戌亥「…今度は何だ?」
尊「今度の仕事は… 弔神の始末か。 面倒臭いモノが来たもんじゃの。」
戌亥「地獄の負の遺産… 過去の時代が産んだ産物か。」
尊「神の火葬場を火葬しろとは…なんとも言い難いの。」
戌亥「というか、もう神という呼び方自体が旧いのか。ちゃんと精霊って呼ばないとな。」
尊「それもそうじゃな。 にしても、あちらと繋がってからこちらの秩序も目まぐるしく変わるもんじゃの。 これまで盲信していた神秘が証明されて誤った負の伝統は正された。 しかし、まだ依然として負の遺産はそこら中に転がっておる。」
戌亥「ま、それを処分するのが私の仕事でもあるし。 早速取り掛かるか。」
弔神…死んだ神の魂を取り込んで弔う神。使い捨てのゴミ箱。しかし、今はもう必要ない負の伝統。 彼女が苦しむ前に、なんとか。
戌亥「…悔いは、無いか?」
弔神「いえ…少し。」
戌亥「詫びと言っては少なすぎると思うが…せめて聞かせてもらおう。」
弔神「…私を、慕ってくれていた子供、今はもう青年になっているでしょうか。その子が…悲しまないように、私が貴女に切られる事を、黙っていてくれませんか?」
戌亥「…約束しよう。」
弔神「彼は愚直な子なんです。 あなたのためにも…優しい嘘を。」
戌亥「…あとは、いいか?」
弔神「ええ。 …ありがとうございます。」
「御免。」
獄炎剣は彼女と、彼女の優しさの結晶を白い灰へと帰す。
戌亥「…ここまで。 あんた、優しすぎたんだ。」
戌亥「尊、灰の回収を頼むよ。」
尊「…分かった。 今回は、特に丁重に。」
青年「…神様、迎えに行きますよ。」
尊「戌亥!」
戌亥「何が起きた!?」
尊「神の灰が盗まれた!」
戌亥「…遺言の青年か。」
戌亥「獄炎剣、借りてくぞ!」
刃「緊急事態なんだろ!? 持っていけ! 葬式を邪魔するうつけ者に容赦はいらねぇよ!」
青年「神様を...消えさせるわけには行かない。 使命を肩代わりさせる...器が必要なんだ。」
戌亥「どこに行くつもりだ?」
青年「!? …僕を止めないでくれ!僕は!ただ、愛した人に生きていて欲しいだけなんだ!」
戌亥「それを彼女は望んだか?」
青年「…」
戌亥「最期まで彼女は君の事を案じていた。 それを、無下にする気か?」
青年「…やっぱりだ。 お前が…神様を!!!」
「獄炎剣。」
放たれる銃弾を、全て獄炎にて泥に還す。
戌亥「…参る。」
青年「ここで、終わる訳にはいかないんだ!!!!」
次々と放たれる銃弾を燃え盛る獄炎は全て溶かしていく。
…何かおかしい。 反動が重すぎる。
まさか…
青年「だから…消えてよ!!!!」
戌亥「…ッ!? 獄炎が…大きすぎる!」
剣でも切りきれない量の弾丸を、剣は溶かすどころか消滅させる。
戌亥「…だが、扱える!」
渦巻く獄炎を纏って青年に突貫する。
炎を纏った体当たりの後、足首を斬り立つことを…!?
青年「…やっぱりだ。 神様は…僕に味方してくれる。」
青年が黒い煙に包まれると何も無かったように、姿を消した。
戌亥「…逃した。」
刃「…なんじゃこりゃ?」
戌亥「私にもよくわからん。」
尊「人1人丸ごと包むほどの獄炎なんて普通の獄炎剣が出せるわけなかろう。」
戌亥「複数の神性を1度に断ったから何か変な呪いでも着いたのかな…」
刃「…呪いにしては、お前に従順だな。 俺らの言う事聞かねぇけど。」
戌亥「でも、危険な代物には変わりないと思うけど…魂抜き、出来る?」
刃「…俺に焼け死ねと?」
戌亥「無理か。」
刃「上層部にはもう許可を取ったよ。 それはお前が私物として持っとけ。」
戌亥「…その方がよっぽど危険じゃないか?」
刃「封印したって下手に暴走して街ひとつ丸ごと灰になりましたなんて事、起きない訳でもないぞ?」
戌亥「…まぁ、暫くは私が持つことにするよ。 仕事道具で手にも馴染むし。」
刃「あと上層部から2人にお達しだ。読んでみろ。」
戌亥「んん…? 神殺しの功績を称えて昇格… 防衛課か。」
尊「妾は…2番隊? 先生がおる所じゃな。」
刃「2人とも大出世だな。 ゴミ処理からエリート様に一気に昇格とはな!」
戌亥「言い方が毎度物騒なんですよ。」