紅の錬金術師   作:おいしい名古屋コーチン

57 / 84
第3話 多重屈折

アルビオ「痛ってえ! けど…まだまだ!」

アルマル「…」

 

だいぶ動きが良くなってきた。

感電する回数もほんの偶に。 私が距離を詰めて少々パニックになった時くらいか。

 

アルマル「疾いの行くぞ!」

アルビオ「お願いします!」

 

手加減の技能も剣士には不可欠なものだ。

最初は私自身も手加減に思い悩んだが…だいぶコツ、言わばシフトチェンジとも言える実力の切り替えを行うことができるようになってきた。

 

アルビオ「…! そこ!」

アルマル「詰めが甘い! 一撃で終わるな!常に次の攻撃に繋がる剣を打て!」

 

喝を入れるようにエビオの背中に蹴りを叩き込む。

 

 

アルビオ「ぐへぇ…」

アルマル「久しぶりにはしゃいでしまった… そろそろ終わりにしようか。 日も暮れる。」

アルビオ「はい。」

 

 

大男「楽しい音が聞こえたと思ったら…女に稽古をつけられているとはね。」

アルビオ「…村の人じゃない。誰だ?」

大男「英雄潰し、と言ったら通りはいいかな?」

アルマル「巷で話題の子供をいじめる小物…かい?」

大男「…でかい口を叩くな、女。 君から潰そうか?」

アルマル「君に勝てるとでも?」

大男「…このアマァ!」

 

煽ってみたものの…パワーでは私もエビオも勝てっこない。

丁度いい。 生まれの違い、それを教えられるチャンスだ。

 

アルマル「神名解放。 亜楼主・或真流!」

 

獣としての。 かつての高楼の主としての姿を露わにする。

 

アルマル「神…いや、妖としての力、目に焼き付けな!」

大男「亜人!? しかも…こちら側の亜人か!だがそれすらも斬ってみせる!」

アルマル「武人としての心意気は結構。 さぁ…行くぞ!」

 

 

権能解放。 多重屈折!

 

 

大男「!? 消え…」

アルマル「こっちだ!」

 

背中から蹴りを入れ、また光と影の狭間へ逃げる。

 

大男「がっ! 逃げるのか!? それでも武人か!?」

アルマル「こちとら妖さ。 卑怯な手はいくらでも使おう。 そうだな…これはどうだ?」

 

影を増やす。 実体は影に引き寄せられ… 姿を増す。

 

大男「分身…速さにかまけた残像でもないか。 こちらに勝ち目はないな… だが、挑まずにはいられないだろう!」

アルマル「武人としてはホント立派なんだから… 勇者の卵にちょっかいかけるお節介はやめな! これで反省でもしな!」

 

増えたり消えたりを繰り返し、欺く。

彼が転ぼうとも、追い打ちをかける。

そして…

 

 

アルマル「これで満足?」

大男「ああ… そうだな。 貴重な体験、有難く存じる。」

アルマル「それといい加減、そのヘタな演技をやめな?喧嘩腰で勇者の卵に挑んで成長を促すなんて…いいお節介にも程があるでしょ?」

大男「そうだな… 勇者潰しなんて異名にいい気になってたかもしれん。 有難う。名も知らぬ妖狐よ。 いい勉強になった。」

アルマル「こちらこそ。 いい運動になったよ。」

 

 

 

 

アルビオ「あれって…?」

アルマル「巷で話題の勇者潰し。 多分、才能に高をくくる若者に喝を入れて回ってたのが悪い噂に変わっちゃったんだろうね。 ま、エビオには無用だね。」

アルビオ「それって…才能がないってことですか?」

アルマル「いいや、違うね。 エビオは才能に溢れてて、それでいて生意気だ。 意地を張るような生意気。だからこそ、お前はいつまでも自分に満足できないんだろ?」

アルビオ「…そう、なんですか?」

アルマル「私はそう思った。 それだけだよ。 さ、帰ろう。今日は何を作ってくれるんだい?」

アルビオ「今日は… きのこでお財布も潤いましたし、お肉にしますか?」

アルマル「肉なら…いい店がある。 付いてきな!」

 

 

 

 

アルビオ「…美味しい! 焼肉なんて初めて食べましたよ!それにこんな豪華な旅館で!」

アルマル「そりゃ良かったよ。 今日は私の奢りだ。好きなだけ食いな?」

アルビオ「はい!」

アルマル「あっ女将さん! 塩タンお願い!」

小野町「はいー!」

 

 

アルマル「それで、アレを見てどう思った?」

アルビオ「…師匠の戦いをですか?」

アルマル「そうだ。 間違っても…ああなりたいなんて思ってないよな?」

アルビオ「!?」

アルマル「やっぱりそうか。 アレは、亜人にしかできない所業だ。 光と影の隙間を出入りしたり…影を増やして姿を増やしたり。」

アルビオ「…努力でも、覆せない差もあると、言うんですか?」

アルマル「そうだ。 私にできてもエビオには出来ない事はある。それは努力をいくら重ねても覆せない事実だ。」

アルビオ「…」

アルマル「だが、逆も然りだろう? 私に出来ない事が、エビオには出来る。」

アルビオ「…!」

アルマル「それを見つけてみせろ。 そして…それを以て、私を超えてくれ。」

アルビオ「…出来るものなのでしょうか。」

アルマル「出来る。それこそ努力で覆る事実なんだから。」

アルビオ「そうですか…そうですよね。」

アルマル「だからこそ…もっと食え! 細いまんまじゃあの剣に振り回されるままだぞ!」

アルビオ「…はい!」

アルマル「ちゃんと噛めよ。」




topic
亜楼主・或真流の意味

亜楼主=歪んだ高楼の主

或真流=ここに或るは剣の真流
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。