紅の錬金術師   作:おいしい名古屋コーチン

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第拾伍話 夢を求めて

カレンダーを見て気づく。

先生と姉さんとの鍛錬が始まって今日でちょうど7年か...

 

 

戌亥「お、気づいた?」

奈羅花「ええ、まあ。」

戌亥「あんたも対応が薄くなったもんやな... まあいい。 お前さんももう14。警備隊に志願できる年齢だろ? それなのに常寸の刀を鍛錬用のモノしか持ってないとはちと殺生だろ? ということでな。親方にサプライズを頼んでみた。工房に行ってくるといい。」

奈羅花「サプライズ...ですか。 分かりました。行ってきます。」

戌亥「おう。 行ってきな。」

 

 

 

 

奈羅花「刃さん、お久しぶりです。」

刃「おっ、嬢ちゃんか。 久しいね。 3ヶ月前に刀の調子を診て以来かな? まあそれは良いとして、戌亥に言われてきたんだろ? 嬢ちゃんに渡したいものがあってな。」

奈羅花「...新しい刀ですか。 それも常寸の。」

刃「アレ? 戌亥から話聞いてた? ったくもー。 それじゃサプライズの意味がないってのに。 少し待っておくれ。 モノを持ってくる。」

奈羅花「了解です。」

 

 

 

刃「これがお前さんの刀。 まだ無銘だが。」

奈羅花「この光り方... 花炎と同じ?」

刃「おっ、気づくねぇ! そう。花炎、そして獄炎剣と同じ魔鋼から造った刀だ。 柄はまだないが... 持ってみるかい?」

奈羅花「はい。   ...軽い。」

刃「そう。 あんたの刀の振り方はどちらかというと戌亥やフレンに近いスピードに重きをおいたものだからね。 できる限りの剛性を保ちながら軽くさせてもらったよ。」

奈羅花「なるほど...」

刃「刀身は8割方完成してる。 あとは嬢ちゃんが銘を決めるだけだよ。」

奈羅花「もう、決めてあります。」

刃「お、良いね。 書いてくれる?」

奈羅花「はい。」

 

 

刃「なるほど。 いい銘だ。 ちょいと待ってくれ。 完璧に仕上げて来るよ。」

奈羅花「了解です。」

 

 

店内を見回る。

ここであった数々の思い出が蘇るような感覚を覚える。

楽しい思い出。

それを、楽しいままで想い続けるために。

私は戦うんだ。 お母さんを、見つけるために。

 

 

 

 

 

刃「ほい、できたよ。」

奈羅花「...! ありがとうございます。」

刃「...ふはっ。 対応が薄くなったとしても嬉しいと目が輝くのは変わんないねぇ!」

奈羅花「...変ですか?」

刃「いや全然。 むしろそうやって喜んでもらえると職人の冥利に尽きるね。」

奈羅花「あ、お代...」

刃「今回は少々先の出世払いだよ。 今季の警備隊の募集、志願するんだろ? あんたの実力なら出世街道まっしぐらだ。 今後贔屓してもらえるのに期待して、今回はお代はいらないよ。」

奈羅花「...ありがとうございます。」

刃「姉貴にもよろしくな。 まいどあり!」

 

 

新しい刀を腰に差し、帰路につく。

この街も、随分と歩き慣れたものだ。

橋の中腹あたりで立ち止まり、夕日を眺める。

 

奈羅花「あの頃夢見た私に、なれてるのかな。」

厨房長「私はなれてると思うわよ?」

奈羅花「!!  姐さん。」

厨房長「戌亥ちゃんにお呼ばれしちゃってね。 よかったら一緒に帰りましょう?」

奈羅花「...ええ。」

 

厨房長「さっきの独り言。 なにか悩んでることでもあるの?」

奈羅花「... 私は、本当になりたい私に向かえているのでしょうか。 先生や姉さんから色々教えてもらって。大会で何回も賞をとって。 確実に実力は付いてきている...と思っているのですが、なにか違和感があって。 目指していたもの、憧れていたものからズレているような気がするんです。」

厨房長「う~ん。 その違和感の正体、もしかしたら[カッコよさ]じゃないかしら?」

奈羅花「カッコよさ。」

厨房長「そうよ。 今の貴方は本当に勝つ事に向かって走ってる。 だから強くなっている。でも、貴方が求めていた強さは、勝つ強さじゃなくて守る強さ。 守るカッコよさを求めていたんじゃないかしら。 7年前貴方は自分が守りたいものを守れるようになることを求めていた。今の貴方ならもうできるはずよ。」

奈羅花「...」

厨房長「若いうちはたくさん悩みなさい。 悩んででも突き進みなさい。 若さに許されたただ一つの特権なんだから。」

 

 

 

奈羅花「なんか...ありがとうごさいます。 悩みを聞いてもらって。」

厨房長「いつでも聞いてあげるからどんどん相談して頂戴。  ほら、あんたの家でしょ。先に入りなさいよ。」

 

鍵を開けて玄関に入る。

姉さんがいたはずなのに家の明かりはついてない。

 

奈羅花「...? 姉さん?」

 

下駄を脱いで玄関に上がると。

 

いきなり明かりがついてクラッカーの轟音がなる。

 

 

戌亥・フレン・尊「奈羅花、誕生日おめでとー!」

 

奈羅花「えぇ... 誕生日なら6日前とっくに...」

尊「昨日までクソ忙しくておちおち祝えなっかったんでの。 やっと暇が空いたから大々的にパーティーをやろうと思ったのじゃ。」

フレン「代わり映えのない面子でごめんね~」

戌亥「もうとっくに祝ったがそれは口頭でだ。 こうやってちゃんと祝いたくて。 改めて、 14歳の誕生日、おめでとう。」

 

奈羅花「... ありがとう。」

 

 

 




厨房長「さて、時間稼ぎのご褒美とかあるのかしら?」
尊「すまんの。 準備が思ったより進まなくて急に時間稼ぎなんか頼んでしまって。」
厨房長「別にいいわよ。 有意義なお話もできたし。」
尊「有意義な話とな?」
厨房長「野暮な事聞くんじゃないわよ。 そんなことより、お酒、たくさん買ってきたわよ。」
尊「酒!」
フレン「お酒!?」
厨房長「あんたら... 酔って奈羅花にウザ絡みしたら承知しないからね。」
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