馬車が大きく揺れた衝撃で目を覚ます。
跳び起きて開いた視界に映ったのは倒れ伏した御者とまがまがしい獣だ。
なんだこれは。
目の前で起きていることを現実と認めたくない。
カトリーナ「南東の村々に向かって黒い雷を観測するのは良いのですが足はどうするのです?馬を駆っても丸一日はかかるでしょう?」
王「そこは心配するな。早馬を2頭と馬車を手配した。現地には半日ほどで到着できるだろう。」
カトリーナ「なんと...ご厚意、ありがたく存じます。」
王「現地までは平野がしばらく続く。危険はさほどないと思うが...護衛兵は必要かね?」
戌亥「何のために私を呼んだん?お二人さんの安全は私が保証するよ。」
王「ハハハハハ....やはり戌亥君には頭が上がらないよ。
......娘は、頼んだよ。」
戌亥「任せて。」
そういえば、王と戌亥って付き合い長いんだっけか。
王「これで話すことももうない。お三方、頼みましたよ。」
カトリーナ「では。これで失礼します。」
リゼの支度を待ち、戌亥も喫茶店の店閉めに行き、再び三人合流するころにはもう昼下がりになっていた。
リゼ「おまたせ、待った?」
二人「待った!」
リゼ「あちゃー...」
カトリーナ「そもそも何?その鎧?」
リゼ「セバスがあれもこれもってうるさくって...見た目の割に結構軽いからいいけど。」
カトリーナ「与太話はこれぐらいにして馬車に乗ろう。もう日も落ちる。早く出立するに越したことはないだろう。南東の村々までは半日ほどかかるそうだし。」
こうして、私たちは王都を出立した。
向かうは南東。シフ国との国境間際の村々。
馬車が心地よく揺れる。私たちは出立し、しばらく歓談を続けていたが、馬車の揺れに流され、うとうとと眠ってしまった。
馬車が大きく揺れた衝撃で目を覚ます。
跳び起きて開いた視界に映ったのは倒れ伏した御者とまがまがしい獣だ。
なんだこれは。
目の前で起きていることを現実と認めたくない。
しかし、現実は非情である。時は止まらない。
獣は、私が目を覚ましたことに気が付いたのかこちらをにらみつけた。
背筋が凍る。
目覚めたのは私だけ。戌亥もリゼも眠ったまま気絶しているようだ。
守らなきゃ。
とっさに剣を抜く。
王から賜ったこの剣、もらったのはいいがいまだ何も把握できていない。
真剣であるか、模擬刀であるかですら。
だが、たとえ切れなくともこの質量のもので殴れるだけでもまだましな状況だ。
獣は見えるだけでも馬車上に一匹のみ。
まずはこいつを仕留めなければ。
剣の心得なんてない。エンチャントで何とか補うしかない。
にらみ合いが20秒ほど続いたのち、獣が我慢の限界だとばかりにとびかかってきた。
速い。だが、伊達に錬金術師じゃあない。
剣を馬車に突き立て、馬車の床を石柱に錬成、突き出す石柱が獣をとらえ、馬車の外へと吹き飛ばした。
馬車の外ならまだ広い。勝機はある。そう踏んだ。
獣を追い、馬車の外に出た。
そこには最悪の状況が広がっていた。獣は基本群れで動くもの。
つまり、馬車は獣に包囲されていた。
逃げ場なんてない。
あぁ、死ぬんだ。
彼女達を守れなかった。
その時、一人の少年の声が聞こえた。