紅の錬金術師   作:おいしい名古屋コーチン

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第拾弐話 映る目

刃「ほれ。 これがお前さんの剣。[花炎]だよ。」

奈羅花「わぁ...!!」

 

朱色で彩られた鞘と柄を持ち、小さな花の模様で飾られたその刀は可愛らしくも凛々しく思えた。

 

フレン「きれいな...剣ですね。」

戌亥「これが親方が視た[完成形]か。」

刃「まだ刀の出来上がりのビジョンが見えるって話をマジに思ってたんか。 職人としてはありがたいけどさ。」

フレン「ビジョン?」

刃「ん? あぁ。 ただの老いぼれの戯言だよ。そんなことより。  嬢ちゃん、早速これ、抜いてみるか?」

奈羅花「...うん。」

 

フレン「差し方わかる?」

奈羅花「わかんない。」

フレン「じゃ、ちょっと腰の方失礼するね。」

 

美麗な花柄の鞘が奈羅花の腰に収められる。

 

戌亥「似合ってる似合ってる。」

奈羅花「ほんと!?」

フレン「私もそう思いますよ。 かっこいいです。」

 

刃「そんじゃ、抜いてみ。」

 

奈羅花「わかった。」

 

奈羅花が柄に触れる。 慣れない手付きのように見えたが何かを理解したのか握り直す。 そして、綺麗な手付きでそれを引き抜き、眼前に構えた。

 

奈羅花「...できた!」

フレン「あれって...」

戌亥「うん。 私の抜き方だ。」

刃「真似事...にしてはデキが良すぎる。 始めて見たよ。 正真正銘の目で盗む才能。」

戌亥「いや、それにしては素直すぎる抜き方だね。 子供だけができる...憧れを映し続けた目が得た動きだ。」

 

フレン「じゃあ、納刀しましょうか。」

奈羅花「わかった。」

 

構えを崩し、鞘に向かって回転させ、親指に沿って刀を挙げ、鞘に収めた。

 

刃「回転納刀!? あんたあんな納刀するの!?」

戌亥「いや...あれは...」

フレン「アルスさんの...やり方ですね。 たしか模擬戦を見たことあったんでしたっけ。」

戌亥「私の納刀が特殊ってわけでもないけど...ま、あの子がやりたいやり方なんだしそれはそれでいいでしょ。」

 

刃「...ちょっとおもしろくなってきた。 アレ持ってくるわ。」

戌亥「親方... 人の妹をなんやと... ま、今の技量を見るには丁度いいとは思うけど。」

 

フレン「あれ、刃さん、それって...」

刃「巻き畳だな。 今どれくらいできるかあんたも知っておいたほうが教え子の立場で教えやすいかと思ってな。」

フレン「あっ... 助かります!」

 

奈羅花「これ、どうするの?」

刃「簡単だよ。 こいつを斬ってみてほしい。」

奈羅花「!!! わかった! やってみる!」

 

今度は最初から慣れたような手付きで抜刀。

巻き畳を眼前に据える。

 

奈羅花「ふぅ.... やあぁぁぁ!」

 

一呼吸置き斬りかかる。 結果は....

 

奈羅花「あれ... とまっちゃった。」

 

巻き畳の中心近くで刃は止まった。

 

奈羅花「...抜けない...」

刃「ちょっと待ってな。  ほいっと。」

 

刃が切り口を開いて刀を引き抜き、奈羅花に手渡す。

 

奈羅花「おじちゃんありがと!」

刃「こちらこそ面白いものを見せてもらって感謝しかないよ。」

 

 

 

戌亥「お代まだ払ってないよね。 いくらになるん?」

刃「いや、今回は結構だよ。 嬢ちゃんの入学祝い。 大物のタマゴなんだ。恩は売っておくもんだろ?」

戌亥「現金やな... まぁいいや。 ありがとね。」

刃「こちらこそ。 不良品の調子悪くなったらいつでも来いよ!治せるかわからんが。」

戌亥「へいへい。」

 

 

 

フレン「...本当に私が奈羅花ちゃんの先生で良いんでしょうか。」

戌亥「どうした急に。」

フレン「今日、奈羅花ちゃんが刀を抜いた時、私、思っちゃったんです。 この子を私なんかが立派に育て上げられるのかって。」

戌亥「...」

フレン「薄々最初から思ってたんです。 奈羅花ちゃんはいろんなすごい人の剣を見てきた。 だからこそ...私の剣がちゃんと見本になれるのか。不安で仕方なくて...それが今日、確信のようなものに変わって。」

戌亥「だからこそ、あんたに頼みたかったんだよ。 私らの剣はもう成長しきってしまった。これから変えようって思ったって、それは無理だ。この手癖は百年単位のシミになってしまった。 だからこそ、妹には一緒に成長して、変化していけるような先生が就いてほしかったんだよ。」

フレン「...」

 

軽くデコピンをフレンにかます。

 

戌亥「要はあんたの柔らかいアタマに期待してるってこったよ。 妹を預けてるんだ。しゃきっとせい。」

フレン「...わかりました!」

 

何かが吹っ切れたようにフレンは夕日を見つめる。

こちらもその眼をみて何故か安心した。

 

奈羅花「なに話してたの?」

戌亥「今日の献立。 それで、尊たちにたっぷり自慢してきた?」

奈羅花「うん!!!」

戌亥「満足してるならそれで良し!  そんじゃ、帰ろか。」

 

フレン「...ちょっと準備をしたいので明後日にまた伺う感じでいいですか?」

戌亥「ええで。 ...なんか策、思いついたみたいやな。」

フレン「ええ! それでは、また!」

 

奈羅花「ばいばいー! 先生ー!」

フレン「えっ! 今、先生って!」

戌亥「さ、帰ろか。」

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