紅の錬金術師   作:おいしい名古屋コーチン

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第弐拾弐話 記憶

戌亥「変身。」

 

姉さんの体が獄炎に包まれる。 その炎から出てきたのは狼のような鋭く雄々しい顔立ちの小豆色の体毛を持つ獣。

獣は炎をまとい、まるで三つ首を模すように顔を複製したような獄炎の鎧を形成した。

三叉の鎌のような尾をうねらせ獣はこちらも見る。

 

戌亥「ん... レヴィのアレを見たならもうびっくりはしないわな。」

奈羅花「...へ?」

戌亥「...ま、姉が獣に変貌したら誰でも驚くわな。 まあいい。乗れ!あの"釜"を破壊する!」

奈羅花「分かった!」

 

 

レヴィ「僕が後ろから援護すル! 奈羅花ちゃんたちは"釜"を直接!」

奈羅花「了解!」

 

戌亥「行くぞ!」

 

レヴィさんが張った結界が解除されるとともに姉さんが前へ駆ける。

私も火桜を引き抜き、構える。

 

戌亥「飛ばすで! 落ちないようにな!」

奈羅花「はい!」

 

 

口元から獄炎を吐く。

それが獄炎剣を形成したのを確認したらそれを咥え、獄炎をまとい加速する。

 

 

 

見据えるは標的。 避ける行動を一切せず、ただまっすぐに駆ける。

襲いかかる黒い手も、レヴィが撃ち落としてくれている。 撃ちのがしたとしても焼き尽くすのは容易だ。

 

戌亥「神の成れの果て。 地獄の負の遺産。 今、此処で斬り捨てる!」

 

姉さんが距離を詰める。

私も刀にいまできる全ての魔力を流し込み、構え、最期の一撃に備える。

 

 

レヴィ「...!!! 戌亥さん!!避けて!!」

 

 

戌亥「!?」

 

レヴィの声に気づいた刹那。

"釜"の口が強大な光を帯びる。

 

戌亥「!  奈羅花!!!」

 

奈羅花を振り払う。

 

奈羅花「!? 姉さん!」

 

放たれる光線を獄炎剣で受け止める。

だが。

次々と散弾のように放たれる光線は私の躰を貫いていく。

 

 

 

 

姉さんに振りほどかれ、地面を転がる。

 

 

 

 

フレン「奈羅花ちゃん!!」

奈羅花「...先生!! 姉さんは!?」

 

戌亥「手傷は負ったがまだ戦える。 心配するな。」

奈羅花「...」

 

血だらけ。そうとしか言えない。

 

 

戌亥「心配するなと言ってるやろ。 自己犠牲...とは言わんかな、これは。」

奈羅花「...うん。行こう。」

 

 

 

 

 

レヴィ「無茶は禁物! 結界を解くけど...回避に専念して!」

 

戌亥「了解。 任すで。」

奈羅花「うん!」

 

 

傷つき言うことを聞かない躰にムチを打つ。

此処で終わらせる。

此処で絶たないと、奈羅花が救われない!

これは姉としてのケジメだ。

 

次々と襲いかかる光線をすべて避ける。

 

戌亥「奈羅花、これを握れ! お前なら、使える!」

奈羅花「...分かった!」

 

憧れをこの手に握る。

あふれる獄炎を、すべて掌握する。

 

使える!

 

 

奈羅花「獄炎剣!」

 

 

レヴィ「隙は僕が作る! 行ケ!!!!」

 

フレン「私の魔力も持っていって!」

レヴィ「分かっタ!」

 

空に上り、標的に向けて魔法陣を展開する。

 

レヴィ「アグニ・レイ!!!」

 

眩い閃光とともに放たれる青白い光線は"釜"が放つ光線をかき消し、表面を融解させた。

 

紅い核ともとれるモノが露出する。

 

奈羅花「あれが...本体。」

戌亥「行け!!!」

奈羅花「!?」

 

また振りほどかれたと思ったら姉さんに咥えられ、釜の方へと投げ飛ばされる。

 

奈羅花「...ありがとう。」

戌亥「...」

 

笑みを浮かべる姉さんを視界の端に捉える。

見送られるように視線を"釜"に据え、獄炎剣を構える。

 

 

投げ飛ばされた勢いのまま、着地し、走る。

 

剣からあふれる獄炎を纏い、駆け寄る。

 

 

奈羅花「はあああああああああああああ!!!!」

 

核に剣を差し込んだ刹那。 私は白くなにもない空間にいた。

 

 

 

奈羅花「...ここは?」

 

 

目の前には、傷だらけの私のようなものがあった。

 

歩み寄ると... 突然記憶が流れ込んでくる。

 

 

奈羅花「...ッ!?」

 

 

 

死んだ神を弔う神。 彼女の仕事。 死んだ神を取り込み、弔う。 忌避される彼女の側にいたのはただ一人の少年。

少年は語る。 

 

少年「僕は...神様を守れるような強い大人になりたい!」

女神「...なれると良いわね。」

 

死んだ神を弔う神は、言わば使い捨ての神だ。死んだ神を取り込められなくなれば、そのまま消滅して、次の神が成り代わる。

 

青年「...神様?」

女神「...」

 

 

青年「神様を...消えさせるわけには行かない。 使命を肩代わりさせる...器が必要なんだ。」

 

 

女神はもう神として死んでいた。だが、その事を認められない男がいた。

女神を失わないような器。 "釜"に縛り付け、女神の仕事を肩代わりさせるモノを作り出す。

それが男の目的。

 

 

 

奈羅花「...守りたかったんですね。」

 

 

なにもない空間に独り言は響く。

 

 

奈羅花「でも、貴方はもう仕事を終えたんだ。 楽になるべきなんだ。」

 

 

私の姿を映す女神の影を、手にする憧れの形で突き刺す。

 

 

奈羅花「すべてを焼き尽くし、空へ還せ。」

 

 

 

「獄炎剣。」

 

 

 

空間が収縮する。

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