紅の錬金術師   作:おいしい名古屋コーチン

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第拾四話 ついてこい

戌亥「...そういえば、その教材をくれたっていう友達。 まだ貴重な本をポンポンくれるってどんな人なん?」

フレン「一言で言うなら石油王というのが妥当かもしれませんが...最近は燃料用の石油事業は縮小して製紙業と石油掘削の過程で掘り当てた温泉を主軸にした温泉街の運営が主なモノ担ってると聞きました。 まぁすごく大きい財閥の社長さんといった感覚で良いかもしれません。」

戌亥「ほーん... そんな人脈何処から来たん?」

フレン「彼とはじめから知り合ったというわけではなくて...彼の父親にコーヴァス帝国が飢饉に陥った時、助けていただいたことから始まったご縁なんです。」

戌亥「という事は...3年前からの付き合いってことか? あんたがこっちに逃げ込んでくる前ってことやろ?」

フレン「ええ、そうなりますね。 彼の父親のお陰で、ここに住むことができて、母親を病院に入れることができて。 感謝しかない恩人だったんです。 それが... 1年前に急逝されてしまって。資産は彼が継いで...今に至るんです。」

戌亥「...」

フレン「だからこそ今は力をつけて彼に恩返しをしたいと思ってたんですが...頼りっぱなしで。」

戌亥「頼れる時は頼りなよ。 その結果で恩返しできればいい。」

フレン「...そうですね。  お昼ごはん、美味しかったです。 ごちそうさまでした!」

戌亥「おおきに。」

 

 

戌亥「奈羅花! 素振りはそこそこにしときや。 今度は私が色々教える。」

奈羅花「!!!  うん!!」

 

 

 

 

戌亥「奈羅花、畳を斬った時の感覚、覚えてる?」

奈羅花「うーん... なんか、ざくざくっとした。」

戌亥「そうやな。 じゃぁ、人を斬った時、どういう感覚が手に走ると思う?」

奈羅花「...わかんない。」

 

奈羅花の頬を掴み、目を合わせ、語る。

 

戌亥「わかんないよな。 でも、それでいい。 人を切らないことほど良いことはない。 けど、いつかは斬らないといけない。その時は、どんな寒気が走るような感覚でも、目をそらさないで。自分が斬るものだけをしっかりと睨め。それが[覚悟]っていうもんだ。 それだけは、忘れないで。」

奈羅花「...わかった。」

戌亥「それなら良し。」

 

頬から手を離す。

 

戌亥「じゃあ、これから対人戦闘の手本と実践をしようと思う。 フレン、ちょっとこっち来て。」

フレン「はーい。」

戌亥「今からフレンと私で手本を見せる。 要点をしっかりと目で盗め。 細かいところは追々教える。」

奈羅花「わかった!」

フレン「こんな形でお手合わせするなんて... お手柔らかに頼みますよ。」

戌亥「ん。 お手柔らかに峰打ちで済ませよう。」

 

戌亥「対人戦闘の基本。 それは峰打ちだ。 人を守る剣士として動く上では人を斬ることよりも人を剣で[打って]行動できなくすることが圧倒的に多くなる。 だからこそ。 最初にこの峰打ちを学んでおけばその後の自分がどう動くべきか。分かってくるはずだ。」

 

戌亥「峰打ちは基本、この刀の刃がついてない方。峰を使う。峰で打つから峰打ち。覚えやすいやろ? この峰を首筋や足首などに打ち付ける事で相手のバランスを崩したり気絶させたりする。 これは元来の刀なら刃を傷める使い方になるんだけど...私のこれとあんたの花炎は大丈夫なはず。」

フレン「私が使ってる両刃の剣の場合は刃の側面で打つ、または柄頭で殴る場合が多いです。 大型の獣を狩る際は両刃剣に軍配が上がりますが、対人戦闘においてはやはり刀が一番優れていると言えるはずです。」

奈羅花「ほえ。」

 

戌亥「実際にやってみるか。」

 

 

私が刀を抜くと同時にフレンも剣を抜く。

 

フレン「私はどう立ち回ればいいですか?」

戌亥「本気で斬りに来て。 そうじゃなきゃ見本の意味がない。」

フレン「了解です。」

 

フレンから目に見えるような殺気を感じる。 あの子も全力なんだ。全力の見本にはこちらも同じモノで答える。

 

フレンがこちらに駆けてくる。

流石に速い。 少し下がり、音を超えた速度で切り込まれる剣を刃で受け止める。

微小な火花が散る。

鍔迫り合いの中、右手首を内側に絞り、刃を寝かせてフレンが掛ける力を左後ろに逃し、そのまますれ違うようにいなす。

 

若干バランスを崩すフレンの隙を見逃すはずもない。

そのまますれ違いざまに晒される首筋に向かって峰を落とす。

 

 

 

戌亥「こんな感じだね。 大体わかった?」

奈羅花「分かったけど...先生大丈夫?」

戌亥「大丈夫。 峰を落としただけだから。」

奈羅花「おとす?」

戌亥「そう。 峰打ちの文面をそのまま飲み込んで峰で斬るように振ると峰打ちどころか首の骨を砕く羽目になる。 だから、刀の重量に任せて、落とす。 刀で斬る時は重さに振り回されちゃダメだけど、今度は逆。 峰打ちは自然体で落とすように行うのが大切だね。」

奈羅花「わかった!  先生起きないけど、どうするの?」

戌亥「ンー。 縁側に上げて寝かしといて。」

奈羅花「わかった。」

 

 

 

 

 

戌亥「それじゃ、見本を見て納得できたことをまず私に叩き込んでみて。」

奈羅花「...」

 

奈羅花が自分の迷いを捨て置くように自分の頬を叩き、眼前を睨む。

 

戌亥「...そうやな。 迷いはいらない。 あんさんの憧れはい今此処に確かにいる。ついてこい。 いくらでも打ち込んでみな。」

 

奈羅花「...ありがと。」

 

奈羅花は抜刀し、刀を握り込んで飛び込んでくる。

 




奈羅花「…つかれた。」
戌亥「いやー。 年甲斐もなくはしゃいでしまった。」
奈羅花「何回当てられたっけ…3回?」
戌亥「いや、4回やな。 初めての対人戦闘でそれはかなり上出来やで。 フレンなんか最初は尊相手に1回も当てられずに頭にチョップ食らってぶっ倒れたからな。」
フレン「寝てる間に大変不名誉な事言われてるような気がしたんですけど…」
奈羅花「あっ先生起きた! あのね、お姉ちゃんがね…」
戌亥「待て奈羅花、待って奈羅花…」
フレン「戌亥さん…? お手合わせ、続きを致しましょうか。」





奈羅花「はやーい! すごい!」
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