下校時間まで頭を抱えてました。
「……ねえ、ちょっといい?ですか?」
「え?な、なに?
って……有栖。どうしたの?」
「貴方はまだ魔法少女じゃあないのよね。」
「ま、まぁ、うん……
まだキュゥべえと契約してないし……」
「なら―」
有栖は右手につけている指輪を光らせて、魔法少女の姿へと返信した。
黒いコート、黒いミニスカート……右手に握る真っ黒な剣。
心臓部についているソウルジェムと言う物と、髪飾りだけが魔法少女らしい姿をアピールしている。
「もうこの世界に関わらない方がいい。
一般人がいると、そのうち―
命を落とすことになるから。」
有栖は私の首に、剣の切っ先を突きつけながらそう言った。
一か月おきに更新してるのに気付いた。
○仮定法過去
ⅲ)If he were ready,We would go.
彼の準備が出来ていれば、でかけるのになぁ。
って感じのが黒板に書かれてるシーンが映画にあるけど最後の「なぁ」ってどうなの?
間違ってないけど学校だぞ