ハプニングに遭遇したりしたが、何とか村に到達することができた。
霧が立ちこめており、周りを見通しづらい。
だが、それにしても人気が無さすぎる。
ひとまず、調査拠点となる観測塔に行かなければ。
リゼ「なんか、人少ないね。」
???「それも全てかの雷による不作のせいでありますよ。皇女殿下。」
戌亥「誰?」
???「申し遅れました。私はここの観測台にてかの雷を調査している探偵のシェリン・バーガンディと申します。お初にお目にかかります、皇女殿下。そしてカトリーナさんに戌亥さん。」
カトリーナ「もう派遣されている人がいたんだ。それに探偵?」
バーガンディ「そうです。今回観測されている雷。魔術による人為的なものである可能性が高いため、探偵である私が先に派遣されていたのですが....私、環境学には疎い為、救援を要請したのです。」
戌亥「ほーん。」
バーガンディ「それにしてもまさかかの高名なカトリーナさんに御足労願えるとは。」
戌亥「アンジュはんってそんな有名やったんか?」
リゼ「一応アンジュはヘルエスタ王国の錬金術師の名家の出だし。有名なのもワケないよ」
カトリーナ「一応って何よ」
とりあえず。
バーガンディ氏から聞くところによると、この雷は発生する特定のポイントがあるらしく、そのポイントというのが半年前にこの街に出来たシフ国から寄付された教会の周りであるということだ。
教会のシスターや神父に聞き込みを行っても思い当たる節がないだとか。しかし、その協会の周りには村の食料供給の大半を占める広大な畑があるそうで、そこに雷が落ちてしまい畑は炎上。この村は食糧難に陥り、現状王都や隣国からの救援物資、教会の配給に依存している状況だそうだ。それもあり、村から出てゆく人も少なくはなく、人口が大幅に減少。この有様になってしまったという事だ。
気になるポイントは幾つかある。そこを重点的に調べてゆくことにしたいが…
カトリーナ「バーガンディ氏、その教会に案内してもらいたいのですが....」
バーガンディ「良いですよ。カトリーナ殿にしか分からない要因も見つけられるかも知れません。」
カトリーナ「じゃあ、戌亥、リゼ。」
2人「?」
カトリーナ「2人にはこの村の全体を見回ってほしい。不審な所とか見つけたら、私に伝えて。」
戌亥「了解。そちらも気をつけて。」
バーガンディ「カトリーナさん、それでは行くとしましょう」
ということで二手に別れて行動することになった。
聞く限りではあの教会、かなり怪しい点がいくつかある。近年シフ国で教会による大規模テロが起きたばかりだ。なにかやばい事が絡んでなければいいのだけど。
リゼ「ここまで来るのにもかなり歩いたのにまた歩かされるの〜?」
戌亥「仕方ないでしょ。アンジュはんに任されちゃったんだから。そんなぐずぐず言ってたらいつになってもお荷物なままやで〜?」
リゼ「それは嫌。」
戌亥「だったら頑張って歩こうか。」
私はいつだってこうだ。いつもいつもアンジュやとこちゃんに心配かけてばかり。挙句の果てにはお父様にまで心配されて。
こんなんじゃいつまで経っても立派な皇女になれやしない。アンジュも。とこちゃんも。いっぱい凄いところがあって、いつも私を支えてくれる。だけど私はどうだろうか?私は.....
戌亥「リゼはん?」
リゼ「うぇっ!?」
戌亥「リゼはん、なんか考え事でもしてはるんか?」
リゼ「ううん。なにも。」
戌亥「もうそろそろ村も1周出来そうやな。」
リゼ「ここに来たのはお昼前だったのにもう夕方かぁ」
戌亥「特に目につくものもなかったし、ササッと観測台に戻ってアンジュはんに村の様子とか伝えないと。」
リゼ「そうだね。」
戌亥「おっ。あれがシェリンはんが言ってはった教会かな?」
リゼ「そうだろうね。アンジュの姿も見えないし...もう観測台に戻ったのかも。私たちも急いで戻ろうか。日ももう落ちそうだし。」
戌亥「せや…ん?」
リゼ「どうしたのとこちゃん?」
戌亥「伏せて!」
鈍く重い雷鳴が迸った。
黒い雷。
その黒い雷の傍らに人影がうっすらと見えた。
戌亥「大丈夫か!?リゼはん!?」
リゼ「ぁいたたた…
大丈夫だけど…」
戌亥「だけど?」
リゼ「とこちゃん、雷が落ちたところの近くに人影が見えたの。」
とこちゃんがすぐさま振り向く。その鋭い眼光の先には、黒ずんだ甲冑の騎士とも取れない…いうなれば浮浪者というような風貌の金髪の男が立っていた。
とこちゃんが地面を蹴った。
リゼ「とこちゃん!?どこ行くの!?」
戌亥「きまってる!話し合いに行くんや!」
リゼ「話し合い!?」
戌亥「事情はよく分からないけどあの人があの雷に深く関係しているのだけはよく分かる!」
リゼ「そうだけど!そんな考えなしに行っちゃダメだ!」
止める頃にはもうとこちゃんはあの男の前に仁王立ちをしていた。
戌亥「あんた、誰?」
???「なんで貴方に言わなければならないんですか?」
戌亥「じゃあこれだけは聞かせて。あの雷、あんさんが出したものなんか?」
???「そうですよ。」
戌亥「じゃあ聞くことが増えた。あんさんの雷で多くの人が迷惑被ってる。その自覚はあるんか。」
???「あるに決まってますよ。そうなるようにこれを打ってるんですから。」
戌亥「理由は。」
???「え?」
戌亥「理由はと聞いとるんや。」
???「そりゃ復讐のためですよ。大切な人を奪ったあの教会に復讐をするためですよ。」
戌亥「へぇ。じゃあそれの為に関係ない人まで巻き込んでええんか。」
???「いけないに決まってるじゃないですか」
戌亥「…」
???「ええ。自分の身勝手な復讐に他人を巻き込んでいい筈がない。貴方、そう思ってるでしょう?
まぁ、僕はそう思いませんけどね!」
男は剣を引き抜き地面を蹴った。
戌亥「そう来ると思ったよ!」
とこちゃんもヘルエスタセイバーを引き抜いて応戦する。
激しい剣戟。
私はそれをただ見ることしか出来なかった。
…あ。
とこちゃんの腕が震えているのが見えた。
…ダメだ。
確証はないけど、何か不安なことだけは分かる。
助けなきゃ。
助けなきゃ!
腰に提げた件を強く握りしめる。
その刹那。
目の前には一面の花畑が広がっていた。